カモメ
Larus canus

 種カモメ L. canasLarus属の中では全長が40-45cmで一番短く(1),Larus属でカモメより少し長い全長の種はウミネコ crassirostrisと クロワカモメ delawarensisで他の種と見間違うことはないでしょう.しかし,種カモメには4亜種いますので亜種の識別方法を知っていると便利です.
 下表に亜種の繁殖地と冬季の移動地を示します

種カモメLarus canusの繁殖地と移動地(2)
亜種名繁殖地/生息地移動地
canus
カモメ
アイスランドおよびブリテン諸島から
北西ロシア(白海)
ヨーロッパおよび北アフリカからペルシャ湾
heinei
ニシシベリアカモメ
北中央および中央ロシアから
西および中央シベリア
中央および南ヨーロッパ,南西アジア,
カスピ海,パキスタン
kamtschatschensis
カムチャッカカモメ
北東シベリア日本,東中国
brachyrhynchus
コカモメ
アラスカ,西カナダ南東アラスカ沿岸から
バハ・カリフォルニア州(メキシコ)

成鳥

左:カモメLarus canus canus 夏羽, ソグネフィヨルド(ノルウェー),2015年6月5日
右:カムチャッカカモメL. c. kamtschtschensis 冬羽, 雲仙市,2018年1月28日

 カモメは嘴基部から後頭部までの長さに比べて嘴が短く頭部の形態がカムチャッカカモメと違って見えます.カモメは肩羽斑が僅かでカムチャッカカモメは大きく, 三列風切斑もカムチャッカカモメが幅広く見えます.4亜種の成鳥冬羽で嘴に黒い模様がないのはカムチャッカカモメだけです

若鳥 2cy

左:カモメLarus canus canus 2cy 第一回冬羽, 千々石 雲仙市,2023年2月6日
中:コカモメL. c. brachyrhynchus 2cy 第一回冬羽, 雲仙市,2018年3月2日
右:カムチャッカカモメkamtschatschensis 2cy 第一回冬羽, 雲仙市,2023年2月17日

 雨覆の模様はカモメは淡い茶色地に疎らな茶色の斑,コカモメは細かな茶色と淡い色の斑模様で大雨覆は淡い茶色, カムチャッカカモメは背の灰色は目立たず,雨覆の模様はカモメとコカモメの中間の模様で胸から腹にかけて明瞭な茶色の斑があります.


左2枚:カモメcanus 2cy, 千々石 雲仙市,2023年2月6日
右2枚:カムチャッカカモメkamtschatschensi 2cy, 千々石 雲仙市,2023年2月17日

 カモメの翼上下面は暗褐色で大雨覆が淡色,尾羽は先端が濃い茶色の帯で他は白地に淡い茶色の斑,体下部は白地に疎らな茶色の斑があります. カムチャッカカモメの翼上下面は全体茶色で淡色と茶色のコントラストは目立たず,尾羽の付け根から帯までの間は茶色の縞模様,体下部は濃い茶色の斑があります.
 4亜種の冬羽の特徴を下表に示します.

成鳥冬羽(3,4,5)
亜種頭部体下面
canus
カモメ
頭頂から後頸に薄い暗色の疎らな斑鈍い黄色,先端に暗色のリング暗色緑味を帯びる
heinei
ニシシベリアカモメ
頭頂から後頸に暗色の疎らな斑
喉から左右の首にかけて疎らな斑
鈍い黄色,先端に暗色の細いリング暗色緑味を帯びる
kamtschatschensis
カムチャッカカモメ
頭部全体に暗色の斑,
胸半分ほど繋がる
緑黄色から黄色と変異が大きい,
暗色の模様は無い
暗色から淡黄色,
半数以上は淡黄色
緑から黄色
brachyrhynchus
コカモメ
頭頂から後頸に薄い暗色の疎らな斑鈍い黄色,下嘴の中間に暗色の斑暗色淡い茶色緑から黄色

第一回冬羽(3,4,5)
亜種頭部雨覆体下部尾羽上面
(黒帯以外)
canus
カモメ
白地にほとんど目立たない茶色の斑淡い茶色地に目立たない茶色の斑白地に疎らな茶色の斑淡い茶色の縞模様
heinei
ニシシベリアカモメ
濃い茶色の斑淡い茶色地に明瞭な茶色の斑白地に疎らな茶色の斑
kamtschatschensis
カムチャッカカモメ
濃い茶色の斑白地に明瞭な茶色の縞模様胸から腹部まで頭部の斑が
繋がる
茶色の縞模様
brachyrhynchus
コカモメ
白地に細かな茶色の斑白地に目立たない茶色の斑模様ほぼ白茶色の縞模様

 参考文献:1, 2, 3, 4, 5

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