楽しい1日はあっという間に終わっちまう。
今も目の前に今井がいるような気がする。
今井……かわいかったな。
待ち合わせの場所に行くと今井はまだ来てなかった。ていうか、俺が待ち合わせ時間の30分前に行ったから当然なんだけど。
そわそわしながら待ってると、今井も10分前には待ち合わせ場所に来てくれた。
「あれ、橋本早いね」
って、笑った顔が! 顔が、かわいくて!!!!
「あ、今井っ!?」
思わず声が裏返っちまった。情けねぇ!
それからすぐに図書館に行って、めちゃめちゃ真剣に勉強した。
今井のところはもう夏休みに突入したらしくて、テストも先週終わったらしい。今井、そんなこと全然言ってなかったから驚いた。
だけど、
「橋本に教えてもらったから、苦手の物理も化学もそれなりの点取れたよ。ありがとな」
って言われちゃって、それなら俺も今井に教えてもらってるんだからいい点取らないとって少しプレッシャーを感じた。
だけどそれがよかったのか、今井に顔を寄せられても必要以上にドキドキしなくて済んだ。よかったぁ(笑)。
昼に一度外に出て、図書館の近くのファミレスで昼飯を食った。今日の今井はけっこう顔色が良くて、食欲もあったみたいでパスタのセットを全部食べてた。なんかそれだけでほっとした。
俺は俺でハンバーグのセットにしたんだけど、ライスを大盛りにして、トッピング(鉄板に最初から乗ってるポテトとかから揚げとは別)に白身魚のフライをつけたら、「橋本、すごい食べるね……」って今井があぜんとしてた。
「や、これくらい普通だって。今井が食わなすぎるんだよ」
って言ってやったら、首を傾げながら「そうなのかな……」って! そんな仕草1つとっても今井はかわいいんだ!!(俺、おかしくなってるのか?)
照れくさくなって、勢いで「今井もハンバーグ食うか? けっこううまいぜ?」ってハンバーグを今井のパスタの皿に乗せてやったら、今井は嫌がらずに食ってくれた。
「うん……おいしい。今度は僕もハンバーグ食べようかな」
笑いながら言ってたけど──『今度』!? 次のこと、期待していいのか、俺!?
昼飯が済んだらまた図書館に戻って、夕方までみっちり勉強した。1日でこんなに勉強したのは、もしかしたら初めてかもしれない。今井のおかげだな。
今回は絶対いい点が取れそうな気がする。なんたって今井に端から端まで見てもらったんだしな!
夕飯は俺のオゴリでそばを食いに行った。……俺は中華を食いに行こうと思ってたんだけど、今井が昼に食いすぎたって言って「さっぱりした物なら食べられそうだけど……」って言うから、予定を変更して。
「テストが終われば俺たちも夏休みに入るから、ヒマなときにでもまた遊ぼうぜ」
ダメ元で誘ったら(内心すっげードキドキしながら)、今井は「いいね」って笑ってくれた。
「僕のほうがきっと橋本よりヒマしてるから、橋本の都合のいいときにまた連絡して?」
なんて言われたら、「俺もいつだっていいぜ!」って答えそうになってた。……もちろんいつでもいいわけじゃないんだけどさ(部活も塾もあるからな)。
でも、早めに連絡したほうがいいよな。今井だって、塾には行ってなくても部活があるだろうから。
でも、いつでも誘えるんだって思ったらそれだけで嬉しくて、俺ずーっとにやにやしてたかも。今井に「ヘンな奴」って思われてなきゃいいんだけどな。
今日1日で、今井とたくさん話すことができた。
中学のときに同じクラスだった奴らのこととか、お互いの高校のこととか。
ホントはお父さんのこととかも聞きたかったんだけど……さすがにそんなに込み入った話をするほど仲がいいわけじゃないから(悲しいけど事実だ)、今日は聞くのはやめた。
いつか聞けるといいな。……なんでクスリに手を出したのかってことも。
なんかやたらぽ〜っとした気分だ。最後に見た今井の顔が本当に楽しそうで、すごくかわいくて……思い出しただけで──鼻血が出そう(俺って……)。
って! 明日からテストじゃん!!
やべーやべー、せっかく今井に教えてもらったことも忘れそうだったぜ。よし、もう少し補習するかな。 |