MORI Hiroshi's Floating Factory Gyro Monorail Workshop
ジャイロモノレール資料館(5号館)


The sketch of Akubi L.R. gyro monorail in 2009


★ジャイロモノレール関連の資料を集めました。未整理の状態です。少しずつ加筆していくつもりです。
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ジャイロモノレールのおもちゃ

 1912年頃に、ドイツのレーマン社が発売したおもちゃで、箱には、Gyro Mono Railway Carとある。実物は、下の写真の左にあるブリキ製。車輪が1つしかなく、左右はもちろん、前後(ピッチング方向)にも揺れを許す、フリージャイロ(つまり独楽)。動力はゼンマイで、ジャイロと同時に車輪も駆動する仕掛け。

 ボディのデザインは、明らかにBrennanが製作した実機をモデルにしている。


 右に2つ見えているのは、同じくレーマン社のブリキのおもちゃで、こちらは1912年にパテントが取られている。いずれもアメリカのオークションで入手したもの(1914年からアメリカで販売された)。車輪は前後に2輪だが、レールの上を走るのではなく、床の上を走行するGyro Carで、弾み車が動力。

 現在、これらのおもちゃで、機能が保たれているものは数少なく、オークションでも高価となる(10万円以上)。


 Gyro-Cycle Topと名づけられたおもちゃ(箱の手前に置かれたものが実物)。日本では、タイガー商会(名古屋のメーカで、地球ゴマを製造販売)がほとんど同じものを「競馬ゴマ」として販売していた(2015年廃業)。





バランシングシステムのアイデア

 ジャイロモノレールで姿勢制御を行うためには、ジンバルに加力するサーボ機構(バランシングシステム)が必要となる。しかも、そのスイッチングを、ジンバルの動きによって行う。左のスケッチは、その方法をいろいろ考えているときのもの。

 逆転スイッチでモータを駆動するだけならば簡単であるが、加力しないときには、ジンバルの動きに抵抗しないことが重要な条件となる。この点で、ギア比が高いサーボモータは適さない。





ジャイロモノレールのエスキス

  以下、ジャイロモノレールの模型を製作する段階で描いたスケッチを幾つか紹介。正確な図面というものを描いたことはなく、だいたい、この程度のラフスケッチで製作に入り、あとは作りながら寸法を決めていくことが多い。このページのトップにある図も同様。

 図の左は、ツインジャイロのギアリンケージを示している。右上は、動力台車の機構。右下は、全体のレイアウト。これは、ウェイトを左右に動かすシステムを想定していて、試作6号機くらいの段階のもの。


 ツインジャイロを搭載した六角形のシャーシをデザインしている。Brennanのモデルに似せたものだが、このとおりでは結局製作しなかった。中段の立面図にあるとおり、この時点でもまだ、ウェイトシフト法を採用しようと考えていた。

 下の図は、ジャイロの構造。ホイールを独立して支持し、モータをサイドに出すか、あるいは、上部に設置してプーリィで伝動するか、を考えているところ。


 試作9号機にほぼこのままで採用されたデザイン(ジャイロのホイールの支持方法は異なる)。ツインジャイロで、上部にギアのリンケージがあり、左右対称の歳差運動をする。

 ホイールの支持を独立させ、モータとは図のように(スプリングカップラなどで)ジョイントするのが理想的だが、それではスペースを取るため、9号機は大きなモータにホイールを突き刺しただけのシンプルな機構を採用した(つまり、モータのベアリングでホイールを支える)。


 これは、試作10号機のスケッチ。ほぼこのとおりに製作した。垂直軸(タンデム配置)ツインジャイロで、摩擦を得るスリットが下部にある。



 11号機の初期のスケッチ。垂直軸(並列配置)ツインジャイロはこのとおり実現しているが、ジンバルのリンケージは、当初ワイヤとプーリィによるものを考えていた。のちに、右端に描かれているようにギアによるリンケージを採用。

 ジンバルに加力するサーボは、ツインジャイロの左にあって、常に回転するモータの軸に、スリットの上下面いずれかを当てる方式を考えていた(軸摩擦方式を、ジャイロのホイールではなく、独立したモータで行う方式)。これは、実現しなかった。右下の断面図も、その摩擦部の機構を示したもの。





動力台車のエスキス

 ジャイロや姿勢制御機構に比べると、つい後回しになるのが、走行装置。これは、試作11号機の動力台車の図面で、実際に軸を旋盤で加工するために、寸法の詳細が描かれている(珍しい)図面。

 ちなみに、ここまでのスケッチでは赤いサインペンで描かれたものが多い。手近に、赤いペンしかないことが多いためである。





ジャイロモノレール製作記事

 アメリカで1919年に発表された記事。オークションで手に入れたもので、もともとの出展は不明。綱渡りができるジャイロモノレール模型の作り方が解説されている。

 青いのはコピィの表紙で、上は実物の写真、下はジャイロの機構を横と前から描いたもの。ジャイロの軸が、上部でスリットの中に突き出ている。


 その詳細図。上は、ジャイロを上から見たところ。スリットは、図のように、左右で少しずれている。これは、ホイールが反時計方向に回転している場合であり、軸がスリットの左へ行けば、スリットの下と接触し、左へ引っ張る加力となるし、また軸がスリットの右へ行けば、逆に右へ引っ張るようになる機構。

 下の図が、モータとホイール、およびジンバル。Precession forkとあるのがスリット。ホイールはジンバルで支持され、モータは下部にぶら下がっている。歳差の中心(Axis of precession)は、ホイールより下にあって、モータを含めたジンバル全体の重心が上になるようにする。


 これが、車両全体の図。

 左にジャイロがあり、右に走行用モータがある。

 面白い点は、バッテリィを搭載していないこと。当時は電池が重いから、車両に載せることはできなかった。そこで、下のワイヤと、もう一本上部に架線を通し、これに接触させて集電する仕組みとなっている。そのワイヤがあるなら、ジャイロがなくても倒れないのではないか、という疑問は残る。





垂直シングルジャイロが、ジャイロ回転と同方向のカーブが苦手な理由

 シングルジャイロでは、カーブを走行することは難しい。最も可能性がある垂直軸回転のジャイロでも、ジャイロが傾くことによって、不合理が生じる。結果として、ジャイロの回転と同方向へのカーブが苦手となる(逆のカーブでは、直進よりもむしろ安定性が増す)。

 何故、このような現象が起こるのかを説明したメモ(汚い図と文字をご容赦下さい)。

 上から見て左回転するシングルジャイロを持った車両が、左へカーブしようとしている。するとカーブの外側へ遠心力が作用する。このため、ジャイロ(A)が下がろうとし、ジャイロ効果で90°ずれた(B)が下がる(ジャイロのジンバルが前に傾く)。

 ジャイロが前傾した状態でカーブを進むと、力の成分として(C)を下げようとすることになり、ジャイロ効果で90°ずれた(D)が下がる。

 これは、前傾していたジャイロを元に戻そうとする力が作用するのと同じである。ジャイロが傾いたとき、ジャイロをさらに倒す方向に作用させることが安定性を得る方法であるが、これではまったく逆となり、すなわち、車両は不安定になる(外側へ転倒することになる)。

 同じジャイロモノレールが、今度は逆に右へカーブしようとしている。

 遠心力が働き、(C)が下がろうとするため、ジャイロ効果でジンバルは(D)が下がる。つまり、後方へジャイロが傾く。

 ジャイロが後方へ傾いた状態でさらにカーブを進むと、車両の回転成分から、(C)を下げる力が働き、結果として(D)が下がる。

 このため、後方へ傾いたジャイロを、さらに後方へ傾ける力が作用し、これはバランシング・サーボが加力するのと同じ働きをする。これにより、車両は、カーブの内側へ傾き、カーブを安定して通り抜けることができる。

 このような、左右の非対称性を避けるために、ツインジャイロが開発された。シングルジャイロに、補正を行って問題を解決しようと試みた実例もあったが、結果的には失敗している。シングルジャイロのこの不安定性が、ジャイロモノレールの一般的な欠点だと誤解され、計画が取り消された例が過去にカナダであった。




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