Find A Door
Pete Droge & The Sinners (American)
ピート・ドロージって読むのかな。以前、1枚個人名義でアルバムをリリースしていたような記憶があるけれど、今回はピート・ドロージ&ザ・シナーズというバンド名義でのフル・アルバム。プロデュースが、今をときめくブレンダン・オブライエンで。レーベルがアメリカン・レコーディングス。てことで、ダン・ベアードとかフリーホイーラーズとかの手触りを期待して買ってみたら。
ばっちりです。そのもの。ワウワウかましたスライド・ギターなどもフィーチャーしつつ、往年のサザン・ロック、スワンプ・ロック、フォーク・ロック、カントリー・ロックあたりの雰囲気をたたえた音作り。そいつを基調にちょっと甘酸っぱいメロディを乗せたり、一転してダークな歌詞を載せたり。なかなかやります。時にディランっぽかったり、NRBQぽかったり、ザ・バンドっぽかったり。といっても、さほどノスタルジックなわけじゃないところがいいね。
よきころのニック・ロウとかが好きだったら、これもばっちりでしょう。どの曲もいい曲ばっか。ぼくは特にポップなミディアム「ウルフギャング」ってのとリチャード・マニュエルっぽい「ユー・シュッド・ビー・ラニング」ってのがお気に入りです。ぐー。
12 Golden Country Greats
Ween(Elektra)
不思議な2人組、ウィーンの最新作は、なんとナッシュヴィル録音。バディ・スピッチャー、ピート・ウェイド、チャーリー・マッコイ、ジーン・クリスマンといったエリア・コード615系の人脈に加え、エルヴィス・プレスリーらのバッキングでも知られるバディ・ハーマン、ジョーダネアーズなど、ベテランのナッシュヴィル系ミュージシャンをバックに従えて、鉄壁のカントリー・サウンドを聞かせるんだけど。
でも、ジャケットをよーく見ると、左下にラップやオルタナのアルバムでおなじみの“Parental Advisory Explicit Lyrics”の表示があったりして。いいね。完璧なカントリー・サウンドをバックに、いったいこいつら何を歌ってるんだか。「ジャパニーズ・カウボーイ」なんて曲も入っていて、サウンドの超オーソドックスさに対して、そうとうヒネたことを歌ってるみたい。
近ごろはけっこう若い世代の間でも70年代のカントリー・ロックとかが注目されていて。そういう流れに拍車をかけそうな1枚。前のアルバムはCDはエレクトラから、アナログはビースティーズのグランド・ロイヤルからのリリースだったけど。今回はどうかな。この、どカントリー・サウンドがグランド・ロイヤルからリリースされて、若者の間で話題沸騰……とか、そういうことになれば面白いのに。
Just Like You
Keb' Mo'(OKeh / Epic)
G・ラヴと同じ、新生オーケー・レーベルからのリリースだっただけに、この人のファーストが出たとき、けっこうオルタナな、現代的なブルースってやつを期待したものだけど。そうじゃなかったね。この人は、伝統的なブルースのフォーマットをきっちりと、壊すことなく現代に受け継いだエリートなのでした。
そんなわけで、この新作も同様の手触り。エリートです。ほぼ1曲ごとに、バンドものと、ソロでの弾き語りを交互に並べた構成。バンドもののほうにはボニー・レイット、ジャクソン・ブラウンらもゲスト参加。そういう人なわけだね。演奏陣では、ベースのジェームス・ハッチンソン、ドラムのリッキー・ファター(ビーチ・ボーイズ・ファン、とびつけ!)あたりの名前がぐっとくる。
実に端正なブルース/フォーク・アルバムって感じ。いい曲も多い。ライ・クーダーとか好きな人には歓迎されそうかな。ギターもバカにうまいし。ぶっこわれたところがないぶん、ぼくみたいなアホには物足りなかったりするけれど、そっちのほうがいいって人も多いだろうしね。生で見たいなぁ。生で見ると、ぜったい、もっともっとこの人のパワフルな部分が見えてくるはずだから。
あ、ぼくはまだめんどくさいんで見てないけど、これ、CDエクストラ。CDロム・ドライヴに入れれば何か見られるみたい。