「愚かなる弱者どもよ、我が支配を受け入れるがよい!」

完膚無きまでに叩きのめした龍族の刺客を前に腕を組み、命ずる「邪神」ティアマット。
例え命を狙う相手であったとしても、自らの世界を破滅に追いやった相手であっても、彼女は命を奪うことはしなかった。
種族性の為に戦う哀れな龍族を思ってか、それとも何かを画策してのことなのか……。その真意を知るのは、彼女と彼女の側近のみである。

……

かつて、自らの世界を滅ぼされながらも生き残った彼女に対し、龍族の女王は、追撃を命じた。
それが気まぐれだったのか、母と同じ名を持つ神が憎い故だったのか、その時龍女王は、異常なまでの執着を見せていた。
次々と差し向けられる龍族の実力者達に、最初はただ逃げまどうのみだったティアマット。

しかし、ある時を境に彼女は攻勢に転じた。

蒼き星へと降りたティアマットは、現地住民である明星みなも、鏑屋夕美、桜乃そららと共に、龍族の追っ手を撃退したのだ。
蒼き星への道は龍族達には解らない。彼女は安住の地を得るも、傷が癒えるのを待つと、再び龍族達が居る原初の地へと舞い戻った。

原初の地で龍族と相対したティアマットは提案した。

「わらわが勝ち、汝らが生き残った時は、汝らはわらわの下僕となるのじゃ。負ける気が無いのであれば、この条件、飲めような?」

他にも、言葉巧みに龍族達と約束を取り付ける。
多くの刺客が送られたが、彼女はその全てを撃破し、下僕を増やし続けた。
時には戦場に現れ、戦場を制圧し、その傘下に加える。こうして出来た軍を、その無差別とも言える行動から、いつしか人々は「邪神軍」と呼ぶようになった。
我が儘勝手に力を振るう神、「邪神」ティアマットの軍団として……。

……

地に伏し、すでに立ち上がる力もなくなってしまった龍族の刺客の前で、ティアマットは手を振り上げた。
その手には青白い光が宿る。答えが返らず、業を煮やしたのかとどめの一撃に違いない。
手が振り下ろされ、刺客は覚悟を決めた。……しかし、

「なに、無償(ただ)で、とは言わぬ。我が軍オリジナルのこの邪神印まんじゅうを付けよう!」

ニッコリと微笑む邪神。これは天使か、悪魔のささやきか……?

「このまま死ぬなど許さぬぞ? どうせ捨てる命なら、わらわのために使うのだ! それが、負けた汝の義務じゃからな!」

こうして今日も、邪神軍に新たなメンバーが加わるのだった。

(勇者屋キャラ辞典:「邪神」ティアマット
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