Sou's Diary… 2月後半

←2月前半 3月前半→

一番下が新しい書き込みです。上から順に読んでください。


2月16日(日)
溝は埋まらない



どんなに頑張っても

どんなに欲しても

どんなに伝えようとしても



あの人の目に僕の姿は映らない



僕にはどうしていいのかわからない

本当は求めてるのに





2月18日(火)
街に出かけたら、中学のときに仲のよかった連中に会った。
会ったっていうか、見かけた。

あいつらは同じ学校に通ってるから今でもつるんでるみたいだ。
付き合いのなくなったのは……俺だけか。


昔はよかった
昔はこんな気持ちになることもなかった
どうしてこんなことになったんだろう

俺が何をしたっていうんだ
俺だけがこんな目にあうなんて


求めているものは全部 この手をすり抜けていく





2月19日(水)
たまたまクスリの持ち合わせがなくて
バーで知り合った男にもらったのをその場で飲んだら
バッドトリップしてしまった

目が回るような 身体がふわふわと浮き上がるような感じがして
そのうちに全身を針でちくちくと刺されているような痛みが走って
息が上がって仕方なくて 自分の心臓の音だけが耳元でばくばく音を立てていて
結局道端で気を失ってた(店から出なきゃよかった)

気づいたら そのバーでそのクスリを僕にくれた男が僕をホテルに連れ込んでいて
その頃にはクスリの効果もほとんどなくなってたから しっかり気持ちよくしてもらった


粗悪品はやっぱり身体によくないってことだよな
今後は気をつけよう……






2月21日(金)
街に出てすぐに一人の男に声をかけられた。
「悪いんだが、ちょっと付き合ってくれないか?」
そんな気障なセリフを口走ったのに気取った感じはなくて、『紳士』って敬称がぴったりのその人はちょっと僕の好みで。
どんなとこに連れてかれるのか不安はあったけど、そのままフラフラとついていった。

その人が僕を連れて行ったのは、小さな洋食屋だった。
すでに2人分で予約してあったのか、席についてすぐにコースディナーが出てきて、たわいない話をしながらそれを食べた。なかなか味のいい料理は高そうなワインと合っていて、久しぶりに楽しい時間が過ごせた。

店を出て、このままホテルにでも行くのかと思っていたら、その人は突然こんなことを言った。

「今日は妻と一人息子の命日なんだよ」

なんでもその人の奥さんと息子さんは、三年前の今日に事故で亡くなったらしい。
その人が仕事に行っている間に家が家事になって、全焼した家の焼け跡から2人の焼死体が見つかったんだって。
今は一人暮らしをしているその人は、2人の命日に2人の好きだったあの洋食屋で食事をするようにしているんだって。
1人で食べるのは味気ないからと、去年と一昨年はあの店のシェフが彼に付き合って一緒に食事をしてくれたらしいけど(シェフは事情を全部知ってるらしい)、今年は僕を見かけてつい声をかけてしまった、と。
どうやら僕は彼の息子さんに似ているらしい。

「あの頃に戻りたいよ」
寂しそうに呟いたその人の横顔が誰かを彷彿とさせるようで 見ていられなかった。


帰り際に「ありがとう」って笑ってくれたその人に、僕も「ありがとう」って言っておいた。

きっとあの人は僕が『夕飯おごってくれてありがとう』って言ったんだと思ってるかもしれないけど……
それ以上の気持ちをこめて言ったんだってことは、自分だけが知ってればいいことだ。






2月22日(土)
男のくせに男を堪能できるなんて
こんなに楽しいことはない

女の身体なんかに興味はない
俺が好きなのは男のごつごつした身体だけなんだから





他に何もなくていい

男の人肌が楽しめればそれで






2月23日(日)
寝ている間に泣いていることがある
どんな夢を見て泣いてるのか全然覚えていないけど
そういう日は 無性にクスリが欲しくなる


このあいだ買ったクスリがもうおわってしまった

今夜また買いに行かないと…………






2月25日(火)
あの人とのセックスが終わって どうしてもクスリが欲しくて
まだ午前中だってのに家に帰ってきてしまった


このぼんやりとした感じが好きだ
何も考えなくていいような気分になれるのが好きだ
これだからやめられないんだよな






2月26日(水)
あと少しで手が届きそうなのに


走っても 手を伸ばしても 届かないものがある



あれが手に入らないからだ
こんなに孤独になるのは



幸せになりたいわけじゃない


ただ認めてほしいだけなんだ
             ……あなたに






2月27日(木)
3年の卒業が近づいてきた。
進級して二年になっても……今と何も変わらないんだろうな。

とはいえ。
目の上のこぶが減る分、足元にまとわりつく虫けらが増えるのは……今からとても憂鬱だけど。

仕方がないから
 あの人が一年の中にお気に入りを見つけてくれることだけを願おう。






2月28日(金)
今日は月に一度の訪問日。
──誰のって、父さんの。

いつものように突然やって来て、
ドタドタと居間に入ってくると金を投げ捨てて、
そのまま帰ろうとしたところを
「父さん」
と呼び止めてみた。


すると父さんは僕のことをじろっと見下ろしただけで。

「……なんでもない」

結局話すことなんか何もなくてそう言うと
一言もしゃべらないまま帰っていった。


あんな目で見るくらいなら直接会いに来なければいいのに



僕のことが嫌いなら
僕のことが憎いなら



──あのとき
       どうして僕を殺さなかったの?





<BACK>