田島×勇蔵
熱いまぐわい
(前編)


 目が覚めると、俺の尊敬する人物のうちの1人が、俺を見下ろして笑っていた。
「よく寝てたな」
「え……?」
『にこにこ』というよりは『にやにや』といった笑い方で上着を脱いでいたのは、田島の兄貴。組の中で俺が今一番行動を共にすることが多い人だ(シマの巡回や、兄貴が会合とかでどこかに行くときは俺も必ずついていく)。
 その人が、なんで俺を見下ろしてるんだ? 俺と兄貴の身長差はそんなにないはずなのに。……っていうか、俺、どこかに寝かされてる?
「あ……兄貴?」
「寝顔もけっこう可愛かったんだな、お前。知らなかったよ」
 突然の状況に戸惑って兄貴を見上げた俺に、兄貴は意味不明なことを言ってくる。
 細くて長い指先が俺の顎を捕え、上向かせるように軽く上に持ち上げられた。今までにそんなことをされたことがなかった(当然だが)俺は、照れくさくなって兄貴の顔から視線を外そうとして――兄貴の力強い手に阻止された。
「どっ、どうしたんすか、兄貴? ここはいったい……」
 いつのまに寝てしまったのかとあたりを見まわそうとして、両腕が動かないことに気づく。手首を何かで固定されているような、そんな感じ。
(な、なんだ……?)
 無理やり顔を横に向けると、黒いごわごわとしたものが視界に入ってきて。何かと思ってじっと見ていると、それは自分のわき毛だった。
 つまり俺の両腕は、肩より高い部分にあるってことで。
(なんでだ? どうして両腕上げて寝てるんだ?)
 不自然すぎる格好で寝たせいで腕が動かなくなってしまったのかとも思ったが、それにしたって少しも動かないのはおかしい。
 俺は自分の腕がどうなっているのか気になり、ブリッジをするときのように腰を浮かして頭上を見た。
 ――すると。
「こ…これはっ!?」
 なんと腕が動かないのは、縄のようなもので両手首をベッドに縛りつけられていたからだったのだ!
「ええっっ!?」
 ぎっちりと締めつけられていて動けないのに、焦って起きあがろうとして――さらにぎょっとした。
「なっ、なんで裸なんすか、俺!?」
 顔を上げたときにわき毛が見えたから上半身は何も着てないってわかってたし、下半身もやけにスースーするなとは思ってたけど……ま、まさかパンツまで穿いてないとは……!!
「な、なんすかこれっ、兄貴っっ!」
「なにって、いい格好じゃん。けっこう鍛えてるんだな」
 ネクタイを外し、俺の寝ているベッドに座った兄貴は、右手を伸ばして俺の腹を撫でてきた。
「ひっ!!」
 くすぐったい……というよりは、ぞわぞわと鳥肌が立つような感覚が肌を走り、そしてそれは兄貴にもしっかり伝わっていたらしい。
「そんなに恐がるなよ。痛いことなんて何もしてないだろ?」
 爽やかすぎる笑顔が言って、右手はさらに動いて首筋や唇やほっぺたにつつつーっと走る。
 そうすることで俺の恐怖心が倍増するとわかっているんじゃないだろうか。でなきゃ、あんなに嬉しそうな顔にならないはずだっ!!
 兄貴は目を白黒させている俺を尻目に、さらに左手まで伸ばしてきてまさぐるように触れてきて。
「ふーん、お前けっこう薄いのな、上の毛も下の毛も」
 エアコンの風を受けてそよそよとなびいていたわき毛をじょりじょりと触られて、「わあぁ!」とみっともない声をあげてしまった俺。は、初めて他人にわき毛触られたああぁぁっっ!!
「そ、そんなところいじらないでください、兄貴!!」
「なんで。けっこう気持ちよくないか? わきの下も性感帯の一つなんだぜ?」
「それはっ! そうかもしれないっすけどっっ!!」
(こ、このままだと、身をもって知ることになってしまいそうなんだよぉぉぉっ!!)
 とはさすがに言えず、けど俺の心配は、形となって兄貴にも知られてしまった。
「ああ、なんだ。感じてんじゃん」
「あっ! ちょっ、わ、あっ!!」
 わき毛を触られてわーわー騒いでいた俺の顔を覗き込んでいた兄貴は、ふいに流した視線の先に勃起しはじめている俺のチンポを見つけて、嬉しそうに笑った。そしてためらいもなく、半勃ちチンポを掴んできて。
「あにっ、兄貴! き、汚いっすから、触んないでくださいよっ!!」
「なーに言ってんの? 女にはいつもしゃぶらせてんだろ?」
「いや、それはそうっすけど……!!」
 尊敬する兄貴の手を汚してしまうなんて、そんなのは死んでも許されることじゃない!!
 だけど兄貴は俺のチンポから手を離さなかった。
「やっ、あ、あにきっ……そんなこと──!!」
「ん? 気持ちいいか?」
「ぎぃぁ……あうっ・ぐくぅっ!」
 親指と人差し指がカリの下部をつまみ、残りの指は幹に絡まってきて。カリ下の皮をつままれたまま手を上下に動かされて、食いしばった歯の間から呻き声が洩れてしまった。
 急激に大きくなっていくチンポに、兄貴は「ほお〜」と感心したような声を上げる。
「やっぱ立派なモンじゃねーか。固いし太いしカリも張ってるし。どんだけ女泣かしてきてんだ?」
「がっ……あ、あにっぎ……っ」
「感度もいいなぁ。女のマ●コに突っ込んだ瞬間射精したことはないだろうなぁ?」
「ぞっ、ぞれは……!」
 まさしく図星を突かれて、全身がびしっと固まってしまう。そんな情けないのは、初めてしたときだけだけどなっ!!
「ま、若いときは誰しもそうだからな」
 兄貴は軽く笑いながら、俺の胸板を擦りながらチンポを扱く動きを続けた。
「がはっ……あ、あああぁ……」
 女にしてもらうより、全然気持ちいい。それは兄貴が男で、チンポのどこをどうされれば気持ちよくなるのか知っているせいかもしれないけど。
 兄貴にそんなことをさせているなんて、他の奴らに知られたら殺されてしまうんじゃないだろうか、俺。
 組の中には田島の兄貴を慕っている奴はたくさんいて、本気で兄貴に「抱かれたい」と言っている奴も多くいるんだ(どいつもこいつも兄貴よりむさくるしいナリしてるけどな)。
「う、むっ、ううう……!!」
 とろとろと、自分のチンポの先から生暖かいものが流れ始めているのに気づく。きっと流れている液は兄貴の手まで汚してしまっているんだろう。でも、そう考えることが俺の気持ちをさらに高まらせて。
 兄貴の手に自らチンポを擦りつけるように腰が浮いてしまう。……というより、腰と尻が浮いてしまった。
(ダメだ……感じる……っ!)
 ここまできたらもう隠すことなんてできない。兄貴に扱かれて感じまくって、もう……限界が近いってことを。
「あにきぃっっ、もう、ダメっす……!!」
「ん? 何が駄目だって?」
「も、もう……イカせて、くださいぃ!!」
 半分泣きそうになりながら、それでも必死で『お願い』をしてみる。──とはいえ、このままイカせてもらえるなんてことはありえない。兄貴の性格からして、絶対に。
 田島の兄貴がそんなに優しい性格ではないということを、俺は日常生活からひしひしと感じとっていた。
 なんというか……『サド』? うん、その言葉がぴったりなくらい、兄貴は他人をいたぶったり追いつめたりするのが好きらしいんだ。
 ──ってことは、もしかしたらこのまま兄貴のサドっ気が大爆発???
(どうなっちまうんだ、俺!?)
 感じまくりのままそんな恐ろしいことを思い出した俺は、一気にチンポが萎えてくれないかと心底願った。 
 が、もちろんそんなに都合よく性欲はコントロールできず。
「まだイカせない〜〜♪」
 歌うように言った兄貴の声に、やっぱりそうかと肩を落としたのだった。
「あにっ、あにぎぃぃ〜〜!!」
「そんな情けない声出してもだ〜め」
「んぐっ……あ、あぐぅうっ!!」
 楽しげな声とは裏腹にさらに激しく扱かれて、たまらない快感に身体を大きく揺すってしまう。まるで、まな板の上で踊る鮮魚のように(さぞかしマヌケな絵だろうな……)。
「ははは、いいぞ、勇蔵。タマもぶらぶら揺れてるぞ〜」
「やだっ、そんな…のっっ」
 とは言ったものの、兄貴の言う通り俺のキンタマは、兄貴の手の動きに合わせてぶらんぶらんと揺れていた。恥ずかしいけど実際に見なくてもその様子が目に浮かぶようだ(くぅぅ、ホントに恥ずかしい!!)。
 手が使えないのはどれだけ不便なのことなのか、こんなことで知ることになるなんて……!!
「も……っ、かんべんしてくださいっ!」
 苦しいのと恥ずかしいのと、それ以外のいろいろな感情が俺を混乱させ、気づけば頬には熱い水がだーだーと流れていた。人前で泣くのなんて、子供の頃だって数えるほどしかなかったのに。
「泣くなよ勇蔵。気持ちよすぎておかしくなっちまうか?」
「はっ…はひっ……んっ」
「はは、そこで頷くんか。素直な奴は好きだぜ」
 なんて言いながら、兄貴の攻撃は一向に止まる気配がない。も、もしかしたら、このままずっとイカせてもらえないなんてこと……ないよな!?
「ああ、ああぁ…だめ、だめ、す……ぁあああっ」
 目の前がちかちか点滅しはじめて、呼吸が一気に苦しくなる。イク寸前の兆候だ。
「ったく、堪え性がねぇなぁ」
 呆れたような声が耳の側でして、俺のチンポをなだめるようにきゅっきゅっと握ってから、
「イカせてほしけりゃ仰向けになりな」
 そう言って、兄貴はヒモでベッドに縛りつけられていた俺の手首を外してくれた。ただし、左だけ。
「ほら、身体反転させろって」
 チンポから手を離され、ベッドに横たわらせていた身体の背の下に手を入れられて、勢いよく横にごろんと転がされる。俺は慌てて兄貴の言う通りに身体を仰向けにさせて、勃起したチンポが布団を汚したらまずいだろうとへんなところに気を遣い正座しようとした。
 だけどヒモはそこまで長くなく、四つんばいのような姿勢のまま動けなくなってしまったのだ。なんてマヌケな格好だぁあ〜〜!!
 焦ってヒモのくくりつけられているベッドの端に膝で這っていこうとしたら、背後から突然足首を掴まれて。
「ああ、ちょうどいい態勢だな、それ。そのまま手ぇついて這えよ」
「ちょっ……えっ!?」
「早くしろ。もっとケツ上げんだよ」
 ぴしり! と音を立てて尻を叩かれ、ひっと呻いて尻の位置を高くした。ああ、こんなことがあっていいのか……!!
「おら、早くしろって」
「は……はひっ」
 裸のままでいいから今すぐ逃げ出したいけど、兄貴に逆らうことなどできるわけがない。逆らったが最後、自分がどうなってしまうか……なんとなく予想はついているのだ(そりゃもう恐ろしいものが!!)
「もっと足開けよ。大事なとこが見えねぇだろ?」
「はっ……はいぃっっ」
「処女じゃあるめぇし、トロトロすんな!」
「は、はうぅ……っ」
(そりゃ確かに女じゃないけど、尻の穴を見られるのは初めてだってば〜〜!!)
 心の中で叫びつつ、兄貴の声が少しだけ低くなったのを聞き逃さなかった俺は、黙って兄貴に従った。
 機嫌が悪くなったときって、どうしてみんな声が低くなるんだろう。……特に田島の兄貴は、いつも明るい声だから少しトーンが落とされただけで怖さ倍増なんだ。
 肌触りのいいシーツの上に膝を滑らせ、ゆっくりとその場所を兄貴の眼前にさらしていく。勃起したチンポはヨダレを垂らしたまま腹に張りついて──プランプランと揺れているキンタマが、なんだかすごく切ない……。
「……おお、そうだ。いーい感じに丸見えだぞ」
 高々とかかげた俺の尻たぶをぺたぺたと触りまくる兄貴。兄貴の言葉に一気に顔が熱くなる俺。丸見えって……丸見えって…………恥ずかしいぃぃっっ!!
「くくっ、ケツ穴ひくひくしてんぞ、勇蔵。いじられたことあんのか?」
「ない、ないっですぅ……ぅ」
 開かされた足の間に、エアコンから出てくる空気が触れてくる。それは尻の穴までまんべんなく当たってきて、汗で湿っていたそこが乾いてひきつれはじめた。
「あ……あ、ああ……」
 ガマン汁を垂れ長し続けているチンポも少しずつ乾きはじめてしまい、皮のひきつれる感じが堪えられなくて、ヒモから解放された右手を伸ばしてチンポに触れてしまった。
 それを目ざとく(ってすごく失礼な言い方だけど)見ていた兄貴は、さっきの何倍かの勢いで唐突に尻を打ってきて!
「いぎっっっ!!」
 ビチンッ!という音とともに右の尻たぶに激痛が走り、反射的に腰が引けたところをがっしりと押さえつけられる。や、やっぱりこの人はサドだあ!!
「だーれが触っていいって言った? 行儀が悪い奴だな」
「す、すみませ……っ!」
「……ったく、油断も隙もねぇな」
 兄貴は俺の手をしっしっと振り払うと、再び勃起しきった俺のチンポをにぎにぎしはじめる。も、もう死んでしまう……かもしれない。
 なんで俺、さっき兄貴が手を離した間に射精しなかったんだ!? ……そりゃ射精しちまったら、今頃兄貴に死ぬほど攻められてるかもしれないけど──一度イッたのと全然イカせてもらえないのとでは苦しさが違うから、やっぱり射精しておくべきだったんだろう!
「おら、もっと気持ちよくしてやっからケツ穴開けよ」
 蛇の生殺し状態に耐えられず、かといって抵抗することもできずにぐったりとうなだれていると、兄貴がすぐに俺のチンポから手を離して立ち上がるのが気配でわかった。尻の穴は……どうやったら開けるのかわからないから従うことなどできなかったが(当然だろ!?)。
「っと、まだイクなよ? 浅く息してりゃもう少し我慢できんだろ」
 軽口とともに衣擦れのような音が断続的にして、そのうちに金属の触れ合うような音もして。「ジジジッ」と、これまた聞き慣れた音がした頃には、それらがなんの音なのか俺にもわかっていた。
 これは……兄貴が服を脱いでる音、だ…………。


さあ後半へGO!

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