Kenta's ... Nothing But Pop
..Reviews (Contemporary): 9/8/1997



Reviews   Music

Now Playing
Chopper One
(Restless)

 ウィーザーのオリジナル・メンバーだったジェイソン・クロッパーを中心に結成されたチョッパー・ワンのデビュー・アルバムだ。ジェイソンさんがギターとヴォーカル、奥さんのエイミーさんがベースとコーラス、そしてLAのロック・シーンじゃちったあならしたタイロン・リオさんがドラム……というトリオ編成。ご存じ、奇才プロデューサーのドン・フレミングと、パール・ジャムやティン・マシーンなども手がけてきたエンジニア、ティム・パーマーのバックアップを受けながら、キャッチーかつワイルドなギター・ロックを聞かせてくれる。

 ウィーザーにも通じる今ふう屈折ポップ・センスに、ちょっとお古いロックのエッジ感を加えた仕上がり。パワー・ポップばやりの昨今、かなりの注目株でしょう。

Watching The River Run
Jim Messina
(Platinum Entertainment/Demon)

 お久しぶりーっ。ジム・メッシーナのニュー・アルバムだ。コピーライト表示が去年になっているけど、去年出てたの? 知らなかったぁ。今回、今年になってからイギリスのデーモンから出た盤をゲットして、はじめて知りました。

 タイトル画像にも使った3歳の坊やに捧げられた1枚だとか。このところ、レコーディング・スタジオのオーナーとして表に出ない日々を送っていたようだけど、ついに再始動。とりあえずは主に過去のレパートリーをセルフ・カヴァーした本盤を作って。間もなくすべて新曲のニュー・アルバムにもとりかかるらしい。

 バッファロー・スプリングフィールド時代の「カインド・ウーマン」「チャイルズ・クレイム・トゥ・フェイム」というリッチー・フューレイ作品をはじめ、ポコ時代の「ユー・ベター・シンク・トゥワイス」「フォロー・ユア・ドリームズ」、ロギンス&メッシーナ時代の「ウォッチング・ザ・リヴァー・ラン」「ユア・ママ・ドント・ダンス」「ピース・オヴ・マインド」「リッスン・トゥ・ア・カントリー・ソング」など、すんごい選曲。一時フュージョン寄りになって、なんだかなぁ……って感じだったメッシーナさんだが、さすがに余計な邪念もなくなったか、今回はパキパキとごきげんなカントリー・ロック・ギターを聞かせつつ、円熟した歌声を披露している。

 懐メロっちゃ懐メロなんだけど。なんだかうれしい1枚だったな。

Lincoln
Lincoln
(Slash)

 素性は全然知らないのだけれど、ちょっと面白い4人組。たぶんデビュー盤なんだろうなぁ。全12曲中4曲をデヴィッド・カーンがプロデュース/ミックス、1曲をロジャー・グリーンウォルトがプロデュースしている。残りはすべての曲を書いている中心メンバー、クリストファー・テンプルが自らプロデュース。

 けっこうドラッグだの暴力だの、やばいテーマを扱いながらも、徹底的にシニカルで、遊び心もあって。テンプルさん、それなりの才人と見た。既成のロックの枠におさまらない音作りもいい。ニルス・ロフグレン、ジョン・ブライオン、アンディ・ニューマーク、レニー・カストロなども曲によってゲスト参加。バンドものではありますが、クリストファー・テンプルというシンガー・ソングライターの1枚としてとらえたほうがいい仕上がりかも。かなり気に入ってます。

Diamond And Debris
Cry Of Love
(Columbia)

 1993年にアルバム『ブラザー』でデビューしたクライ・オヴ・ラヴ。リード・シンガーが交替して、久々の新作が出た。

 基本サウンドはZ・Z・トップあたりにも通じる轟音リフ・ロックって感じだけど、実は曲作り/アレンジともにけっこう細かく作り込まれていたりして、面白い。かつてのグランド・ファンクとかジェームス・ギャングみたいなニュアンスかな。ソウルっぽくファンキーなニュアンスがどの曲にもまぶされていて、かっこいい。

 ダーティなサザン・ファンク・ハード・グルーヴってとこでしょうか。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムというまっすぐな編成もグー。なんだか、おぢさん、懐かしくなっちゃいましたよ。

24 Hours a Day
Bottle Rockets
(Atlantic)

 一連のオルタナ・カントリー系バンドの中では、いちばんCCRとか、あの辺の南部っぽいスワンプ風味を強く漂わせたボトル・ロケッツの新作。去年レコーディングされたものだが、アトランティックが1年寝かせていたらしい。近ごろのオルタナ・カントリーの盛り上がりによってようやく世に出た、というところか。

 男の失恋とか、酒とか、トラック・ドライヴィングとか、もう定番テーマの雨アラレ。そいつをごり押しロードハウス・ロックンロールに乗せてしゃがれ声で歌いまくるという、ごきげんな持ち味が発揮された仕上がりだ。そういうの好きじゃない人には耐えられないほど単調な1枚だろうなぁ。ぼくはそういうの好きだから、イケます。

Pink Machine
Reservoir
(Zero Hour)

 全曲インストのアルバムを出したかと思ったら、今度は全曲ポップな歌もので来た。かつて自らのバンド、スペース・ニードルを率いて活躍していたジャド・アーバーのユニット、レザヴォワのニュー・アルバムだ。

 基本的にはジャドらしい、インナーな宅録ポップなのだけれど。そこそこいい曲ぞろいだし、シンプルながら風景の見える音作りもさすがだし。あまり期待しないで接したぶん、なんか得した感じ。もともとドラマーとして様々なバンドをバックアップしてきたジャドだけに、全編を心地よいビート感が覆っている。この種の宅録系作品にありがちなべたっとした手触りがないのが、うれしいね。

Hint Of Mess
Andrew Dorff
(Work/Sony)

 ソニーのアーティスト・インフォ・ページに行ってみたんだけど、何者だか全然わかんなかった。

 ウィリー・ナイルと何曲か共作していたり、グレッグ・オールマンやパット・ブキャナンがバックアップしていたり……。気になるなぁ。でもって、音のほうは、ちょいと無骨なシンガー・ソングライターものって感じかな。レーベル・メイトのダン・バーンあたりと比べるとフォーク色が薄い。順調に成長していけば、ブルース・スプリングスティーンやジョン・メレンキャンプ……は無理か(笑)、うまく行けばサウスサイド・ジョニーとかウィリー・デヴィルみたいになれるかも。

Mom II/Music For Our Mother Ocean
Various Artists
(Surfdoc/Interscope)

 以前、Vol.1を紹介した“海を守れ”チャリティ・アルバムの第二弾。今回の参加アーティストは、ビーチ・ボーイズ、ディック・デイル、ジミー・バフェットといった昔ながらの海系アーティスト(笑)のほか、ブライアン・セッツァー・オーケストラ、カウンティング・クロウズ、ベン・ハーパー、ジュエル、マイティ・マイティ・ボストーンズ、サブライム、311などなど。

 前回はキーを無視した激走版「サーフィンUSA」を聞かせてくれたペニーワイズは今回「アイ・ゲット・アラウンド」を収録。これも強力だなぁ。気に入りました。で、本家のビーチ・ボーイズのほうは93年ロンドンでのライヴによる「サマー・イン・パラダイス」が入ってます。既発曲も多いけど、海を守るために買いましょうよ。




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