1999.4.13.
体験的用語集
1 ストラポンタン Strapontin
サル・プレイェルの窓口で2階席を所望したら、窓口のおねいさんが「ストラポンタンもあるけどどうですか?」と強く勧める。「ストラポンタン」という単語を知らなかったが、とにかく他の席はカスばかりという感じで余りにも強く勧めるので、「じゃあ、そのストラポンタン」とお願いすると、「そうだ、そうだ。ストラポンタンがいいんだ」と納得して発見してくれた。中に入って、補助席のことだとわかる。確かに最前列でとても良かった。しかし、このコトバをきくたびアンポンタンを思い出す。
2 ダフ屋 Trafiquant de billets
辞書では上の通りですがスラングではどう言うのだろうか? 先のサッカーでは日本人のために沢山出没してくれた。さすがにクラシックのコンサートでは売り切れの切符を高く売りつける、という類の本来のダフ屋は見たことがない。でも、窓口に近づこうとすると普通の客とおぼしき人が「切符は入らないか」と近づいてくることがしばしばある。通しで買って余ったとか、つれ合いが来られなくなったとかという個人的な理由で売っているようだ。大抵は額面通りで、せっぱ詰まってくるとすこし引いてくれることもある。但し、殆どの場合もともとが上級クラス(S席、A席相当)の席が多く、第2バルコンの奥の安いものを当てにしていてもなかなか無い。同一カテゴリーとして考えると、前売りで、しかも通しで買っていることも多いからか、窓口で当日券を買うよりおおむね良い席にあたるし、前売りや定期の特別価格の額面そのままで売ってくれるので得するケースも多い。もちろん、不慣れなのをいいことに無効の切符を売りつけられたりするリスクもある(ダフ屋よりひどいサギ師ですな)から注意は必要だが、あまりそのような例は聞かない。当然、クレジット・カードなんかは使えないから現金を持っていなければならない。一人分で200フランから500フランだから、現金の持ち合わせが無いこともある。シャトレ劇場でペレアスを見たときはピットの指揮者のすぐ後ろで最高の席だった。バスティーユのボエームでは当日券売り切れで、S席を1枚だけもっていた男から額面で買ったが、「現金を持っていない」というと近くのキャッシュ・ディスペンサーまで連れていってくれた。もちろん、このような状況は時と場合によっては犯罪に巻き込まれる可能性も高いので要注意。
3 満員御礼 Complet
前売り券を買ったところで仕事がどうなるか分からないので殆どは当日券を購入していた。その為に逃したコンサートも少しはある。窓口に貼られた「売り切れ」の紙の非情さ。聴けなかった思い出のコンサートを3つ。(内容を考えれば当然です)
ガーディナーの「魔笛」(シャトレ座):1時間前に会場に到着すると「売って下さい」の札を手にした人がたくさんホール前にいた。こんなことでめげるかとプレイェルに急行してパリ管のブラームスを聴くことが出来た。あきらめが肝心。
シュタルケルのリサイタル(市民劇場):市民劇場のコンサートは80フランぐらいで格安。神奈川県立音楽堂ぐらいのちいさなホールの為に売り切れていることが多い。
ブーレーズ、VPOのマーラー5番(シャンゼリゼ劇場):夕方の渋滞をかき分けてたどり着くと切符売り場は真っ暗で人もいない。そして窓には「COMPLET」の文字が「あさって来いよ」と冷たく笑っていた。豪華に着飾った人々が横をすり抜けてホールの中に入っていくのを眺めるだけだった。
4 開け女 Ouvreuse
辞書には「案内嬢」と書いてあるが、直訳すると「開く女」。ホールの中に入ると、プログラムを持った女性が切符を見て席に案内してくれる。といっても席の所まで付いてきてくれることはなく、近くまで行ったら「あの後ろから3列目の真ん中のあたりです」という程度。普通は心付けを渡す。1〜2フランしか渡したことがないけれど、相場が分からなかった。定期演奏会などでは無料のプログラムをくれる。なお特別演奏会やバレエ、オペラのプログラムは大抵有料です。このばあいはプログラム売りから買うことになる。
5 偶数・奇数 Pair / Impair
来たばかりの頃、切符を見せて入ろうとすると、時々「反対側だよ」と言われることがあった。なぜ即座に分かるのだろうと思っていたが、ある時、左右の入り口の壁上方にそれぞれ偶数側、奇数側と書いてあるのに気付いた。真ん中を境に、ホールの左側は端に向かって1,3,5,・・・ 右側は2,4,6,・・・という具合に席番が振られていたのだ。
6 日曜日のコンサート Concert de dimanche matin
シャンゼリゼ劇場ではシーズン中(つまり9月から6月まで)の毎週日曜日の朝、11時からコンサートが行われる。この特徴は、1)全席自由で100フラン均一 2)ピアノや室内楽が殆ど 3)出演者は一流どころばかり 4)時間は大体1時間強というプログラムで休憩無し 5)ベートーヴェンのカルテットのシリーズなど連続企画物もある 均一料金で座席も自由のため早く行けば100フランでかなり良い席にも座れる。但し、通しで切符を買っている人を先に入れたりするので当日買う人は余り早くから並んでも少し遅れて入ることになり少しハンディあり。 到着したばかりでも時差ボケが無い午前中だし、日曜日はお店も休みで買い物もできないから、コンサートには最適。終わったら劇場近くのカフェでエッフェル塔を見ながらブランチでもとれば充実したパリの休日となる。
7 音楽祭 Festival
7、8月はコンサートはシーズン・オフ。オーケストラやオペラもお休みになる。そのかわり、パリを離れると各地で音楽祭のシーズン。残念ながら、エクサンプロヴァンスやボーヌ、ブザンソンといったメジャーな音楽祭には行く機会は無かった。