ライナーノーツ

シングル・マン

RCサクセション

(1976.4)

 私がRCのファンになりたてのころ、再発売されたアルバム。私のもっているレコードには、「幻のアルバム、皆様のおかげで、いよいよ再発売。こんな素晴しいレコードを廃盤にしていて申し訳ありません。」という帯がついている。帯のうしろには、「シングル・マン再発にあたって」という記事がついていて、4年前に発売され廃盤になっていたが、今一度夜に出したいと考えたライターの吉見祐子さん他の熱意によって、昨年末より限定販売され、売れきれ、品切れ続出で、苦情が相次いだため、こうして、再発売される運びとなった、と記されている。ファンのなかでは名曲中の名曲といわれている「スローバラード」や「ヒッピーに捧ぐ」などが収録されていて、本当に宝石箱をこっそりあけたときのような感動を味わえる、名作中の名作アルバムといえるでしょう。確か、このころ、デビューした中川一彦くん( くらもちふさこの漫画にも登場していた。彼は今、どうしているんでしょうね?)が、初めて自分で買ったシングル版は「スローバラード」だったと、言っていた。アーティストのなかにも、このアルバムがお気に入り、という人は多いことと思う。

No. 曲 目 お気に入り度 作詞・作曲 コメント
1 ファンからの贈りもの 忌野清志郎 ♪贈り物をくれないかー ぼくに贈り物をくれないかー♪。というインパクトある歌いだしで始まる名曲。ラストの、♪つまらないものは ゴミ箱に捨てるぜぃぇぃぇぃ♪ってとこをはじめて聞いたときは、なんて失礼な奴なんだろうって思いましたけど、ユニークですよね。
2 大きな春子ちゃん 忌野清志郎 ♪大きな春子ちゃん わかっておくれ 大きな春子ちゃん 君が好きさ ぼくは小さな男だけれど 認めておくれよ♪。いやぁ、この曲、ぜーんぶ、好きですね。ボーカルがリンコさん。私がRCのライブにでかけるようになって、一度だけ、あるツアーでこの曲をやったことがある。リンコさんのボーカルがとってもせつなくて、いやぁ、ほんと、バリバリに大好きです。私はかなり大柄な女なもので、この曲を聴いていると、とってもうれしくなってきちゃう。♪ジャイアント馬場の奥さんになるのかい 大きな春子ちゃん ぼくではだめかい♪、なんて、言われると、ぜーんぜん、そんなことない。あなたが最高だよって思っちゃいます、マジに。
3 やさしさ 忌野清志郎 ♪誰もやさしくなんかない 君と同じさ いやらしいのさ 誰もやさしくなんかない だからせめて 汚いまねはやめようじゃないか♪。やさしい人だからもったいない。とか、そんなこと、言われてふられちゃったのかなぁ。途中の(ずるい、ずるい、ずるい、ずるい)ってとこがきいてますね。中途半端なやさしさなんかいらない。本当のことをズバッって言ったほうが、時には、ずっとやさしいこともあるんだよねーってこと、このアルバムを初めて聞いたころから思い始めたかなぁ・・。
4 ぼくはぼくの為に 忌野清志郎 ♪バーイバイ 君といたってしょうがない バーイバイ お別れにキスでもしようか 勘違いにまたがって 君は泣くことができる ぼくはおりるよ さようなら いつまでもお元気で♪。いきなりのはじまりがこれってーいうのは、すごいですよね。♪ぼくはぼくの為に ぼくはぼくの為だけに♪ってとこ、脳に強烈にインプットされますね。ぼくはぼくの為に、君といたって仕方がないからお別れしよう。このスタンス、けっこう自分と同じだったりするけど、そうやって、あとで後悔することもある。しょうもないことなんだけれど・・。
5 レコーディング・マン(のんびりしたり結論急いだり) 忌野清志郎 ♪ぼくはころばないで歩いた。♪。この曲の意味って、なんだかよくわかんないけど、でも、短いのになぜだか味がある。不思議な曲です。
6 夜の散歩をしないかね 忌野清志郎 ♪窓に君の影が ゆれるのが見えたから ぼくは口笛に いつもの歌を吹く♪。始まりからある夜の景色が、窓の下で彼女の影を見上げている清志郎の姿が想像されてとても素敵。ラストの♪今夜も二人で歩かないか 今夜も二人であ、る、か、ないかぁー♪ってとこが、すごーくいいですねー。清志郎さん、いつまでも続くような、それでいて全然暗いイメージのない夜のなか、こんな散歩がしてみたいです。
7 ヒッピーに捧ぐ 忌野清志郎 この曲のイントロが始まると、うわーって小さな歓声がもれて、みんな静かに座った。今日はなんだか得、しちゃったなって思った。お別れは突然やっていて  すぐに済んでしまった いつものような なにげない朝は 知らん顔してぼくを起こした 電車は動きだした 豚どもを乗せて ぼくを乗せて♪。突然の死がとても信じられない。でも、♪検屍官と市役所は君が 死んだなんていうのさ 明日 また 楽屋で会おう 新しいギターを見せてあげる♪って歌いながら、ラストは、叫ぶような苦しい、心の泣き声で終わっている。信じられないけど、否定できない友の死の重さがひしひしと伝わってきます。
8 うわの空 忌野清志郎 ♪君は空を飛んで 陽気な場所をみつけて そこで結婚すればいい 誰かいい人をみつけて そこで結婚すればいい 君は空を飛ぶのが大好きなんだ♪。空を飛ぶって、うわの空ってことでしょ。話していることを全然、聞いていてくれない。じゃぁ、勝手にすればいいじゃないかって。最近、私も多分にこんな心境。話していることに興味をもってくれない人と、無理につきあわなくってもいいんじゃないかって。前にこう言ったでしょ?って言っても、そうだったけ?なんて反応がある人、苦手だなー。つまらないなら、つまらない。はっきりその場で言ってくれなくっちゃ、わかってくれてるのかなーって期待して、あとでものすごーくがっかりする。でも、ラストで♪ぼくも空を飛んでみようかなんて♪って、清志郎が歌ってるのは、やっぱりうわの空の彼女が嫌いになれないってことなのかなぁ・・。
9 冷たくした訳は 忌野清志郎 ♪冷たくした訳は 君がまぶしいから 君を好きになりそうだったからなんだ♪なんて、へへ、そうなのかーって感じですよね。♪君を傷つけたけれど  ぼくは乱暴者じゃないよ やさしくだってできるさ 君にやさしく♪。ほんと、人間って不思議。気持ちとは裏腹に、素直になれなくって冷たい態度をとってしまう。それでも、わかってくれるかなーなんて、思っちゃったりする。こんなふうに、あとで、ごめんねって言えると素敵だと思うなー。
10 甲州街道はもう秋なのさ 忌野清志郎 ♪ぼく まっぴらだ もうまっぴらだ これからは来ないでくれないか ぼくもうまっぴらだよ うそばっかり うそばっかり うそばっかい うそばっかり・・・・♪。この部分の清志郎のボーカルがものすごく好き。はじめと終わりの、なんだか気が抜けたような、呆けたような静かなトーンのなかに、気持ちの中はこんなだったのか、という激しさがひしひしと伝わってくる。この曲を聴いていると、まわりの景色がすっかり秋になってしまいますね。
11 スローバラード 忌野清志郎、みかん ♪昨日はクルマの中で寝た あの娘と手をつないで 市営グランドの駐車場 二人で毛布にくるまって♪。こんな光景、あこがれますね。夜露が窓をつつんで、悪い予感のかけらもない。そんなのって素敵ですよね。そして、ふたりで、とてもよく似た夢を見る。これこそ、究極の恋人たちだと思いますけど、どうかしら?

※各アルバムから、何曲か、お気に入りの曲を選んでマークをつけています。
:大、大、大好き;:大好き;:好き

(2002.2.9)


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