「わらわだけ、生き残ってしまったか……」

自虐的な笑みを浮かべ、自らの世界……。
自らの過ちで滅ぼしてしまった世界を見下ろす者、創世を司る神、ティアマット。

「貴女さえいれば、また幾度でも世界は再生させられます。次は造物主の邪魔などさせませぬ」

主の暴走に気づき、それを止めるために奮闘した、彼女の側近たる、ラ・ムール。彼がいなければ、ティアマットも生き残ることは難しかった。
いつも強く人々を導き続けた主を、その忠義を持って守り抜いた彼には、今の彼女の心は痛いほど解っていた。それでも、立ち止まらせるわけにはいかない。主が、振り返り、動けなくならないように。

「今は「始まりの地」で御身をお休め下さい。ティアマット様」

全てを滅ぼしかけたティアマット。
その彼女を、異界の勇者達と協力して「世界の根幹たる始まりの大地」へと打ち付け、縫いつけた槍、グングニル。その槍の化身、シンフォニア。
誰よりも世界を愛し、誰よりも命を愛した神を貫いた痛みは一生消えることは無いだろう。

「大丈夫じゃ。命も、世界も、全てわらわの中に戻っただけ。全てを失ったわけではない」

穏やかな顔で、二人を見るティアマット。その目には、迷いや悲しみはすでになかった。


「わらわにはお主達がおる。それに、わらわ達は守り、導く世界をすでに見つけておるではないか」

空を見上げ、大地を踏みしめ、宣言する。

「この始まりの地(プロパテール)を我が大地とし、この世界に生きる全ての者を、造物主から守り抜いてみせようぞ!」

造物主の造反により、多くの世界が滅ぼされ、その住民達が新たな世界を求め、この「始まりの地」にたどり着く。その殆どが互いに争い、利権を求め合う。

その全てを諫め、導く。過ちは繰り返さない。繰り返させない。

「世界に生きる全ての者に、わらわは誓おう。この世界は、守る……必ず!」


小さな体が背負った決意は、決して揺らぐことのない、何者にも譲れない、彼女の願いだった。
(勇者屋キャラ辞典:ティアマット
文:若菜綺目羅
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