※
「おかしいなぁ… 私の説明に不備があったとは思えないんだけど……」
八十八駅前にある甘味処『甘粕屋』。その名の通り汁粉や蜜豆といった甘い物がメ
インの和風喫茶だ。お客は唯のような女子高生から、買い物帰りの主婦までと女性が
大半を占めているのだが、その大半のお客の付録として男性客が来ることもあるので、
甘い物以外(トコロテンや磯辺巻き)の品目もある。
その甘粕屋に腰を落ち着けた先程の3人。席へ着いた綾子はしきりに首を傾げてい
た。
「綾ちゃんの所為じゃ無いよ」
そんな綾子を唯が宥めるのだが、その目は当の綾子には向けられておらず、非難の
色を帯びて付録の龍之介へ延びていた。その意味するところは、
『お兄ちゃんが悪い』
というのが妥当だろうか。もちろんそれに気付かぬ龍之介ではない。
「なんだよ、その如何にも『俺が悪い』って言いたそうな顔は」
「そんな事は言ってないよ」
口に出して言ってはいないが、目が思いっ切り語っている。その辺を追求したい龍
之介だったが、藪をつついて蛇を出すのも何なので、矛を収めることにした。
「まあ、何にしても失敗だったわ。ちゃんとフォローはさせて貰うから」
心底申し訳なさそうに頭を下げる綾子に、
「ああ、気にしないでいいよ。……しっかし、なんであんなに怒ったんだろうなぁ」
どこかぼやき気味に呟く龍之介。
「そりゃそうでしょ。彼氏にこぉんな可愛い…」
そう言って綾子が唯に目を向け、
「血の繋がらない同居人がいたら、動揺もするわよ」
「彼氏じゃないって」
綾子の早とちりに苦笑気味に答える龍之介。だが、その途端に綾子の表情が曇った。
何か壮絶な誤解があるようだ。
「彼氏じゃない…… って、あの娘、綾瀬君の彼女じゃないの?」
「一緒に街中歩いてたら彼氏彼女の仲かいっ!?」
亜関西弁でツッコミを入れるが、
「そうは言ってないけど…… それじゃ、どうして彼女でも無い女の子にひっぱたか
れるのよ」
「そりゃ俺が聞きたい」
素直な意見だった。
「………」
「……………」
「つまりこういう事だよ」
そんな2人のかみ合わない会話にやや呆れつつ、唯が2人の会話に割り込む。
「男の子がいました。可愛い女の子がいました。男の子は可愛い女の子とお友達にな
りたいと思い、色々と世話を焼きました。男の子に優しくされた女の子は次第に男
の子に魅かれていきました。でも男の子にとってその女の子はお友達の1人でしか
無かったのです。以上」
実に簡潔極まりなく事態の説明を終える唯。約8年という歴史の重み(?)の賜か、
その説明は実に正鵠を射ていた。
「こら。以上、で止めるな。ひょっとしたらその先があるかも知れないじゃないか」
もちろん此処が『甘粕屋』であるから言える事だ。
「……って事はなに?」
ひどく呆れた綾子の声がした。
「綾瀬君にとって、あの娘は『遊び』だったっての?」
「んなワケあるか。俺はただ、女の子のお友達が沢山欲しいなーって……」
『女の子のお友達が』辺りから急速に語尾が小さくなっていく。暗黒のオーラを纏っ
た女子高生に正面から睨まれているのだから仕方がないと言えば仕方がない事なのか
も知れない。
「同じ事じゃない」
やや軽蔑の色を伴った目を龍之介に向け、背もたれに背を預る。
「あー、心配して損した」
本気で2人の仲にヒビを入れてしまったと思っていたらしい。しかし龍之介はそん
な態度が不満だったらしく、
「そーゆー言い方は無いだろ。見ろ、この名誉の負傷を」
と言って赤くなった頬を指さす。だが同情は得られず、
「名誉って言うより、不名誉だよね」
「同感」
同意を求める唯に綾子も頷く。確かに『不名誉の負傷』と言う方が似合っていた。
「なんだよぅ。友達が沢山欲しいと思うのがいけないことなのか」
「別に悪くないけど、問題は『異性の』って付く辺りよ」
「なんで?」
全然分かっていないような態度だ。考えてみれば龍之介にはやたらと友人と呼べる
人間が多い。さらに言うなら異性の友達が多い。友美、唯という媒体からずるずると
芋蔓式に広がった交友関係だ。
今更『異性』の友達を作る際には注意しろと言ってもピンと来ないのかも知れない。
「なんでって…… えーと、なんて説明すればわかりやすいかな……」
間を取るように白玉のお椀を箸でぐるぐる掻き混ぜながら、少し考え込む綾子。
「基本的に女の子の考え方はデジタルなんだよ」
そこへまたもや唯が横から割り込む。
「デジタルって『ある』と『ない』の二者択一っていうあれか?」
「そう。もっと言えば、『好き』と『好きじゃない』の二者択一」
「『好き』と『嫌い』の二者択一じゃないのか?」
「それじゃ究極の選択だよ。『好きじゃない』って方にかなりの幅があるの。綾ちゃ
んとお兄ちゃんみたいに友達だったり色々ね。『嫌い』っていうのもこっちに入る
んじゃないかな?」
「ふぅん…… で?」
先を促す。
「お兄ちゃんが学校でどんな風にあの娘に接していたのかわからないけど、例えば重
い物を運ぶのを手伝ったり、物が取れなくて困っている時に手伝って上げたり、学
食のパンが買えなくて……」
「ちょっと待て。お前本当に唯か? 篠原あたりが化けてんじゃ無いだろうな」
学校が違うので知っているワケが無い事実をあまりにもズバズバと言い当てられ、
堪らず声を上げる龍之介。その慌て振りに、
「やっぱり……」
と軽く溜息を吐く唯。
「とにかく、そういう事が立て続けに起こると、普通は『この人、私に気があるのか
な?』とか思っちゃうんだよ」
そんな2人の会話を綾子は呆気に取られて聞いていた。長い付き合いになるが、よ
もや唯がこんな恋愛観を持っていたとは。
同時に『ああ、やっぱりそうなんだな』と改めて認識した。今まで気付かなかった
訳ではないが、友美の手前もありそれを口にすることが無かっただけなのだ。
綾子にとって、唯も友美も大事な友人である。どちらか一方の肩を持つような事は
したくなかった。
だが、今回は違う。明らかな外敵。しかも龍之介にはその気が無い(多角的に見れ
ば有るのかもしれないが…)と来た。ならば援護射撃をせねばなるまい。
その辺の友情には割と厚い綾子だった。
「特に綾瀬君はパッと見はそれなりに見られるからねぇ……」
「……パッと見『は』、て所が引っ掛かるな……」
「あら、褒めてんのよ一応。慣れてくるとそうでもないけど」
「綾ちゃん……、最近性格悪くなったね」
「そう? 洋子の影響かな。でも、物怖じしないで意見を言ってくれる異性は大事に
しないとね」
確かに。これがいずみあたりだったら、壮絶な罵り合いになるところだ。
「だから、お兄ちゃんみたいに『友達が欲しい』からって無節操に声を掛けるのは、
女の子にとっては凄くひどい事なんだよ」
綾子と龍之介の会話に一区切りついたのを見計らい、唯が締める。
「……すると何か? 桜子ちゃんの俺の事を……」
ここまで説明しなければ解らないというのも問題なのだが、それでもようやく理解
はしたらしい。顔がニヤけている。
「ふぅん、桜子ちゃんって言うんだ、あの娘」
その締まらない顔の龍之介を半目で唯が睨(ね)め付ける。さすがにそれ以上言っ
て、敵に塩を送るつもりはないようだ。
「で、どうするの? 綾瀬君」
ニヤける龍之介とそれを睨(ね)め付ける唯を見比べながら綾子が切り出す。
「どうするって?」
「いや、だからその娘の事」
「決まってるだろ、ちゃんと話して誤解を……」
「全っ然解って無いじゃない。誤解を解くって事はねぇ…」
そう言って綾子は両手を胸の前で組み、どこかうっとりとした目で虚空を見つめ、
「ああ、綾瀬君ってば私に“らぶらぶ”だからわざわざ誤解を解きに来てくれたのね♪
私の片想いじゃ無かったんだ♪ ……ってなる事は確実ね」
迫真の演技…… でもないが、少なくとも明日の天気予報よりは確実な気がする龍
之介だった。しかし、だ。
「別にそれでも……げふんげふん、」
(俺は構わんのだが)と言いかけて咳払い。理由1:唯に睨み付けられたから。理由
2:綾子に睨み付けられたから。理由3:何処からどう漏れるかわかったもんじゃな
いから。
「しかしだなぁ、誤解を解いておかないと、また有る事無い事言われるんだぜ。俺の
面目は丸潰れだ」
既に潰れきっているという事を自覚していないようだ。
「今更潰れる面目じゃないのに……」
唯もそう思っていたらしい。溜息を吐くように言ってくれる。
「うるさい、黙れ」
「いいじゃない。ある事ない事言われても中学ン時とは違って唯が同じ学校って訳じゃ
無いんだし…… 綾瀬君1人ならどうとでもなるっしょ?」
「ひでぇ…」
「さっきの娘に変な期待を持たせる方がよっぽど非道いわよ。ま、なんにしても綾瀬
君にその気が無いのなら放って置くのがベストね」
言い切って、ずずっとお茶をすする。そして思い出したように、
「あとね… その桜子ちゃん以外に綾瀬君を想っている女の子がいたら、その娘にとっ
ても非道いよ。綾瀬君がその娘の事をどう思っていようとね」
「む……」
綾子の言う『桜子以外の女の子』が誰を指したのかは分からないが、少なくとも龍
之介の脳裏には誰かの顔が浮かんだのだろう。
結局、綾子のその一言が決め手になった。
※
翌朝。
いつも通りに登校し、いつも通りに教室に入った摩耶は、そこでいつも通りでない
光景を目撃した。いつもなら教室へ入るなり2人の友人が声を掛けてくれる筈なのだ
が、今日はそれが無く、代わりにいつもの場所がえらく沈んでいた。
見れば桜子が机に突っ伏し、美弥がその机の前の椅子に腰掛けて何やら話しかけて
いる。なんとは無しに近づき難い雰囲気だったが、そういうわけにも行かず、
「おっは〜、どしたの?」
いつもと同じように声を掛けて近づく。
「どうしたもこうしたも……」
気付いた美弥が右の掌を上に向け、パッと開いてみせた。爆発を表現したらしいが、
この光景から導き出される意味はひとつだけだ。
(あっちゃ〜)
摩耶は思わず目を覆いたくなった。よもや3日しか保たなかったとは……。
「うーん…、予想通りというか、予想以上に短命だったわねぇ。で、原因は? やっ
ぱり水野友美?」
友人の辛い経験とは言え、回りが一緒になって落ち込んでいても事態の解決には一
切ならないことを知っているのか、それとも単なる好奇心なのか、自身の欲求を満た
そうとする摩耶。
「それがさぁ、この娘が言うには、女の子と同棲しているらしいのよ。その彼が」
あまり信用して無さそうな声で美弥が説明する。
「はあ?」
「昨日この娘、1人でさっさと帰ったでしょ? 綾瀬君と一緒だったんだって。した
ら駅前で同棲している女の子とバッタリ……」
「うわぉ修羅場ぁ〜。で、どうしたの?」
楽しんでいる。
「綾瀬君の顔ひっぱたいてそれでお終い」
「へぇ〜、やるじゃん。で、何泣いてんの? そこまでやったんだから吹っ切れたん
でしょ?」
ふせっていた桜子に言葉を投げかける摩耶。それに反応したのか桜子がむっくりと
顔を起こし、
「だっでぇ、よぐよぐ考えると、ぐすっ…、おがじいなっで〜」
目が真っ赤な上に、ものすごい鼻声だった。
「諦めが悪いわね。同棲しているってその娘が言ってたんでしょ?」
「同居だっだがもじんない。ぐすっ…」
「同じよ」
「その娘も綾瀬君の事『お兄ちゃん』って呼んでだじぃ…」
「変態ね」
一刀両断。もちろん『お兄ちゃん』と呼ばせている龍之介に対する評価だ。
「フォローじでよぉ〜」
「私は最初から反対してた。いい機会でしょ、すっぱり諦めちゃいなさい」
「摩耶ぁ〜」
血も涙もない美弥を見限り、摩耶にすがりつく桜子だが、
「ごめんね。私も美弥と同じ意見」
あっさりと突き放されてしまった。と思いきや、
「でも… 桜子がどうしてもって言うなら、少しだけ手伝って上げる」
※
「で?」
放課後。何故か3人は『Mute』の前にたむろしていた。
「綾瀬君はこの店の常連なんだって」
そんな情報を何処から仕入れてきたのか、自慢げにその豊かな胸をそらす摩耶。多
分胸の大きさを自慢している訳じゃないと思う。
「お店の人に真相を聞こうっての?」
「ノンノン。真相を聞き出すのは…って言うか、真相は綾瀬君から直接話して貰う事
になるわね」
ちっち、と人差し指を左右に振り、ひとりわかっているように喋る。
「えっ? く、来るのっ!?」
慌てて左右を見渡す桜子。
「来ないわよ。少なくとも1時間は来ないわね。なんでも遅刻記録を更新したとかで、
天道先生監視の元に、長距離コース2周だって聞いたわ」
八十八学園長距離コース。アップダウンが激しい全長8キロのコースで、冬のマラ
ソン大会では、このコースを女子は1周、男子は2周するのだ。
「ま、とにかく中に入りましょう」
というわけで、先頭に立った摩耶は何の躊躇もなく『Mute』のドアに手を掛け、
それを押した。
「いらっしゃいませ〜」
来客を告げるカウベルの音に、愛美はグラスを磨いていた手を止め、入り口の方へ
目をやった。制服自体は見慣れた八十八学園のものだったが、どうやら初顔のようだ。
勝手が分からず、入り口付近でキョロキョロと左右を見回している。
「どうぞ」
素早くカウンターを出、テーブル席の方へ案内する。高校生3人ならばカウンター
席を所望することはまず無い。その愛美の声に素直に従う例の3人。
「割と趣味の良い店ね」
とか小声で喋っているのが愛美の耳にも届き、なんとはなしに嬉しくなった。
一旦カウンターへ戻り、グラス3つに水を注ぐ。メニューを持って再び3人の元へ。
「御注文がお決まりになりましたら、声を掛けてくださいね」
後輩達に向かってにっこり微笑む愛美。
「ど、どうも…」
ファミレスのような応対に、なぜかひるんでしまう3人だった。
その3人が座る席から一番遠い場所にあるテーブル席。3人の注文が出る間を利用
して、愛美はその席へ足を運んだ。
「どう? 少しは進んだ?」
そのテーブルの主に声を掛ける。
「おかげさまでね」
あまり愉快じゃ無さそうな返事が返ってきた。
「自業自得でしょ。全然講義に出て来ないんだから」
なにしろ時間割を決めるのも愛美任せ、入学式には出たモノの、その後講義を受け
たのは本当に必要最低限。代返使いまくりで『大学までの道筋を忘れ、道に迷って講
義に出られなかった』という言い訳を一瞬信じてしまったくらいだ。
それ以前に何のために大学を受験したのかかなり疑問。
「綾瀬先生も呆れてたわよ。『このレポートを落としたら、俺の息子と付き合う事は
まかりならん』だって」
そうなのだ。愛美が面白半分に選択した『考古学総論』。それが見事なまでの大当
たり。担当講師は『綾瀬浩史助教授』。龍之介の父親その人だった。
まあ、この辺の出来事は、その内外伝で語られることになると思うので割愛する。
「あっそ」
適当に相槌を打つ。いっけん愛美の冗句にも聞こえるが、ひょっとしたら冗談半分
で本当に言ったかもしれない。こういう所は親子そっくりだ。
バラすんじゃなかったと少し後悔してみるが、後のまつり。
取り敢えず『付き合う事はまかりならん』よりも『単位をやらん』の方が死活問題
なのでレポートは提出しなければならない。ちょっと龍之介が哀れかもしれないが。
しかしレポート提出といっても、講義には殆ど出ていなかったのだから出しようが
無い。愛美のノートだけが頼りなのだが、
「ちょっと物入りでねぇ… バイトかわってくれない?」
が交換条件だった。そのものズバリで現金を要求されるよりは良心的だが、
「コピーは厳禁。貸すのはバイトを代わっている間だけ」
妙な条件を付けられたおかげで、3日分ほどの収入がフイになりそうだった。
さてこちらは桜子陣営。
「中学の時に通っていた塾に、綾瀬君と同じ中学の娘がいてさ、チラッと聞いたこと
があったのよ。桜子が言う女の子の事を」
例の事件(Episode 12参照)の事だった。もちろん当時の摩耶が龍之介や友美の存
在など知るわけが無かったが、桜子の『お兄ちゃんと呼んでいた』という一言で頭の
片隅に残っていた情報が覚醒したのだ。昼休みに摩耶の姿を見かけないと思ったら、
情報網を駆使して色々と探ってくれたらしい。
「で? 結局なんなのよ」
勿体ぶらずにさっさと話しなさいよ、という美弥を
「ごめん。その娘との約束で話せないの。もし話した事がバレたら綾瀬君に殺されるっ
て言われててさ」
意外と義理堅い。しかしそんな義理人情に、話の見えない美弥が納得するわけもな
く、
「あんた… 私らをバカにしてんの?」
殺気を帯びた視線を摩耶に照射する。
「まあ、聞きなさいって。その話を聞いて私は少し綾瀬君を見直したわけだ。で、桜
子にもチャンスをあげようと思ってね」
そう言って鞄の中から封筒と便箋を取り出す。もちろん定形型と言われる封筒では
なく、『ラブレターですよ』と言わんばかりの封筒だ。お約束のハート形シールも標
準装備。
「なにこれ?」
目の前に差し出された1セットを見つめ呟く桜子。
「見ればわかるでしょ。これで明後日の日曜、綾瀬君をデートに誘うの」
「デ、デートぉ!?」
突拍子もない案に思わず桜子の声が高くなる。
「ばか。声が大きい。そんなに驚くほどの事じゃないでしょ」
「だ、だって私デートなんかした事無いし……、第一来てくれるかなんて……」
なにしろ別れ際が最悪だった。
「いいじゃない。来なければ来ないですっぱり諦めがついて」
「うー……」
相変わらず冷たい美弥に恨みがましい視線を向ける桜子。
「そうゆうこと。来なければ×(ペケ)。来てくれても真相を話してくれなければ×。
変に誤魔化そうとしても×。ちゃんと事実を話してくれて、その話が私の聞いた話
と合致していれば……」
一旦言葉を切り、間を入れる。
「……いれば?」
期待を込めた目で摩耶を見る。
「私は桜子の事を応援してあげるよ。ま、そこまでキチンと話してくれるんなら、綾
瀬君の方もそれなりに桜子の事を思ってくれているだろうし…ね?」
唯一の反対勢力美弥に同意を求める。
「……わかったわよ」
どこかムスッとしたような声で返す。そして、
「言っておくけど綾瀬君を認めた訳じゃないからね。摩耶の考えを支持するって意味
よ」
付け加えた。
「十分よ。……さて、一応の方針が決まったから腹ごしらえしよ。此処のピザは結構
評判なのよん♪」
嬉しそうにメニューを開く摩耶を見、
(ひょっとしてここの支払いは自分持ちじゃ無かろうか?)
とふと心配になる桜子だった。
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