■仮処分申請の概要
・仮処分申請の費用は着手金の100万円内外であるといえるであろう(当然概算)。
・印紙代はこれに比べて微々たるもので、問題とならない。
・成功報酬は、たいがい負ける(言い分の全ては認められない)ので必要ないと考えて良い。
・仮処分を行った地区では「仮処分だけであれば実行すべき」という意見が多い。
・ある地区では「訴えたければどうぞ!」と、強気であった事業者が、仮処分に踏み切るや「条件交渉」に応じる姿勢を見せた。
・原告が裁判官命令によって数個の住戸削減を勝ち取っているケースも見受けられる。
■本裁判の概要
・どの事例でも数百万の費用(開始段階に補償金として)が必要。
・大雑把には500万円〜1000万円。
・ただし「裁判官が住民に補償金を積ませて住民が負けたことはない」という心強い証言あり。
・住民側勝訴の場合、この補償金は返金される。
・印紙代上記に同じ。
この話題がこれまで不明確であった最大の理由は、この費用が弁護士のフィーであるため、弁護士自身もはっきりといいにくかったからなのではないだろうか。純粋な裁判費用は印紙代の8千円のみである。
■事例1・・・建設中止の仮処分申請(神奈川県)
弁護士費用 | 裁判費用 | 審理回数 | 結果 | 備考 | ||
着手金 | 成功報酬 | |||||
仮処分申請 | 100万円*1 | 100万円*2 | 8千円×資料枚数(印紙代) |
5回 |
指導*3 | 事業者は最初の審理段階から金銭和解を求めており、「手段」としては一定の効果ありも敗訴。 *4 |
本裁判 |
− |
− | − | − | − | 「本裁判は引き受けない」という条件で、仮処分申請の弁護を受託。 *5 |
*1 着手金は100万円程度(約5名程度で案分)
*2 成功報酬につき、住民負担費用は着手金の100万円のみ(印紙代は弁護士負担)
*3 裁判官から事業者へ「日照権を確保すべき」との指導
*4 「訴えるならばどうぞ」という態度の事業者も、審理が始まると一変、金銭和解を要望
*5 理由については不明も、採算が合わない(勝ち目無しとの判断?)と推察できる
■事例2・・・建設中止の仮処分申請(神奈川県)
弁護士費用 | 裁判費用 | 審理回数 | 結果 | 備考 | ||
着手金 | 成功報酬 | |||||
仮処分申請 | 150万円*1 | 150万円 | 8千円×資料枚数(印紙代) |
− |
− |
訴訟に踏み切らず。 |
本裁判 |
− |
− | − | − | − |
*1 着手金は弁護士2名、建築士1名に50万円ずつ。
■事例3・・・建設中止の仮処分申請(神奈川県)
弁護士費用 | 裁判費用 | 審理回数 | 結果 | 備考 | ||
着手金 | 成功報酬 | |||||
仮処分申請 | 不明 *1 | 不明 | 8千円×資料枚数(印紙代) |
− |
− |
敗訴 |
本裁判 |
不明 |
不明 | 同上 | − | − | 敗訴 |
*1 弁護士費用は「特別価格」とのことで、非公開
■まとめ
司法手続きに訴えた場合、住民の負担金額はいずれのケースでも(特別価格を除けば)、100万円単位となる。また、本文でも述べた通り、司法の分野単独の活動では問題の本質は解決できない。
こうした実例を踏まえて以下を提案する。
(1)安価な弁護士を探し、自分で裁判を行う・・・人任せで成功した事例があるだろうか
100万円は一つのガイドラインとなるであろう。上記に関わった弁護士も善意であるならば、「本件には3名程度の専門家が必要」などと言わず、一人で50万円にコストを減額する努力をすべきであろう。
本件に専門家が存在しないこと(専門の弁護士は勝率が有ってこそ名乗れるのでは?)は、先にも述べたが、若手で熱意のある弁護士で有れば能力的にも金銭的にも充分に対応できると考えられる。単純に友人の紹介に頼らず、「この人なら」という弁護士を捜す努力も必要であろう。
また、訴訟に踏み切ったとしても、それは時間稼ぎや部分的な解決にしかならないことであり、住民協定や代案の策定を平行して進めない限り、問題の本質は解決できない。
(2)街づくり協定(住民協定)の策定・・・地区計画のステップとして
協定の締結によって二つ目の問題発生を防止する事は、一つの物件の工事を差し止めるより地域にとって利益が大きい。
弁護(士)費用に100万円単位の金額を拠出するのであれば、その一部を街づくり協定(住民協定)の策定に使用し(参照)、住民負担を明らかにした上で行政支援を求める。(司法手続きはこれら交渉過程における手段としては充分に有効なものであり、その後の活動の布石ともなる。)
この程度の金額があれば、例え行政からの受注額を割り込んだとしても、社会的必要性を理解した上で住民をサポートする都市計画コンサルタントや街づくりの経験を持つ建築士は少なくないだろうし、この活動が法的対抗手段となりうる地区計画策定にまで及べば、今後の問題の発生はあり得ない。
現行の問題建築物も将来的な低層建替への可能性が大きく広がる。
ここで発生している「問題」とは自分の日照なのか、地域の環境なのか、住民として改めて考えるべきであろう。
■連絡先と費用負担
相談は建築・都市よろず問題相談所まで。当初のEメールによる相談は無料(メールはトップ頁からお願いします)。