堺市長による医療法第25条第1項の規定に基ずく立入検査の理由に付いての考察
荒木常男/2001.11.13

1.堺市長並びに堺市保健所長は、立入検査は理由が無くとも出来ると考えておられるようだが、それは間違っています。下記に記すように、必要性が存在することが要件になっています。
医療法第25条第1項「 必要があると認めるときは、****立ち入り、その清潔保持の状況、構造設備 若しくは診療録、助産録その他の帳簿書類を検査させることができる。」 
2.よって、堺市長並びに堺市保健所長が、歴史上初めて、すべての有床診療所の立入り検査を行なう為には、昨年までと異なりどの様な必要性を市長が認めたのか説明する必要が有ります。必要性も無いのに、順繰りに立入り検査を行なうのは、市長の職権乱用の疑いがあります。

3.この必要性に関して、各種の情報から考えられることは、筋弛緩剤の管理状況の検査の必要性です。
a. 2001.2.28.阿部知子議員が、厚生労働委員会で、仙台市の北陵クリニック筋弛緩剤事件に言及し、それに対し、宮島政府参考人は「その中で、立入検査を実施していないような都道府県につきましては、必要に応じて、その実施に努めるように指導しておるところでございます。」と返答し、更に阿部知子議員は「何度も申しあげましたが、事はやはり医療の監視機構が、特に住民に身近な保健所に課せられた役割であるということだと思います。」と発言しています。(別紙資料)

b.2001.10.25.荒木常男への大阪府医師会の松村氏からのFAX回答も下記のとおり同様でした。
「大阪府に照会いたしましたところ1.患者にとってより身近な診療所に対する立入検査がこれまで行われてこなかったこと、2.東北で起こった筋弛緩剤による事件を発端に、国から事件の再発防止に努めるよう通知が有ったことが背景となり、今回実施することになったとの返事でありました。」

c.厚生省の留意事項通知でも下記のように記載が有ります
「2.毒薬等の適正な保管管理について
毒薬・劇薬・向精神薬等の医薬品及び毒劇物の適正な保管管理については、近時の薬物等を使用した事件の多発に鑑み、これら毒薬等の保管管理が適正に行われていることを確認するとともに、その盗難防止等について一層の周知徹底を図る。」

4.しかしながら、仙台市北陵クリニック事件(准看護士による5名の患者、筋弛緩剤投与による、殺人並びに殺人未遂事件)は裁判において、弁護側は全て、でっち上げ事件、冤罪と冒頭陳述で主張して争っています。(別紙資料)筋弛緩剤の使用されてもいない患者の急変事件で、全国一斉に有床診療所の立入検査の実施とは早とちりではないでしょうか。また、毒薬は筋弛緩剤の他にもあり、有床診療所だけで使用されているわけではなく、今回の対象選別は法の基の平等に反しているのではないでしょうか。以上。戻る