3:さんかく▲すけーる
「HAPPY HAPPENING AND ACTION!」
1)はじめに

「さんかく▲スケール」のみなさん
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それではまず「さんかくすけーる」の皆さんにお話をうかがいたいと思います。
小林:「さんかくすけーる」の小林といいます。
メンバーは私と新村、足立の3人。大阪大学建築学科の大学院生です。
まずきっかけをお話します。
大学4年生になると、卒業研究というのがありまして、一応建築学科なので建築的なことをやります。その中でわたしたち3人に共通して感じていることがありました。フリーで入れるような場所でなんとなく自分がいていい感じにいられる場所、好きだなと思う場所、居心地のいい場所があんまりないなぁと。
逆にそういう場所にいるはずの人を見ても、なんだか座らされているような、気持ちよさそうじゃないな、疲れてしまってしょうがないから座っているというような感じがする場所が、大阪や都心部に多いんじゃないかなと思っていました。
阪大の鈴木毅先生が「居方」という言葉と概念をつくっています。「居方」とは、ある場所の中に居るときの様子、そのときの周囲の環境や様子や関わり方のことです。簡単に言うと、自分が居たときにどんな感じがするのか、人と居る時にどんな感じがするのか、どういうふうに見えるのか、私が感じるのか、そういうことだと思います。そのような視点で都市の場所やパブリックスペースを見ていこうと思っています。 |
2)なぜフリーペーパーか

HA*CTION創刊号
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昨年に学生に調査協力してもらって、実際の都市に人がいる空間をまとめました。それを学会ではなく、普通にまちで生活している人たちにも伝えられないかということで考えたのがフリーペーパーです。
いままで1年間、3ヶ月に1冊づつ出して活動しました。配布したり、喫茶店など置かせて頂いたり、「居方」という視点で写真展を行ったりしています。
何部かこちらに持ってきました。このカフェにもバックナンバーを置いていきます。フリーペーパーであればまちの中にこうやって置いていくことで、普通にみなさんに見ていただきたくことができます。
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3)フリーペーパー「HA*CTION」
・創刊号より

写真1-1
撮影:松窪 直人

写真1-2
撮影:阿部 玄
・第2号より

写真2
撮影:浪華 悟
・第3号より

写真3
撮影:北岡 賢
・第4号より

写真4
撮影:岩崎 巧
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今日は、あんまり建築、建築しないほうがいいかなということで、写真を交えて紹介していきたいと思います。
新村:では、フリーペーパーの中身のことについてお話させていただきます。
「HA*CTION」(ハクション)というのが僕らの活動のタイトルです。これは「ハッピーハプニングアンドアクション」という意味です。幸せな出来事はまちの中にたくさんあって、それをみつけたらいいんじゃないかと思ってつけました。今まで4号出していますが、号ごとに注目する切り口を変えています。その中では関西のいい感じに映る、見える場所の写真をメインに取り上げています。今日はその写真を例に挙げて「HA*CTION」の内容を説明していきたいと思います。
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創刊号はちょうどクリスマス前でしたので「カップル」にしました。カップルがどこにいるかを情報誌なんかを見て考えていましたが、こんな場所へ行っても面白くないだろというところしかなかったので自分たちで探しました。
例えばこの写真(写真1-1)ですが、あんまりべたべたしていないところがいいですね。距離感とあんまり人がいないせいか、立ち姿が仲良く見える。次の写真(写真1-2)はお年寄りのカップルです。お年寄りのカップルはなかなかいなくて、このカップルが普通にいけて僕らといてもおかしくない場所が、まちに増えればいいのではないかと思っています。
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2号は「リラックス」をテーマにしました。まちの中でリラックスできる場所はどういう場所なんだろうと思ってテーマに取り上げました。
この写真(写真2)がそうですが、広い空間にぽつんと一人でいるのはリラックスして見えるだろうし、その人もリラックスしているのかなという感じをうけます。広い場所、ここは淀川の河川敷ですけれども、淀川も非常に多くの場面がみられます。
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3号は、「一人でいられる場所」を特集しました。アンケートの結果から、一人でいる人はあまりいいかんじに見えないということが見えてきました。この写真(写真3)は神戸のハーバーランドです。海辺や水際はいいかんじとしてよく挙げられるもので、一人でいても絵になるというか、さまになるというのが、僕らの中ではいいなと思わせるものだったので紹介させていただきました。
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4号は「女性」を特集しました。これもアンケートの集計結果なのですが、女性が一人でいる場面は非常に少ない。その中で苦労はしましたが、いい写真を皆さんにお見せしたいと思います。これは女性の親子がいる場面です(写真4)。これも周りが広い空間ですね。これが男性の親子ではないから空間をよく見せているのではないかなと思います。
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4)“いい感じの場所”5つのキーワード

会場風景
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足立:都市の“いい場所”について、これまでの活動を通してわかったことを5つのキーワードに分類してまとめといたします。
1:距離
人と人との距離や、背景との距離感によって場所の印象は様々なのではないかと思っています。べたべたするのではなくて、少し距離を保つことによって親密さが出てくることもあるのではないかと思います。人がいる奥の背景に引きが出ることで、いる人がシルエットとして立つことも重要です。
2:個人の公共性
公的な空間にいるにも関わらず、家の中にいるようにくつろいでいたり、パブリックであることを感じさせないたくましさが私(観察者)に伝わってくることがあります。
3:曖昧でないこと
絶妙でバランスがいいこと、これには2重の意味が含まれてまして、1つはギャップやコントラストという言葉で表せるように明快な差異があること。フィットとかマッチに表されるように見事に溶け合っていること。どちらにしても曖昧でないことが重要ではないかと思います。
4:勝手な想像
観察者である私が勝手に想像を膨らませること。そこにいる人の個性であったり、背景との関係から私にまで何らかの感情が伝わり、気分を共有できる展が特徴的です。
鈴木先生の言葉に言い換えれば、「あなたがそこにそう居ることは私にとって意味がある」ということになると思います。気分を共有できる点が特徴的ではないかと思っています。
5:連鎖反応
1つの発見がまた次の発見を生むこと、他者を意味することからくる連鎖反応。まちはハッピーな出来事やサプライズな場面に溢れており、その中で瞬間的な魅力を感じること(ハプニング)に意義があり、そこから新しい「まちの見方」が生まれるのではないかと考えています。
小林:わたしたちは大阪を中心とする京阪神地域のいい感じに人がいる場面をたくさん撮り溜めてきました。今年度も継続して活動と研究を続けていきますが、ここにいらっしゃる方に私たちの活動について、お話や意見を聞かせていただけたらいいなと思います。
もともと、こうしたいああしたいがない中でスタートしたので、今後どうなっていくのかわかりませんが、代替わりも含めて、ひょっとしたら内容が変わるかもしれませんが、そういうことも含めてフリーペーパーは続けて行けたらいいのではないかと思います。
ありがとうございました。 |
6)ディスカッション

山崎さんと小林さんとのディスカッション |
質問者:「さんかくすけーる」という名前の由来ってなんですか?
小林:名前はですね、僕と新村の2人でどんな名前がいいかだらだらと話していたときに、たまたま筆箱に三角スケールが入ってたのがきっかけです。 |
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