二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めた。
一人は白濁を見た。
一人は星を見た。


2002年夏コミ体験記 〜葉桜〜

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<0日目> 試される大地

ギャルゲーマーYU-SHOWが萌え野郎としての人生を歩み始めて、早10数年。
地方在住のオタとしてはとりたてて珍しいことでもないだろうが、俺はこれまでコミケに行ったことはなく、
今回が初参加。コミケ童貞の卒業である。

出立はコミケ前日の8月8日。飛行機で当地に赴くことに。
離陸前、新千歳空港にて荷物検査を受ける。
それっぽいアイテムはなるべく隠していたつもりが、
「きたえろ〜北海道エロゲー連盟」の袋を検査員に発見されるという恥辱をこうむる。

思わず顔を覆いたくなるも、その袋の中には、
「も、漏れてしまう……」「お前の膀胱が人質だ!」で有名な、
『悪だくみ』というゲームの特製ノートが入っていた
ことを考えると、
むしろ袋だけで済んだことを幸いと思うべきなのかもしれない。
(ちなみにその素敵ノートはK(仮称)氏へのおみやげ)

「荷物は……衣類と、あと……」問題のブツをも気にせず、荷物を個々にチェックする検査員。
「ええ。あと、その……私物」恥ずかしそうに付け加える俺。
「あ――ハハ」俺の言葉を受けて、微笑する検査員の方。

――知られた気がする。俺が、どういう目的で東京へ赴くのか。

その検査員を良く見ると、密かに「いかにも夏コミ会場で見かけそうな」風体の人である。
ひょっとすると、この人は「友」なのかもしれない。
エロゲを楽しみ、オタイベントに熱中することのできるような。
ともすれば、俺と同じキャラに萌えた経験のある「穴兄弟(ブラザー)」ですらあるかも知れない。

「では、良い旅を」検査員の方が荷物チェックを終えた。
もちろん、単なる俺の思い込みである可能性宇宙は否定しきれない。
だが、それでも俺は、この人が同好の士であると思いたかった。
「どうも」それだけ言い残して、俺は乗降口へと赴いた。
――心の中では、もっと熱い言葉を残したいと思いながら。
(貴方のぶんまで、闘ってきます)
そのまま飛行機に乗り込み、そして、俺の体は北海道の大地から離れた――


<0日目> 男爵とマヨイガと白濁液

羽田空港に到着。さすがに暑い。
待ち合い広場にて、迎えにきてくれるという関口雄助氏を待つことに。
待っている間、なにやら新興宗教っぽい独特な衣装に身を包んだ淑女の方々が闊歩しているのを見かけ、
さすがは東京だなあと、ある意味で感心したりした。

しばらくして、関口氏がやってくるのを発見。
一人ではない。誰か、俺の見知らぬ人物を連れている。
少々いぶかしみながらも、とりあえず関口氏に挨拶する。

「こちらの方は?」
「あー……。えーと、その、なんだ」

なぜか言いよどむ関口氏。どういうことだろう。
困惑しつつも、その人物に目をやる。
なにやら、若返り、現代風のいでたちに身を包んだツェペリ男爵、といった感じの人だ。
とりあえず「はじめまして」と挨拶する。
にこやかな笑顔を向けてくれるツェペリ男爵(仮称)。しかしまだ、彼が誰なのかは分からない。

まあ――実のところこの時点で、この男爵が誰なのかなんとなく分かってはいたのだが、
なにぶん地方から出てきたばかりの俺のようなオタには多分にonanisticなところがあり、
きちんと名前を追求することができずじまいだった。
しかしとりあえず、「マヨイガ」などの単語が通じることから、穴兄弟であることだけは確かな様子。
人類皆穴兄弟。穴兄弟である以上、友好を保つべき紳士であることは間違いない。

空港を後にし、男爵(仮称)と関口氏とともに、秋葉原へ出発。
なにはともあれ秋葉原である。
車内にて、男爵(仮称)とともにマヨイガ談義に華を咲かせる。
雪さんが粗相を行ったシーツの色素沈着具合について激しく意見を交わしつつ、
ふと傍らを見ると、関口氏がなにやら寂しそうにしていた。

「この国(マヨイガ)では犬耳など知らぬ、通じぬ」

きっと、遠まわしにそう言われている気がするのだろう。
(関口雄助氏は、自サイトのurlが<~karin/nyamo/>になっているほどの花梨たん派ァハァです)
実際にはもちろんそのような事は無い。花梨が強烈な萌えであることを俺は全く完全に否定できない。
だが、あえてフォローは行わず、逆にエロメガネの話題を振って、ある種の追い討ちをかけることに。
関口氏の表情が悲しみにつつまれた。
(関口雄助氏は、生まれて初めてプレイしたエロゲー『Piaキャロットへようこそ!』の雪子というキャラが実は
 眼鏡キャラだったことがとてつもなくショックで、それがトラウマになってしまったという悲しい過去を持っています)

「犬耳マンセー」

ぽつりとつぶやいた彼の一言が、大都会の喧騒にかき消されていった。


<0日目> 秋葉原で昼食を

――生まれて初めて、秋葉原の地を踏みしめた。
さすがにオタクの聖地と呼ばれる街である。歩いているだけでどきどきわくわくする!
なにがどきどきわくわくかというと、ふと店内を見たりすると、
「モータルコンバット最新作、秋発売予定!」などと書かれたポスターが普通に張られているあたりが特に。

しかしまあ、エロゲ系ショップの多いこと多いこと。
うかつに買い込むと、明日以降の資金が食いつぶされそうなので、物欲を必死に抑える。

「今、ものすごい目をしていましたよ」

後ろから関口氏に声をかけられる。
ふと気が付くと、すでに俺の手には数冊のシスプリエロ同人誌が。
恐ろしい、これが秋葉原――!
とにかく、炎天下の中、食事をとったり店をダラダラと回ったりと、秋葉原ウォークを楽しむ。

「ボークスへ行きましょう。そこには――」

そう言う男爵(仮称)に誘われるまま、フィギュア店がいくつも入っているビルに入ってみることに。
ん、ボークスというと……。

まさか!
「……(こくこく)」

エロ茜! あのエロ茜が俺のすぐそばに!
疾走(はし)る! そう、疾風(かぜ)のように!
しかし、いざ店に着いてみると、


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