Fate For Breakfast (1979)

邦題『フェイト・フォー・ブレックファースト』

日本盤:生産中止 (Sony Records SRCS 6236 1991年9月再発 1748円)
US盤:Columbia Records

  1. In A Little While (I'll Be On My Way)
  2. Since I Don't Have You
  3. And I Know
  4. Sail On A Rainbow
  5. Miss You Nights
  6. Bright Eyes *
  7. Finally Found A Reason
  8. Beyond The Tears
  9. Oh How Happy
  10. When Someone Doesn't Want You
  11. Take Me Away
  1. イン・ア・リトル・ホワイル
  2. シンス・アイ・ドント・ハヴ・ユー
  3. アンド・アイ・ノウ
  4. セイル・オン・ア・レインボウ
  5. ミス・ユー・ナイツ
  6. ブライト・アイズ
  7. ファイナリー・ファウンド・ア・リーズン
  8. ビヨンド・ザ・ティアーズ
  9. オー・ハウ・ハッピー
  10. ホエン・サムワン・ダズント・ワント・ユー
  11. テイク・ミー・アウェイ
*6) "Bright Eyes"は、オリジナルUSリリースには含まれていませんでした。

ささめごと

アルバム"Fate For Breakfast"

Artのソロ作品4枚目。これまでとは少し違ったボーカル・スタイルで、それが評価の分かれるところとなっています。「いまいち」と言う方もいれば、「これが一番おきにいり」という方も。リッチなテイストのボーカルをふんだんに使った、面白いアルバムに仕上がっていると思います。

プロデューサーは、Mike Batt (マイク・バット)プロデュースの"Bright Eyes"を除き、Louie Shelton (ルイ・シェルトン)です。

Louie Shelton について、Musty Dusty さんから以下の情報を頂きました。Louie Shelton は、Monkees (モンキーズ) のデビュー当時のレコーディングでギタリストをつとめており、また、ソングライター・チーム、トミー・ボイス&ボビー・ハートのボビーのバンのメンバーでした。彼が有名なのは、シールズ&クロフトのプロデューサーとしてで、Art もそのポップな音作りも気に入って彼を採用したのでは。Louie Shelton は、最近でもジャズ・ギタリストとしてアルバムを発売しているそうです。

2 "Since I Don't Have You"と10 "When Someone Doesn't Want You"のみ、別日程で録音されたようです。使用したスタジオやミュージシャンが異なります。

このアルバムは、残念なことに、日本盤は生産中止となってしまいました。US、ヨーロッパ盤は生産されていますが・・・。

チャート
1979年に発売され、アメリカでは67位、イギリスでは2位(ソロ・アルバムでは、現在までで最高の順位)まで昇りました。
シングル・カット
*"In A Little While (I'll Be On My Way)"
*"Since I Don't Have You "(アメリカ53位、イギリス38位)
*"Bright Eyes"("I Only Have Eyes For You"に続くイギリス1位ナンバー。)
ゲスト・ミュージシャン
豪華です。ピアノ:Larry Knechtel (ラリー・ネクテル)、 エレクトリック・ピアノ:Richard Tee (リチャード・ティー)、 サクスフォーン:Michael Brecker (マイケル・ブレッカー)、 ボーカル:Stephen Bishop (スティーヴン・ビショップ), Leah Kunkel (リア・カンケル) などなど。
ジャケット
このジャケットは注目です。アルバム・タイトルの通り、朝食のシーンなんですが、LP盤はなんと6種類ものちょっとずつ違うバージョンがありました。

*横を向いている---現在のUS盤CD
*指をなめている---現在の日本盤CD
*正面を向いて、頬づえをついている
*正面を向いて、ワイングラスでオレンジジュースを飲んでいる
*斜め横を向いて、マグカップを持っている(なぜかぶれています)
*カメラ目線でクロワッサンにバターを塗っている

お好きなジャケットのをどうぞ、ということで、とてもおしゃれですね(^^)。

裏ジャケットは共通です。鳥肉を食べてるんですが、骨がタキシードの中に入ってるわ、シャツは汚れてるわ、Artieのいたずらっぽい表情が印象的です。

このジャケット撮影は、Artもたびたび出演した人気TV番組、Saturday Night Live の Edie Baskin (エディ・バスキン) によって79年2月に行われました。ちなみに、このジャケット撮影は、Art のニューヨークの自宅で行われたことが確認されました。彼は、現在も同じ家に住んでおり、キッチン・テーブルもタイルも同じです。違うのは、今では家族3人で朝食のテーブルを囲むということですかね^^。

あの、こんなことを言っていると、「びょーき」と言われそうなんですが^^;;、テーブルの上に、かわいいあひるの調味料セットがありますね。Still Water の Poem 76 に「30cm四方の青い池に泳ぐ2羽の黄色いあひる、僕のキッチンのテーブルにかれこれ8・9年も居座っている。1羽には砂糖が入っていて、もう一方はからっぽ、時間が音もなく僕ら3人の間をすり抜けて行く。(後略)」という一節があります。この詩は、1986年9月に書かれたものです。ということは、ジャケット撮影の7年半後。ということは、このジャケットに写っているあひるは、Arti e の家のキッチンにあるものではないでしょうか。撮影でこのあひるちゃん達にひとめぼれした Art がもらったか、自分の私物を撮影の小物に使ったのでは?と思うのですが。いえ、まあ、どうでもいいっていえば良いんですけど^^;。
タイトル
"Fate For Breakfast"と"Doubt For Dessert"。「朝食に悲運」「デザートに疑惑」。・・・消化に悪そうですね^^;。(Cheshireさんに教えて頂きました。)このタイトルにどのような意味が含まれているのかご存知の方、いらっしゃったらご一報を。単に、韻が楽しい言葉遊びだけなのかもしれませんが。
1. In A Little While (I'll Be On My Way) (Dennis Belfield)
一時期、Three Dog Night (スリー・ドッグ・ナイト:1969-) にベース・プレイヤーとして参加していた、スタジオ・ミュージシャン Dennis Belfield (デニス・ベルフィールド)の作品。Art 以外のミュージシャンはカバーしていないようですので、書き下ろしの曲でしょう。本人もベースで、この曲を含めて、アルバムの内7曲に参加しています。

Dennis Belfield はこのアルバムの2曲にボーカル参加している Alessi Brothers (アレッシー・ブラザーズ) の78年のアルバム Driftin' (A&M、LPのみ)、また、Stephen Bishop の80年のアルバム Red Cab To Manhattan(Warner Bro.) にもにもベースで参加しています。

2. Since I Don't Have You (Jimmy Beaumont, Janet Vogel, Wally Lester, Jackie Taylor, Joe Verscharen, Joe Rock, and Lenny Martin)
ペンシルヴァニア州出身の男性4人・女性1人のホワイト・ドゥー・ワップ・グループ、The Skyliners (ザ・スカイライナーズ) の1959年のヒット曲のカバー。The Skyliners のメンバーと、マネージャーの Joe Rock (ジョー・ロック)、Lenny Martin (レニー・マーティン) の共作です。オリジナル・バージョンは、Skyliners のベスト盤や、Doo-Wop のオムニバスなどで聞けます。映画『アメリカン・グラフィティー』(原題 American Graffiti )にも使われました。Art 以外にも、分かっているだけで120以上のカバー・バージョンがあります。

「僕には目的も計画もない 夢も希望もない 何も持っちゃいないんだ なぜって君がいないから」と歌うこの曲は、発売後の79年6月19日の恋人Laurie Birdの自殺のニュースと、人々の中でオーバーラップされ、イギリスでミドル・ヒットになりました。

up 'til now  にも、このバージョンが収録されています。

3. And I Know (words by Michael Sembello and David Batteau/ music by Michael Sembello)
Michael Sembello (マイケル・センベロ) と David Batteau (デイヴィッド・バトゥー) の共作。

他のカバーとしては、David Sanborn (デビッド・サンボーン)というアルト・サックス・プレイヤーの1981年のアルバム As We Speak (Warner Bros. 邦題は『ささやくシルエット』)に "Love Will Come Someday" というタイトルで収録されているそうです。作者の Michael Sembello もコーラスで参加しているとか。(情報提供:dsuga さん)

1954年、ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれのMichael Sembello は、70年代初頭に Stevie Wonder (スティーヴィー・ワンダー)のツアー・バンドに参加。自身も3枚のアルバムを発表し、Chaka Khan (チャカ・カーン)、Sergio Mendez and Brasil '77 (セルジオ・メンデス&ブラジリ '77) ら、多くのミュージシャンに曲を提供している売れっ子シンガー・ソングライターです。自身が歌ってるものとしては、93年のシングル"Maniac"が日本でもヒットしたことがあります。Art もボーカル参加した、Stephen Bishop の Bish (ABC 1978年)にもギターで参加しています。

1949年ニューヨーク生まれ、マサチューセッツ州ケンブリッジ育ちの David Batteau は、1973年に兄の Robin (ロビン) とデュオとしてアルバムBatteaux (CBS) を出してレコード・デビューするものの、この1枚だけで解散。David は、76年にソロ・アルバム Happy in Hallywood  (A&M) を出して、それ以後はソングライターとして活躍しています。Manhattan Transfer (マンハッタン・トランスファー)、James Taylor (ジェイムズ・テイラー) のツアー・バンドのボーカリストも勤めた、Valerie Carter (ヴァレリー・カーター)らに曲を提供しています。

バック・ボーカルに Billy (ビリー)と Bobby (ボビー)の一卵性双生児のデュオ、Alessi Brothers (アレッシー・ブラザーズ)と、おなじみの Leah Kunkel (リア・カンケル) が参加しています。

1954年ニューヨーク州ロングアイランド生まれのAlessi Brothers は、70年代から80年代にかけて、アメリカよりもイギリス、日本で人気があったデュオです。Hiro さんによると、「彼らのヴィブラートをかけない、抑揚のない細い声を多用する手法は Fate For Breakfast のヴォイス・プロダクションと通じるものがあります。このアルバムには Alessi の影響も或いはあるのかもしれませんね。Artie の他のアルバムではこういう声は聞かれないですし。」とのこと。確かに、雰囲気が、よく似ていますね。

ちなみに、Alessi Brothers の前述の78年のアルバム、 Driftin' のプロデューサーは、Fate For Breakfast と同じ Louie Shelton です。ドラムスのMichael Barid とベースの Dennis Belfield は、Fate For Breakfast の内、別録音の2と10を除く、7曲に参加しています。Driftin'Fate For Breakfast のメンバーの重なり、興味深いところですね。

残念ながら、Driftin' は、LPのみで廃盤となっているようです。Alessi Brothers をお聞きになりたい方は、1998年に日本のみで発売された、ポリドールの『デジタルリマスターベスト』が一番手に入りやすそうです。

4. Sail On A Rainbow (words and music by Stephen Bishop)
おなじみ Stephen Bishop (スティーヴン・ビショップ) の書き下ろしで、Art 以外のカバーはないようです。本人さえも歌っていません。Stephen は、このアルバムに、ギターとボーカルでも参加しています。
5. Miss You Nights (words and music by Dave Townsend)
作者の Dave Townsend (デイブ・タウンゼンド)は、"Shower Me With Your Love"、"The First Time"などのヒットを放っている、3人組のソフト R&B グループ、Surface (サーフィス)の一員で、その前は、The Isley Brothers のツアー・ギタリストでした。また、彼の父親は、50年代にヒット曲を生んだシンガー・ソングライター・プロデューサーの Ed Townsend (エド・タウンゼンド) です。Surface のトリオは、EMI Music のスタッフ・ライター・グループとして働いた後、80年代中ごろにレコード・デビューしました。

"Miss You Nights"は、Dave Townsend が Surface に加入する前の曲だと思われます。Cliff Richard (クリフ・リチャード) 1976年の I'm Nearly Famous (Rocket、LPのみ)に収録されているバージョンが一番最初にリリースされたもののようです。2000年に発売されたベスト盤、Cliff Richard '80 (EMI) で聞くことができます。

6. Bright Eyes (words and music by Mike Batt)
この曲は、1979年の、イギリスのアニメーション映画 Watership Down のためにかかれた曲で、作曲者のMike Batt (マイク・バット) は、あまり深刻でない、死をテーマとした曲を、とプロデューサーから頼まれ、Art をパフォーマーと想定してこの曲をつくりました。Mike は Art は歌うことを承諾しないだろう、と思いつつも、テープを Art に送りました。Art が、多くのソングライターから、大量に送られてくるテープの中から曲を取り上げることは少ないのですが、この曲だけは例外的に気に入り、結果としてイギリスNo.1ヒットが生まれました。(www.artgarfunkel.com より)

イギリスでのリリースにのみ含まれ、アメリカや日本でのオリジナル・リリースには入ってませんでしたが、90年代のCD再発時に、付け加えられました。また、アメリカでは、81年リリースの Scissors Cut に収録されました。

Watership Down のサウンド・トラックに収録されている"Bright Eyes"は、オーケストラがバックの別バージョンです。シングル・リリースは79年でしたが、レコーディング自体は76年に行われたそうです。

この曲は、アメリカではミドル・ヒットにとどまったのですが、イギリスでは、ナンバー1ヒットとなりました。170万枚の売上となり、6週間1位の座を占めました。また他にも6カ国でナンバー1ヒットを記録し、Art のソロ・シングルとしては最大のヒットとなりました。

Mike Batt と Art は、"Bright Eyes"をきっかけに、この後も、何度か一緒に仕事をすることとなります。

Mike Batt のセルフ・カバーは、彼のソロ・アルバム、Bright Eyes at the Railway Hotel  に収録されています。このアルバムは、www.mikebatt.com でのみ、購入できます。Mike によると、この曲は、死と死後の世界を描いたものだそうです。

また、2000年にイギリスで Watership Down は全26回のテレビシリーズとしてリメイクされました。音楽は全てMike Batt が担当し、"Bright Eyes"は、Art のバージョンではなく、Boyzone (ボーイゾーン)の Stephen Gately (スティーヴン・ゲイトリー)の新しいレコーディングが使われました。2000年に発売されたサントラには、新しい "Bright Eyes" と Artie の歌う "(When You're) Losing Your Way in the Rain" が収録されています。

7. Finally Found A Reason(words by Michael Sembello, David Batteau, Rick Bell, Craing Bickhard/ music by Michael Sembello)
3. "And I Know" の Michael Sembello (マイケル・センベロ) と David Batteau (デイヴィッド・バトゥー) にRick Bell (リック・ベル)、Craing Bickhard (クレイグ・ビッカード) が加わっての共作。Art 以外のカバーはありません。おそらく書き下ろしの曲でしょう。
8. Beyond The Tears (words by Bob Gundry, Jeffrey Comanor/ music by Bob Gundry)
Bob Gundry (ボブ・ガンドリー) と Jeffrey Comanor (ジェフリー・コマノー) が作詞、 Bob Gandry 作曲。Jeffrey Comano は、3枚のソロ・アルバム(3枚目は日本でのみCD化)を発表しています。最近では『真夜中のカウボーイ』のサントラやFifth Demention (フィフス・ディメンション)に曲を提供したり、映画 Phantom Of Paradise(邦題『』)にも出演しています(情報提供:Musty Dustyさん)。

70年代のテキサスのデュオ・グループ、England Dan & John Ford Coley (イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリー) にも取り上げられました。1978年のアルバム、Some Things Don't Come Easy (Big Tree, LP のみ。邦題『愛への旅立ち』) に収録されていたようです。このグループは、1970年に A&Mレコード から Louie Shelton のプロデュースでデビューしたそうですので、この曲はArtie に Louie Shelton が紹介したのかもしれません。

9. Oh How Happy (words and music by Charles Hatcher)
Charles Hathcer (チャールズ・ハッチャー) の作詞・作曲。Charles Hatcher が本名ですが、彼は Edwin Starr (エドウィン・スター)という名前で知られたシンガーです。セルフ・カバーがベスト盤の Motown Legends: War (Universal Special Products) などに入っています。

最初にヒットしたのは、1966年の Shades of Blue (シェイズ・オブ・ブルー) によるカバーで、全米12位になりました。ベスト盤の Golden Classics (Collectable Records) などに入っています。 2. "Since I Don't Have You" の Skyliners が78年のアルバム Skyliners (Tortoise、LPのみ)で、また70年の Third Album (Motown)で Jackson Five など、多くのミュージシャンがカバーしているスタンダード曲です。

10. When Someone Doesn't Want You (words and music by Jeffery Staton)
"Is This Love" の作者でもある、Jeffery Staton (ジェフェリー・ステイトン)の作品。滝上よう子さんのライナーによるとJeffery は、Stephen Bishop のバック・バンドのメンバーだったそうですが、このアルバムにも、次のアルバム Scissors Cut にもギターとボーカルで参加しています。他のカバーはないようです。
11. Take Me Away (words and music by Rance & Grant Gullickson)
Rance Gullickson (ランス・ガリクソン)と Grant Gullickson (グラント・ガリクソン)の作品。二人は兄弟で、バック・ボーカルのスタジオ・ミュージシャンだったようです・・・が、他にあんまり情報がありません(^^;)。他のカバーはないようです。


このアルバムに関しては、以下の皆様にご協力をいただきました。心より感謝いたします。
ひろみつさん、Hiro さん、ramses さん、千原さん、Fuku さん、dsuga さん、Musty Dustyさん、Cheshireさん、ありがとうございました。特に、ひろみつさんには多大なるご協力を頂きました。

引き続き、みなさまの情報をお待ちしております。

参考資料:Fate For Breakfast ライナー(湯川れい子、滝上よう子)、All Music GuideHappy In Hallywood (David Batteau/A&M) ライナー(長門芳郎 Yoshi Nagoto For Believe in Magic Inc.)、Russ & Julie's House Concertswww.mikebatt.com

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