Last UpDate (09/09/19)
「お茶良し、お座布団良し、ブラシ良し……」
数多の世界を内包する「全ての空」。そこに浮かぶに雲の上に存在する、神々の住まう地「神天楼閣(ルタサシス)」。
その片隅、一軒の平屋でエメラルドグリーンの美しい髪の美女が、大きなリュックサックを前にいそいそと荷物のチェックをしていた。
はち切れんばかりの身体を隠すのは緑のレオタード。首と肩から羽織ったマントは短く、背に伸びているため、レオタードからこぼれそうな胸元を隠していない。
左足の太ももに装着された銀のリングは特殊な紋様を施した銀の魔具だが、その存在が彼女の下半身へと視線を誘導してしまう。
右脚だけのニーソックス、左腕だけのロング手袋…左右非対称の服装が目を引き、その視線の高さ故に過剰な色気を感じる。
「Erina、待っててね。すぐに会いに行くから!」
しかし、むんっと全身で取ったガッツポーズは、色気と言うよりも彼女の可愛らしさを優先させる。
仕草もどちらかというと子供っぽく、その身体とのギャップが、彼女の明るく、快活な性格を際だたせていた。
彼女は魔法の神第二位「魔導女神」マリヤ。
常に神々の人気ランキングでトップ10にランクインする人気者だ。
今、彼女は旅に出る仕度をしている。
この家には彼女の他に、彼女にとって家族とも言える女の子、Erinaが一緒に住んでいたのだが、 ある日、すぐに戻るつもりで出かけたところ、行く先々でファンや信者に引っ張りだこで、行事や願いを叶えたりと時間を費やし、帰るのに数年かかってしまった。
とはいえ、神であるマリヤや、神の技術で作り出されたスーパーロボであるErinaにとって、数年は瞬きする程度の時間。留守番しているErinaへのお土産を手に家に帰った。
しかしまた、数年とは、出かけた家族を心配して探しに行くには十分な時間でもある。
家に帰りついた彼女は、テレビの画面に張られた書き置きを見て、Erinaもまた出かけたことを知った。
それから 数年……家を一歩も出ることなく待ったマリヤだったが、さすがに居ても立ってもいられなくなり、現在に至る。
「さあ、準備万端。Erina探知機も持った! いざ出発!」
「ピコンピコン」と音のする銀色球形の探知機を大事に抱え、
「いってきます!」
Erinaとの思い出に後ろ髪を惹かれる思いで赤い屋根の平屋を後にした。
それがこれから始まる、長い長い旅の第一歩であるとも知らずに……。