Haruna's Diary 4月後半

一番上が新しい書き込みです。

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4月30日(火)
 お母さんにカミングアウトするのと、マスターに告白するのと、どっちを先にするべきだろう???
 どっちもどっちって感じだけど……どっちも同じくらい言うのに勇気が必要だ。
 マスターに告白したらフラれるのがおちだし、お母さんにカミングアウトしたら……縁を切られるだけ、かな。

 うううっ、どっちも絶対うまくいかないよぉおおお〜〜!!

 い、胃が痛い…………。

4月27日(土)
 いろいろ考えてたら頭が痛くなってきて、仕事に行ってもずっとぼ〜っとしてた気がする。
 お客さんにも「はるなくん、調子悪いの?」って聞かれまくるし。
 悩みが多すぎるのって疲れるんだな。今までこんなにたくさん悩んだことなかったからわからなかったけど……。
 けど、これからのことはちゃんと考えて、しっかりお母さんにも伝えないといけないしな。

 いつかは俺は男が好きなんだってこと、言うべきだよな……。

4月24日(水)
 お母さんに電話して、おとといはあんな態度をとっちゃってごめんって謝った。
 お母さんは
「ううん、お母さんのほうこそ、いきなりあんな話して悪かったのよ。春那が驚くのも無理なかったわよね」
って俺のことを怒らないでくれて、だから俺も泣きそうになるのをぐっとこらえて言ったんだ。
「前田さんと、幸せになってね」って。
 そしたらお母さんのほうが泣いちゃって(声を出して泣いたわけじゃないけど、電話ごしにそんな気配がした)、「生意気なこと言わないでよ」って言われた。俺、あんまりそういうこと言わないから、お母さんも照れくさかったのかもしれないな(俺もすごく恥ずかしかったけど)。
 そしたらお母さんが急にまじめな声になって、「春那、家に戻って来ないの?」って聞かれてしまった。
「前田さんから援助していただいたし、少しずつだけどお店も元通りになりはじめてるから、春那がそんなに頑張って働かなくても大丈夫なのよ? 学校に行きたいなら今からでも行っていいんだからね」
 なんて言われて、ちょっと戸惑ってしまった。
 俺、高校行ってないし、どこか行きたい学校があるわけでもないし、そんなことちっとも考えたことなかったけど……もしかしたらお母さんは、俺に学校とか行ってほしかったのかな? 俺、全然その気なかったけど。
 とりあえず家に戻ることとか学校のこととかは考えておくって言って電話をきったけど、考えてもすぐには答えが出ないような気がする。……どうしようかな。

4月23日(火)
 昨日のこともあってなんだか気分がのらなくて、仕事を早退させてもらった(店もヒマだったし)。
 それで、やっぱりどうしてもマスターに会いたくて、Oasisに行ってしまった。
 給料日前だからかOasisも人が少なめで、マスターに話しかけてくる人もいなかったから、俺がずっとマスターを独占してた。……なんてね(照)。
 マスターは、俺が話したいことがあるって思ってたのに気づいてくれて、
「何かあったんですか?」
 って聞いてきてくれたんだ。
 だから俺は昨日のことをマスターに話した。それと……今まで誰にも言えずにいたことも。

 俺のお父さんは俺が生まれる直前に事故で死んでしまって、お母さんはクラブのママとして働きながら俺を育ててくれたこと。
 だけど不景気のせいで店の売り上げが落ちて、お母さんがすごく苦労してるのを知って、俺にも何かできないかと思い高校には行かずに働き始めたこと。
 俺のために毎日ご飯を作ったり洗濯してくれるお母さんの負担を軽くしてあげたくて1人暮らしを始めて、給料のいい夜の仕事を始めたこと(お母さんにはそのことをナイショにしてるってこと)。


 マスターは俺の話を最後まで聞いてくれて、
「はるなさんは本当にお母さんのことが好きなんですね」
 って、ひやかしとかじゃなく言って、優しく笑ってくれた。
 だけど、
「長い人生を一緒に歩んでくれるパートナーがいてくれたほうが、きっと毎日楽しく過ごせるとは思いませんか?」
 って言われて……確かにその通りだなって思ったんだ。
 俺はもうお母さんのいるあの家に戻ることはないかもしれない(帰りたいとは思うけど、俺もそろそろ独立しないといけないしさ)。そうすると、お母さんのことをずっと守ってくれる人がいたほうが安心だ。
 昨日のお母さんは幸せそうな顔をしてた。つまり、あの人と一緒にいれば、お母さんは幸せな気持ちになれるってことで……。
 認めたくないような気もしたけど、でも、反対し続けることはできないんだなって考えて、ちょっと泣きそうになりながら、マスターに宣言したんだ。
「お母さんの見初めた人なら間違いないだろうし……今度ちゃんと謝って、あの人にも挨拶してきます」
 俺の言葉に頷いてくれたマスターはやっぱり頼りになる人だなって思った。俺の話を真剣に聞いてくれて、アドバイスもしてくれたマスターを今まで以上に好きになっちゃったよ(大照!!)。

 全部話せてすっきりしたら、突然あることが気になっちゃって
「マスターも、パートナーがいてくれたほうがいいなって思うんですか?」
 なんて、思わず聞いちゃった。
 そしたらマスター、
「ええ、そうですね」
 って……どきどきしちゃうような笑顔で答えたんだ。
 でも、「その相手はもういるんですか?」なんてことは聞けなかった。……だって、やっぱり恥ずかしくて。

Oasisに行ってるくらいだし、俺が「そう」だってこと知ってるかもしれないけど……そう簡単には「好きです」なんて言えないよ。
 だって俺、告白ってしたことないし……(このあいだいつきくんに告白されたけどさ)。
 拒絶されたらどうしようなんて考えたらどうすることもできないような気もするけど、まだ、もうちょっとだけ、勇気をためないとなぁ。
 とりあえず明日お母さんに電話して謝ろう。あの人との結婚も、賛成だよって言ってあげないとな。

4月22日(月)
 今日は仕事が休みだったのに、ものすごく慌ただしい1日だった。

 昨日の夜、お母さんから突然電話がきて、「明日夕飯食べに行かない?」って誘われて、特に用事はなかったからOKして銀座のレストランで待ち合わせした。
 久しぶりに会うからバカみたいにうきうきして約束の店に行ったら、待ち合わせた時間より早かったけどお母さんは先に来てて。お母さんの隣に知らないおじさんが座ってて、その人に気づいた瞬間足が止まってた。
「早く座って、春那」って促されたから動けたけど、声をかけられなかったらきっとそのまま固まっていたかもしれない。
 俺が席についたらさっそく料理が出てきて、お母さんが俺におじさんを、おじさんに俺を紹介した。
 そのおじさんの名前は『前田いさみ(漢字がわからなかった)』っていって、ちょっと前からお母さんのお店に援助金を出してくれてるらしい。
 そんな人をなんで俺と会わせたのか。その理由くらい、考えなくても嫌でもわかった。
 わかったけど、言ってほしくなかった。

「ママね、この人と……結婚しようと思ってるの」
 思ってた通りのことを言われて、一瞬頭が真っ白になっちゃって。
 持っていたナイフとフォークを落として大きな音をさせちゃって、それで我に返って
「ごめん、用事思い出したから帰る」
 なんて言って帰ってきちゃった……。
 お母さんも、あのおじさんも、気分悪くしちゃっただろうな。

 今まで考えたこともなかった。お母さんがお父さん以外の人のことを好きになるなんて。
 お父さんがどんな人だったのか俺は知らないけど、写真の中のお父さんはいつも笑顔で、お母さんのことを見てる目とか、すごく優しそうで。
 あのおじさんもいい人なのかもしれないけど、でも俺のお父さんよりは全然みりょくなさそうなのに。

 どうしよう。
 お母さんが幸せになるなら、反対するつもりはないんだけど……。
 けど、あの人がどんな人なのかもよくわかんないのに、手放しで喜んだりできないよ。
 お母さんの結婚相手ってことは、俺のお父さんになるってことでもあるんだから。

 ううううううう。。。。
 だめだ〜〜〜〜どうしたらいいんだろ。
 考えても浮かんでこないよー!!


 マスターに、会いたいなぁ……。

4月20日(土)
 突然ミツルさんから電話がきて、「仕事が終わったらOasisへ来い」って言われて、なんだろうとどきどきしながら行ってみた。
 そしたらミツルさんの他にレイジさんやヨリトさんやミキさんもいて、仕事で行ってきたフランスのおみやげを広げてパーティをしていた(ブランドものとか大量に買ってきたみたい。スーツやバックとかの数がすごかった)。
 なんでそんなところに俺を呼んでくれたのかと不思議に思ったけど、もしかしたらミツルさんが俺に気をつかってくれたのかなと考えて(俺がマスターのことをミツルさんに聞いちゃったから)、だったらぜひともこのチャンスをものにしなくちゃって、勇気を出してマスターに話しかけた。
 お酒飲んだりご飯食べたりしながら、けっこう長い時間話してたんだけど。
 …………でも、家に帰ってきたら、なにを話したのか全然覚えてなかったんだ。
 思い出せることといえば、マスターの優しい笑顔とか、自分がひきつった笑い方をしてたなとか、ミツルさんがときどき意味深な笑顔を俺にしてきたこととか、そんなんばっかで。
 すごく緊張してたんだろうけど……そんなのって…………(涙)。
 こんなこと、初めてだよ……。

4月18日(木)
 ミツルさんがまた俺の店に遊びに来てくれた!
 ミツルさんが店に入ってきたのを見たときから『ヘルプでいいから席につかせてくれ〜〜!』と心の中で願ってたら、ミツルさんとばっちり目があって。
「はるな指名〜〜!」
 ってミツルさんが言ってくれたから、すぐに席につけた。すごくラッキーだった。
 でもすぐには聞けなくて、どう切り出したらいいのか考えながらもじもじしてたら、ミツルさんのほうが気づいてくれて
「はるな、俺になんか聞きたいことあんの?」
 って言ってくれたんだ。
 恥ずかしかったけど、せっかくのチャンスだし、こんなときしか聞けないと思って、
「あの、Oasisのマスターのことを聞きたいんですけど」
 と小さな声で言ってみた。そしたらミツルさんは大きな目を見開いて俺の顔をじっと見て。
 それからにやっと笑って、「ははーん、そういうこと?」と言われて赤くなっちゃった。カン良すぎだよ、ミツルさんってば。
 それでもミツルさんは意地悪しないで知ってることを話してくれた。
 マスターの名前は杉原篤志さん。年は48歳で、タイキさんが言ってた通り独身だって。
 ホモではないけど、もう10年以上前からあの街でOasisをやってるらしい(10年前は「Oasis City」って名前じゃなかったみたいだけど)。
 ミツルさんにも好きな人がいるかどうかはわからなくて、
「マスターと知り合ってからけっこう経つけど、マスターの恋人って一度も見たことないなぁ」
 って言ってた。隠してるだけなのか、それとも本当にいないのか……どっちなんだろう。すごく気になる。
 だけどミツルさんに、すごく気になることを言われてしまった。
「あの店に来るお客の半分以上はマスター目当てだと思うよ」
 だって!!!!
 確かにマスターはすごくいい人だし、みんなに優しくて細かい心配りができる人だし、ただのお客の俺のことをすごく心配してくれたし(ストーカーさわぎのとき)、だからそれもわかるけど。
 わかるけど……いやだなぁ。
 俺だけの優しいマスターでいてほしい、なんて思うのは、自分勝手な証拠だよな……(自己嫌悪)。

 ミツルさんはそれ以外にも、マスターの好きなものだとか趣味とかいろいろ教えてくれた。ちゃかされたりもしたけど、でも「諦めろよ」とか「お前には無理だ」とかは全然言わなくて。
 ミツルさんて、明るくて元気いっぱいで、ときどき無邪気なところもある人だけど、本当は大人なんだな……って思った。俺みたいな子供の話もちゃんと聞いてくれて、いろいろ教えてくれりして、本当にいい人だ。

 ミツルさんが帰るときに、
「はるなってファザコンだったんだな」
 って言い残していったんだけど……俺が、ファザコンだって?
 父親がいなかった俺には、それって『どういうこと?』って感じなんだけど……ミツルさんが言いたかったのは、俺のマスターへの気持ちが恋愛のそれとは違うって言いたかったんだろうか?

 ……そんなこと、絶対ないんだけどな。

4月17日(火)
 どうしたらマスターと仲良くなれるんだろう。
 仲良く……っていうか、自分の気持ちを伝えられるんだろう。
 今の状態で気持ちを伝えたってうまくいきっこないんだけど、でも毎日毎日気持ちだけがつのってきて、苦しくて仕方なくなってきてる。
 今日仕事前にOasisへ行こうかなって思ったんだけど、やっぱり行けなかったし。マスターに会って顔を見たら……きっとまともには話せないだろうから。
 でも…………ホントは、会いたいんだ。会って、笑いかけてもらえたら…それだけで幸せになれるんだけどな。

 好き。好き。好きだよ、マスター。

 好きって書くだけでこんなにどきどきしてるのに……これからどうしたらいいのかなぁ。。。。。



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