まずは、定式幕についてのお話。


 
  歌舞伎座は、下手から黒、柿、萌黄、国立劇場は、黒、萌黄、柿、の順番。この違いご存知でした?

 これは、江戸三座(市村座、森田座、中村座)の名残とのこと。十八代中村勘三郎の襲名披露公演では、白、柿、黒の中村座の定式幕が使われてたそうでございます。







 いよいよ本題。

 上方歌舞伎と江戸歌舞伎を楽しく社会学的にも比べながらのお話。
例えば!現実には音のしない雪の情景を、太鼓の音で表す歌舞伎。その音の間隔が、江戸では早く、上方ではゆっくりなんですって。どん・どん・どん・に対して、どん・・どん・・どん・・といった具合。その理由はと申しますと、江戸の雪は「はらはらと降り続ける雪の情景」。上方の雪は「深々と降り積もる雪の情景」をイメージしているからなんです・・・。
なんだかとってもロマンチックでございます。そのお話を聞きながら三津五郎様の手元の扇子の動きを見ていると、本当に太鼓の音が聞こえてきて、降りしきる雪の景色、はたまたその中を粛々と歩く大星由良之助の姿さえも見えてくるようでございました。






 もう一つ、江戸では、13代目とか18代目とか・・何代も名前を襲名することが多いのだけれど、上方は2代、3代が多いんです。この理由もちょっと愉快です。上方は、今、上手で面白くなくてはだめ!へたなやつには襲名なんかさせません!しかしながら、江戸には応援して育てる文化がある。だから多少下手でも(もちろん謙遜)、○代目を襲名させて、ひいきにして、『 おう、○代目もなかなか上手になったじゃないか!』 と見守る風土があるとのこと。だから江戸ではどんどん襲名できる・・・と。









 そんなこんなのお話を聞いたあとは、文字蔵さんの三味線の登場です。




 舞台で『歩く』時、いろんな歩き方はあるのだけれど、三味線の音がはいりますとまた、数倍の風情がでて、何種類もの歩き方ができます、といいながら白い足袋ですすす〜〜っと。



本当だ・・・とうっとり感心。    

 





 
などなど、数々の所作をご披露くださりながら、われわれを圧倒し、あっという間に1時間半が過ぎました。



三津五郎さんは、最後にこんな風におっしゃっていました。

『 舞台に出てくるだけで、江戸の香りのする役者でいたい 』

 







 お話は、多岐にわたりとてもとてもここでお伝えすることはできません。

 ちょうど時を同じくして、天下の岩波書店より『坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ』を出版なさいました。奥深い歌舞伎の世界に、いざなってくださること間違いなしでございます。もちろん、武藤先生の江戸文化を踏まえた江戸時代の歌舞伎界のお話も興味深くございましたが、ついつい三津五郎様に意識が集中してしまいまして、このようなレポートになってしまいました。どうぞ、お許しくださいね。





 



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