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| P24 | パキスタンの民主政治はまたもや軍事クーデターによって妨げられている。今 度は本当に、この国のためになるものであろうか。 | |
| 1 | スリランカの首都コロンボからパキスタン最大の都市カラチまでは、飛 行機でほんの210分である。しかし先週火曜日のパキスタン国際航空805便の 乗客にはわかったろうが、その時間で多くのことが起こりうるのだ。飛行機に 乗っていた要人、パキスタン国軍の参謀総長であるペルベイズ・ムシャラフ将 軍は、週末にスリランカの軍50周年記念式典に出席し、ゴルフをして戻るとこ ろだった。機がコロンボを飛び立つと、ムシャラフのパキスタン文民側上司の ムハマンド・ナワズ・シャリフ首相は、パキスタンで最も力を持つ機関の軍を 掌握しようとしたのだ。シャリフはムシャラフを解任し、国営テレビで彼の更 迭を発表、さらにムシャラフの飛行機がカラチ空港による着陸を禁ずる措置を 取ったのだ。 | 語彙 metropolis: 大都市 passenger: 乗客 transpire: 起こる span: 時間 VIP: 重要人物;v(ery) i(mportant) p(erson); 第二次世界大戦中の造語で,旅行その他で特 別扱いに値するほど重要人物であることを示すために使われたのが起源 on board: 搭乗して anniversary: 記念祭 civilian: 文官の attempt: 試みる seize: 力 ずくで奪う institution: 機関 replacement: 代わりとなる人 arrange: 手はずを整 える prevent: 妨害する |
| 2 | (当然知っているべきであったにせよ)首相側にとって予想外であった ことは、軍として、これは全て想定済みだった、ということだ。ムシャラフは 空路移動中、そのほとんどの時間外部との連絡が絶たれ、何が起きているか分 からなかったが、地上にいる仲間たちは、シャリフの公邸や彼に近い軍部や政 治家の屋敷、さらには議事堂や政府機関の建物を包囲していた。シャリフの弟 である、パンジャブ州知事のシャバズ・シャリフは、ラホールの自宅から、軍 の男に数発平手打ちを食らい連れ去られた。兵士たちは国営テレビであるパキ スタンテレビ(PTV)を占拠するためにフェンスを乗り越え、司令官到着を迎え るのにカラチ空港を制圧した。到着時刻の午後6時50分が来る。さらにその時 間が過ぎ去る。しかし将軍の乗った飛行機はまだ上空にあった。パイロットが, どこか他のところへ着陸するよう,カラチ管制塔から指示を受けていたためで ある。パイロットは燃料が足りないと答えるが、管制塔はインドかカラチの北 方220キロにあるナワブシャーに行くように命じた。そこでは警察が待ちかま えており、将軍を逮捕することになっていたのだ。 | 語彙 incommunicado: (外部との)連絡を絶たれた oblivious: 気が付かない transpire: 起こる colleague: 同僚 surround: 包囲する parliament: 議会 political ally: 政治組織 province: 地方 whisk: さっと運ぶ slap: 平手打ち secure: 確保 する await: 待ち構える fuel: 燃料 arrest: 逮捕する |
| 3 | 飛行機が40分旋回すると、機内のムシャラフや地上の部下たちも、異変 に気付いた。将軍はコックピットに入り、パイロットに着陸するように命じた。 空港のムシャラフ派兵士たちは管制塔に入り、シャリフ任命によるパキスタン 国際航空の社長を見つけ、(着陸)命令を出したのだ。ついに飛行機は、わずか5 分の燃料を残して着陸し、ムシャラフは空港を慌しく抜けだして自派の警官と 協議をした。7時間後、彼は全国放送のテレビで物々しい内容の声明を発表する が,それは選挙で選ばれたシャリフ政府が倒されたことを伝えるものであった。 48時間後、彼は憲法を「一時的に停止」し、「パキスタン全土は、パキスタン国 軍の支配下に置かれることになった」と宣言したのだ。 | 語彙 circle: 旋回する airborne: 飛行中の loyalist: 忠臣 appointee: 被任命者 ultimately: 最終的に storm: 激しく突進する confer: 相談する stern: 物々しい elected: 選出された overthrow: 転覆させる declare: 宣言する,布告する constitution: 憲法 abeyance: 保留 armed force: 国軍 |
| 4 | 民主主義の失敗 国際社会にとって、先週のパキスタンでの事件は、予 想外のことであり、非常に憂慮されることでもあった。昨年5月シャリフ政府 が隣国のインドに続いて6発の核兵器の実験を行った際、パキスタンは核実験 を行った7番目の国となり,先週、核兵器所有国で歴史上初の、軍事クーデタ ーによって政府が転覆された国となった。米国防省は急遽、約25発の爆弾から 成ると思われるパキスタンの核兵器は、これまで軍の管理下にあり、通常、軍 の最高司令官の首相や大統領による管理はない、と発表した。国防省のスポー クスマンであるケネス・ベーコンはこう語った。「何ら変化はないものと思われ ます」 | 語彙 international community: 国際社会 distinctly: 疑いなく frightening: ギョッと させる neighboring: 隣接する detonate: 爆発させる coup d'etat: クーデター U.S. Defense Department: 国防省 hasten: 急いで〜する note: 〜について特に言 及する arsenal: 兵器の貯蔵 Commander-in-Chief: 最高司令官 |
| 5 | しかし大きな変化があったのは明らかだ。パキスタンの核兵器国として の現状は、世界を震撼させたのだ。シャリフは、指揮官が機中におり手が打て ないと思われる間に、この国の軍隊分割を試みたが、それは無謀でもあり、お そらくはうかつであった。この試みが失敗に終わったのは、ムシャラフが最 近自分の統率力を強める動きをしていたためでもあり,さらには軍隊らし い揃った足並みのせいでもある。彼は先月から、この国に9人いる部隊司令官 のうち2人のクビをすげかえ、信頼に足る人物を置いた。パキスタンと最も軍 事的敵対関係にあるインドは、このクーデターに対して当初、軍隊の厳戒態勢 で警戒した。しかし数日でデリーの指導者たちは事態を楽観視する発言をし、 クーデターは単なる国内情勢でありすぐに地域の脅威となるわけではない、と 確信を持ったようであった。 | 語彙 status: 資格 place…on the edge of one's seat: = make…very nervous boldly: 大 胆に recklessly: 向こう見ずに split: 分裂させる aloft: 空中に seemingly: 外見 上は inherent: 本来備わった consolidate: 強化する corps: 軍隊 commander: 中佐 backbone: 中心勢力 initially: 初めに on alert: 油断なく警戒して sanguine: 楽天的な statement: 陳述,声明 apparently: 明らかに domestic: 自国の immediate: 即時の regional: 局地的な threat: 脅威となるもの |
| 6 | パキスタンが軍政に戻ったことで、20世紀は世界的民主化という抗いが たい波の中で幕を閉じようとしている、という一般の認識に反している。フィ リピンのピープル・パワー革命に続き、1988年に再び民政に戻ったパキスタン は(独立してから52年になるこの国はその歴史のうち25年が軍によって統治 されてきた)、民主化への道を歩む賞賛に値する画期的な変化の一つだった。1 億4000万の人口を抱える国は、さまざまな民主的自由という大きな成果を手に 入れていたし、少なくとも一つの自由は、完全な形で手にしていた。すなわち、 投票によって古株を追い出すことができる、という力である。この10年の総選 挙ではいつも、人々は前政権に反対の票を投じたのだ。 | 語彙 military rule: 軍事政権 belie: 〜に反する irreversible: 元に戻らない democratization: 民主化 landmark: 画期的な出来事 embrace: (主義などを)採用す る old guard: 古参党員,保守派 via: 〜を経て ballot: 投票 decade: 10年 previous: 前の |
| 7 | しかしながら、この制度には少なくとも大きな欠点が2つあった。第一 に、憲法によって大統領が(たいていは軍の後ろ盾があったが)、自由に政府を 放逐できた。この運命は各々の政権に降りかかってきた。1990年にはベナジー ル・ブットー政権に、1993年にはシャリフに、1996年には再びブットーの身に 降りかかり、そのつど政治腐敗と権力の濫用の責任を追及された。(2年半前に シャリフが国民議会で3分の2の多数派を占めて再び政権の座に就いた時、憲 法におけるこの条項を取り除いている。)さらに大きな問題は、同じ顔ぶれが繰 り返し政権をとってきたという点にある。政治制度がブットーの政党とシャリ フの政党に支配されていたのだ。 | 語彙 flaw: 欠陥 toss out: そとへ投げ出す at one's discretion: 自由裁量で fate: 運命 befall: 降りかかる administration: 行政 charge: 非難,告発 corruption: 汚 職 National Assembly: 国民議会 strike: 取り除く provision: 条項 constitution: 憲法 dominate: 支配する |
| 8 | そのようなわけで、先週のクーデターは無血だったばかりでなく、人々 の支持も得た。銃撃はまったくなかった。通りにも戦車や軍隊は、まったくい なかった。そういったものは何一つ必要なかったのだ。なぜなら人々は明らか に、シャリフが去るのを見て喜んでいたからだ。PTVの外には群衆が集まり、 ある者は「軍万歳」と書いたボードを掲げていた。シャリフの地元であるラホ ールでも、住民たちは爆竹を鳴らした。さらに人々が追い払って喜んだものは シャリフだけではなかった。「我々は民主主義など望んでいない」と語るのは、 イスラマバードのタクシー運転手ムハンマド・タリク(22)である。「我々が欲し ているのは、ただ法と秩序と、安定した物価だ」大学生のルブナ・スナワルも 同意見だ。「軍政になるのは、とても誇らしい気分です」 | 語彙 bloodless: 血を流さない evidently: 明らかに hoist: 掲げる resident: 居住 者 stable prices: 安定した価格 martial law: 軍政 |
| 9 | 社会学上分けられるあらゆる階層のパキスタン人−土地を持つ「封建的 土地保有」階級から膨大な都市の貧民に至るまで−にとって、ムシャラフとそ の部下たちは、この10年間民主主義を台無しにしてきた責任者ではない。その 汚名はブットーとシャリフに着せられるものなのだ。新聞社編集長で前駐米大 使でもあるマリーハ・ローディーは語る。「民主主義の死を嘆く人々は、投票 を経て選ばれた人で、民主主義をまずその手から守らなければならない人 物は、まさにその人々なのである、ということが理解できていないのです」 パキスタンにおける民主主義の歴史は実に貧弱である。ギリシャの歴史家トゥ キディデスの言葉にある「(経済的)発展の前に必ず求められる(政治的)安定」に 欠けるパキスタン経済は、ひどい有様であり、現在では320億ドルにも及ぶ外 債も、この国は絶えず不履行ぎりぎりのところにいる。一人あたりの国民所得 はたった483ドルしかなく、インドの350ドルよりは多いものの、中国の765 ドルには遠く及ばない。そしてカラチでは特に、宗派間の血なまぐさい抗争が 慢性的に発生している。汚職と腐敗は、この国では二大スポーツのように誰に でも知られているものだ。昨年、市民サービスの質の低下が著しくなったので、 ムシャラフ将軍は陸軍部隊を展開して、予算が組まれたものの実際には建設さ れていない学校資金を突き止め、水道や電気の料金は確実に徴収されるように したのだ。 | 語彙 sociological: 社会学上の spectrum: 領域 landowning: 土地所有の feudal: 封建的な gentry: 紳士階級(の人々) ruin: 台無しにする dishonor: 不名誉 ambassador: 大使 ballot box: 投票箱 Thucydides: トゥキュディデス (460?-?400 B.C.) 《ギリシアの歴史家; The History of the Peloponnesian War; 略 Thuc.》 dreadful: 恐ろしい perpetually: 絶え間なく on the brink of: 〜の瀬戸際に default: 債務不履行 external debt: 外債 currently: 現在は per capita income: 国民1人あた りの所得 sectarian: 党派の strife: 争い chronic: 慢性の national sports: = very common;ここではas popular as national sportsの意味で用いられたジョーク quality: 質 civil service: 行政事務 plunge: 突っ込む deploy: 配置する army unit: 陸軍 部隊 hunt down: 見つける disburse: 支払う |
| 10 | 「財政は底をついています」と嘆くのはパキスタン人権委員会の委員長 I. A. レーマン。「我々は、軍部による独裁も、民主主義も、社会主義も経験した。 どんな政治理論も民衆を満足させられない段階に我々は至ってしまったのです。 我々の国は破産しているのです」イムラン・カーンはパキスタンのクリケット 選手で、政治家としては今のところ成功していないが、今の制度を「泥棒が自 分の利益を守り、一方には分け前を与えないようにしている制度」と表現して いる。彼はこの国の浄化のために、2年間の軍政を敷くことを提案している。 | 語彙 kitty: 蓄え bemoan: 嘆く dictatorship: 独裁国 bankrupt state: 破産国 status quo: そのままの状態 regime: 政権 |
| 11 | さらに懸念されるのが、パキスタンイスラム武装勢力のあげる勝利の雄 叫びである。クーデター後の彼らの祝宴は特に盛り上がりを見せたが、それは おそらく、前パキスタン軍政指導者、ジアウル・ハク将軍が自らの治世に正当 性を持たせるために、イスラム化を利用したためであろう。ムシャラフは一般 には全くそのような人物ではないと考えられているが、極右勢力はそれでも政 治的な便宜を考えた対話ができるのではないかという観測をしている。「パキ スタンでは選挙を行うべきではありません」と語るのは、マウラナ・ファツル ール・レーマン・カーリルで、アフガニスタンで武装勢力の訓練キャンプを運 営するハルカット・ウル・ムジャヒディーンの代表である。「タリバンのような 制度が必要なのです」カシミールでのパキスタンの志願兵を訓練しているラシ ュカール・イ・タイバのスポークスマン、アブドゥラ・ムンタジールは次のよ うに語る−「我々は今この国にイスラムの制度を、と望んでいます。1400年前 に存在していたのと同じ制度です」 | 語彙 triumphant: 意気揚揚とした crowing: 得意になる人 Islamicization: イスラ ム化 legitimacy: 正統 be reputed to: 〜と考えられている different cloth: 異なる 社会階級 extremist: 過激主義者 conversion: 転換 mujahideen: イスラム戦士 militant: 交戦状態の |
| 12 | 週末まで、パキスタンの新政権設立は未だ不透明であった。ムシャラフ は、戒厳令にはまだ少し距離をおく「緊急事態」を宣言し、将来の選挙の可能 性については全く言及しなかった。将軍はおそらく日曜日の夜にはもう、新政 府の詳細な計画を発表し始めるのではないか、という観測もあった。 | 語彙 opaque: 不透明な state of emergency: 非常事態 a half-pace short of martial law: = very close to martial law spell out: 詳しく説明する |
| 13 | 首相の失脚 シャリフ体制の崩壊は、まったく予想外というわけでも なかった。以前ビジネスマンで1985年にジアによって政治の世界に引き込まれ たこの人物は、議会で3分の2の多数派を占めていたその影響力を用いて安定 と発展を目指すどころか、先輩の例に倣い、権力拡大を狙ったのであった。彼 は1997年には大統領と最高裁長官を追放した。多数のジャーナリストを攻撃し 投獄したのだ。議会の抵抗にも厳しい措置で臨んだ。彼自身の政党であるパキ スタン・ムスリム連盟でさえも、うんざりしているようであった。「彼らはこの 政変を歓迎しています」と語るのは、前イスラム連合の党員サリーム・サイフ ラ・カーンである。この10年で最も民意を得た政治家の一人、前大統領のファ ルーク・アーマド・カーン・レガリは語る。「彼は権力の拡大を目指して、民 主主義の全ての支柱を組織的に攻撃したのです」 | 語彙 demise: 終止 stability: 安定 mentor: 指導者 ouster: 放遂 supreme court: 最高裁判書 harass: 苦しめる jail: 投獄する crack down on: 弾圧する parliamentary: 議会の (be) fed up: うんざりしている systematically: 組織的に pillar: (国家・活動)の中心となるもの[人] acquire: 獲得する |
| 14 | そして最後にもっとも重要なことは、シャリフと軍の関係が脆弱であっ たことだ。ムシャラフの前任者は国家安全保障会議を提案したが、昨年末辞任 を余儀なくされた。首相がこの提案を脅威と感じたのだった。ムシャラフは後 任としてはまだましだと見なされ、シャリフ一族に近い国際情報部ISI(パキス タンにおけるCIA的存在)の部長であるクワジャ・ジアウッディン中将につな ぐ、暫定的な措置だと思われていた。 | 語彙 relation: 関係 shaky: 不確実な predecessor: 前任者 resign: 辞める national security: 国家安全保障 threat: 脅威 tolerable: 我慢できる replacement: 交替 sweatwarmer: = replacement equivalent: 等しい |
| 15 | しかしこの春、ムシャラフはインドが支配するカシミールのカルギル地 域へのパキスタンの侵攻を組織した。この侵攻は国家の最も勇気ある軍事行動 の一つだとして支持を得た。パキスタンの部隊は、自称「自由戦士」部隊と共 にインド領内に侵攻し、さらに山岳地帯の支配権を掌握したが,それは(インド とパキスタンが1984年より戦闘を繰り広げている)シアチェン氷河のインド部 隊に物資供給を行なう際、生命線となる道路の上方にある場所だ。約2ヶ月に 及ぶ戦闘で、国際社会は騒然となり、双方に数百名もの犠牲者を出した。シャ リフはこの7月にワシントンに向かい、ビル・クリントンに支持を強く求めた。 米国大統領は支持をせず、シャリフを説得して部隊を撤退させた。これが軍部 の逆鱗に触れたのだった。ムシャラフは自分が撤退の命令を下したのかと聞か れて、ジャーナリストにこう答えている。「もし私がそのようなことをしたら、 軍部の長たる資格を失っていたでしょう」ある情報筋の回想によれば、その後 の軍の会議において、「主要な議題はシャリフでした。(ムシャラフは)シャリ フは軍の組織を破壊したとして、厳しく批判したのです」 | 語彙 organize: 組織化する incursion: 襲撃 region: 地域 hail: 認める daring: 大胆な exploit: 偉業 troops: 軍隊 alleged: 申し立てられた infiltrate: 徐々に入 りこむ territory: 領土 capture: 占領する vital: 極めて大切な rattle: 慌てさせ る international community: 国際社会 casualties: 犠牲者,死傷者 persuade: 説得す る withdraw: 撤退させる outrage: 不法行為 pullout: 撤退 subsequent: 続いて 起こる abuse: 罵倒する |
| 16 | 両者の敵対意識は増幅し、9月半ばにシャリフは弟とISI長官をワシント ンに派遣し、警告をした。これに応えて米国は、「超法規的措置」を用いた政府 の交代をしようとするいかなる試みも許さないと警告する声明を発表した。こ れは結局軍部の怒りをさらに増しただけだった。緊張状態が高まり、過去にク ーデターに着手したことで知られる第111旅団には、ムシャラフが解任された場 合に備えて民間の建物を制圧するため、15分間警戒態勢が命じられた。敵対が 非常に高まったので、二人の間には仲裁人が介入して交渉を行い、結局シャリ フはムシャラフの任期をあと2年延長することに同意した。しかしムシャラフ の気は収まらず、一人の部隊長のクビを自分の息のかかった人物にすげ替えた。 その間他の将官たちは首相が最後の判断をする時を待ち、軍の司令官がシャリ フに解任された場合のクーデターの草案を作っていたのだった。軍の情報筋に よると「神経戦だった」のである。 | 語彙 animosity: 敵意 increase: 増加する dispatch: 急派する warning: 警告 attempt: 試み extra constitutional: 憲法を超えた means: 手段 further: なお一層 infuriate: 激怒させる tension: 緊張 proportion: 割合 alert: 警戒警報 launch: 乗 り出す seize: 力ずくで奪う civilian: 民間の intense: 激しい hostility: 敵意 intermediary: 仲介者 negotiate: 交渉する,取り決めをする eventually: 最後には additional: 追加の console: 慰める immediately: 直ちに corps: 軍隊 commander: 中佐 loyalist: 忠臣 boot: けなし,非難 draft: 起草する dismiss: 解雇する |
| 17 | 先週火曜日午後3時45分、ムシャラフがコロンボで飛行機に乗った直後、 シャリフはISIの部隊長のジアウッディン中将をイスラマバードの公邸に呼んだ。 カメラクルーは首相が新しい軍の司令官に勲章を授ける様子を映像に収めた。 そのビデオはPTVに送られ、午後5時のニュース速報とその1時間後には再び 主要なニュース番組で放映されることになっていた。おそらくそのジアウッデ ィンは、軍の最上層部を一掃する行動を急遽開始していたものと思われる。ム シャラフ逮捕のためにカラチ空港には警官が配備され、ナワブシャーの小規模 の空港でも警官が待ちかまえた。彼らの行動の機敏さは十分ではなかった。ジ アウッディンが軍の司令官を召集し始めるとすぐに、彼らはそれに対してクー デターを実行に移した。6時のニュースの前に、兵士がPTVを占拠した。6時半 には3台の軍用トラックがシャリフの公邸に着いた。兵士たちがドアのところ へ行き、警備員と家の使用人と庭師に退去するように命じた。「私たちは鍵を渡 して屋敷を出ました」と一人の警備員が語る。ムシャラフの乗った機が着陸す る前に、兵士は空港やラジオ局やテレビ局を掌握し、多数の内閣の大臣を自宅 に軟禁していた。午後9時半、ジアウッディンを連れたジープが列をなしてシ ャリフの邸宅を出た。首相もまたその夜のうちに身柄を拘束された。この両者 はチャクララの空軍基地にあるアジトに連行されたのである。 | 語彙 board: 乗り込む summon: 命ずる,呼びつける residence: 住居 decorate: 叙勲する broadcast: 放送する bulletin: 広報 presumably: おそらく clean out: 力ずくで追い出す top army brass: 高級将校 on standby: 待機して counter-coup: = reverse revolution premises: 家屋敷 convoy: 護送 custody: 拘留 |
| 18 | ムシャラフとその一団は政権を奪取する計画は十分だったかもしれない が、その後どうすればいいかについては、明らかにきちんとした準備がなかっ た。シャリフ打倒の後2日間、将官たちはムハンマド・ラフィク・タラール大 統領に、公式に全土非常事態を宣言させようとした。大統領は拒否し、それで ムシャラフが自分で宣言し、憲法を一時的に停止すると発表したのだった。そ の後数日間は、国民はムシャラフが将来の計画の詳細を発表する演説をするの を待ったが、それは2度延期された。 | 語彙 plainly: 明白に scant: わずかな afterward: その後 overthrow: 権力の座 からの追放 declare: 宣言する,布告する constitution: 憲法 suspend: 一時停止 にする deliver: 伝える address: 声明 spell out: 詳細に説明する postpone: 延 期する |
| 19 | 軍部は文民内閣を設置せざるを得ないだろう、という観測もある。それ は一つには、何百万ドル分にも及ぶ生活物資の提供もとを含め、国際社会の懸 念を払拭するためでもあるが、パキスタンの方向転換に失敗した場合に非難を 免れる意図もある。「軍は自分で招いたわけでもないのに危機に陥ったのです」 と前大使のローディーが語る。「これらの人物を知っているからこそ、私には彼 らが、自分たちは軍事行動に出ることはできる、という事実を大変意識してい るように思えるのです。しかし彼らはどうしたらよいか分からないので、政治 の舞台には出てきたくないのです」しかし10年間脇に控えたのち、パキスタン の軍部は舞台の中央に戻ってきたのだ。そして今後の政府がこのことを考慮に 入れないことはあり得ないだろう。 | 語彙 predict: 予言する install: 就任させる assuage: 和らげる donor: 寄贈者 vital: 極めて重要な shield: 保護する blame: 非難 be sucked: 巻き込まれる crisis: 危機 ambassador: 大使 sensitive: 敏感に反応する muscle: 力;ここでは military muscle(軍事力)のことを意味している in the wings: 待機して subsequent: 後に起こる |
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