ライナーノーツ

カバーズ〜COVERS

RCサクセション

(1988.8)

 「素晴らしすぎて発売できません」。確か、こんなふざけた謝罪文が新聞に載って、RCサクセションの「カバーズ」が発売中止になった。原発批判ともとれる「サマータイム・ブルース」が問題アリってことだったわけだけど、実際、聞いてみるとどうかなぁ・・。確かにそういう気持ちもちょっとはあったのかもしれないけれど、全体的に、みんなで集まって、お祭り騒ぎで、大好きなヒット曲をカバーしちゃおうよ、って感じでしょ? だから、清志郎の都立日野高時代の旧友である三浦友和さんや、泉谷しげるさん、山口冨士夫さん、そして、このあと、清志郎とHISなんていうユニットを組むことになる坂本冬実ちゃん、清志郎の大ファンで、のちに秋元康さんの夫人となったおにゃんこの高井麻巳子ちゃんなどなど、たくさんのゲストが参加していて、とっても愉快な仕上がりになっている。
 発売中止騒ぎの直後、そのころのライブ友だちが、知人から入手したというデモテープをもってきてくれて、それを、もうすぐお日様が顔を出しそうだなーっていう時間帯に、ヘッドホンをはめて初めて聴いた。夜明けの空にヘッドホン。ご禁制のものを内緒で聴いているという感じもあって、なんだか聴いていて、とってもぞくぞくした。
 「カバーズ」は、私にとって、あのときの、しらじらとし始めた朝の空を思い出させるアルバムである。

No. 曲 目 お気に入り度 作詞・作曲 コメント
1 明日なき世界 作詞・作曲:P. F. Sloan;訳詩:高石友也&忌野清志郎 ♪東の空が燃えてるぜ 大砲の弾が破裂してるぜ おまえは殺しの出来る年齢 でも選挙権もまだ持たされちゃいねぇ 鉄砲かついで得意になって これじゃ世界中が死人の山さ♪。その昔、高石友也さんが歌っていたという曲。Japanese Lyrics by T. Takaishi & K. Imawanoとなっているので、清志郎が手を加えた部分もあるんだと思うけど、フォーク全盛時代から十数年、そしてカバーズからも15年近く経ってしまった今でも、色あせないかっこよさがあります。♪でもよォー 何度でも何度でも おいらに言ってくれよ 世界が破滅するなんて嘘だろ(うっそだろ!)♪。この部分、このフレーズ、何度聞いても、気持ちがスカっとしちゃいますねぇー。昨年のライブで、清志郎がこの歌を歌ってくれて、改めて、また、かっこいいなーって思ったナンバーです。
2 風に吹かれて 作詞・作曲:B. Dylan;訳詩:忌野清志郎 ♪どれだけ風が吹いたら 解決できるの? どれだけ人が死んだら 悲しくなくなるの? どれだけ子供が飢えたら 何かが出来るの?♪。たくさんの問いに対する、♪その答えは風の中さ 風が知ってるだけさ♪の答え、子供たちを交えたコーラスが力強いです。
3 バラバラ 作詞・作曲:H. Lippok;訳詩:忌野清志郎&仲井戸麗市 ♪世界中バラバラ 人々はバラバラ 考えがバラバラ やることもバラバラ 法律もバラバラ WOO!バラバラ♪。なんだか語呂合わせのような歌だけど、♪バラバラバラバラ バラバラバラバラ バラバラバラバラ・・・♪、このフレーズがとっても陽気な曲です。
4 シークレット・エージェント・マン 作詞・作曲:P. F. Sloan & S. Barry;訳詩:忌野清志郎&仲井戸麗市 いきなり、かの金賢妃の声で始まる。そして、♪俺の下着には武器が隠してある そして中には毒薬が入ってる タブーの世界にもぐり込む ニセのパスポート 何くわぬ顔でおまえに近づく♪のフレーズ。すべてがナゾって雰囲気をうまく醸し出していますよね。♪歴史を変え 運命を操り 彼女が乗った飛行機を爆破した 犬どもに追われ 仲間を身代わりに 足跡消して 闇に潜む♪♪INFやオリンピックの影でおまえが知らない事実を動かす♪。坂本冬実ちゃんのものすごいこぶしと、清志郎のボーカルの掛け合いがまたまた不思議なムードを漂わせてます。
5 ラヴ・ミー・テンダー 作詞・作曲:E. Presley & V. Matson;訳詩:忌野清志郎 ♪何 言ってんだー ふざけんじゃねぇー 核などいらねぇ♪♪放射能はいらねぇ 牛乳を飲みてぇ 何 やってんだー 税金かえせ 目を覚ましな♪。おそらく、プレスリーのラブソング中のラブソングなのであろう名曲に、こんな歌詞をつけちゃうなんて、清志郎ですねぇ・・。で、これがまた、恋人への、というより、もっと広い意味のラブソングに仕上がってるとこが、さすが清志郎、なのでした。
6 黒くぬれ! 作詞・作曲:M. Jagger & K. Richard;訳詩:忌野清志郎 ♪黙ってここから動きたくない すべてが終るまで ブッ飛んでいたい♪ってとこが、かっこいい。ちわきまゆみさんのバックコーラスがきいてますねぇ・・。でも、元歌のミックのボーカルのほうがもっと好き・・・。
7 サマータイム・ブルース 作詞・作曲:E. Cochran & J. Capehart;訳詩:忌野清志郎 ♪暑い夏がそこまで来てる みんあが海へくり出していく 人気のない所で泳いだら 原子力発電所が建っていた♪。なんだかおどけた調子のサマータイム・ブルースです。ザ・フーというよりも、私には、子供ばんどの「サマータイム・ブルース」のイメージがあって、この曲は、けっこうお気に入りだったんですが・・。「原発と呼ぶのはやめましょう なんでも縮めて呼ぶのは日本人の悪いくせです 正確に原子力発電所と呼ぼうではありませんか!」っていう友和さんのセリフや、♪あんたもこのごろ抜け毛が多い♪に対する「悪かったな、なんだよ」、そしてラストの「なんぼのもんじゃい あら?」っていう泉谷さんのぼけが笑えますねー。
8 マネー 作詞・作曲:J. Bradford & B. Gordy, Jr.;訳詩:仲井戸麗市&忌野清志郎 ♪ありったけの札束 はがいじめできれば その時 その時 女も自由も俺のもの♪♪クソったれのガキ共に ヘッドロックかませる そのためにゃ そのためにゃ 愛より、鞭より、金だけが必要♪。何人かでボーカルをとってますけど、チャボが歌ってるとこが、いちばんかっこいい!
9 サン・トワ・マ・ミー 作詞・作曲:A. Adamo;訳詩:岩谷時子 その昔、今は亡き越路吹雪さんがさらりと歌ってたのも素敵だったけど、清志郎の軽快な♪サン・トワ・マ・ミー 夢のような あの頃を 想い出せば サン・トワ・マ・ミー 悲しくて 目の前が暗くなる サン・トワ・マ・ミー♪もいいですねー。
10 悪い星の下に 作詞・作曲:W. Bell & B. T. Jones;訳詩:忌野清志郎 ♪産まれた時からー 不幸な運命 悪い星の下に産まれてきたのさ♪♪孤独と絶望が友達 乱暴な飼い主が また俺をけしかける♪。この曲では、山口冨士夫さんのギターが光ってますねぇ・・。
11 イマジン 作詞・作曲:J. Lennon;訳詩:忌野清志郎 ♪天国は無い ただ空があるだけ 国境もない ただ地球があるだけ みんながそう思えば 簡単なことさ♪。最後に、♪ぼくらは薄着で笑っちゃう ああ 笑っちゃう♪って、「窓の外は雪」が流れる。この曲、大好きなんですよ。これがとっても効果的。「イマジン」とだぶって、なんだか、イマジンのような世界は、夢じゃないのかもしれないって思えてきます。

※各アルバムから、何曲か、お気に入りの曲を選んでマークをつけています。
:大、大、大好き;:大好き;:好き

(2002.5.9)


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