Latte Lightweights

Latte Lightweights
(12.6.P60.1999)

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今回は ESSAY から
  金野さんのサマリーです。この手の屁理屈は読んでて楽しいですね。

コーヒー亡国論


語彙は主に『英辞郎』Ver.28から抜粋

BY JOSEF JOFFE
 

大意

語彙

P60 強国が良いコーヒーを飲み始める時、その帝国は没落する empire : 帝国
1 21世紀もまたアメリカの世紀となるでしょうか?そんなことはまずあり得な いでしょうね。アメリカは消える運命にあるのですから。そしてその原因はコ ーフィーにあります。先ずは事実から。デニーズは、ファミレスのチェーン店 を1700店舗展開していますが、コーヒーを豆から引き立てのものに切り 替えようとしています。ダンキンドーナッツは200店舗でエスプレッソをテ ストしています。 セブンイレブンは昨年'グルメブレンド' の販売を開始しま した。アメリカ中の様々なマクドナルドもまたそうです。 bet on : 〜に賭ける、 doom : 運命づける、 Denny's :デニーズ《米国 Denny's,Inc. 系列のファミリーレストランチェーン店》、 downscale : 低所得者でも買える,低所得者層のための、 eatery :レストラン,簡易食堂,軽食堂、 freshly : 新鮮に、 Dunkin' Donuts : ダンキンドーナツ、 outlet : チェーン店,店舗、 gourmet : グルメ,食通,美食家
2 悲しいことに、世間の人たちは、まずいコーヒーは領土拡張主義、権力意識、 好戦的感情を燃え立たせ、一方おいしいコーヒーは慇懃、穏和、諦めの香りを 漂わせるという歴史の鉄の法則を分かっていないのです。 law of history : 歴史の法則、 fuel : 〜を煽る,〜を刺激する、 expansionism : 拡張政策,拡張主義、 machismo : 男意気、 warlike : 好戦的な、 waft : 漂わせる、 civility : 丁寧さ
3 現在史の軍事大国、アメリカ、ソ連、ドイツ、イギリス、日本、中国、イスラ エルをみてみれば分かります。19世紀のアメリカの拡張期はローテクのコー ヒーポットに特徴づけられています。それは、中で内容物が煮詰まって、まるで バッファローのなめし材のように黒みを帯びた酸味のあるもの(コーヒー)に なるまで火にかけておくという代物でした。 martial : 軍の、 low-tech : 低科学技術の、 brew : 熱い飲み物、 thicken : 濃くなる、 acid : 酸っぱいもの,酸,酸味、 tan :日焼けする,皮をなめす,皮膚を日焼けさせる、 buffalo hide : 水牛皮
4 ソ連の場合は、毒々しく濃く苦いコーヒーでした。しかも生ぬるいのです。 しかし赤軍は1945年にベルリンまで達しました。その後も様々な衛星国で起 きた反乱をこともなげに鎮圧し、キューバ、アフリカ、アフガニスタンへと進ん でいきました。プロイセンドイツの場合はどうだったかというと、当時、 本物の コーヒーを飲めたのは金持ちだけで、一般庶民は煎った大麦とチコリをブレン ドしたもので間に合わせなければなりませんでした。しかしそのおかげでドイツ 軍はモスクワやカイロの城門に達することができたのです。 Soviet Union : 旧ソ連、 toxic : 有毒な、 tepid water : 生ぬるい湯、 blithely : 楽しく,、 crush : 壊滅させる、 mass :一般大衆、 make do with : 〜で間に合わせる,我慢する、 burnt : 焼けた、 barley : 大麦、 chicory : チコリ,キクニガナ、 Wehrmacht :国防軍《第2次大戦時のドイツ軍》
5 次は日本と中国をみてみましょう。日本軍が対馬でロシア艦隊を撃退した年代 から真珠湾でアメリカ艦隊を壊滅した年代にかけては、日本男児はコーヒーの 何たるかをさえ知りませんでした。緑茶しか飲まなかったのです。同じことが 朝鮮半島で米軍を後退させた時の中国についても言えます。イギリスも然り。 イギリス料理とおなじような味の(まずい)コーヒーをがぶ飲みしていた頃は 400年間世界の海を支配していました。小国イスラエルは5度の戦争でアラブ 世界に勝ちました。 それはどうしてでしょう?イスラエルの'コーヒー' がソ 連製のT72戦車を3分で腐食できたからなのです。 fleet : 艦隊、 Pearl Harbor : 真珠湾、 wipe out : 撲滅する,掃討する、 green tea : 緑茶、 ditto : 同様に,同様な、 chas : 《名》マッチ、 Korean Peninsula : 朝鮮半島、 rule the seas : 海上の覇権を握る、 swill : ガブガブ飲む、 best :やっつける,負かす、 armor : 装甲
6 では今度は反対側からみてみましょう。中東に詳しい人なら誰でも知っているよ うに、アラブ(またはトルコ)コーヒーは、世界でも最高級のもので、特にカル ダモンを入れると逸品です。しかしアラビア人が戦争で最後に勝利を収めたのは いつだったでしょうか?また世界にエスプレッソをもたらしたイタリアの場合は いつだったでしょう?実のところ、イスラム国家は良い例なのです。フェルディ ナンドとイザベラが1492年、イベリアにあったムーア人の最後の砦を粉砕し た時、アラブ勢力は永遠にその力を失ったのです。ソ連流の言い方を借りれば、 同志諸君、これは偶然では断じてないのです。15世紀中葉、イスラム世界中で 質の良いコーヒーが広く飲まれるようになり、50年後にはアラブの力は終わっ たのです。そしてやがてオスマントルコ帝国の力も終わりました。1699年、 ウィーンの城門を最後にトルコ人の進軍は止まりました。さあ次はハブスブルク 家の番です。トルコ人は撤退する時、コーヒーの入ったずだ袋を置き去りにし、 オーストリア人はモカの味を覚えました。後にドナウ川沿いでのワルツに捧げた のと同じ愛情をコーヒーにも捧げたのです。オーストリアの伝説的なコーヒーハ ウスで、偉大な文化が育まれました。モーツアルト(コーヒーカンタータを書い たのが彼ではなくバッハというのは残念ですが)にカフカ、フロイト。しかしハ ブスブルク帝国は消える運命にあり、18世紀にはフランスに攻撃され、19世 紀にチコリをがぶ飲みするプロシア人に敗北したのです。 hand :専門家、 spice : に香辛料を入れる[加える]、 cardamom : 《植物》カルダモン、 case in point : その一例,好例、 done in : 疲れきって,くたくたで、 for good : これを最後に,永遠に、 demolish : 破壊する、 Moorish :ムーア人の、 stronghold : 砦,要塞、 comrade : 同志、 qahwa:13世紀半ばころになって,豆をいって煮出すようになり,色は黒く,苦みはあ るが香りの高いものに一変した。快い刺激と興奮をもたらすその飲料は,コーランで酒 を禁止されているイスラム教徒によって熱狂的に歓迎され,薬用よりも日常的な飲料と して定着していった。なかでも神秘主義者の間で,夜間の勤行を助ける眠気覚ましとし て好まれた。 すでにブンとは呼ばず, 一種の酒の名をとって :〈カフワqahwa〉 と いうようにもなった。このアラビア語がトルコに入って<カフウェkahve〉となり,や がて17世紀にヨーロッパ各地に広まり, コーヒーまたはカフェという世界的な通用 語を生むに至る。(世界大百科)、 Ottoman Empire : オスマン帝国,トルコ帝国、 once and for all :これを最後に、 take to :〜が好きになる,〜が習慣になる、 mocha : モカ,上等のコーヒー、 coffeehouse : コーヒーハウス,喫茶店、 doom : 運命づける、 batter : 打ちのめす、 trounce : 打ち負かす
7 しかしこの大理論を水ももらさぬ本当に完璧なものにするためには、この理 論が動的にも働いていることを示さなければなりません。故に次の命題を証明す る必要があります。コーヒーのまずい国がケニアンブルーの無上の喜びを知っ た時には、ミルクスチーマーからシュッと音が聞こえ出すとその国は攻撃用小銃 を捨てるはずである。 watertight : 防水の,隙がない、 dynamic : 動的な,力学の、 ergo : (それ)ゆえに、 bliss : 無上の喜び,至福、 lay down :下に置く、 assault rifle : 急襲用ライフル,対人殺傷用銃器
8 その通りなのです。かつてドイツは地球上で最も軍国主義的な社会でした。し かし今では津々浦々まですばらしいカプチーノが広がり、ドイツ人はキャスパー・ ミルクトーストみたいな腰抜けになってしまいました。ロシア人はどうでしょう? モスクワはカフェラテの栄える地に変わり果て、赤軍の残党はみすぼらしいチェチェン の連中を征圧することもできないでいます。現在の民主政体スパルタ、イスラエ ルはどうしてレバノンからの撤退の話しをするのでしょう?ちょっとテルアビブ のシンキン通りのエスプレッソ用器具を数えてみて下さいね。 militaristic : 軍国主義の、 cappuccino : カプチーノ、 Caspar Milquetoast :キャスパー ミルクトースト《H. T. Webster(1885-1953)の1920 年 代のアメリカ漫画 The Timid Soul に登場する決断力のない臆病者》、 remnant : 残余物、 overwhelm : 制圧する、 bedraggled : 薄汚い,だらしない,みすぼらしい、 modern-day : 今日の、 withdrawal : 撤退
9 そしてそれは我がアメリカ帝国を衰弱と崩壊に導くのです。確かに、世界最強の 国アメリカは依然としてサダムやミロシビッチのようなやからと戦い抜いていま す。しかしその意志力はダブルショットデカフェの上にのっている泡立てたミル クのように溶けていっているのです。そのことは数が雄弁に物語っています。ア メリカコーヒー協会によると、90年代初めアメリカには 'グルメコーヒー店' はわずか500しかありませんでしたが、今では7000もあるのです。その中 には2000のスターバックスが含まれています。 slug out :最後まで戦い抜く,とことん戦う、 willpower : 意志力,闘志、 melt away : 徐々に消え失せる、 decaf : カフェイン抜きのコーヒー
10 大帝国が何故このような衰微の道をたどるのかについて、16世紀のあるアラ ビア人医師は次のように説明し、警告を発しています。 'コーヒーを飲むと、 肉体が以前の自己自身の単なる影になってしまい、心臓と腸はとても弱くな り・・・' 現在の言葉で焼き直せば、 米兵は金張りのコーヒーポットかM-16 ライフルのどちらかを磨きます。しかしフラプチーノ(コーヒー)片手ではヘ ルファイヤーミサイルは発射できません。愉悦が武勇に勝ってしまうんですね。 falter : よろめく,つまずく、 physician : 医師、 imbibe : 摂取する,飲む、 one's former self : もとの自分,以前の自分、 gut : 内臓、 parlance :語法,言語、 gold-plate : 《他動》〜に金メッキをする、 Hellfire :ヘルファイア《米陸軍のヘリコプター発射用レーザー誘導式対戦車ミサイル》、 trump : に勝つ,負かす、 prowess : 武勇
11 そういう訳で、アメリカよ、詰めて場所をあけなさい。(まあヨーロッパのこ とは置いといて良いでしょう。)21世紀は中国とインドの世紀になるでしょう。 どちらにも10億の茶を飲む人々がいるのです。その上天安門広場にはスターバ ックスも見当たりません。 move over : (地位を)譲る、 slurp :音を立てて飲食する、 Tiananmen Square : 天安門広場


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