Music:HOTEL CALIFORNIA/EAGLES

[1976年の名盤]
1976年の出来事へ


No Reason To Cry/Eric Clapton
1976年
ノー・リーズン・トゥ・クライ
 レコード会社の関係で、トム・ダウドにプロデュースしてもらえなかったことが幸いして、これまでにない非常に面白いアルバムになってます。プロデュースは、クレジットでは、ロブ・フラボニとなってますが、ほとんどクラプトンとカール・レイドルが好き勝手にやったんじゃないのって思わせます。録音は、ザ・バンドのメンバーらとともにシャングリラ・スタジオ(LA)で行われ、まさにクラプトン・バンド・ミーツ・ザ・バンドという音になってます。
 リチャード・マニュエルとリック・ダンコの共作のザ・バンド的ナンバー「ビューティフル・シング」をオープニングに持ってきて、ロビー・ロバートソンとのツイン・ギターでは、クラプトンもいつになく艶やかな音色で敬意を表しているかのようです。ボブ・ディランとのデュエットがあったり、マーシー・レヴィのリード・ヴォーカルをフィーチュアしたり、楽し気なお祭り気分を感じさせてくれます。
 セッションには、ディラン、ザ・バンドの他にロン・ウッド、ジェシ・エド・デイヴィス、スティーヴ・ウィンウッドらが参加しているようですが、アルバム未収録テイクがたくさんあるらしいので、将来のリイシューが楽しみ(老後のお楽しみ?)な一枚です。


Year Of The Cat/Al Stewart
1976年
イヤー・オヴ・ザ・キャット
もともとフォーク系のアーティストであったアル・ステュワートですが、アラン・パーソンズのプロデュースによるこのアルバムは、非常に洗練されたポップ・ロックに仕上がっています。メローなウエスト・コースト・ロック的な爽やかなサウンドの中に見え隠れするメランコリックな陰りがイギリス人らしいところなのでしょうか?時代はそろそろAORがぽつぽつ出始めたころであり、このアルバムも良質なAORとして聞くことも可能です。それくらいまろやかな歌とサウンドを聞かせてくれます。持っていて損はない1枚ですよ。


Certified Live/Dave Mason
1976年
ライヴ〜情念
トラフィックで2枚のアルバムに参加後アメリカに渡り、ウエスト・コーストを拠点としてソロ活動を続けていたデイヴ・メイソンの絶頂期の傑作ライヴです。それまでのキャリアの集大成としてもとらえることができます。
トラフィック時代の曲やイーグルスの「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」、ボブ・ディランの「見張り塔からずっと」などのカヴァーからオリジナル曲まで、あるいはファンキーなロックから爽やかなアコースティック・サウンドまでヴァラエティに富んだ演奏になっていますが、3連符を多用した独特のデイヴ・メイソン節ともいえるギター、男っぽいヴォーカルをメインに、バック・バンドもこなれたタイトな演奏で盛り上げています。特にギターのジム・クリューガーとのギター・アンサンブルがひとつの聞きものになっています。


Fire Fall/Fire Fall
1976年
ファイア・フォール・デヴュー!
元フライング・ブリトウ・ブラザースのリック・ロバーツと元バーズのマイク・クラークが結成したファイア・フォールの1stアルバム。マナサスのレパートリーでもあったリック・ロバーツ作の「イット・ダズント・マター」をはじめ、イーグルスを別格とすれば、カントリー・ロック、フォーク・ロックの発展型といえるウエスト・コースト・ロックという様式のひとつの完成といえる作品集となっています。爽やかなコーラス、アコースティック・ギターの刻みに対してエッジの効いたエレクトリック・ギター、タイトな8ビートなどジャケットの美しさをそのまま音にしたような完成度を誇っています。しかし、その後の彼等はじょじょにハードなサウンドを指向していったのはちょっと惜しいことでした。


Takin' It to The Street/Doobie Brothers
1976年
ドゥービー・ストリート
6作目にして新生ドゥービーの第1弾。前作よりギターにジェフ・バクスターが加わり、本作ではマイケル・マクドナルドが加入し、看板のトム・ジョンストンが健康上の理由でほぼ脱退に近い状況となり、音のほうも がらりとイメチェンという問題作です。マイケル・マクドナルドが完全に主導権をとったブルー・アイド・ソウル的サウンドとなるのですが、以外とパット・シモンズががんばっており、曲づくりもさることながらジェフ・バクスターに負けじと歯切れの良いクリアなギター・サウンドは聞きものです。


Hotel California/Eagles
ホテル・カリフォルニア
前作「呪われた夜」ですでにスーパー・グループとしての地位を手に入れたイーグルスですが、今作からギターにジョー・ウォルシュを加えさらなるサウンドの強化を図りました。結果としてタイトル曲に見られるようにドン・フェルダーとのロック史に残るツイン・リード・ギターの掛け合いを生みだすなど、最高傑作として完成度の高い作品となりました。アメリカ建国200年の年の終わりに、今までの曲とは一転して、カリフォルニア幻想の終焉を歌うこのアルバムで一つの歴史が終わったとわかったのは、それからしばらくしてからのことでした。


The Pretender/Jackson Browne
プリテンダー
「ホテル・カリフォルニア」の1ヶ月前に発表されました。どことなく似た雰囲気を持っているのは、時代の空気のせいでしょうか。このアルバムでは、ジョン・ランドウをプロデューサーに迎え、前作に比べて力強くモダンになりました。制作中に夫人の自殺と言う悲劇がありながらも、それを作品のなかで克服するという強さが感じられます。いづれにせよもはや、カリフォルニアは明るいブルー・スカイの世界ではなくなってしまいました。


Chicken Skin Music/Ry Cooder
チキン・スキン・ミュージック
渋いスライド・ギターの名手。'74年の「パラダイス・アンド・ランチ」からのテックス・メックスに加え、ハワイアンなども交えアメリカン・ミュージックのルーツ的ノスタルジックな心暖まる音をさりげなく、自分のものにしています。アメリカのことは本当はよくわかりませんが、このアルバムを聞くと知らないくせに古き良きアメリカに思いをはせてしまいます。このアルバムもバーボンを飲みながら聞きたいですね。


Boston/Boston
幻想飛行
MIT出身の秀才トム・シュルツを中心として、このアルバムで衝撃的にデヴューしました。ギターとコラースの重厚なハーモニーが特徴で、ハードながらポップなメロディの曲をスペーシーなサウンドで展開し一躍スーパー・グループになってしまいました。おなじようなセカンド・アルバムを'78年に発表してからは8年に1枚というペースの超寡作状態になり、今だに4枚のアルバムしか発表していません。しかし発表すれば以前と同じスタイルなのにまたヒットしてしまうというマーケッティングに長けた不思議なバンドです。


Rocks/Aerosmith
ロックス
倉庫で録音されたという4作目は、エアロスミスをアメリカを代表するハード・ロック・バンドに押し上げた名作。ヘヴィなロックン・ロールでありながら粗雑にならずポップでメロディアスなところが魅力です。

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