Takara's Diary…4月前半

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4月3日(木)
もう一度今井の家に行こうと思ったのに、そういうときに限って部活やら塾やらが忙しくなるんだよな。
だけど今井も似たように忙しい生活をしてるんだろう。

明後日の夕方にでもまた今井の家に行ってみるかな。
会えるかどうかはわからないけど。





4月5日(土)
部活が終わってすぐに今井の家に向かった(塾はさぼった)。
家はばっちり覚えてたからチャリで行って、ちょっとどきどきしながらインターホンを押したら、すごい間をおいてから「はい?」って不機嫌そうな今井の声が聞こえてきて。
「お、俺、橋本だけどっ」
会えたらいいなと思って行ったのに、心のどこかで本当に会えるとは思ってなかったから、今井の声に驚いて思いっきり声が上擦っちゃって恥ずかしかった。
今井は俺の返事にすぐ反応しなくて、『もしかして俺に会いたくないのか?』なんて不安になりはじめてやっと
「今そこの鍵あけるから、入ってきてよ」
と言ってもらえて、すっげーほっとしてしまった。「悪いけど帰って」とか言われたらショックだったろうな。

「ごろごろしてた」
って言葉通り、家にいた今井は今まで見たことがないようなリラックスしたカッコをしてた。普通にトレーナーにジーパンだったんだけど、今井の普段着ってほとんど見たことなかったからちょっと新鮮だった。
初めて上がらせてもらった今井の家はすげーシンプルで、俺の家みたいにガラクタだかごったくだかわかんないようなものは全然なくてちょっと居心地悪かった。お香なんておしゃれなもの、絶対家じゃ使わないって。
まっすぐ居間に案内されて、でかいテレビや高そうなソファやテーブルにビビった俺は
「お前の部屋は?」
なんて聞いてた(図々しい奴だと思われたかな……)。
俺の言葉に今井はあいまいな顔をして、
「今すごく汚いから……」
って言ったけど、たぶんそれはウソだろう。だって居間や廊下とかはすごく綺麗に掃除されてたし、昔から清潔なイメージしかない今井の部屋が俺の部屋みたいに汚いなんてことはないだろうから。
俺を部屋に入れたくないような理由でもあったんだろうか?

家に帰ってきて一息ついたら、今井と話したことを全然覚えてないことに気づいて驚いた。俺……今井となに話したんだっけ? 妙なこと口走ったりしてなかったよな……?
でも、帰り際に断られるのを覚悟しつつ「また来てもいいか?」って聞いたら、今井がすんなり「いいよ」って応えてくれたのはちゃんと覚えてる(当たり前か?)。
最後に携帯の番号と携帯メールのアドレスを教えてきたけど(俺も教えてもらった)、向こうから連絡きたりはしないだろうな〜きっと。
……じゃあ俺からはいつ連絡すればいいんだろう。 一週間とか二週間後じゃ「またかよ」って思われちゃうかなぁ。

しかしあいつ、やっぱり病人みたいな顔色してたよな。
……気になってること全部聞けばよかった。






4月6日(日)
今井が泣いてる夢を見た。
あいつが泣いてるとこなんて一度も見たことないのに……なんか妙にリアルな夢で、飛び起きたとき心臓がどきどきしてた。

もしかして、虫の知らせとか?
今井に何かあるんだろうか?






4月6日(日)
明日は入学式がある。
俺は別に登校する必要ないんだけど、部活もあるし結局学校には行かなきゃいけない。
高校に入学して、もう1年たっちゃったんだな。
中学を卒業してから1年か。……あっというまだな。
このままあっというまに卒業ってことになるのかと思うとちょっと怖い。

今井はもう進路のこととか決めてるのかな。
俺、全然考えてなかったから……これから大変かも(考えたくない……)。






4月7日(月)
部活で学校に行ったら、校門に入学式が終わって校内案内されてる1年がけっこういた。
あんまり興味なかったからすぐに部室に行ったけど、やじ馬根性丸出しで見に行った奴らいわく、「今年は可愛い女の子がけっこういた」らしい。
……そんなこと聞いても俺は全然興味ないけど。
今は彼女作ったりするより、部活やったり勉強したり、ダチと遊んでるほうが楽しいもんな。

そういえば、今井って彼女いるのかな。






4月9日(水)
1年の歓迎会があって、そのときに部活の紹介をした。
毎年「2年は全員参加」って義務みたいなものらしいから仕方なく参加したけど、あんなにたくさんの人間の前でダンクしろって言われても緊張するって!
……もちろん成功させたけどさ。

その宣伝の効果があったのか、それともうちの学校の評判を聞いて入ってきたのか(うちはレベル高いからな)、イキのよさそうな奴らがさっそく見学に来てた。
体格のデカイ奴もいたし、レギュラー落とされないように頑張らないとな。






4月10日(木)
クラスの女子が、ゴシップネタが載ってる女性誌(おばさんとかが読んでるイメージが強いんだけどな)を見てた。
ちょうど脇を通り過ぎたときにその雑誌の開かれたページの『ゲイ』って文字が目に飛び込んできて、なんでかわかんないけど気になって立ち止まってしまった。
そしたらその雑誌を見てたうちの1人(1年のときにも同じクラスだった内田だった)が「どうしたの、橋本君?」って声をかけてきて。
俺焦っちゃって、「べ、別に、なんでもないっ」って慌てて言ってそこを離れた。
ゲイってあれだよな? 同性愛の……男の場合は『ホモ』っていう……。
なんで俺あんな文字に反応しちまったんだろう?






4月15日(火)
塾の帰りに今井を見かけた。
サラリーマンみたいな男と一緒に歩いてて、でも仲がいいってわけじゃないみたいでつまんなそうな顔だった(今井のほうは。サラリーマンのほうはへらへら笑ってた)。
今井はまた顔色がよくなくて、人ごみでちょっとよろけたらそのサラリーマンがキザったらしい動きで肩なんて抱きやがった(普通そんなことするか?)。
2人はそのまま細い道に入っていって、俺は他の奴らもいたから追いかけることもできなくてただ見送ってしまった。

今井と一緒に歩いてた奴、一時期流行ってた『援交』の相手なんじゃないかって思った。
だって、全然今井とつり合うような奴じゃなかったし。
なんか……すげーショックだった。

あいつ、あれじゃ絶対ダメになる!!





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