あんた、六男にはアフロのカツラではなくて、手ぬぐいをほっかむりさせたわな。 六男: 「ボク、こんなのヤだよ。お兄ちゃんたちみたくアフロのカツラが欲しいよ!」 そう言ってダダをこねてな、とうとう五男のアフロを力づくで奪おうとしたんや。 それに怒ったのが五男で、 五男: 「うるせえな、おまえにはそのマチコ巻きがお似合いさ。きっとこれから流行るだろ」 六男: 「そんな大昔のNHKの連ドラ『君の名は』なんて今時誰も知らないよ。いいから交換してよ!」 その後は、二人で取っ組み合いのケンカになってな、とうとう 五男: 「ローリング・ストーン・パーンチ!!」 六男: 「ストーン・ヘッド・クラーッシュ!!」 相討ちになって、二人とも粉々や。オー、ジーザス!!ってカンジやな。 ワシら最初はこのアフロのカツラは気に入ってたんや。 次男: 「オレらってちょっとB系(笑)?」 三男: 「ラッパー入ってるかも!」 四男: 「これからニューヨークでデビューするかい? インディーズならいいレコード会社知ってるぜ」 でもな、そのうち考え方が変わってきたんや。 ワシらって、お地蔵さんやろ? 死ぬまでお地蔵さんや。 どんなにがんばってもニューヨークでラッパーにはなれんのや。 そしてワシらは気付いたんや。 お地蔵さんにアフロのカツラはこれっぽっちも役に立たん するとな、 次男: 「オレらって、アフロ、あんまり似合わないよな・・・。なりそこないのサイババみたいだ」 三男: 「ラッパーっていうより佐藤蛾次郎だよな・・・」 四男: 「佐藤蛾次郎ならまだいいけど、なんか兄貴、ペヤングソースやきそばを売ってたころの石立鉄男みたいに見えるよ・・・」 しかしどうがんばってもアフロのカツラはすっぽりはまってしまって抜けんのや。 将来を悲観した3人の弟たちは、さっき睡眠薬を大量に飲んで自殺してもうたんや。 残ったのはワシ独りなんや・・・。 なあ、ワシの言いたいことが分かるか? 施しをする側にもそれなりの義務があるんや。 寄付が悪いなんてひと言も言わん。 他人のために何かするのは当然いいことや。 でもな、五男と六男が死んだんはアンタの配慮のない行ないが原因やで? 施しっていうんは相手の立場を考えてするべきもんや。 「自分がしたいから」とか「自己満足のために」するもんとちゃうねん。 アンタ、自分の満足のために六男に手ぬぐいをかぶせてワシらの平和を乱したんや。 それからな、アフロのカツラはワシらには何の役にも立たんのや。 アンタはそれで満足かもしらんが、ワシらには邪魔なだけなんや。 寄付とか施しっていうのは「したらいい」もんとちゃうねん。 「相手のことを考えて」から「自分に出来ること」をするもんや。 相手のことも考えずにするんやったら迷惑なだけやねん。 自分に不相応なことをするんやったら周りに迷惑をかけるだけやねん。 なあ、ワシの言いたいこと、わかるやろ? オマエはいったい何様のつもりじゃ、ということなんや。 |