未来が壊れていく…




 その3

 

 ■氷河の後退と消失■
 
 New!<氷河の溶解、海面上昇に深刻な影響>
 米コロラド大ボルダー校などの国際共同研究グループは07年、温暖化による海面上昇は、巨大な氷床を載せたグリーンランドや南極よりも、比較的小さな氷河の溶解のほうがはるかに大きな影響を持つという研究結果を、米科学誌サイエンス電子版で発表した。それによると、体積では1%しかない氷河や万年雪の融解が海面上昇に及ぼす影響は60%にもなり、グリーンランドの28%、南極の12%を大きく上回っている。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」も07年2月、最近の海面上昇の要因は、グリーンランドなどの溶解よりも氷河の溶解のほうが大きいとした報告をまとめているが、研究グループは、今後の海面上昇の幅が予測よりも大きくなる可能性がある、としている。(07年7月20日朝日夕刊)
 
 
 <世界の氷河、25年で10メートルも薄く>
 世界氷河モニタリングサービス(WGMS、本部ジュネーブ)が07年1月30日公表した報告書によると、温暖化の影響によって世界の氷河の厚さは、1980年からの25年間で10メートル余りも薄くなったことが分かった。2000年から2005年までの氷河の厚さの年平均減少値は66センチとなっていて、これは80年代の3倍、90年代の1.6倍となっていて、氷河のやせ方が加速している。(07年1月31日朝日)
 
 
 <ヒマラヤの氷河が2035年までに5分の1に>
 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は07年2月9日、現在のペースで温暖化が進んだ場合、ヒマラヤ山脈の氷河が2035年までに、1995年時点の5分の1に縮小するという分析をまとめた。ヒマラヤ氷河の融解によって洪水が増え、水源の崩壊が進むのは「ほぼ確実」としている。(07年2月10日日経朝刊)
  
  
 <米の国立公園から氷河が消える>
 カナダとの国境に接する米のグレイシャー国立公園で、観光の目玉である氷河が次々に消えている。1968年には公園内の38カ所に氷河が確認されたが、現在は26カ所に減った。米環境団体「自然資源防衛会議(NRDC)」が作成した報告書によると、2030年には夏の平均気温が2000年より約0.9度上昇し、同公園内の全氷河が消失すると予想される。(06年9月2日日経夕刊)
 
 <ヒマラヤの氷河湖決壊で大洪水の恐れ>
 国連環境計画(UNEP)は2002年4月16日、温暖化によってヒマラヤ山脈の氷河が急速に溶け出し、5年後から10年後には多くの氷河湖が決壊して、数万人が被災する大洪水が起きる恐れがある、という報告書を発表した。水位の上昇で決壊の恐れが出ている氷河湖は、ネパールに20、ブータンに24あることが確認された。ネパールの49カ所の観測地点では、1970年代に比べて平均気温が1度上昇しており、ブータンでは氷河が1年に平均して30〜40メートルずつ後退している。
 
 <1年に13メートルずつ後退>
 名古屋大学地球水循環研究セーターが40年間に渡るヒマラヤ氷河研究のデータを蓄積した「氷河台帳」によれば、ヒマラヤ最南部の氷河末端が、このところ年に平均13メートルずつ後退を続けている。東部の氷河では年に30メートル以上も後退して、氷河湖が広がり、洪水の危険も出ている。
 温暖化によって、50年後には世界の山岳氷河の25%が消失するという予測もある。
 
 
 
 <キリマンジェロの氷河が消える>
 米オハイオ州立大学や欧州の研究チームが02年10月、米の科学誌「サイエンス」に発表したところによると、アフリカ最高峰キリマンジェロの山頂付近にある氷河は、温暖化が続けば2020年までに消滅する危機に直面している。それによると氷河の面積は、1912年当時に比べ80%近くが消滅しており、1989年時点と比べても33%が消滅している。残っている氷河の表面も、1年に50cmずつの割合で融けていて、このままでは2015年から2020年ごろには氷河が消滅する可能性が高い、としている。
 
 
 <チベット高原でも、アンデスでも>
 米オハイオ州立大学の研究チームが01年2月、全米科学振興協会総会で発表したところによると、チベット高原では1955年から96年の間に、10年で0.16度ずつのペースで気温が上昇しており、とくに冬場は10年で0.32度のペースで上昇し、標高が高いほど気温上昇が顕著になっている。これに伴って、高原南部と中央部の氷河は1974年以来、1−2キロも後退した。
 またペルーのアンデス山脈でも冠雪や氷河が急激にやせ細っており、このうち最大級の氷河は1993年から95年にかけては年平均28.7メートルずつ後退していたのが、98年から2000年にかけては年平均155メートルと、後退が加速している。
 
 
 <2050年には、アルプスの氷河75%が消滅>
 EU(欧州連合)欧州環境局は04年8月、地球温暖化が欧州に与える影響予測を発表した。それによると、2050年にはスイス・アルプスの氷河の75%が融けてなくなっている。(04年8月18日読売夕刊)
 別の報告によると、スイスのユングフラウなどから流れている欧州最大の氷河、スイスのアレッチ氷河がやせ細り続け、全長24キロの氷河は20キロに縮小している。このまま温暖化が続けば、アルプス氷河は今世紀末には現在の5%程度となって、ほぼ消滅する、と見る専門家もいる。(03年6月23日読売夕刊)
 
 
 <海面上昇に多大な影響>
 IPCC(気象変動に関する政府間パネル)によれば、海面上昇をもたらす大きな要因は、第1に海水の熱膨張であり、第2に山岳氷河の融解だとしている。南極の氷河の場合は、解けてもその分だけ大気中の水蒸気が増え、氷河の上に新たに積もるので、海面上昇への影響は抑えられるが、山岳氷河の融解は海面上昇に直結する。
 
 

 
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