Takara's Diary…5月前半

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5月2日(金)
意識し始めたらどんどん思考が止まらなくなっちゃって、なんか常におかしなことを考えてる気がする。
頭の中でぐるぐるしているのはだいたいが今井のことで、やっぱり俺って本気で今井のことが好きになっちゃったのかなって思ってみたり。
でも、今井はあんなに可愛いから、男の俺がそんなふうに考えてもおかしくないよな。……って、この考え自体がもうおかしいんじゃねぇか!?

うー……今井に軽蔑されたらどうしよう。





5月3日(土)
今井に会いたい。
毎日でも会いたい。
なんで同じ高校行かなかったんだろう……俺のバカ。

いや、今井と同レベルの高校なんて入れるわけないし、それにあの頃は別に今井のことを恋愛対象として見てなかったんだからしょうがないか。

……日記でなに弁解してるんだろ。
ホントに俺ってバカだな…………。






5月4日(日)
地区予選が近いから部活の熱が高まってきている。
バスケに集中しているときだけはヨコシマなこともあまり浮かんでこないから、今日は疲れてへとへとになるまで動きまくった。
家に帰ってきて飯を食って風呂に入って。
いつもより2時間くらい早いけど、もう眠くなってきたから寝ようと思う。
今夜は夢も見ないで寝れそうだ。

──実は。
昨日の夢の中で、今井がすごく恥ずかしいことになっていたのだ。
いや、もちろん全部俺の妄想だし、実際にはあんなことを今井がするわけないんだけど……。
俺の目の前で、涙を浮かべながら悶えたりうごめいたりあいつはとにかくかわいくて、俺は夢の中で何度も何度もいってしまって。
……起きたらパンツの中が大変なことになっていた。

そういうわけだから、今夜は何も考えないで寝ようと思う。
ごめん。ヨコシマでごめん、今井。






5月5日(月)
ズリネタが今井。
これってどうなんだろう…………。

今までお世話になっていたエロ本や輸入物の雑誌(もらい物だ)がまったく使えなくなってしまった。
アソコとかモロ見えのやつを見ても多少ムラっとくるくらいで、今井の笑顔を思い浮かべたほうがぐっとくるのだ。

ああ〜〜〜、自分がどんどんおかしくなっていくような気分だ〜〜〜〜。
誰か、俺はおかしくないって言ってくれぇ!!!






5月7日(水)
部活が終わって部室で着替えているときに、唐突に恋愛話が始まった。
「どんな女が好みだ」とか「すでに経験済みの奴は名乗りを上げろ!」とか。新入生が入ってきたら毎年聞く恒例行事のようなものだ。
俺は去年とまったく同じことを言ってみんなにからかわれてしまった(経験も全然進歩がなくてさ)。別にいいじゃねぇかなぁ、初体験がまだでも。焦ってするもんじゃないし。
一通りみんなの話を聞いたあとはそれぞれ好き勝手に聞きたいことを言い合ってて、
「彼女の足の裏の匂いは嗅げるか」
「彼女と歩いていたら、自分の理想通りの女が困っていました。さあどうする!?」
「実は彼女が自分より10歳も年上だったら?」
「バージンだと思っていた相手が実は超ヤリマンだったら?」
とか、くだらない例え話で盛り上がった。
その話の最中に、俺もみんなに聞いてみたいことがあって思わず聞いていた。
「じゃあ、好きだと思った相手がたまたま男だったらどうする?」
って。
そしたらみんなに「そんなのありえねぇよ」と笑いとばされてしまった(……当然か)。
でも、先輩で2人だけ、
「男でも女でも関係ないんじゃない?」
って言ってくれた人がいて、その意見に頷いていた奴が何人かいたから、そいつらもその意見に賛成ってことだろうと思うとなんか少しほっとした。

俺が今井を好きなのも、別におかしいことじゃないよな。
好きな気持ちに男も女もないもんな。






5月10日(土)
今井に会いたい。
今あいつに会ったら、自分の気持ちがはっきりとわかりそうな気がする。

『俺はこいつが好きなんだ』って。

今井のほうは困るだろうけど……もしかしたら「二度と会いたくない」って言われてしまうかもしれないけど、
いつかは告白、したいな。






5月11日(日)
今井から電話がくる。
嬉しくてうきうきルンルンと出たら(バカだな俺も)、電話口から突然苦しそうな声が聞こえて。
「た……たす、けて…………」
絞り出したような掠れた声はいつもの今井の声とは全然違って、一瞬間違い電話かと思ったけど、今井の携帯の番号がちゃんと表示されてたから、そんなわけがないと耳をこらして声を聞いた。
だけど、そいつは俺に乱れた息遣いを数秒間聞かせたあと、すぐに電話を切ってしまって。
なんかすごく不安になって、昼からの部活をサボって今井の家に向かった。嫌な予感、みたいなものがしてさ。
チャリをかっとばして今井のマンションに行って、エントランスで何度も何度もチャイムを鳴らすと、30回目くらいでやっと今井が出てくれて、鍵の開く音がした瞬間にドアを開けてスタートダッシュして。
今度は玄関のチャイムを夢中で押すと、驚いたような顔で今井が出てきた。俺の動きの早さにびっくりしたんだろう(ぜーぜー息を乱してたのにもな)。
だけど、俺も驚いた。
今井の顔色が、いつにもましてひどかったからだ。
もともと白い肌の色がさらに白くなって……生きてる人間のものじゃないような、そんな感じさえした。
目の下には白い肌に似合わないクマができていて、それがさらに顔色を悪く見せていて。
はっきり言ってしまうと、そのときの今井は『薬物乱用』って言葉がぴったりな感じだった。
ふらついてる今井を助けながら居間に行くと、なんか部屋の空気がにごってるような感じがして。
床に転がった携帯とか、食べかけの弁当とか飲みかけのジュースとか酒の缶がテーブルに散乱していて、おおよそ今井らしくなかった。
今井はソファに座ってるのもだるそうだったから、俺がなかば強制的に今井の部屋に連れて行って、少し腹が減ってるって言ったから勝手に台所を使わせてもらっておかゆを作った。料理が苦手じゃなくてホントによかった。
それを、ベッドに起き上がった今井が食べてるあいだに、俺は初めて入った今井の部屋を観察した(じろじろ見たら気づかれるから、何気ない感じで)。
きっと普段は整理整頓の行き届いた部屋なんだろう。棚とか勉強机の上はすごくキレイだったから。
でも、床にはいろいろと物が置かれていた。

居間にも、今井の部屋にも落ちていたもの。
錠剤とか、粉クスリみたいなのとか、黒っぽいキノコみたいなのとか……とにかくそれらは全部クスリなんだろう。実物をまじまじと見るのはこれが初めてだったけど、すぐにわかった。
錠剤は半分に減ってたり、粉クスリの入ってたと思われる袋がいくつも落ちてたり、キノコをあぶったような形跡もあった。
間違いなく、今井はクスリを使っているんだろう。
ただの憶測でなく真実なんだとわかったとたん、なぜか泣きたくなった。
「こんなものを使うなんて……なに考えてるんだよ、おまえ……」って。

最後にどうしても言わないと自分の気持ちが収まらなくて、
「クスリ、やめろよな」
なんてズバリと言ってしまった。
今井は俺の言葉に頷かなかったけど、今日のことで少しは自分の身体のことを考えるようになるだろう。

……なってくれるといいんだけど。






5月13日(火)
今井のことが気になる。
あいつ、またクスリやってないよな?
それよりも、あのまま寝込んでいたらどうしよう。
様子見に行きたいけど……そんなに頻繁に出入りしちゃ悪いよな。

あいつの周りの人間が気づけば1番いいんだけど。あれだけ顔色悪かったりすれば、担任とかが気づいてもよさそうなんだけど……見て見ないフリしてるかもしれないし(面倒なことに首を突っ込む教師なんてそういないからな)。

おせっかいかもしれないけど、とにかく今井のことが心配だ。






5月15日(木)
今井に電話をする。
だけど、何度も何度もしつこくかけたのに、一度も出てもらえなかった。
電波の届かないところにいたわけじゃないみたいだし、わざと電源を落とされてるわけでもなかったし、気づかなかっただけなのかな?

今井の泣き出しそうな顔が頭に浮かんでは消える。
なんだかすごく胸が苦しい。





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