その2 蛹化の女


なんだかとっても嫌がっている私のようですが、だったら何故買ってきたのかという疑問を 抱かれた方もいらっしゃるでしょう。もちろん無駄な好奇心が私を駆り立てた、というのが 主な動機ですが、もう一つ、重要なファクターがあります。それは、私の父が 長野県出身であるということです。

ご存じの方も多いと思いますが、長野県の名物には 「蜂の子」があります。これを私は「幼虫」「ちょっと育ったもの」「成虫に近いもの」と 3段階の缶詰を、すべて幼少時に食した経験があるのです。

感想は、といえば、これは決して悪くないものでした。特に幼虫は、美味い!と言っても いいほどのものです(人によるでしょうが)。当然イナゴも体験済みです。つまり私は、いわゆる 「虫関係」にそれなりの免疫があったわけです。

しかし、如何に虫に慣れているとはいえ、蚕のさなぎは初めて。小学校の頃教室で飼っていた「あれ」 を食べるわけです。どきどきします。これは震える手で缶に穴を開け、キコキコとゆっくり開けて 緊張感を高めるか、と半ば自虐的に考えながら缶を眺めていると。



メチャメチャ開けやすい缶やんけー!



てっきり缶切りでじわじわと開けていくのかと思いました。しかしこれでは心の準備ができぬままに パッカリと開いてしまうではないか。