vol.1 
2004/09/24(金) Common Cafeにて
「HAPPY HAPPENING AND ACTION!」
さんかく▲すけーる
(小林健治+新村岳広+足立祐己)


         Copyright by 阿部 玄

「パワープランニング」 
SPACESPACE(伊藤立平+香川貴範)

architects’ BAR 「けんちく本つくりたい人集まれ」の
第1回目。

まちの“いい感じに使われている”場所を収集、フリーペーパ
ーにまとめて紹介する活動を続けている「さんかく▲スケー
」。都市やけんちくの中にあらたなパラメーターを見出して
プロジェクトを作り続けている「SPACESPACE

の2グループを招いてお話をうかがいました。

“まちづくり”が流行語のように飛び交う昨今ではあります
が、抽象的な議論に終始し明確な方向性を示せていない“ま
ちづくり”も少なくありません。話を具体的に進めて行くために
は何か目に見える、誰にで共感できるネタのようなものが有
効でしょう。その点今回のゲスト二組はネタの設定がユニー
クかつ効果的です。

彼らのアイデアの他にもいろいろ“まちづくり”のネタはあるで
しょう。今回のイベントがお客さんそれぞれにまちを活き活き
させるネタを見つけるきっかけを与えてくれればうれしいです。

それでは当日の様子をどうぞ。
1:あいさつ

会場風景


3分の1くらいの人が建築以外の方々でした


原さんによるジャズ演奏

山崎:みなさま本日はお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございました。けんちくの手帖というタイトルで人がどれくらい来てくれるのか、すごく楽しみだったんですけれども、今日はこんなにたくさんの人に来ていただいて、非常にありがたいなぁと思っています。

建築じゃないけど来たという方がどれくらいいるのか知りたいので、手を挙げていただけますか?(3分の1くらいの人が手をあげる)。けっこう建築以外の分野から来られているようですね。

他にも建築に関するイベントはいくつかあるのですが、あっちは会議室で建築というものをきちんと突き詰めていこうというものなんですね。僕たち「けんちくの手帖」ではもっとやわらかく、一般の方にも開かれた形で話をしていきたいと思っています。

今回、原さんにジャズの演奏をしていただきました。何かけんちくを柔らかくしていくきっかけになればと思い、お願いしました。

それと今日はやっている最中でもどんどん注文して飲み食いしてくださいね。

また、後でディスカッションの時間も取っていますので、自由に話して頂きたいと思います。イベント終了後もカフェは営業しますのでもしよかったら、仲良くなった方同士でゆっくりしていっていただきたいなぁと考えています。
2:「けんちくの手帖」とは?

けんちくの手帖について語る司会の山崎さん



「環濠生活」
山崎:まず最初にどうして「けんちくの手帖」、そしてこのイベントをはじめたかを、僕の個人的な話を入れてお話したいと思います。

数年前、まちづくりをしている友人たちと一緒に堺市をフィールドに設計をしました。

その結果を「環濠生活」と一冊の冊子にまとめ、カフェや美容室など時間をゆっくり過ごせる場所に置いて、堺で生活している人たちに読んでもらうようにしました。するとまちの人たちからいくつかレスポンスが返ってきました。それをきっかけに僕らは活動を起こすことができました。自分の提案をまとめた本が建築以外の人との開かれた関わりを生んでいる、そんな感じがしています。


そんな話を今回の会場Common Cafeで吉永さんとしていたときに、実は吉永さんの知り合いでもこういう本つくっている人たちが結構いるということが話題になりました。その人たちが集まって、本を通してみんなで雑談みたいに話ができたらいいなと。そのときにカフェのマスターをしていた(*1)のが渡辺さんで、「じゃあ人を集めてイベントにしちゃいましょう」ということになって今日に至りました。

ここ1年の目標として毎回イベントの内容やあつまったけんちく本をまとめて冊子をを出版することを考えています。幸い今日は、デザイン系の人も来てくれているようですし、建築系の古本なんかも扱っている人にも来ていただいているので、販売、印刷、デザインを巻き込みながら何か面白いことができたらいいなと思っています。

*1:Common Cafeは日替わりでマスターが変わるカフェ。趣旨など詳しくはこちら

3:さんかく▲すけーる
「HAPPY HAPPENING AND ACTION!」

1)はじめに


「さんかく▲スケール」のみなさん


 それではまず「さんかくすけーる」の皆さんにお話をうかがいたいと思います。

小林:さんかくすけーる」の小林といいます。

メンバーは私と新村、足立の3人。大阪大学建築学科の大学院生です。

まずきっかけをお話します。

大学4年生になると、卒業研究というのがありまして、一応建築学科なので建築的なことをやります。その中でわたしたち3人に共通して感じていることがありました。フリーで入れるような場所でなんとなく自分がいていい感じにいられる場所、好きだなと思う場所、居心地のいい場所があんまりないなぁと。

逆にそういう場所にいるはずの人を見ても、なんだか座らされているような、気持ちよさそうじゃないな、疲れてしまってしょうがないから座っているというような感じがする場所が、大阪や都心部に多いんじゃないかなと思っていました。

阪大の鈴木毅先生が「居方」という言葉と概念をつくっています「居方」とは、ある場所の中に居るときの様子、そのときの周囲の環境や様子や関わり方のことです。簡単に言うと、自分が居たときにどんな感じがするのか、人と居る時にどんな感じがするのか、どういうふうに見えるのか、私が感じるのか、そういうことだと思います。そのような視点で都市の場所やパブリックスペースを見ていこうと思っています。
2)なぜフリーペーパーか


HA*CTION創刊号

 昨年に学生に調査協力してもらって、実際の都市に人がいる空間をまとめました。それを学会ではなく、普通にまちで生活している人たちにも伝えられないかということで考えたのがフリーペーパーです。

いままで1年間、3ヶ月に1冊づつ出して活動しました。配布したり、喫茶店など置かせて頂いたり、「居方」という視点で写真展を行ったりしています。

何部かこちらに持ってきました。このカフェにもバックナンバーを置いていきます。フリーペーパーであればまちの中にこうやって置いていくことで、普通にみなさんに見ていただきたくことができます。

3)フリーペーパー「HA*CTION」


・創刊号より

写真1-1
撮影:松窪 直人


写真1-2
撮影:阿部 玄

・第2号より

写真2
撮影:浪華 悟

・第3号より

写真3
撮影:北岡 賢

・第4号より

写真4
撮影:岩崎 巧
 今日は、あんまり建築、建築しないほうがいいかなということで、写真を交えて紹介していきたいと思います。

新村:では、フリーペーパーの中身のことについてお話させていただきます。

HA*CTION」(ハクション)というのが僕らの活動のタイトルです。これは「ハッピーハプニングアンドアクション」という意味です。幸せな出来事はまちの中にたくさんあって、それをみつけたらいいんじゃないかと思ってつけました。今まで4号出していますが、号ごとに注目する切り口を変えています。その中では関西のいい感じに映る、見える場所の写真をメインに取り上げています。今日はその写真を例に挙げて「HA*CTION」の内容を説明していきたいと思います。



創刊号はちょうどクリスマス前でしたので「カップル」にしました。カップルがどこにいるかを情報誌なんかを見て考えていましたが、こんな場所へ行っても面白くないだろというところしかなかったので自分たちで探しました。

例えばこの写真(写真1-1)ですが、あんまりべたべたしていないところがいいですね。距離感とあんまり人がいないせいか、立ち姿が仲良く見える。次の写真(写真1-2)はお年寄りのカップルです。お年寄りのカップルはなかなかいなくて、このカップルが普通にいけて僕らといてもおかしくない場所が、まちに増えればいいのではないかと思っています。



2号は「リラックス」をテーマにしました。まちの中でリラックスできる場所はどういう場所なんだろうと思ってテーマに取り上げました。

この写真(写真2)がそうですが、広い空間にぽつんと一人でいるのはリラックスして見えるだろうし、その人もリラックスしているのかなという感じをうけます。広い場所、ここは淀川の河川敷ですけれども、淀川も非常に多くの場面がみられます。



3号は、「一人でいられる場所」を特集しました。アンケートの結果から、一人でいる人はあまりいいかんじに見えないということが見えてきました。この写真(写真3)は神戸のハーバーランドです。海辺や水際はいいかんじとしてよく挙げられるもので、一人でいても絵になるというか、さまになるというのが、僕らの中ではいいなと思わせるものだったので紹介させていただきました。



4号は「女性」を特集しました。これもアンケートの集計結果なのですが、女性が一人でいる場面は非常に少ない。その中で苦労はしましたが、いい写真を皆さんにお見せしたいと思います。これは女性の親子がいる場面です(写真4)。これも周りが広い空間ですね。これが男性の親子ではないから空間をよく見せているのではないかなと思います。

4)“いい感じの場所”5つのキーワード


会場風景
足立:都市の“いい場所”について、これまでの活動を通してわかったことを5つのキーワードに分類してまとめといたします。

1:距離
人と人との距離や、背景との距離感によって場所の印象は様々なのではないかと思っています。べたべたするのではなくて、少し距離を保つことによって親密さが出てくることもあるのではないかと思います。人がいる奥の背景に引きが出ることで、いる人がシルエットとして立つことも重要です。

2:個人の公共性
公的な空間にいるにも関わらず、家の中にいるようにくつろいでいたり、パブリックであることを感じさせないたくましさが私(観察者)に伝わってくることがあります。

3:曖昧でないこと
絶妙でバランスがいいこと、これには2重の意味が含まれてまして、1つはギャップやコントラストという言葉で表せるように明快な差異があること。フィットとかマッチに表されるように見事に溶け合っていること。どちらにしても曖昧でないことが重要ではないかと思います。

4:勝手な想像
観察者である私が勝手に想像を膨らませること。そこにいる人の個性であったり、背景との関係から私にまで何らかの感情が伝わり、気分を共有できる展が特徴的です。

鈴木先生の言葉に言い換えれば、「あなたがそこにそう居ることは私にとって意味がある」ということになると思います。気分を共有できる点が特徴的ではないかと思っています。

5:連鎖反応
1つの発見がまた次の発見を生むこと、他者を意味することからくる連鎖反応。まちはハッピーな出来事やサプライズな場面に溢れており、その中で瞬間的な魅力を感じること(ハプニング)に意義があり、そこから新しい「まちの見方」が生まれるのではないかと考えています。


小林:わたしたちは大阪を中心とする京阪神地域のいい感じに人がいる場面をたくさん撮り溜めてきました。今年度も継続して活動と研究を続けていきますが、ここにいらっしゃる方に私たちの活動について、お話や意見を聞かせていただけたらいいなと思います。

もともと、こうしたいああしたいがない中でスタートしたので、今後どうなっていくのかわかりませんが、代替わりも含めて、ひょっとしたら内容が変わるかもしれませんが、そういうことも含めてフリーペーパーは続けて行けたらいいのではないかと思います。

ありがとうございました。
6)ディスカッション


山崎さんと小林さんとのディスカッション
質問者:「さんかくすけーる」という名前の由来ってなんですか?

小林:名前はですね、僕と新村の2人でどんな名前がいいかだらだらと話していたときに、たまたま筆箱に三角スケールが入ってたのがきっかけです。