MORI Hiroshi's Floating Factory Model Railroad Workshop
A&B Report 2013年10月号


The garden lightened up by the morning sun, and Whicomb against the clear blue sky.

/☆Go Back☆/
 今回のレポートは、7月後半からの3カ月間です。もともと、梵天坂ガーデンでは、真夏の日中でも気温が30℃になることはないのですが、今年の夏は特に涼しく、25℃以上になったのも、数える程度だったように思います。しかし、天候には恵まれ、欠伸軽便鉄道梵天坂線(Akubi Lightweight Railway Bontenzaka Short Line)は、毎日休みなく運行しました。夏はこれで4回めになりますが、今までで一番、植物が元気で、地面もそして頭上もすっかり緑で覆われました。たぶん、葉の数は昨年の倍はあったでしょう。きっと秋の落葉掃除が大変です(もうすぐです)。また、草刈りを積極的に行うようになって、地面をカバーする緑も綺麗になりました。昨年にもまして芝生が綺麗でしたし、芝生ではないところも、一面に芝生が広がっているように見えました。こんな状況ですから、毎日、明るいうちは庭で遊んでいる、という生活です。工作室での作業があっても、窓の外の輝きが目に入ると、どうしても外に出たくなってしまうのです。

 車両関係では、7.25インチゲージのレールバスをもらい受け、これを5インチに改軌しました。そのほかでは、小さな線路工事が2例ありました。そして、今回のレポートのメインは、なんといっても、信号機の設置工事です。ほぼ2カ月半を要した大工事となりました。
 この信号機の工事のため、それ以外の工作はほとんどストップ。また、ライブスチームの運転も僅かに1回のみ。それくらい、工事が楽しかったということです。

 このA&Bレポートでは、記録的な意味で主なニュースのみを取り上げています。より詳細な情報は、毎日アップされている欠伸軽便のブログ(Construction in Waterloo)をご覧下さい。

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通常運行

 昨年は、ケヤキの葉が少なく、心配をしましたが、今年はどの樹も次々に新しい枝を伸ばし、鬱蒼とした森になりました。葉が多く、木漏れ日がほとんどないくらい、庭園はすっかり木蔭になりました。

 それでも、太陽の位置が変われば、ときどき日差しが地面に届きます。鉄道に乗ってゆっくりと走っていると、明るいところと暗いところのコントラストが鮮やかです。写真に収めたいシーンばかりですが、残念ながら、目で見ているものの美しさは、なかなか写真には捉えられません。上の写真は、前回のレポートで製作過程をご紹介した28号機ホイットコム、Marciaです。ノントラブルで毎日活躍中です。工業用機関車なのですが、何故か客車を引いています。これは、このシーズン、ゲストが多く、運客の需要があるからです。


 夏にはオープンディもあり、記念切符が今年も発行されました。上の写真は、今年のものと昨年のものを並べたところ。この切符は、欠伸軽便に乗車した方にもれなく差し上げています。切符があれば乗れるのではなく、乗れば切符がもらえる、という証明書の役割なのです。

 2枚めの写真には、実験中の風力発電機が写っています。今のところ、LEDを1つ点灯させることしかできません。実用にはほど遠い状況ですが、風が通り抜ける場所なので、眺めて楽しむ目的で設置しました。


 ゲストも多いシーズンなので、沢山の車両が出動しています。1枚めは、26号機のレールカー。2枚めは、1号機のワークディーゼル。3枚めは、3号機のグース。そして、4枚めは、9号機のプリムスです。


 プリムスが、芝生の近くを通ります。昨年の研究の成果が今年も表れ、芝は大変好調でした。芝が綺麗だと、庭の風景が引き締まって見えます。でも、メンテナンスは楽ではありません。手間をかけなければ、維持できないのです(だから、英国では芝生が綺麗なことが一つのステータスになっています)。2枚めの写真は、オープンディの朝の様子、プラットホームの前に待機する列車たち。

 8月のオープンディでは、ボールドウィンB1タンクにも火が入りました。3枚めの写真が、そのときのものです。新線を加えて長くなった路線を、ゲストを乗せた車両を引いて走りました。好調を維持しています。4枚めは、AB10とAB20の重連。まだまだ欠伸軽便の看板列車の座を守っている人気車両です。最近、両機関車にはデジタル電圧計が装備されました。

 8月のオープンディの様子 *MOVIE in YouTube*


 上の1枚めは、のちほどご紹介する29号機のレールバスです。梵天坂駅に、ワークディーゼルやレールカーとともに待機中のシーン。2枚めは、オープンディの夜に撮影されたもので、夜間運転をしたときのものです。ヘッドライトを点灯させて、真っ暗な森の中を走るのは、幻想的でスリリングです。動画に撮れないのが残念ですが、とにかくスペシャルな体験ができます。

 3枚めは、レールカー。昨年デビューしたのですが、これもゲストの皆さんが乗りたがる人気車両です。残念ながら、秋にはブロアカーになり、冬にはロータリィ除雪車になるため、レールカーとしての運行は、春と夏だけ、つまり1年の半分なのです。最後は、10号機のカメラボーイ。もともとは、レールバスと呼ばれることもありましたが、大きなレールバスが新しく加わったので、これからは、ショート・レールバスと呼ばれることになるでしょう。この写真は、信号機のテストをするため、ホイットコムの前をラジコン操縦で走らせているところです(信号機については後述)。

 レールカーの走行(フリーで庭園を周回) *MOVIE in YouTube*


レールバス改軌

 以前から、解体すると言っていた6号機ビッグワークを、ついに解体しました。10年まえに作ったものですが、5インチゲージの機関車としては、大変珍しい内部乗り込み型です。モデルニクスの動力ユニットを使用していて、もともと「仮に」作ってみた、という位置づけのものでした。したがって、ボディ(というか上回り)は、すべてネジで組み立てられていて、接着されていません。ですから、解体というよりは分解になります。2枚めの写真がモータを2機搭載した動力部。そして、3枚めの写真のように、今回これを化粧直しして別の車両に転用することになりました。つまり、そのために解体が実施されたのでした。


 実は、7.25インチのレールバスを譲り受けました。製作者はもちろんイギリス人。亡くなったおじいさんが製作したものとか。最初は、5インチだと聞いたので、もらうことにしたのですが、荷物が届いてみると、やけに大きい。開けてみたら、まさかの7.25インチでした。巨大なモータが車内中央に搭載されていました。ボディは木製で、大変頑丈な構造です。というのも、このバスの屋根に、人が直接座って運転をしたのです。両サイドには、脚をのせるためのステップも取り付けられるようになっていました。

 前に1軸、後ろに動力の1軸がある車両でしたが、フレームが通っているので、5インチにするとそのままでは車輪が当たります。となると、フレームを削るか、あるいは車輪径を小さくするしかありません。考えた末、後者を選択。実車でもよく見かけるようにボギィ車に改造することにしました。つまり、2軸(2-2-0)を4軸(4-4-0)にするわけです。上の1枚めが、車輪を外したところ。ガレージの空きスペースで横倒しになっています。近くにいるDB81やAB20と比べて下さい。DB81もAB20も5インチの車両としては大きいのですが、それよりもさらに大きいことがわかると思います。

 2枚めが、新しく取り付けた前の台車。これは、モデルニクスのトレーラ用のもので急カーブに対応したコンパクトな設計の製品。そして、後ろには、上述した6号機から転用した動力台車がつきます。3枚めがそれを取り付けた様子。車輪が小さくなったので、フレームよりも完全に下になりました。このほかの、コントロールユニット(24V仕様)とクラクションは、そのまま使用。さらに、エンジン音を電圧にシンクロして作り出すサウンドモジュール(TRAX CONTROLS社製)を搭載しました。


 前面に付けたカウキャッチャは、アメリカ製のアルミの鋳物です。それから、キッチン用の計量スプーンでヘッドライトを作りました(ダミィです)。前輪には、車輪に合わせてカバーがありますが、ボギィになったので、完全な飾り(名残)です。アメリカのレールバスやレールトラックでは、よく見られる光景です(そういえば、イギリスでは珍しい存在。アメリカはやはり線路状況が悪いためか、ボギィにしたがるのでしょうか)。2枚めの写真は運転席に乗ったホームズ君。ここは、ブリティッシュです。

 運転をしてみると、ボギィにしたのは大正解で、線路状況の悪い梵天坂線にぴったりです。滑らかに走りますし、運転していて楽しい車両になりました。正式に29号機となり、A&Bのレタリングもサイドに。


 その後、屋根の上に荷物を載せられるようにしました。ただ、屋根に登るための梯子がまだありませんので、今のところ使えません。駅に置かれている梯子を利用するのでしょう(想像)。もちろん、もともとはイギリスの車両のスケール機です。カウキャッチャやヘッドライトは、ややアメリカンかなと思いましたが、運転しているときは後ろ姿しか見えませんので、充分にブリティッシュです。エンジンサウンドも気に入っています。クラクションも程良い大きさ(トンネルの中で鳴らしたくなります)。とにかく、元が7.25インチですから、とても大きいのが一番の特徴。レールカーもホイットコムもそうですが、このところ欠伸軽便の車両はどれも大きめですね。

 レールバスの運転(エンジンサウンドあり) *MOVIE in YouTube*


ロープウェイ

 トンネルの山の上には、ストラクチャの工場がありますが、それだけではやや寂しいので、ロープウェイを設置しました。これは、LGBの既製品です。こんなこともあろうかと、10年ほどまえに中古で購入してあったものです(そんなものばかりです)。ロープウェイといえば、山の麓から山を上るために作られるのが普通ですが、ここでは、山の頂上から、隣の樹へロープを張りました。上の1枚めが、山側のベースで、モータでプーリィを回す仕組みです。そして、2枚めが樹の側。ここはただプーリィが固定されているだけです。3枚めは、バッテリィを入れた工場の屋根を外したところ。このバッテリィでモータを動かすと、2機のロープウェイが動きます。自動ではなく、端まで行ったら、手動で逆転します。ゲストに見せびらかすためだけにあるので、それで充分です。


 いつも2機が宙づりになっているわけです。最初は、ロープに負担がかからないように上下の終点位置に停めていたのですが、下にある車両が、雨のときに泥跳ねで汚れるので、中央にしました。ロープはナイロン製です。今のところ緩くなるようなこともありません。LGBですから、屋外用にデザインされているはずです。

 山の上で作業をしていると、助役が遊んでもらえると思って近寄ってきます。なお、樹の二股のところに渡した板が写っていますが、これがないと、樹側のプーリィ支点を設置できませんでした。人間が渡るために橋がかかっているのです(途中に橋脚も設置)。


線路工事
 前回のレポートで大きな線路工事について書きました。あれに比べると、これらは小さな工事。いずれも1日で完了し、すぐに本線が復旧しています。


 まず、ヤードの本線の勾配を緩和するための工事。大木の根元付近が少し高かったのです。ここを数cm掘り下げました。ポイント2機が関係するので、取外しと取付けが、けっこう大変でした。


 それから、こちらは、梵天坂駅の手前です。長い直線部の途中に、僅かにカーブが1箇所あるため、ここで急な加速度を体感します。何人かの人が、「あそこでクッとなるね」と言ったこともあって、直した方が良いなと思っていたのです。それで、半径8mという緩やかなカーブ線路を1本だけ購入して、昨年から計画をしていました。雪があるときにだいたいの測量をして、その後長く、そのカーブ線路は雪の下で凍っていました。

 今回、ここに信号機を設置することになり、線路の位置を変更するなら今のうち、ということになったわけです。上の1枚めの写真が、既設線路の上に、新しい線路を置いたところです。旧線路は土に埋もれています。そして、2枚めが工事終了のもの。レンガが置いてあるところに信号機が立ちます。ちなみに、室内にあったクリスマスツリーが、この夏にここに植えられました。冬を越せるでしょうか。


小さい機関車たち

 これは珍しいモデルだと思います。アメリカには、コミカルな模型のニーズがあるようで、プラモデルなどでも50年以上まえから各種ありましたし、また、ホットウィールなどのおもちゃの文化もあります。こういったものにデザイナのセンスを見出す土壌があるようです。写真のモデルは、「A.W.N.U.T.S!」という雑誌の企画で作られたカスタムモデル。この雑誌は、Gゲージで、このようなとんでもないデザインの車両を作ろうという趣旨のものでした。機関車も貨車(?)も、非常に頑丈に作られた金属製(たぶんブラス)で、ハンドペイントでこってりと塗られています。


 機関車が一番普通だと思います。そのほかのものは、望遠鏡を載せていたり、屋根に飛行機を載せていたりしまます。客車は、ガーデンのガゼボのようです。緑の貨車は、ダイナマイトが爆発したあとを表現していて、まだくすぶっているのか、赤々と光るように、LEDと電池が内臓されています。滅多に出てきませんが、オークションに登場すると、プレミアがついて値が上がります。ファンがいるということでしょう。走らせて眺めていると、鉄道模型に限らず、そもそも模型というのは、実物を縮尺するだけの機能ではないし、本質的には楽しむためのアイテム、つまり「おもちゃ」なのだ、という感覚を確かめられます。


 ドイツのライブスチームのメーカで有名なレグナ(Regner)の製品ですが、これはライブではありません。またボディもレジン製です。変わっているのは、Gスケールなのに30mmゲージだということ。このゲージは、ヨーロッパではときどき見かけます。どうして32mmにしないのか、という微妙な数値です。現に、この機関車は、32mmゲージの線路で走らせることができます(ポイントは通過できません)。貨車もあるのですが、そちらは車輪が薄いために脱線してしまいます。気に入っているのは、1枚めの写真の凸型です。3枚めのSLは、ドゥコービルのドイツ版のようなデザインです。足回りは大変良くできています。ちなみに、立っているフィギュアは、イギリスの16mmスケール(19分の1)の定番ビジィ・ボディーズです。このスケールよりはやや小さいようです。25分の1くらいでしょうか。20分の1で、60cmゲージを縮小しているのか、25分の1で、75cmゲージを縮小しているのか、どちらかだと思います。


ガーラット

 アキュクラフト(Accucraft)のガーラット(Garratt)です。実機は、イギリス製ですが、アフリカで活躍したのち、現在はイギリスに里帰りしています。NG16、あるいはNGG16と呼ばれている機種のモデルです。モデルは7、8年ほどまえに発売されたのですが、あっという間に市場から消えてしまい、中古品を長く探していました。中古でも発売時よりも高くなっているのを見かけます。ようやく入手できました。今年購入した中では一番の出物です。

 蒸気機関車を大型にすると、ロッドで伝動する動輪が並ぶわけですから、カーブが曲がれなくなります。そこで、急カーブに対応するために、機関車を曲げれば良い、という発想が生まれました。イギリスでは、このガーラットや、フェアリィなどが有名です。ちなみに、アメリカではマレーとか、ギアードロコのシェイなどが沢山作られました。このNG16は、そんな大型のガーラットなのに、ナローの機関車です。ですから、大きく見えても、実物は小さいのです。それでも軸配置は、2-6-2が前後にダブルであります。つまり、プレーリィが重連になっているようなものです。

 16mmスケールで、45mmゲージ(32mmも可)、ガス焚き。3枚めの写真にキャブ内が写っていますが、大きなハンドルは、前後のバルブギアを切り換える逆転機です。機構的には、軸動ポンプもなく、いたってシンプル。しかし、ボイラが大きいこともあって長時間走ります(ガスバーナの入る管は2本)。ディテールも塗装も素晴らしく、また走らせても眺めているだけでも楽しい車両です。動画を撮るときには、45mmゲージのイギリス型でありったけの客車を連結しました。力も充分です。唯一の欠点は、これを線路の上にのせるまでが一苦労だということ。

 Accucraft Garratt NG16の走行 *MOVIE in YouTube*


アーケードと柵

 鉄道には関係がありませんが、かつての弁天ヶ丘線のときに、レンガサークルの入口に立っていた薔薇のアーケードをわざわざ運んできたのです。といっても、自分でしたわけではありません。弁天ヶ丘線のときにお世話になった庭師さんにお願いして基礎を掘り出してもらい、運送屋さんが運んで、こちらでもプロの建設屋さんに依頼して基礎を作ってもらいました。そのあと、近くの線路沿いに立っていた白い柵を青く塗り直し、アーケードに繋がるように立てました(これは自分でやりました)。9月に立てたので、まだ薔薇はありません。それは来年の春からです。


信号システム大工事
 信号機のシステムを構築することは、10年もまえからあれこれ考えていました。やりたいと思ったきっかけは、庭園鉄道の草分けといえる大名鉄道ガリバー線の素晴らしい自動制御のシステムを見てきたからです。あそこまではできないものの、なんとか全線にわたって信号機を設置し、複数の車両の運行を制御できないものか、と考えていました。弁天ヶ丘線では、各種のセンサを試しました。信号機も幾つか作りました。でも、センサは室内だけの実験でしたし、信号機もダミィとしてしか立てられませんでした。

 今回、急に信号機システムを作る決心をしたのは、8月のオープンディに向けて、1機の信号機を稼働させたからでした。この1機は、2009年のJAMに展示したものです。サーボで稼働する初めての腕木信号機でした。また、センサについても、赤外線で対象までの距離に反応するタイプがキットで発売されたので、これを試して良い感触を得ていました。さらに、新線が完成し、初めて一般の方に運転をしてもらう関係から、平面交差(クロッシング)のところで衝突事故がないように、ここに自動信号を設置しよう、と考えたわけです。こうした条件が重なり、急遽、センサを組み、実験的に腕木信号機をオープディで稼働させてみたのです。

 3日間連続で開催された夏のオープンディで、この信号機は安定した働きを見せました。一方の区間に車両が入ると、他方の路線に立った信号が赤になり、その車両が区間を抜けると青に戻ります。つまり、1機の信号機を2機のセンサで作動させます。この3日間の試験が好結果だったので、これを全線に構築しよう、と決断をしたのです。しかし、そのためには、信号機もセンサも、同じものを量産しなければなりません。電線もできれば地面に埋めてすっきりさせたい。そうなると、工作も工事も大変な労力になります。そういえば、弁天ヶ丘線のときもそういった試算をして、資金も労力もかかって大変だな、と諦めていたことを思い出しました。まして、梵天坂線はその何倍も規模が大きいのです。

 途中で息切れしたら、また先延ばしすれば良い、と考えて、とにかく着手することにしました。結果としては、2カ月半かかりましたが、なんとか、9機の信号機、10機のセンサを設置するまでに至りました。電気機関車を1機作るよりも大変でしたが、ライブスチームほどではありません。電子工作あり、金属工作あり、土木工事あり、というなかなかバランスの良い工作なので厭きることもなく、想像していたよりもずっと楽しい体験をすることができました。


 作った順番ではなく、作ったものの種類順に説明しましょう。まずは、2燈式信号機。ライトが点灯するだけで、構造は簡単です。前面のパネルは鉄板、庇(ルーバ)はアルミで作りました。ランプはLEDで、反射板はボール紙にアルミテープを貼って製作。リレーを2機装備していて、一方の線が一度でも接地されると赤を点灯し続け、もう一方が一度でも接地されると青に戻る回路です。つまり、信号機には、電源の2本のほか、赤と青のスタート信号を受ける2本のコードがあり、合計4本がつながっています。

 すべて屋外に設置されるので、当然ながら防水処理をしなければなりません。といってもバスコークを塗っておくだけです。たぶん、大丈夫だと思います。


 腕木信号は、腕を動かすためにラジコンのサーボを使います。このサーボをコントロールするための回路も必要です。工作としては、メガネの部分を作るのが多少面倒なだけ(1枚めの写真)。メカボックスの中に、サーボとコントローラ(キット)が入ります。上の2枚めの写真は、右が下になります。サーボからのロッドは下へ出て、アームを介して、上の腕木を動かします。また、メガネの後ろにあるライトもLEDです。これは常時点灯したまま。赤のときは腕(羽根)が上がり、青になると腕を下げます。そのとき、ライトの前にメガネの赤と青が来るようになっているのです。電燈式に比べて、遠くから、あるいは逆方向からでも、視認できる長所があります。

 4枚めの写真の右に立っているのが5年まえに作った1号機で、今年のオープンディで試験をしたときのもの。そして、左が量産型で、今回の工事では2機を製作しました。つまり、腕木信号機は合計3機(2燈式は合計6機)になりました。


 次はセンサです。赤外線の接近センサと呼ばれているキットを組みました。合計10機です。部品数の多い回路なので、1機を組むのにも1日がかりです。2機か3機を同時に組みました。これをタッパの中に入れます。2枚めの写真で、タッパの上にコネクタがありますが、これは他のセンサと接続をするためのものです。

 オープンディのときは、タッパをただ線路脇の台の上に置いただけでしたが、恒久的に設置するものとして、センサボックスを設計。上の3枚めの写真がそれです。これは、蓋を開けて中のセンサが見えるようにした状態。通常は板をネジ留めして、雨に当たらないようにします。4枚めの写真が完成したところです。基礎部はコンクリート沓石。地面から出ているチューブの中を、ほかのセンサへのケーブルが通ります。このチューブを埋める工事が大変でした。


 センサからセンサへのケーブルを地面に置いておくわけにはいきません。電信柱を立てて電線を張るのもみっともないでしょう。そこで、地面に長いチューブを埋めて、その中にケーブルを通すようにしました。上の写真は、その埋設工事をしているところです。

 地面から10cmの深さにしました。ただ掘って、埋めるだけですが、石もあれば樹の根もあるわけですから、簡単ではありません。まして総延長180mもあるのです。さらに、芝生があるところ、大事な苔が生えている地帯もあって、そこでは地面をカットし、植物が元どおりになるように注意をして施工しました。


 やはり、一気に作るのは無理だ、と途中で計画変更。まずは前期工事で半分を稼働させることにしました。これが9月末まで。そして、残りの後期工事を10月に行うことにしました。

 最も心配されたのは、長い距離を細いケーブルでつなぐわけですから、リレーを確実に作動させられるか、電圧が下がらないか、ということ。計算上は可能でも、「やってみないとわからない」部分が多いのです。しかも、試験を重ねるうちに、回路に不備があることが判明し、幾度も回路を修正し、そのたびに作り直しながら進めました。当初考えていなかったようなケースがある、というようなことが途中でわかってくるからです。

 埋設したチューブにケーブルを通し、センサボックスと接続します。一番端にあるセンサボックスがガレージの前なので、ここへ12Vの電源を供給します。これで、全部のセンサボックスに電圧がかかるはずです。距離が長いので電圧降下はありますが、それもいちおう計算済みです。また、正式にはガレージではなく、梵天坂駅舎に電源を置く計画です。この位置が、信号機システムの中央位置に近いからです。


 どのようなシステムになっているかをご説明しましょう。メインラインを9分割し、それぞれの区間の入口に信号機が立ちます。ほぼ同じ位置にセンサもあります。たとえば、7番センサが車両に反応すれば、7番信号機が赤になり、後続の車両の進入を止めます。そして、8番センサが反応したとき、7番信号機は青に戻ります。つまり、9分割した区間に1台の車両しかいない状況を維持することによって、車両が追突する危険を防ぐ仕組みです。また、平面交差がある区間では、これとは独立して、危険区域に車両がいる場合に、他方から近づく車両を止めることになります。

 同じ手法で、踏切警報機(あるいは遮断機)も設置できます。1つのセンサで、多数の信号機、警報機を作動させることができるので、一度設置すれば、以後は応用が利きます。より沢山の車両を走らせたい場合には、9分割をさらに増やして区間を細かく分け、信号機を増やせば良いことになります。こういった将来の増設にも対応できるような、汎用性、共通性のある回路にしたつもりです。

 現在、まだ完全に調整ができていませんが、ほぼ目論みどおりの作動をするところまでは漕ぎ着けました。作るのは面白いのですが、実際には、一人で走っても、信号は青ばかりで面白くありません。試験では、ラジコンで走るカメラボーイを先行させ、後ろから信号の動作を確認していきました。それから、今後、雨、風、雪、日射などにどれくらい耐えられるかという耐久性に関しても興味のあるところです。きっとなにか思ってもみない問題が発覚し、それを修正し、乗り越えていくことになるでしょう。

 そもそも、こんな田舎の軽便鉄道に信号機など必要なのか、という声はあるはずです。そのとおり、単線をいつも1台だけしか走っていないのです。踏切もありませんし、とにかく車両がのろいので、事故もありません。そんな話をしたら、どうしてこんなところに鉄道が必要なのだ、という疑問に行き着くわけですね。さて、どうしてなのでしょう?


駅長と助役

 駅長と助役は、ますます仲良しです。雄どうしなのに珍しいと思いますが、やはり血のつながった兄弟だということが大きいのでしょう。駅長は、助役が来てからとても活発になりました。散歩も先導しますし、水遊びも助役に教えようとしました(これは助役には理解されなかったようですが)。助役は、常に駅長を気にしていて、駅長がいないと呼びにいきます。片方が吠えるともう片方も同調します。オヤツをもらうときや、足を拭いてもらうときは、一方はじっと順番を待っています。食べ物を取り合うようなことも、順番を争うようなことも、まったくありません。シェルティという犬種が、もともとおっとりして大人しいためかもしれません。

 晴れた日の散歩 *MOVIE in YouTube*
 雨の日の散歩 *MOVIE in YouTube*


 上の1枚めと2枚めは、新しいレールバスの屋根の上の荷台に乗せてもらって撮った記念写真。自力で上がったり下りたりはできません。3枚めと4枚めは、いずれもエプロンをしています。これは人間の赤ちゃん用のものですが、食事をするときに胸の毛が汚れないように毎回していて、それを外し忘れている、というだけです。

 8年まえの駅長 *MOVIE in YouTube*
 同じ日の夜 *MOVIE in YouTube*


最高のシーズンを終えて

 とにかく涼しい(涼しすぎる)夏でした。既に薪ストーブに火を入れていますが、意外にも紅葉がまだです。来週くらいに一気に色が変わりそうですが、その写真は次のレポートになります。

 次回の「A&Bレポート」は2014年の1月です。もう、すべてが凍りついていることでしょう。

/☆Go Back☆/