石ころだって役に立つ?             2002年5月    


イタリア映画「道」は粗暴な大道芸人ザンバノと無垢な心を持ったジェルソミーナのなんとも哀しい物語である。『役に立たない人間なんていないよ。例えばこの石ころだって、何かの役に立ってるんだ』なんて言葉が出てくると、思わずつまってしまうし、バックに流れる音楽と共にいつまでも涙がとまらない心に残る映画の一つだ。

関川夏央さんの新刊「石ころだって役にたつ」(集英社)が本屋に並んだとき、家人も一緒だったので、なんとなく恥ずかしく手に取らなかったが、やはり気になり次の日に会社を抜け出して買いに行った。近くの喫茶店でこの部分だけ読んで、「うん、関川夏央はやっぱりいいな」とあとで読後感をいったら、「石ころなんて痛いだけだわ」と冷たい返事。

そうだ彼女は腎臓に石があり、つい先日に「体外衝撃波結石破砕」の治療を受けてきたばかりで、砕けた小石が出るまでの4〜5日間痛い思いをしたのだ。

実は私も「石ころ持ち」でいわゆる胆石症というやつ。「胆のう」に小さな石ころが溜まるのだ。この胆のうは臓器の中では腎臓や肝臓ほどには役立っていないので近いうちに腹腔鏡手術でつまみ出してもらおうと思っている。

夫婦で石を抱えていて、共に痛い思いをしているが、「この石ころだって何かの役に立っているんだ、俺にはわからないけれど。」なんていえるように早くなればいいと思っている。

2002年5月23日 oggi