カーテン越しに朝の柔らかな光りが差し込み、私の銀色の髪の毛が、きらきらと反射している。
光の妖精がくるくると踊っているみたいだ。
私は半分覚醒した頭で時計を見た。
あと30分は、この暖かいベッドの中で過すことが出来る。
ほんのちょっとのささやかな幸せに、私は微笑んだ。
シーツを首まで引っ張り、すっぽりと包まる。
朝が、ますます寒くなってきた。
裸で寝るには、そろそろ限界かもしれない。
いつまでたっても大きくならない胸を抱えた。
大きいほうがあの人も喜ぶと思うのだけれど。
こればかりは仕方がない。
視線を隣に戻すと、あたしの大切な人の顔が見える。
開きかけた口から、すーすーと小さな寝息が聞こる。
黒くてやわらかい髪の毛が、それにあわせて揺れている。
いつもと同じ。
あたしが先に目覚めて、彼が起きるまでじっと見ているの。
早起きだね、昨日は遅くまで起きていたから疲れていない?
って彼は言うけれど、朝のこの幸せをかみ締める為だったら睡眠不足なんかとんで行くわ。
それに疲れているのだったらあの人も同じ――。
私は枕にしていた彼の腕から離れ、シングルのベッドの上に肘を付いて、上半身を起こした。
じっと彼の顔を見つめる。
薄い眉。
高い鼻。
整った唇。
良く見るとやっぱり男の子なんだけれど、ちょっと見女の子に見えなくもない。
かわいらしい顔立ちしている。
コンプレックスだって言ってたけど、私は――好きよ。
人指し指で、唇に触れてみる。
やわらかい。
つつっとなぞってみる。
んって彼がやけに色っぽい声を出した。
昨日のことを思い出した。
彼の瞳が彷徨い、私を見つけた。
そして微笑んだ。
「――おはよ」
私は顔を赤くして視線をそらした。
まるで、いたずらがばれた子どもみたいに。
彼の腕が伸びてきて、私の髪の毛をやさしくなでる。
私はそれが気持ちよくて目を閉じた。
「そろそろ起きないと」
彼は時計を見て言った。
「イヤ」
私は反射的に答えた。
彼は私の顔をみる。
「でも、学校に遅れちゃうよ」
「――いい。遅れても」
拗ねているの、私。
困らせようと思って。
でも、あの人は全然困った風ではなかった。
「朝ご飯、食べられなくなっちゃうよ」
「――いらない」
「今日は、グリーンサラダにゆで卵を乗せて、ヨーグルトとコーヒーにしようと思うんだ。あ、紅茶が良かったかな?」
とたんにお腹がすいてきた。
現金なものだ。
私が見事彼の作戦に落ちたことを確認して、彼は微笑んだ。
私はちょっと悔しかったので、彼の上に乗った。
「レイ――重いよ」
「失礼よ。レディに向かって」
「ごめんごめん」
碇君は笑った。
私は彼の唇に人差し指を当てた。
そして、ゆっくりと顔を近づけ、自分の指にKISSをした。
ガラッ。
部屋の扉が開いた。
そこには金色の髪の女の子が立っていた。
両手を腰に当て、瞳の奥には怒りの炎が燃えていた。
「シンジ、いつまで寝ているのっ!
早くごはん作ってよ。もうお腹ぺっこぺこよ!」
「ごめんごめん、すぐに支度するよ」
と言って、碇君は裸のままベッドを抜け出した。
私はベッドにもぐりこんで、彼女に見えないように、舌を出した。
あとがき という言い訳
プレ一周年記念です。
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