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| P56 | 「The Times History of the World」の最新版は見た目には素晴らしいけど、はしょ りすぎ | |
| 1 | コンピュータの時代が到来してから専門家たちは書物の終焉を予測してきた。しか し、儲けが少なくなってきてはいるが世界的に見て出版業界の末期症状の兆しはまだ 現れてはいない。しかし一冊の馬鹿でかい本が出現した今、専門家の言っていること にも一理あるようだ。書物の中にはデジタル形式にした方がいい場合もあるというこ とだ。 | pundit:専門家 demise:終焉、終わり thumping:非常に、とても大きい |
| 2 | ハーパーコリンズが出版した「The Times History of the World」はそのうたい文句 によれば「世界で出版された書物の中で最も成功した歴史書」であり、それだけでは なく「歴史に関する究極の参考文献であり我々の歴史への見方を変えてしまう素晴ら しい書物」なのである。ルパート・マードックと提携した企画(タイムズ紙と出版会 社であるハーパー・コリンズは両者ともマードック帝国の傘下にある)にふさわしく この本は確かに意義のあるものだ。しかしこの本の初版から21年たった今、2.5 キログラムもあって普通の本棚には入らないようなたいそうな本に誰が80ドルも払 いたいと思うだろうか?今やマウスでちょっとクリックすれば同じ情報にもっと簡単 にアクセスできるのである。 | befit:〜にふさわしい |
| 3 | 1978年の初版から「The Times History of the World」は現在まで4回改訂さ れ、18ヶ国語に翻訳され150万部近く売られた。この本は現在ではロンドン大学 とキングス大学の世界現代史の教授であるリチャード・オーバルによって編集されて いるが、かなり大ざっぱにかつ自信を持ったタッチで世界の歴史を描いている。50 0万年にわたる人類の進化をたったの375ページに収めているのだ。この本には1 00人以上の世界中の著名な歴史家が日本の応仁の乱(1467-77)から修道院制度に 至るまで様々なトピックスに寄稿しており、これらの多くの記事は詳細な地図と図表 入りで解説されている。 | monasticism:修道院制度 |
| 4 | しかし発行者自身がほめちぎってはいるとは言え、第一次世界大戦に関してはわずか 600字、1368年から1644年の間中国を支配していた明王朝に関してはたっ たの5段落しか割いていないような歴史書がどの程度包括的であり得るのか。「The Times History of the World」はまた過去の歴史における過ちを認め政治的には公正 であろうとし、次から次へと西洋人の、特にヨーロッパ人の価値観と動機を非難して いる。例えばヨーロッパ人の探検家たちを「貿易や個人の裕福さと栄光に駆り立てら れている」と表現したりしている。 | Ming dynasty:明王朝 mea culpa:過失の自認 homage:敬意 |
| 5 | 公正さを求めているため作者は14世紀のアフリカのソンハイ文明をその時代の他の 文明と同列で論じ、性差別を避けるため大昔の漁師については「fishermen」を 「fishers」としている。また現在のロシアの市場改革はまさにロシア自身とともに 歩んできた汚職や犯罪、非効率性、民族紛争などの国家の問題が原因であるとしてい る。こういった浅はかな見解は戦争についてまでなされている。小国家間の紛争は搾 取的な大国による武器の販売が原因であるとお決まりのように書かれているのだ。 オーストラリアの共和党主義でさえ好意的な見方をされている。 | evenhandedness:公平 spin:見方、見解 |
| 6 | 深みのない歴史である。芸術や社会、科学、スポーツなどのテーマがあまり取り上げ られていない。より多くの人たちが以前より繁栄し、健康的になり、安全であること はある一定の発展を伴って正常に歴史が刻まれてきたという証拠であるのだが、それ を認めたのもほとんど嫌々ながらである。しかしこの本のはやりの世紀末的な悲観− 特に戦争や国家主義、民族主義、圧制を容赦なく強調しているが−によると繁栄や健 康や安全はちょっとした副作用のようである。確かに(歴史書としては)風変わりな 見方ではあるが、地球温暖化や人口爆発、生態系の機能低下、宗教の原理主義などの 脅威が21世紀に影を投げかけるだろうと編集者たちは断言している。 | one-dimensional:一次元的な、深みのない go by the board:無視される fin-de-siecle:世紀末(の) aver:断言する fundamentalism:原理主義 |
| 7 | この本は家族で行うクイズのためのガイドとしては評価に値するし、楽しい史実にも あふれている。例えば1447年から1600年までの間に発行された25万種類の 書物のうち約75%が宗教関係のものであるということや、1700年にイギリスが 輸入した紅茶は31,750キログラムで100年後には1,500万トンにまで達し たこと、それから1450年から1870年の間に1,150万人の奴隷がアフリカ からアメリカに連れてこられたことなどが書かれている。 | |
| 8 | このような情報に興味をもつ読者もいるだろう。しかしボーリング・シリンダー技術 を開発したイギリスの製鉄業者ジョン・ウイルキンソンに関しては伝記とも言えるほ ど充分に解説されている一方でアンドレ・サカロフに関しては何も書かれていないよ うな「鳴り物入りの」歴史書から読者は何を得るだろうか。ほかにも同じようなとん でもない省略が見られ、1930年代に旧ソビエトの農業集団化でロシアの何百万と いう農民が死んでいったことについても書かれていない。 | factoid:《活字化されたことによって》事実として受け取られていること。別訳: 「こうして数字化してみると興味を持つ読者もいるだろう。」 collectivization:集団化 |
| 9 | 豪華なイラスト入りのこの本はビジュアル的には成功である。写真編集担当のアンネ ・マリー・エーリッヒやデザインチームの仕事には素晴らしいものがある。しかしき れいに仕上げられた最後のページをめくり終えたとき、読んだ者は陳腐な言葉のよう に色あせた感じを受けてしまう。この本はインターネットの時代にふさわしいように デジタル形式にしたのであればもっと利用しやすくなるし役に立つであろう。とは 言っても、内容をはしょっていることやかなりの重量を考えるとコーヒーを飲むため のちょっとしたテーブルに置くのが一番いいのかもしれない。 | sumptuously:豪華に stale:気の抜けた cliches:陳腐な決まり文句 |
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