Music:YOU AIN'T SEEN NOTHING YET/BUCHMAN TURNER OVERDRIVE/

[1974年の名盤]
1974年の出来事へ


461 Ocean Boulevard/Eric Clapton
1974年
461 オーシャン・ブールヴァード
 「レイラ」以降麻薬中毒に陥っていたクラプトンの復活作。また、レイラことパティへの横恋慕も実り、ずいぶんこざっぱりしたクラプトンになりました。
 「レイラ」のようなレイドバックしながらも、ギターを弾きまくるクラプトンを期待していたファンには、肩すかしをくらったような感じでしたが、マイアミ録音のせいかリラックスしたギターが曲に溶け込んでいます。当時、クラプトンのソロ・パートが極端に少なかったので、ギター弾けなくなったんじゃないの?って真剣に心配したのですね。今じゃ笑い話しですが...。
 プロデューサーは『レイラ』に引き続きトム・ダウドです。新生クラプトン・バンドは、ベースのカール・レイドル以外は一新され、クラプトン念願のツイン・ギターの相棒として、どこからかジョージ・テリーという若者?が選ばれ、ドラムスにジャミー・オルデイカー、キーボードにディック・シムズ、バック・コーラスにはイヴォンヌ・エリマンという構成で、以後クラプトンを70年代を通してサポートしていくことになります。
 『エリック・クラプトン・ソロ』の「アフター・ミッドナイト」を彷佛させるアップテンポの「マザーレス・チルドレン」で幕を開けるこのアルバムは、随分大人になったクラプトンを感じ取ることができます。取りあえず精神的なマイナス要素を乗り越え、吹っ切れたような感じとでもいうべきなのか、必要以上にソロ・パートは取らず、バンドのまとまりと歌を聞かせることに徹するクラプトンがここにはいます。
 「ギヴ・ミー・ストレングス」、「レット・イット・グロー」、ボブ・マーレーの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」などの名曲を揃えたこのアルバムは、ある意味では、『レイラ』を超えているのではと思わせるものがあります。また、『エリック・クラプトン・ソロ』でのデラニー&ボニー&フレンズとの経験がこのアルバムから本当に生かされているような気もします。


Any More For Any More/Ronnie Lane & Slim Chance
1974年
エニィモア・フォー・エニィモア
元フェイセズのベーシストのロニー・レインですが、97年に亡くなってしまいました。このアルバムは全盛期のフェイセズ脱退後の1stソロ・アルバムです。
ここで聞かれる音は、フェイセズでもちらっと聞くことができたノスタルジックな路線をさらに押進めたアメリカン・ルーツ・ミュージック的なレイド・バックしたものになっています。アコースティック・ベースのサウンドをバックにちょっとジョージ・ハリソンの面影を感じさせるロニーのヴォーカルは味わい深く(ちょっとたよりなげなところが、またいい?)、英国の香りもそこはかとなく感じさせてくれます。


Court And Spark/Joni Mitchell
1974年
コート・アンド・スパーク
ウエスト・コーストの女王的存在のジョニですが、このアルバムは、弾き語り的シンガー・ソング・ライターのイメージを完全に払拭する作品といえます。誰よりも個性的なジョニのヴォーカルは、変幻自在で芸術的でさえあります。バックには、ジョー・サンプル、ラリー・カールトンなどのフュージョン系のアーティストを配し、ハイライトの「ヘルプ・ミー」をはじめ、フォーク、ロック、ジャズとジャンルを超越して、ジョニの声は自由に伸びやかに飛び交います。


Phoebe Snow/Phoebe Snow
1974年
サンフランシスコ・ベイ・ブルース〜ブルースの妖精
デヴュー作にして早くも風格すら感じさせるフィービ・スノウは、ニューヨーク出身のブルース・シンガーでレオン・ラッセルに見い出されました。自らブルージーなアコースティック・ギターをこなし、フォーク、ブルース、ジャズを高次元の音世界として消化してしまう恐るべき才能を感じることができます。ボブ・ジェームス、ラルフ・マクドナルドといったジャズ・フュージョン系のミュージシャンをバックに、シンプルかつアコースティックな空間のなかで、個性的な歌を聞かせてくれます。デイヴ・メイスンやデヴィッド・ブロムバーグなどもゲスト参加しています。


Average White Band/Average White Band
1974年
アヴェレージ・ホワイト・バンド
イギリス出身の驚異の白人ファンク・バンド、アベレージ・ホワイト・バンドの2作目。アリフ・マーディンのプロデュースのもと非常に完成度の高いブラック・コンテンポラリー・ミュージックをつくりあげています。さすがにまだチョッパー奏法はやってませんが...。シングル・ヒットしたファンキーでキャッチーなインストルメンタル・ナンバー「ピック・アップ・ザ・ピーセズ」が有名ですが、他は全て、メローなナンバーも交えながらタイトなリズムのソウルフルなボーカル・ナンバーで占められています。アラン・ゴーリーとヘイミッシュ・ステュワートの才能が光っています。黙って聞かされたら絶対黒人が演ってると思うでしょうね。それくらいハンパじゃなくなり切っています。ソウル、ファンク・ファン以外にもお薦めしたいお洒落な1枚ですね〜。


Fulfillingness' First Finale/Stevie Wonder
1974年
ファースト・フィナーレ
一般にいう「トーキング・ブック」からの3部作の最終章であり、モータウンの中で一人のアーティストとして自立するという70年代前半を締めくくる1枚です。全体的にはスロー・ナンバーの間に、ファンキーなポップ・ナンバーがちりばめられていて非常にリラックスした印象です。交通事故からの復帰作ということもあり、ステーヴィーの半生を表現したというジャケットのアート・ワークが意味深いものを感じさせます。


What Were Once Vices Are Now Habits/Doobie Brothers
1974年
ドゥービー天国
最盛期の4作目。大ヒット曲「ブラック・ウォーター」を収録。前作「キャプテン・アンド・ミー」に比べると地味な印象ですが、内容は格段に洗練されています。ハードなジャンプ・ナンバーからアコースティックな曲まで、個性的なドゥービー節を乗せて実にクオリティの高い演奏といえます。


I Can Stand A Little Rain/Joe Cocker
1974年
ユー・アー・ソー・ビューティフル
酒とドラッグに溺れていたジョー・コッカーの復活作。ハイライトはやはりビリー・プレストン(ビートルズの映画「レット・イット・ビー」でキーボードを弾いていた。)作のスロー・バラード「美し過ぎて」でしょう。バックの面々も一流のスタジオ・ミュージシャン(ジェイ・グレイドン、レイ・パーカー・Jr、ジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ペイチ、ニッキー・ホプキンスなど)で固め、渋い骨太のAOR的アルバムになっています。


Dance With Me/Orleans
ダンス・ウィズ・ミー
名前の通りニュー・オリンズの音楽に影響を受けたイースト・コーストのバンド。リトル・フィートと並び称せらましたが、オーリアンズのほうがよりウエスト・コースト的でした。このアルバムはセカンド・アルバムですが、なぜかオクラ入となり、レコード会社を移籍して取り直したサード・アルバム「歌こそすべて」からのシングル・カット「ダンス・ウィズ・ミー」がヒットしました。したがってこのアルバムは、今でこそCDで手に入りますが、しばらくの間幻の名盤でした。音のほうは、かすかな南部の香を持った、カントリー臭くないウエスト・コースト・サウンドといった趣です。


On The Border/Eagles
オン・ザ・ボーダー
録音途中でプロデューサーをビル・シムジクに交代し、ギターにドン・フェルダーを加えた転換期の作品。音の幅は広がり、ポップにハードにファンキーになりました。本格的ギター・バンドへの兆しが見えます。


Late For The Sky/Jackson Browne
レイト・フォー・ザ・スカイ
イーグルスと同じアサイラム・レーベルのシンガー・ソング・ライターの3作目。デヴィッド・リンドレーを中心としたバンドはまとまりがよく、サウンドの幅を広げつつあったイーグルスに比べ、狭い意味でのウエスト・コースト・サウンドらしさがあります。優しいヴォーカルとナチュラルな音が心地よく響ます。


Sheer Heart Attack/Queen
シアー・ハート・アタック
3枚目のアルバムです。前2作で早くもスタイルを確立した感がありましたが、この作品ではメンバーそれぞれの個性が現われたヴァラエティに富んだ構成になっています。まだ素材感の失われていないピュアな印象がします。そしていよいよ次作では...。


Not Fragile/Buchman Turner Overdrive
ノット・フラジャイル
もとゲス・フーのランディ・バックマンが結成したB.T.O.の3作目。ヘヴィな面と軽快な面とを合わせ持つ彼等の魅力が良く出ています。特にメロディアスともいえるサイド・ギターのカッティングは、非常に気持ちが良いです。「恋のめまい」、「ハイウェイをぶっ飛ばせ」という代表的ヒットを収録。

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