The Case of the Suspect Bios

The Case of the Suspect Bios
(10.11.P84.1999)

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今回は ESSAY から
  真実とは何か?事実と真実との違いは?金野さんのサマリーです。伝記とは事実を伝える ものなのでしょうか?それとも何がしかの真実を伝えようとするものなのかな?
この記事は雑誌では10月11日号ですが、TIMEのUS版では10月4日号なのでお間違えの ないように

怪しげな伝記


語彙は主に『英辞郎』Ver.17から抜粋

BY CHARLES KRAUTHAMMER
 

大意

語彙

P84 伝記に作り事を混ぜるのはエドモンド・モリスだけではない fiction : 作り事、 biographical : 伝記の
1 エドワード・サイード教授は、アメリカでパレスティナを擁護しその宣伝をする 者の代表格だ。サイードの影響力の大きさは格調の高い文章やその情熱の深さだけで なく、その履歴にも由来する。エルサレムで育ったのだが、12歳の時、シオニ ストが権力を掌握しイスラエルを樹立したため、彼の家族はエジプトで難民にな ったのだと、長年世界に向かって語ってきた。 advocate : 支持者,擁護者、 propagandist : 宣伝者、 derive : 由来する、 prose : 散文,散文的な文章、 personal history : 経歴、 Zionist :シオン主義,シオニズム《国家的統一のためにユダヤ人の Palestine 復帰を目指すユダヤ民族運動》、 refugee : 亡命者,難民、
2 それは事実ではない、とジャスタス・リード・ウィーナーはいう。ウィーナー は3年の調査の結果をコメンタリーに発表した。1)サイードは、カイロで育った、 父親はパレスチナ人で、1911年にアメリカに移住し、市民権を獲得し、その 後エジプトに移った。2)サイードはエジプトで教育を受けた、エルサレムの聖ジ ョージ・アングリカン私立小学校でではない。3)サイードがエルサレムの「麗し のなつかしき我が家」と呼ぶ家、今では永遠にユダヤ人の手に渡ってしまった家、 その家の前でサイードはドキュメント番組や雑誌のためにポーズを作った家は実 は決してサイードのものではなかった。 commentary : 論評解説,記録、 emigrate to : 〜へ移住する、 American citizen : アメリカ国民、 Anglican :イングランドの,英国国教会(派)の、 preparatory school : 私立高等学校,私立小学校、 pose : ポーズをとる、 documentary : ドキュメンタリー映画、 profile : プロフィール
3 何故念入りに過去を偽造するのか?もちろん共感を呼び起こすためもある。だ がもっと大事な点は、彼自身の伝記をパレスティナの神話的伝記にふさわしい ものに仕立て上げる、つまり、個人的なものに置きかえることによって、イス ラエルに対するパレスチナの不平不満を劇化することにある。(サイードは過 去を偽ってはいないといっている。) craft : 手で作る, 巧妙に作る、 fabrication : でっち上げ,作り話、 sympathy : 共感、 biography : 伝記,一代記、 mythic :神話的な,架空の、 personalize : 人格化する,独自のものにする、 dramatize : 劇にする,劇的に表現する、 grievance : 不平,不満、 misrepresent : 誤り伝える
4 サイードはこのような術策を弄した代表例ではあるが、決してその発明者ではな い。昨年、同じような事件が、農家の出のマヤ人、メンチュの自伝、「私、リゴ ベルタ・メンチュ」でも起こった。この自伝に書かれているガテマラ政府によっ てなされたというぞっとする話しは世界的な大騒ぎとなった。 by no means : 決して〜ない、 art of : 術、 emblematic : 象徴の,象徴的な、 personal history : 経歴,履歴、 erupt : 噴出する、 Menchu : メンチュ Rigoberta 〜 (1959- )《グアテマラの人権擁護活動家; Quiche 族の農家の生まれ; 8 歳から大農場で労働, 差別体験に基づいて先住民族の生活 自決権・言語の尊重を訴えている; 1981 年メキシコに亡命; Nobel 平和賞を受賞 (1992)》、 autobiography : 自叙伝,自伝、 Mayan : マヤの,マヤ人、 peasant : 農夫,農民、 wrought : 《古・文》WORK の過去・過去分詞
5 デービッド・ストール教授はメンチュの履歴を追跡調査した。そして彼女の自 伝には単なるでっちあげの部分が含まれていることに気づいた。メンチュに教育 がないというのはうそだった。寄宿学校にいっていた。メンチュの父親は確かに 自分の土地から追い出されないよう長い間闘った。だがその戦いの相手はメンチ ュのいうようなラディーノ(ヨーロッパ系ガテマラ人)ではなく、父親の親戚 だった。またメンチュの兄弟ペトロシニオは政府の暗殺隊に焼き殺されたので もなかった。 track down : 突きとめる,見つけ出す、 boarding school :寄宿学校、 engage in : 〜に従事する、 dispossess : 追い出す、 Ladino :スペイン語を話す混血白人、 in-law : 義理の親,姻戚,姻族、 death squad : 暗殺団
6 「それが何ですか?」メンチュのでっちあげの名著を授業で使い続けると誓う 教授たちはいう、「メンチュの兄弟は暗殺隊に殺されたんです。たとえ彼が生 きたまま焼き殺されたのでないとしても、焼き殺された人々はたくさんいる んですよ。」 pledge : 〜を誓う、 assign : 指定する、 phony : 偽の,偽りの
7 確かにそうだ。だがメンチュはその場に居合わせ兄弟の死をみたといった。も し話しを作りあげたかったというのなら、 それにはもっと簡単な方法がある。 「私、リゴベルタ・メンチュ」を小説とよべばよかったのだ。(もしくは、ニュ ーリパブリックのチャールズ・レーンが底意地悪くいったように、表題を「私た ち、リゴベルタ・メンチュ」とすれば良かったのだ。)どうしてそうしなかった のか? new republic: 『ニューリパブリック』 《米国の進歩的知識人の意見を代表する といわれる週刊誌; 1914 年 Herbert Croly 主筆で創刊, NewRepublic 社刊; 政治評論が中心だが, 文学・演劇・映画などの批評も充実している》、 wickedly : 【@】ウィキッドリー,《副》意地悪く,不正に、
8 それは事実は小説よりも強い影響力を持ち得るからだ。それ以外にどう、ベン ジャミン・ウィウコミルスキの「フラグメンツ「」の説明をつけられるだろう か?「フラグメンツ」は旨も張り裂けるような非常に名高いホロコーストの回想 録だ。だがそれはでっちあげだということが分かってしまった。著者の本当の名 前は Bruno Doessekerだ。Majdanek を生き延びた子供ではなかったし、 ホロコ ーストで殺されたラトビアのユダヤ人の息子でもなかった。彼はスイス人でプ ロテスタントの未婚の母の息子だった。ホロコーストはみていなかった。「彼は 治療を受けている間にホロコーストの記憶が呼び起こされたのだといっている」 harrow : 苦しめる、 celebrated : 名高い,有名な、 holocaust : 大虐殺、 memoir : 回顧録、 fabricate : 作る,でっち上げる、 single mother : シングルマザー,未婚の母
9 何故根も葉もないうそを書くのか?子供が死体焼却炉を目撃したという話しは 何にもまして注目を集めずにはおかない。スレートでデュディス・シュルビッ ツがいうように、この本は小説としては陳腐でおきまりの筋立てでしかないが、 事実の伝記としては看過しがたいものになるのだ。 deception : ごまかし、 compelling : 説得力のある、 eyewitness : 目撃者、 oven :《ナチスドイツの》死体焼却炉[室]、 banal : 陳腐な,凡庸な、 formulaic : 決まり文句から成る、 dismiss : 簡単に片付ける
10 そしてまた、犠牲というのは報われるからでもある。ウィウコミルスキはユダ ヤ人ブック賞を得た。メンチュはノーベル平和賞を得た。どうしてでっちあげ はやめといた方がよいなどといえるだろう?うまくやりおおせるのだ。学会や 急進的な政治家の友達や仲間が守ってくれるだろう。 award : 賞、 Nobel Peace Prize : ノーベル平和賞、 get away with : にうまく成功する,〜をうまく逃れる、 away with : 取り去る,取り除く,追い払え、 academy : 学術団体
11 「メンチュの自伝が事実かどうかは私には問題ではありません。」とマージョリ ー・アゴシン教授は高等教育志でいう。私もそんなことは気にしません、 と原稿の編集を手伝ったアツロウ・タラセヌはいう。「また、南北アメリカの原 住民の人々は自分のことと共同社会のことを区別しないで話します」とも説明 する。 chronicle : 年代記、 edit : 編集する、 manuscript : 原稿、 collectively : 集合的に,集団で
12 免責は様々な形をとる。より高い事実のことをいう者もいる。実際に起こった ことではないかも知れないが、その動機はPC(政治的公正)にあるのだから問題 ではない、というのだ。象徴として事実なのだ。「リゴベルタ・メンチュのよう な不幸な人々のためにはより高い事実の基準というものがある」とアレンケア リー・ウェブ教授はいう。だがそれはより高い基準ではなくより低い基準なのだ。 exoneration : 免除,免責、 politically correct : 政治家が使う言葉として正しい,道徳的に正しい、 symbolically : 象徴的に
13 また事実という考えそのものが虚構なのだという者たちもいる。誰もが自分自 信の事実を生きている。'真'の歴史などというものは嘘だ。単に勝者の話でし かない。それは別の側からの話に優る特権を与えられるに値しない。特に虐 げられし人々の身の上話の上に君臨する価値はない。 bring to : 正気に返らせる、 privilege : 特権,特典、 narrative : 物語,体験談、 dispossess : 奪う,追い出す
14 ともかく、事実とは何か?新しいリーガンの伝記には架空の人物が登場する。 この人物は作者と同じ名(エドモンド・モリス)であり、その過去は適当に 作られたもの。様々な重大局面でリーガンに出会う。現存の大統領の認可を 得た伝記の中に、それを裏付ける脚注を付け加えて作り上げた小説! biography : 伝記、 feature : 特集する,特色とする、 fictional character : 非実在物のキャラクタ,架空の人物、 fabricate : 作る,でっち上げる、 encounter : 出会う,遭遇する、 juncture : 転機、 footnote : 脚注,補足説明、 authorize : 公認する,是認する
15 少なくともモリスはだまそうとはしていない。サイードやメンチュらとは異な り、モリスの発明はまさに文学上の工夫なのだ。そしてそれは開放的で大胆だ。 だがまさにその解放性が我々が歴史上の事実という概念をどれだけ曲げるように なってきたかを物語る。10年か20年前なら、モリスが自分を伝記に登場させ るなどということは起こり得なかっただろう。モリスは巨人たちの肩の上に立っ ている。その巨人とは勝手に自分たちの歴史を作り上げる恥知らずな作話者たち であり、彼らを正当化する奴隷的な学者たちのことだ。 deceive : 欺く、 bend : 曲げる、 notion : 概念,観念、 brazen : 厚かましい,ずうずうしい、 confabulator :懇談,談笑,作話、 slavish : 奴隷の


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