部活が終わってすぐに今井の家に向かった(塾はさぼった)。
家はばっちり覚えてたからチャリで行って、ちょっとどきどきしながらインターホンを押したら、すごい間をおいてから「はい?」って不機嫌そうな今井の声が聞こえてきて。
「お、俺、橋本だけどっ」
会えたらいいなと思って行ったのに、心のどこかで本当に会えるとは思ってなかったから、今井の声に驚いて思いっきり声が上擦っちゃって恥ずかしかった。
今井は俺の返事にすぐ反応しなくて、『もしかして俺に会いたくないのか?』なんて不安になりはじめてやっと
「今そこの鍵あけるから、入ってきてよ」
と言ってもらえて、すっげーほっとしてしまった。「悪いけど帰って」とか言われたらショックだったろうな。
「ごろごろしてた」
って言葉通り、家にいた今井は今まで見たことがないようなリラックスしたカッコをしてた。普通にトレーナーにジーパンだったんだけど、今井の普段着ってほとんど見たことなかったからちょっと新鮮だった。
初めて上がらせてもらった今井の家はすげーシンプルで、俺の家みたいにガラクタだかごったくだかわかんないようなものは全然なくてちょっと居心地悪かった。お香なんておしゃれなもの、絶対家じゃ使わないって。
まっすぐ居間に案内されて、でかいテレビや高そうなソファやテーブルにビビった俺は
「お前の部屋は?」
なんて聞いてた(図々しい奴だと思われたかな……)。
俺の言葉に今井はあいまいな顔をして、
「今すごく汚いから……」
って言ったけど、たぶんそれはウソだろう。だって居間や廊下とかはすごく綺麗に掃除されてたし、昔から清潔なイメージしかない今井の部屋が俺の部屋みたいに汚いなんてことはないだろうから。
俺を部屋に入れたくないような理由でもあったんだろうか?
家に帰ってきて一息ついたら、今井と話したことを全然覚えてないことに気づいて驚いた。俺……今井となに話したんだっけ? 妙なこと口走ったりしてなかったよな……?
でも、帰り際に断られるのを覚悟しつつ「また来てもいいか?」って聞いたら、今井がすんなり「いいよ」って応えてくれたのはちゃんと覚えてる(当たり前か?)。
最後に携帯の番号と携帯メールのアドレスを教えてきたけど(俺も教えてもらった)、向こうから連絡きたりはしないだろうな〜きっと。
……じゃあ俺からはいつ連絡すればいいんだろう。 一週間とか二週間後じゃ「またかよ」って思われちゃうかなぁ。
しかしあいつ、やっぱり病人みたいな顔色してたよな。
……気になってること全部聞けばよかった。 |