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| P61 | 負けたらゴチャゴチャ言うアジアの人達、最高の選手でも時には失敗するこ ともあるというのを分ってね | sore loser : 負けっぷりのよくない人、 athlete : スポーツ選手、 falter : つまずく |
| 1 | アジアのスポーツファンでいるというのネチネチしている。女子ワールドカッ プの優勝決定戦で中国のサッカーチームがアメリカに負けたあと、中国の新 聞は即座に(また予想通りだが)アメリカ人がいかさまをしたと非難した。 大会期間中中国チームがクタクタになるほどの移動スケジュールを組んだと 組織委員会を非難──また、故意に大使館という名のホテルにチームを宿泊 させ、NATOがベルグラードの中国大使館を爆撃したときの可哀相な少女達の ことを思い出させたと非難したのである。さらにはっきりしているのは、試 合のクライマックスであるPK戦で、アメリカのゴールキーパー、ブリアナ・ スカリーがオフェンスをしたと新聞は非難していること:テレビの再生画面 では、リューヤンがボールを蹴るとき彼女が前に出ていたことを示している と。明らかに優位に立って彼女は防いだ。厳密に言えばそれは反則なのだが、 し烈な戦いのサッカーではよくあることだ。ゴールキーパーはほとんど本能 的といってよいほど前に出るし、それによって得られる優位さなどというの は無いに等しいので、レフリーも決ってあらぬ方を見ることにしている。し かし、スカリーはリューの股間を蹴飛ばした方が良かったかも。それほどま でに中国の解説者の怒りは凄まじかった。 | football team : フットボールチーム、 World Cup : ワールドカップ、 promptly : すぐに,即座に、 cheat : いかさまをする、 organizer : まとめ役、 squad : チーム,(分)隊,団、 punishing : ヘトヘトに疲れさせる、 deliberately : わざと,故意に、 lodge : を宿泊させる、 credibly : 確かな筋から,確実に、 goalkeeper : ゴールキーパー、 offense :違法行為,不法行為,攻撃、 climactic : 絶頂の、 penalty shoot-out :PK戦、 edge :強み,優位、 technically : 厳密に言うと、 infringement : 違反,侵害行為、 commonplace : 普通の、 competitive : 競争の、 goalie :ゴールキーパー、 step forward : 進み出る,出頭する、 instinctively : 直観的に、 routinely : いつも,いつものように、 derive : 派生する、 marginal : 取るに足りない、 groin : 鼠径,腿の付け根、 outrage : 激怒、 commentator : 解説者 |
| 2 | 彼らの怒りは、スポーツにおける敗北は国辱に等しいという誤った信念── アジアにはよくある──に由来している。先月ロンドンで行なわれたクリケッ トのワールドカップでパキスタンが敗北したとき、ファンが選手の人形を燃 やした理由がこれで説明できる。怒りに燃えた暴徒はスターである打者の家 に石を投げ、チームのキャプテン、ワシム・アクラムの母親は息子に代わっ て謝罪を余儀なくされた。インドでは、地元チームの敗色が濃厚になると、 ファンは石や瓶を競技場に雨あられと投げ込むので有名だ。政府でさえも、 落ち目のスポーツの英雄には徹底的に冷淡。スリランカのクリケットチーム が、今年のワールドカップに負けて帰国したときには、政府は何人かの選手 に対して所得税の記録を調査するよう命じた。一方、パキスタン首相モハマ ド・ナワズは自らの説明責任委員会──政府内の汚職を根絶するために設け られたもの──に、自国のチームのメンバーにかけられた競技期間中の深夜 のドンチャン騒ぎに対する嫌疑を調査するように命じた。スリランカもパキ スタンも、もしワールドカップで勝っていれば、選手の多少の逸脱行為はす べて間違いなく許されたであろう。 | stem from : 〜から生じる,〜に由来する、 misplace : 間違って与える、 arena : 活動領域,土俵、 tantamount : 同等の,等しい、 national disgrace : 国辱、 effigy :(肖)像,彫像,人形、 cup final : カップファイナル,決勝戦、 mob : 大衆,暴徒、 batsman : 打者、 forgiveness : 容赦、 on behalf of : 代わって、 downright : 徹底的に、 mean-spirited : 狭量な、 accountability : 説明責任,会計責任、 root out : 根絶する、 graft : 汚職,収賄、 late-night : 深夜の、 revelry : どんちゃん騒ぎ、 misdemeanor : 軽犯罪 |
| 3 | アジアのスポーツアイドルがそれほどおかしな扱いを受けるのはなぜだろう? 恐らくはそうしたアイドルというのが比較的新しいから──アイドルがい るってことに慣れてません、だからどう対処していいかもまだ分らないので す。今世紀の初めの頃から、西洋人はスポーツのヒーローの名前を挙げるこ とができる:ベーブルース、W.G.グレース、それにソニアヘニーなどは1920 年代のアメリカ、イギリス、ノルウェーでは誰でもが知っている名前だった。 それに反して、アジアのヒーローははるかに新しい。(日本はここでも例外: 国際的に通用する長い競技記録をもっており、これが日本のファンが冷静に 敗北を受け止めることができる理由である) | mistreat : 虐待,酷使する、 Ruth :(ベーブ)ルース George Herman 〜 (1895-1948)《米国の野球選手; 本塁打王12 回,生涯本塁打 714 本》、 Grace :グレース W(illiam) G(ilbert) 〜 (1848-1915)《英国のクリケット選手》、 Henie :ヘニー Sonja 〜 (1912-69)《ノルウェーのフィギュアスケート選手》、 household name : 誰でもよく知っている名前、 vintage : 成熟度,古くて価値のあるもの、 world-class : 国際的な,超一級の、 sporting achievement : 競技の記録、 take A in one's stride :平常のやり方を乱さずに[冷静に]…を処理する[扱う] |
| 4 | 無論、つまるところは経済問題となる。今世紀半ば植民地支配から独立を勝 ち取ったあと、アジアの国々の多くは自国民を食べさせ、衣服を与えかつ教 育を受けさせることに必死で、スポーツなどといった些末なことに心を煩わ せることなどできなかった。国民の多くが文盲でありまたテレビもなかった ので、アジア人のスポーツでの快挙はほとんど知られることもなかった。 1970年代になって始めてスポーツが大衆の意識に根差すこととなる。だがそ の時でさえ、彼らはスポーツ選手に期待することはなかった:国際競技には 新参者であり、大会ではいつもおどおどとして力を発揮できなかったから。 アジア各国は世界に通用するようなスポーツ施設を持っておらず、選手のほ とんどがアマだった時には、敗北の言い訳することは簡単だった。ファンも 寛大だったのだ。 | come down to : 結局〜になる,つまるところ〜になる、 colonial : 植民地の、 absorb : 夢中にさせる,消耗する、 bother with : 〜で面倒な思いをする,時間を無駄にする、 frivolous : うわついた,つまらない、 widespread : 広く行き渡った、 illiteracy : 文盲、 feat : 偉業,功績,快挙、 fixture : 固定物、 consciousness : 意識,自覚、 novice :新米、 routinely : いつも、 overawe : 威圧する,畏怖させる、 under par : 額面割れ、 explain away : 言い逃れる、 infrastructure : 生活の基礎となる設備、 forgiving : 寛大な |
| 5 | こうしたことが変わったのが1980年代、アジアが常に勝ち始めた時である。 中国と日本はオリンピックでかなりのメダルを獲得したし、インドネシアは バドミントンで強くなり、インドとパキスタンはクリケットの第一人者とし て頭角を現して来た。これは、アジアの経済タイガー達の出現や、それに付 随したアジア人のプライドの高まりと機を一にする。スポーツにおける勝利 は各国の自己主張の延長ともなった。国民の期待は高まる。いつも敗者であっ たスリランカでは、1995年クリッケットカップで優勝するまでは、自国のチ ームが競技で一ゲームでも勝てばファンは幸せであった。今は、優勝しない と満足しない。 | on regular basis : 定期的に、 reap : 収穫をする、 sizable : かなり大きい、 haul : 獲物、 dominant : 有力な,抜きんでている、 emerge as : 現われる、 world-beater : 第一人者,チャンピオン、 coincide with : 〜と合う,〜に行きあわせる、 extension : 延長、 self-assertive :我を張る,自己を主張する、 underdog : 負け犬、 nothing less than : 少なくとも〜以上、 world domination : 世界征服、 suffice : を満足させる |
| 6 | 偉大な選手でも時には負けることがある──また競技場における敗北はそこ だけのものであり、それ以上ではない──という考えにアジアのファンが慣 れるにはまだ時間がかかりそうだ。他方では、アジアの選手は西洋の選手の 手本ともなれる。ファンが不平をこぼしているときでも、アジアの選手は優 雅に振る舞おうとする──勝利の時もまた、敗北の時も。インドとパキスタ ンのクリケット選手は、ファンの過剰な情熱に、また両国の昔からの敵意に 流されてはいけないことを知っている。非難ごうごうの新聞とは異なり、中 国の女子サッカー選手は、勝利したアメリカの選手に非難もせずに祝いの言 葉を述べたのみ。西洋では、上品なのはファンであり、選手は甘やかされて いる。ペナルティー行為について訊ねられたとき、ブリアナ・スカリーはこ う答えている:「見つかったら反則っていうのよ」負けっぷりの悪い人より も質の悪いものがあるとしたら、それは勝ちっぷりの悪い人であろう。 | counterpart : 対応するもの、 whine : ぐちをこぼす,すすり泣く、 grace :優美,しとやかさ、 get carried away : 夢中になる,自制心を失う、 overblown : 膨れ上がった、 ill-will : 恨み,敵意、 finger-pointing : 告発すること,指弾、 victorious : 勝った,勝利を得た、 sore loser : 負けっぷりのよくない人 |
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