ロンドン塔

the Tower of London

 初めてロンドン塔に行ったのは、ロンドン半日観光のとき。「さぁ、ここがロンドン塔ですよー」と、ツアーガイドさんが言っているなか、慌しく塔の入り口に立って写真をパチリ。それですっかり行った気になっていたのだが、このロンドン塔、実は実は、とっても見ごたえのあるスポットである。
 その昔は王の居城であったこともあったというが、さまざまな人がここに幽閉され、拷問にかけられ、処刑されたため、すっかり暗いイメージが定着してしまった。エドワード4世の2人の王子たちがここで、叔父リチャード3世の命で殺された、とか、はたまた、ヘンリー8世の王妃ジェーン・ハワードが不義の罪で斬首された、とか、11/5のガイ・フォークス・デーで有名なガイ・フォークスが、国会議事堂を爆破しようとした罪で絞首刑にされた、などなど、血生臭い話がいっぱいだ。
 とはいえ、18世紀の半ば以降、国家が安定したあとは、処刑場として使われなくなり、今ではすっかりロンドンの観光スポットとなったという。
 さすがに塔の中は暗くて陰惨な空気が漂っていたものの、実際、行ってみて印象的だったのは、この敷地内にあるジュエル・ハウスに展示されている王冠や数々の宝石類のきらびやかさである。そして、ヨーマン・ウォーダーたちが塔の入り口に立っているのをみかけたり、兵隊の行進を見ていると、今は何世紀だったかなー、という気持ちにさせられる。中をじっくり見るには、軽く2〜3時間かかるにではないか。本当に見所がたくさんのスポットだ。
 でも、霊感の強い人はご用心! エリザベス1世の母アン・ブリンが自分の処刑された場所を見下ろすのが見えるという窓もあって、幽霊話がてんこ盛りですからねー。

上段左:塔の入り口に立つヨーマン・ウォーダー。彼らは塔内で、観光客たちにロンドン塔にまつわる話を聞かせてくれる;上段中央:ロンドン塔からタワーブリッジが見える
下段左:ロンドン塔で殺されたと言い伝えられている王子たち(マダム・タッソーの蝋人形館にて);下段右:ロンドン塔のカラスは羽の先が切り取られている。「カラスが塔を離れたとき、王国も滅びる」という言い伝えがあったからだというが、今もその風習は変わらない。以前は、塔内のロバも、逃げないように目をつぶされていた、という話を聞いたことがある。

 もうずいぶん前のことだ。イギリスから帰ってきたあと、出来上がった写真を、家にたどり着くのが待ちきれず、電車内で見ていたところ、隣の紳士から話かけられた。「それはロンドン塔ですね」その人は銀行員で、その昔、転勤でロンドンに住んでいたことがあるという。「いやぁ、昔のまんまだ。変わらないなぁ・・」その人は本当に感慨深そうに言った。
 きっと、ロンドン塔はいつまでもこのままで、後世にその姿を伝えていくにちがいない。

 ロンドン塔からテムズ河のほうに行くと、船着場からグリニッジ行きの船が出ている。そこから眺めるタワーブリッジもなかなかである。橋より背の高い船が通ると橋がパカーっとあいて、船が通っていく。ある旅での出来事。友とは別行動をとったのに、ふたりとも、タワーブリッジがあいた数分をながめる幸運にめぐまれた。時間的にはズレがあったように思うので、1日のうち、何回かはこんなシーンにお目にかかれるのではないかと思う。
 このタワーブリッジは中を見学することもできる。ちょっとしたブリッジ内のツアーのあと、思い思いに歩いて見て回る。橋の中から、テムズ河をながめるのも、また不思議なもんですよ(左)

 このタワーブリッジを渡ると、対岸はロンドンブリッジ駅側。ここには、その昔の処刑場や切り裂きジャックの町などを再現したロンドン・ダンジョン(右)がある。

(2002.3.9)
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