某国立大学経済学部。 僕はそこの出身である。 どうやら全国的に見てこの大学はそこそこ偏差値のいいところに位置しているらしいが、キャンパスの中にいる人間にとってはそこらへんは結構どうでもいい扱いになってることが多い。 机の上の学力のレベルと、生活能力や人間関係上の賢さとはまったく次元が違う話であって、一流大学を出たからといっても社会的に重要性の高い人間であるとは限らないのだ。 今日の話は、そんな学校の中で僕が尊敬する先輩のちょっと変わった一面のお話。 ***** ほぼどこの大学でもそうだと思うのだが、大学(特に学部レベル)の授業というのはどうやら毎年同じことを繰り返してるらしい。 どの先生も毎年同じテキストを使って、同じような講義内容で授業計画を作ることが多いのだ。 例えば経営学の先生の授業ではどうやらここ数年ずっと『エレガント・カンパニー』をテーマに授業をしているらしいし、ミクロ経済ではスティグリッツのテキストがここ数年ずっと使われている。 そうなれば当然、使い終わったテキストが先輩から後輩の手に移るのはある意味当然であろう。 大学の授業で使われるテキストというのは、安くて3000円台、高ければ10000円前後するものすらあるのだ。 もちろん専門分野のテキストは手放すことはないが、必修や選択必修の単位の都合上、取らざるを得ない別分野の授業というのも存在するのだ。 会計学専門で勉強してる人にはマルクス経済系の教科書なんて単位を得たのちにはいらないものだし、経済思想史を学んでいる学生にはスティグリッツの経済数学は不必要なものとなる。 そういった「要らなくなったテキスト」をもらうのは資源の節約であるし、経済的にも理が適っている。 僕がまだ2回生だったときのこと。 同じゼミだった2つ上の学年にアオキさん(♂・22歳)という先輩がいた。 成績は抜群であった。 結局、卒業式で経済学部の総代にこそならなかったものの、成績表のほとんどを『優』で占め、そして卒業時の単位は300オーバー。 138単位で卒業が可能であることを考えれば、軽く2回半は卒業できるということだ。 ゼミにおいても僕が中途半端な知識でモノを言うのに対して、必ず正確で緻密な説明を与えてくれていた。 ゼミの教授がおそらくもっとも大学院に進めたかった学生だっただろう。 大学院に進んでいれば間違いなく即座に学会で有名になれたはずなのだ。 本人も悩んだのかもしれないが、最終的には某一流銀行へ就職を決め、大学院の入試を受けることはなかった。 ところで、勉強ばかりかというとまったくそうではない。 そんなに回数は多くはなかったが木屋町に飲みに連れていってもらって雰囲気のいいバーを教えてもらったこともあった。 またその先輩は同性から見ても男前で、今でいうなら椎名桔平のような顔だちをしていた。高校のときからモテてたらしく、当時も高校のときからという彼女と5年越しのつきあいをしていた。 あのまま付き合いが続いているのなら、就職したのちに結婚しているのかもしれない。 一度だけその彼女も見たことがあるが、なかなかの美人だった。 ああいう付き合い方って、例えばJUNONとか non-no あたりでうらやましがられるそんなオシャレな付き合い方だったに違いない。 例えば僕なんかの付き合い方とはまったく違って。 |