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まえがき
 私にとって2000年の夏は忘れられない特別に暑い夏でした。今、私と同じ様にパソコンを前にして、誰かさんが途方にくれていらっしゃるとしたらこの日記が何かのお役に立つかもしれません。 そんなことを思って、パソコン騒動の顛末を叩いています。 
 
 私がパソコンを買おうと思い立ったのは、この夏の初めでした。 近くに住んでいる長女の部屋で 彼女の留守中、スケッチや絵を取り込み、プリントし、インターネットの世界を知ったのが最初でした。 私の、狭い住まいの空間を塞いでいたもの、キャンバスの絵が、実にコンパクトに整理されていくのを知って感動しました。これなら私もできる、と思いました。
 「あなたが死ねばみんなゴミ」、などと言われていますが、私の場合、いままで描きつづけてきた絵はそれでしょう。 狭い部屋の中を侵食し、今も増えつづけています。

 だからといって、一刻、一刻身を削るように (大げさかな) 描きついできたものを、目の前でゴミにするのも淋しいものです。 でもパソコンの中に収納すれば、何時でも見られます。老後の楽しみにもなってくれるでしょう。

 今までの1番無駄な買い物は、パソコンと答えている人が圧倒的に多いということも知っていました。
 しかしわたしは[無駄な買い物]にしない自信ができたとおもいました。
 ケチなうえに、シンプルに暮らしたいと常ずね思っている私は,無駄な買い物をするほど金持ちでもなく、無駄な時間を費やすほど残りの人生が長いとも思えませんでしたから。 


 長女も次女もアップルのファンで、マッキントッシュを薦められたのですが、私はあえてメジャーなウインドウズを選びました。7月頃から部屋の配置を考え、一人で日本橋の問屋街に何度も脚を運び、机と椅子選びから始めて着々と実行に移していきました。

          日記 

   パソコンを買いに 
8月3日(金)
 日本橋に強い?次女が夏休みになるのを待ちかねて長女と3人で出かける。 机と椅子を買うことを決めている「F」という専門販売店で、パソコンと周辺機器も薦められていて、見積もりが昨日ファクスで送られてきていた。
 NECのデスクトップパソコン、エプソンのプリンターとスキャナーを希望したが、お店の人の推薦で、スキャナーだけはキャノンにした。
 他にメルコの外付けMOドライブ、USBハブ、増設メモリー128メガバイト。
ウインドウズ98にはもともと64MBが入っているが、わたしはスケッチを取り込むつもりなので容量を多く128MBを増設することにした。

 日本橋通の次女はこの見積もりに満足しなかった。 長女と3人でそれから延々と、主だった店のパソコン売り場を見て歩いた。 その結果、他の店と比べて妥当な金額であるということになり、もう黄昏が始まった町を再び「F」に戻ってきた。 暑さと疲れのため、足が前に出ない。私には異国語を話しているとしか思えない、馴染みのないパソコン用語で、次女はお店の人と詰めを繰り返して、やっとOKがでる。 ここで前金25万円を支払う。

 8月5日(土) 机と椅子、パソコンと周辺機器が届く。夫に手伝ってもらって机と椅子を組み立てる。 8月6日(日) 昼頃、次女がやってきてパソコンの組み立てをやってくれる。付属ソフトのインストールも含めて1時間半ほどしかかからなかった。 マッキントッシュでは何度もやって馴れているらしく、無駄な動作がほとんどない。 誰かと待ち合わせているとかで、パソコンを立ち上げるとつむじ風のように去る。

   最初のつまずき 
8月7日(月)~9日(水) 昨日からやっているが、プロバイダーに繋がらない。長女も仕事のひまをみて見に来たが 「だからマックを買ったらよかったのに」 などといってさじを投げて帰ってしまった。当てにしていたのだ、が彼女は,明日から1週間も合宿とやらで、この先どうなるのか。 回線が混み合って繋がらない。とそのときは思っていた。


火曜から水曜にかけて、プロバイダーへの接続を30回以上も試みた。真夜中から夜明けまで。
 知らないというのは哀しいものだ。今になると笑い話だが、あの時は本当に回線が混み合っていると信じていた。
 スキャナーも調子が悪く、或る場面にくるとマウスポインターが動かない。フリーズしてにっちもさっちも動かないので、強制的な終了しかない。