ライナーノーツ

GOD

忌野清志郎 

(2005.3)

 「KING」以来、約1年半ぶりの清志郎のアルバム。清志郎いわく、「KINGの上はGODしかないんじゃないかと思って」と、いたって軽い気持ちでつけられたアルバムタイトルのようだ。
 全曲が自身のロックンロール研究所で録音され、ドラムも自分で叩いている。また、自分自身でレコーディングエンジニアもこなした。「つくっているときの感じまで入っている気がする」、「思いのほか壮大な、集大成的なアルバムになったな」、というのが本人の感想。
 私的には、1年前からドラムを習い始めたこともあり、ギターやキーボードだけじゃなく、こんなに上手にドラムが叩ける清志郎ってすごいっ!、とひたすら感心&尊敬。
 「KING」に引き続き、とても私好みの、ポップなアルバム。大好きです!!

※先日、Music On! TVで放送された「SELF LINER NOTES」で清志郎自身が語っていたコメントをまとめて、いちばん右の欄に掲載させていただきました。Music On! TV様にはお断りを入れておりませんが、趣味のサイトゆえ、ご了承いただければ幸いです。

No. 曲 目 お気に入り度 作詞・作曲 コメント Kiyoshiro's Comments(MUSIC ON! TVの「SELF LINER NOTES」より)
1 ROCK ME BABY 忌野清志郎・三宅伸治 初めて聴いた、その瞬間からお気に入りになった曲。「ロックンロールショー」以来の、ライブのオープニングを飾るのにふさわしい、バリバリのロックンロールだと思います。♪ロックン・ロールが始まる 理屈じゃないんだ ロックン・ロールに嘘はない、嘘つきはいない 宗教も思想もいらない 俺は何も持たない♪。とにかくかっこいい!! ♪ロックミーベイベーまるで気の利いた歌もないけど オーイェーイ、オーライ、これでいいのさ〜、オーイェーイ、オーライ、これが最高なのさー♪。最初の最初から、すっかり聞きほれて、しびれていたのだけれど、清志郎のコメントを聞いて、はははーって感じ。そっかー、今時ロックンロールなんて言わないかぁー、そっかー、古臭いんだー(笑)。なんか、今時の音楽に馴染めない理由がしっかりわかったって感じでございましたぁ。
三宅プロデューサーが、ギターのリフと出だしの歌詞をもってきた。これは、古臭いねーって感じになって、古臭い曲だねー、こりゃぁって。それで、仕上げていったんですけど。かっこいいかなーって思って。いまどき大声でロックンロールって言ってるのは、あまりないんじゃないですか。ロックンロールという言葉を発するというのがなくなってきてる気がして、だからあえて、1曲目でロックンロールについて歌っているのがいいかと思って。日本でロックンロールとかロックというと、ある一定の音楽を指して言っている気がする。でも、そうじゃなくて、どんな音楽でも、その音楽がもってるパワーについての言葉だと思う。自分自身で進んでいくってことじゃないですかね。
2 愛と平和 忌野清志郎・三宅伸治 かわいらしい曲だなーっていうのが第一印象。ダンダンディドン。鐘でも鳴らしてるイメージかと思っていましたが、これ、オーティス・レディングの曲のフレーズだったんですねぇ・・。♪夜は暗いくらい夜はそっと耳をすます すました顔すました顔であの娘が待ってる♪というところが好き。 ダンダンディドンっていうのが、実はオーティス・レディングの「ハッピーソング」というのがあって、ダンダンディディダダンダンという有名な曲があるんですけどね、その言葉を使いたいなというのがまずあって。三宅が思いついて、それ、いやぁ、それ、出すかね、古臭いなーっていう感じで。でも、なんか大好きなんで、すぐに取り入れたっていうか。だいたい夕方から始めて朝方までかかってりするんですけど、朝方の時点でだいたい70〜80%までみえてるんですよね。で、また後日、ダビングやホーンセクションとかピアノとか入れるとですね。そこでまた、かっこいい曲になったってーいうのがありますけどね。(略)早く作ったほうが気持ちが冷めないていうか。1回、途中で寝ちゃって、また次の日とかに始めると、なんか感じがつかめないんですよね。
3 仕草 忌野清志郎・三宅伸治 ♪幸せだよ 何でもない こんな暮らしを 僕は気に入ってる♪。出だしの歌詞がとてもいいですねぇ・・。♪通い慣れた 木漏れ日の中 昨日と同じ風が君のブラウスにからまる♪。何気ない仕草に愛を感じる、優しい曲。こんな静かな愛っていいよなー、とか思う。うらやましいラブソングです。 頭の中にあったのは、ハイサウンドの感じなんですけど。ピアノとギターで録音して。たまった感じの。三宅がその後、ベースを入れて。いわゆるハイサウンドの裏の感じの、その感じをもっと出すために、隠し味で、フロアタムにバスタオルをかぶせてね、ドゥトゥコドゥトゥコ・・・ってやったんです。どんどんハイサウンドになっていった。でも、なんかヨレヨレなんですよね。ギターとドラムを聴いていると。ベースとかが入ってくると、素晴らしい!って。いろんなアイデアが後から、シンバル入れるとかね。そういうのが、けっこう面白いんですよ。
4 REMEMBER YOY 忌野清志郎・三宅伸治 初めて聴いたのは、3/2の35周年のライブの翌日の通勤途中。歌詞カードを持たずに、CDウォークマンで聴いていたので、ダブルボーカルの彼は誰?って感じ。だって、アルバムでヒロトと一緒に歌うのなんてたぶん初めてだから。翌3/3の35周年ライブにでかけ、ゲストでヒロトが登場したときに、なーるほど、って思ったけど、ほんとうに、ファンにとっては、うれしい悲鳴をあげたくなるような、上等な曲ですね。♪君の目を耳を口を胸を♪♪すべては変わってしまった すべては消えてしまった♪という、2人のダブルボーカルの部分がやはりいちばん好きです。 最初は三宅くんがコーラスやってたんですよ。それで、何を思ったのか、ダブルボーカルにしたらかっこいいんじゃないかっていうのがあって、誰にしようか、やっぱりハイロウズのヒロトがいいんじゃないかってことになった。ヒロト、けっこう感じが違いすぎるんじゃないかという気がしてたんですけど、ある日、夜にヒロトがやってきた。誰かスタッフが曲、渡してるんだろうと思ってたら全然そんなことなくて、初めて聴いた感じで。あ、これ、歌うんだーみたいな感じで。その場で、曲を覚えて録っていた感じ。ヒロトくんは、集中力がすごいですね。ヒロトの色がたくさん出たほうがいいと思ったので、好きにやってもらったっていうか。いいなぁーと思いましたよ。非常に真っ直ぐですよね。真っ直ぐ届く。
5 ママもうやめて 忌野清志郎・三宅伸治 ♪ママ〜もうやめて 何をしてるの ママもうやめて どうかしてるよ♪。私的にはそれほど好きな曲じゃありません。しかも、最初、この曲を昨年夏の野音ライブで聞いたときには、姑さんが嫁をいじめてるのでやめてくれって言ってる歌だと思っていたという大間抜け。幼児虐待のニュースがあれだけTVや新聞で流れて、耳がタコになるほど聞いたよ、と思っていたくせに、全く他人事で無関心だったんだなー、と改めて気づきました。こうやって、清志郎さんが、私が見ていても何も感じない、痛いところをついてくれるのはありがたい。これからも、この手の歌を歌って私を啓蒙していただければ幸いです(笑)。 きっかけは最近問題になっている幼児虐待とかのニュースだと思いますけど。とっかかりの言葉があるんですよ。この曲でいうと、「ママもうやめて」っていうのがあって、そこから広げていく。伝えなきゃいけないってことはないと思うんですけど、歌った以上は責任あると思うんですよね。社会人というか大人として、何が起こっているか、全部はわかっていないはず。どんな悲惨なことがあるとか、全部はわかっていないと思う。自分が感じたことは、歌いたい。どうとられても別にかまわないっていう感じがある。僕が問題にすべきだと思ったことを歌って、それがどうとられようと、かまわない。そのことが知らない人たちにもわかったりして、いいんじゃないかと思うんですけど。
6 GOD 忌野清志郎・三宅伸治 初めて聞いたのは昨年夏の野音のライブ。そのときから、けっこうお気に入りの曲です。♪おお イエス 何が見えている おお イエス 何が聞こえてる おお イエス 何を感じてる そこからここに降りてきな♪という繰り返し部分が好きですねー。あと、♪地球は爆発しそうだ ストレスでお腹が一杯だ あいつは今夜も気まぐれだ 何をしでかすかわからない♪という部分は、歌詞と曲が見事にマッチしてるなーって思います。 だいたい、三宅がギターもってて、僕は横で何ももってない。「そこは、Dにいったほうがいいんじゃない」、みたいな。メロディーラインはあったんですね。もっとちゃんとした、メロディアスなものはあったんですけど。メロディーと言葉のイントネーションというのが問題で、メロディーがいくらよくても、言葉のイントネーションとして変だと、自分で気持ち悪いんですよ、歌ってて。それで、歌詞ができていく段階で、どんどん変わっていったんですけども。歌詞が本当に頭っから、こう変えていったって感じですね。(略)あいつの名前はGODっていうのが出たときに、今日は決定されたみたいな、もう90%こっちのもんだっていう・・・。それがもう突破口になるんですね。
7 KISS 忌野清志郎・三宅伸治 ♪夜の底でまた笑ってら♪とか、♪とんがり帽子 どんがり帽子でお前を探して町をうろつく♪とか、♪夢とか希望とかどうでもいいのさ 必要なものはお前の唇♪とか、歌詞の感じや曲調が、ちょっとRCっぽい感じがします。聞いてると、RCに夢中だった昔の自分が蘇ってくる感じがします。 思いつくままにどんどん重ねていったって感じ。曲つくってるとはいっても、遊んでるようなもんですから。歌詞を適当につけて、やってたって感じですかね、この曲は特に。せぇーのでやってもたぶんかっこいいんですけど、これはもう、考えながら考えながら、遊びみたいに楽しくて、曲ができていった。その雰囲気は入ってると思うんですけど、音に。(略)ミックスは池田くんがやってるんですけど、すごい、いいと思うんですよね。ドラムが小さくてね、それでこれだけグルーブ感が出てるっていう。
8 サイクリング・ブルース 忌野清志郎 清志郎のボーカルがびんびんに響いてくる曲ですね。のびのある清志郎の声を聞いていると気持ちがよくなります。♪ベッドの中に溢れてるはずだ 今夜も愛が溢れているはずだ♪という部分と、♪風の中に〜 大いなるサイクリング・ブルース♪という繰り返しの部分が好きかな。 サイクリングっていうのは、とてもブルースなんですよね。体を使っていってますんで。だいたい気にしてるってことっていうのは、自分の筋肉にどれだけ乳酸がたまってきたか、とか、今日は向かい風だなとか、気候のこととかが非常に重要な問題で、そんなことばかり考えてる。山道、田舎道なんで、自分がこう自然の中の小動物になったような感覚なんですよね。そうこうしてるうちに、いろんなことが蘇るというか、そんな精神状態になるんですよ。昔のこととか。子供の頃に感じたこととか。そんなことが思い出される。100キロぐらい走ると、山越えがいくつかある。やっとたどり着いたときの、ハッピーな感じは、ブルースだと思うんですけど。
9 旅行 忌野清志郎 他の数曲同様、初めて聞いたのは昨年夏の野音ライブ。♪I Gotta Love思いっきり I Gotta Love思いっきり♪ってところがいいですねぇ。あと、♪シャラララ Be My Love♪ってとこが、かわいい。50過ぎてもこんなにかわいらしいラブソングを作れる清志郎ってすごい!! 沖縄で、雑誌の取材でサイクリングに行ったときに、転倒して、鎖骨を骨折して、手術して、本当は、1週間ぐらい入院しないといけないんですけど、次の日に退屈だから退院していいですかって言って(笑)。でも、1週間は痛み止めとか飲んで静かにしててくださいって言われて。静かにしてるんですよ。あまりにも退屈だから、かといって、こっち(腕の上部)がかたまってる。下は動かしていいっていうんことだったんで、それならギターは弾けるだろうって。ロックンロール研究所に行って、ギターを弾いたりしてたんですけど、まてよ、これは、ドラムも弾けるかもしれないなって、片手で叩いたんです。片手だと、ほんと難しいんですよ。そうしたら、振動が響いてけっこうい痛くなってきちゃって。何日かで、仕上げたって感じ。歌詞は思いつくままに、思いついたところから入れていった。ラブソングはかっこいいっていうのがあるのかなー。うん。やっぱりこう、大の大人が、ひとり、恋人のことを思って歌ってるっていう姿がなんとも普通じゃないっていうのがある。一般受けするっていうのは、全然、最近は考えてない。そういうラブソングはどうも書けない。自分の感じなんですね。すべての恋人同士に当てはまる感じじゃなくて、自分が恋したときの感じなんで、書きやすいというか。
10 わからず屋総本家 忌野清志郎・三宅伸治 妙に好きな曲。清志郎が、KINGでは外したけど、忘れられなかったっていうのがうなづけます。♪如何わしいので 伺わなかった 空々しいのは あなたの青空薄ら寒いので 薄笑い♪。このダジャレな感じがしつつも、批判的なところがたまりません。もちろん、♪ひかえおろう♪♪あれー♪♪ごむたいな♪♪お主も悪よのぉ♪っていうメンバーの考えたセリフも笑えます。 物分りのいい人っていうのは、一見いいんですけど、わからずやのほうが筋が通っている。物分りがいい人は、上役や世間がどうので自分をどんどん曲げる。わからずやっていうのは、自分の価値判断があるから、わからずやになっているだけ。そういう人がいると好感もっちゃう。ほれぼれとしちゃうんですよね。自分もそうありたいなーと思う。KINGのときにつくったアウトティク。あまりにもふざけすぎてるっていうんで外した。でも、忘れられない曲で、あんなかっこいい曲はないなっていう感で、また今回引っ張り出してきて、どうせなら、もっといっちゃおうっていうんで、セリフとかを考えた。最初は、だいたい君は図が高い、だったんですけど、そこをおぬしに変えた。その瞬間、無礼者!が入った。そのおかげで、後半にもセリフを入れようってことになった。後半のセリフは、メンバーがそれぞれ考えた言葉なんですけども。
11 春の嵐 忌野清志郎・梅津和時 ♪Wow wow wow♪という冒頭部分の物悲しいメロディーラインが好きですねぇ。全体的に、メロディーが好き。♪僕は待っているよ もう一度会える日を 僕は待ってるよ もう一度会える日を 遠い遠い道だけど きっと君はやって来る ひとまわり大きくなって きっとここに戻ってくる♪。清志郎が、待っているよと歌いかけているのは、もちろん私にじゃないけど、特に、♪さぁ、踏み出そう最初の一方を さぁ 立ち上がろう歩き出すために♪という部分を聴いてると、清志郎が元気づけてくれてるんだから、がんばんろう!、なんて気になってくる。マイナー調のメロディーだけど、けっこう元気が出てくる曲です。 去年3月にピットインで、1週間ぐらい梅津和時のライブあって、その中の1日、僕が出る日があった。そのために新曲を4曲ぐらいつくった。その中の1曲。ピアノを梅津さんが弾いて、僕がドラムを叩いて。その後にベースを入れて、しばらくして歌を入れて、梅津さんのバンドに聞かせるためのテープをつくった。いい曲だなーって思って。そのとき録音したものに、今回、どんどん足していった。
12 君を信じてる 忌野清志郎・三宅伸治 ♪すべてなくしても 君を信じてる どんな夜でも 君を信じてる♪。口だけじゃなく、本当に信頼してくれてるんだなーって感じが聞いてるとびしびし伝わってくる。いいですねぇ、こんな関係。♪手を伸ばせばすぐそこに 君が居るようで あれからどのくらいたっただろう♪♪目を閉じればすぐそこに 君が笑ってる 時間だけが過ぎてく♪の部分のメロディーが好きです。 いつものように、ドラムを叩いて、ギターを弾いて、構成を考えて録ったんですけども。いい感じだったんですよ。ふと思いついて、ピアノの曲にしたらどうかってことになった。両方やってみようってことになって、厚見玲衣にピアノを弾いてもらった。前半のドラムをカットして、どんどん構築していった。なんで信じてる、とか、なんで信じなきゃいけないのかっていうことを抜きにして、君を信じてるっていうことを歌いたかった。どこまで説得力をもたせられるのかって感じ。お互い考えていることが違ったりしていて、面白かった。もっとはっきりした内容の歌だったら、それは内容が違ってるとまずいんですけど、君を信じてるっていうのがテーマなので、聞く人にいろんなふうにとってもらえると思う。
13 JUMP 忌野清志郎・三宅伸治 初めて野音で聞いたときには、売れ線狙ってるみたいであんまり好きじゃないなーって思った曲。が、聞けば聞くほど味が出てきます。よくよく聞くと、歌詞もすごくいい。♪夜から朝に変わる いつもの時間に 世界はふと考え込んで 朝日が出遅れた なぜ悲しいニュースばかり TVは言い続ける なぜ悲しい嘘ばかり おれには聞こえる♪♪何日が起こってるのか 誰にもわからない いい事が起こるように ただ願うけさ♪♪世界のど真ん中で ティンパニーを鳴らして その前を殺人者が パレードしている 狂気の顔で空は 歌って踊ってる でも悲しい嘘ばかり俺には聞こえる♪。この部分のメロディーラインいいですよねぇ。歌詞もとてもいい。そして、♪Oh 忘れられないよ 旅に出よう Oh もしかしたら君にも会えるね♪。なんだか、パワーがもらえた気になって元気になれます。 バラードが最後のほうにあって、いちばん最後にアップテンポの曲、かっこいい曲で盛り上がるっていうのは、オーティス・レディングのやり方。いわゆるライブの感じ。最初にドカーンとやって、途中にぐっとくるようなバラードをやって、最後また盛り上がって終わるっていう、それをレコードにしてる感じ。なぜ、悲しいニュースばかりなんだろうって、旅に出ようっていうのがあった。ツアーに向けての感じもあるし。

※各アルバムから、何曲か、お気に入りの曲を選んでマークをつけています。
:大、大、大好き;:大好き;:好き

(2005.4.2)


TOPへ

ライナーノーツへ