It's the Stupidity, Stupid

It's the Stupidity, Stupid
(6.7.P56.1999)

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今回は ESSAY から
  Jayさんの訳です。お楽しみを!

それは間抜けだよ,与太郎君


語彙は主に『英辞郎』Ver.17から抜粋

by Lance Morrow
 

大意

語彙

P56 アメリカがしくじると,世界は陰謀を見出す。実情はもっと単純だろうに。  
1 全訳 本土で大きな仕事を手がけている中国系の友人とニューヨークで夕食を取った。彼女は最近北京から戻ったばかりだ。「仕事は仕事ですからね」と彼女が語ったのは,私が(なぜ,このような状況下に中国系アメリカ人と思われる彼女が,本土相手に大きな仕事ができるのかという)わかりきった質問をしたときであった。「政治は政治なんですよ」それゆえに,NATOがベオグラードにある中国大使館を爆撃し,コックスレポートがアメリカにおける中国の核スパイ疑惑を詳しく述べたときにでさえ,数百万ドルの取り引きがつつがなく進んだのだ。 語彙 huge: 莫大な deal: 取り引き mainland: 本土 obvious: 明らかな politics: 政治,政策 multimillion: 数百万 proceed: 進む embassy: 大使館 detail: 詳述する espionage: スパイ行為
2 全訳 しかし大使館爆撃で死んだ3人の中国人の葬式が,北京で行われることを語るとき,彼女の目は曇り始めた。彼女の言葉はとげがあり,責め立てるものへと変わったのだ。私はたずねた。「本当は,アメリカ人がわざとそうしたと思っているのではありませんか」「もちろん,そう考えていますよ!」「そんなバカな」「なぜ私達がそうすることになるのでしょうか」「そうですね」と彼女は言った。「もっと深い理由があったに違いないでしょう。CIAが転覆に乗り出したのは…」彼女の言葉から陰謀という憶測が次第に消えていった。「まあ,ありえない話ではないと思いますが」と私は認めた。「でも,もっとありえる理由は,愚かさからくるものではないでしょうか。西側のメディアがコソヴォ軍が乗っ取ったという報道をしていたにも関わらず,コソヴォ解放軍の駐留地をセルビア軍基地と思って攻撃したり,ベオグラードの医療施設,その地区の刑務所,さらにはスイスの外交官が開いたレセプションすら爆撃しかねなかったようにです」 語彙 cloud: 曇らす funeral: 葬式 bruised: とげのある accusatory: 告発的な deliberately: 故意に absolutely: その通りです be out to: 〜しようとする subvert: 破壊する conspiratorial: 陰謀の inference: 推測すること[されたこと] trail off: 次第に消える stupidity: 愚かな行為 adjacent: 直前の K.L.A: Kosovo Liberation Army;コソヴォ解放軍 Serb: セルビアの military: 軍隊 take over: 引き継ぐ diplomatic: 外交官の
3 全訳 中国人の友人は自分の意見を曲げようとはしなかった。夕食の席での選択肢は,1) 陰謀説 ― とどのつまり,それは隠された手,つまりさらに深く複雑な原因,のせいにしないではいられない人間の本質が持ち得る欲求に答えるものであり,2) 愚かさ―人類の歴史において大きなものだが,その存在は実際よりも低く見られているもの,であった。 語彙 budge: 意見を変える conspiracy: 陰謀 hidden hand: 隠された手 complexity: 複雑さ cause: 原因 underappreciate: =underestimate; 実際よりも低く見積もる presence: 存在
4 全訳 私は自分の方が妥当と思われる選択肢を支持していたと思う。事実,ユーゴスラヴィアでの連合国の戦争は愚かしさという憂うべき局面を帯び始めている。それはベオグラードの市街地図を読み違え,電話帳を読み違える(ええと,〈Embassy of China は〉embassyのe で引けば良かったのかな,それともChina のc だったかな)というNATOの明らかとなった無能さから,ある種全体としてベントレ論理に至るのだ。この論理は(「町を救うためには,破壊する必要があった」と,一人のアメリカ将校が語ったヴェトナムの町にちなむ論理で),さらに深く道徳的混沌へと漂うに至る彼らの物の考え方を指すものである。 語彙 plausible: 妥当な ally: 連合国 acquire: 手に入れる alarming: 警報を発する dimension: 局面,相 manifest: 明らかな overall: 全体の Ben Tre logic: ヴェトナム都市ヴェントレで不必要なほどの殺戮を行うにまで至った論理 obtuseness: 鈍さ
5 全訳 愚かさは,私のお気に入りのテーマの一つだ。「愚かさはいつも驚嘆すべきものである」とジャン・コクトーは書いた。「どれほど頻繁にそれと出会おうともだ」 @愚かさというものは眠りのようなもので,普遍的で超現実的,かつ謎めいた現象であり,次第に薄暗さを増すこと,つまりトンネルを通り抜ける際徐々に明かりを失うように,(頭の電球が)少しずつ明かるさを失って行くものなのだ。時折,愚かさはとてもおかしいことがある―世界の笑い話のほとんどはある民族によって,他の民族が持つ愚かさを語られるものだ。正道からそれた場合愚かさは,役立たずな悪の異母兄弟―超神秘的な威厳を持たない悪―として現れる。より現実的な意味において,「悪の帝国」は,愚かな帝国だ―体制的な愚かさは,善悪の判断は抜きにして,ソヴィエト連邦を崩壊させたといえるのだ。 語彙 encounter: 出会う surreal: 超現実主義の phenomenon: 現象 brownout: 電圧低下 hilarious: とてもおかしい sinister: 不吉な,悪意のある incompetent: 役に立たない half brother: 異母兄弟 prestige: 威厳
6 全訳 犯される大罪の規模が大きければ大きいほど,当然ではあるが,我々は徐々にその原因を全くの盲唖的理解には求めなくなる。歴史は,因果の複雑なからくりを有し,威風堂々たる様相を呈して入り組んだものであると我々は考える。しかし,偉大なる歴史というものは,おそらく,愚かさによって作り上げられるものであるかもしれないのだ(例えば,真珠湾攻撃の際,日本人が行った規模の大きさが計り知れない愚行が挙げられる。それにより,アメリカをあの戦争へと導いたのだ)。 語彙 enormity: 極悪 commit: 犯す attribute A to B: A をB に帰する sheer: 全くの dumbness: 無言 imposing: 人を圧倒する elaborate: 念入りな colossal: 巨大な thereby: それによって
7 全訳 物事が複雑さを増すのは,愚かさと陰謀が共に融合するときである―このことは事実良くあることであるが。ホワイトハウスの地下会議室で密かにもくろまれたウォーターゲート事件を思い出すと良い―ニクソンの「配管工」は,一生懸命考え込んでいるダフィーダックの,間抜けなずる賢さを有していた。全く持ってすごいと言わしめるのは,規模こそ大きいものの中身は取るに足りない愚かさが原因で,行政全体が倒れたことである。それは録音したテープをニクソンが焼かなかったという,説明のつかない失敗の中でクライマックスを迎えるものであったのだ。 語彙 complicate: 複雑にさせる conspiracy: 陰謀 Water-gate plot:ウォーターゲート事件 (1972) 《共和党の Nixon 大統領再選委員会の策略による米民主党本部侵入事件; これに端を発する盗聴など一連の不法行為の発覚で 1974 年 Nixon 大統領は辞任》 plot: 陰謀(事件) hatch: (陰謀などを)たくらむ plumber: 配管工 cunning: 悪賢い Daffy Duck: ダフィダック;Warner Brothers のアニメ映画のキャラクターである雄アヒル。最初は名前がなく 'that darnfool duck' (あのとんまなアヒル) と呼ばれた。口を開けば 's' 音を誤って発音する impressive: 印象的な,すごい administration: 行政 pissant: つまらない,くだらない doofness: 馬鹿げたこと culminate: 最高点に達する inexplicable: 説明のつかない
8 全訳 そのウイルスは世界的規模で広まる。さらに現代に近い時代に遡り,愚かさが影響を与えた例を挙げるならば,中国政府の試みがある。当時の中国政府は現職の民主主義社会の大統領を300,000ドルで買収しようとしたのである。それはニューヨークにある一番高いレストランに入り,ボーイ長に良い席を求めて25kをこっそり手渡しするのと同じ価値の金額であった。 語彙 virus: ウイルス cosmopolitan: 全世界的な more recent times: より近い時代 infect: 感染する,影響を与える,波及する bribe: 賄賂を贈る sitting: 現職の equivalent: 同等のもの slip: こっそり手渡す the maitre d': ボーイ長
9 全訳 バルカン半島では,さらに悪い結果が起きている。時折医療施設の煙突を通って内部を爆撃するコンピュータ制御の爆弾による平和維持は,矛盾をはらんでいる。医師の,―そしておそらくは平和維持活動を行う者の―「まず,肉体的損害を与えないこと」という原則は,将軍の「卵を幾つか割らなければ,オムレツは作れない」という原則に負けてしまうのだ。誰もが,戦争に過ちや愚行を予期しているが,遠隔制御―自らを付随する危険にさらすことなく機械的に破壊手段を雨のように降らす神のような巨大な力―で戦争を行えば, 安全であること(戦時の血を伴う報復という代償を望まない大国の傲慢さ)は,軍事行動における道徳観を堕落させ―さらには過ちの重大性を拡大するようだ。その上コンピュータ制御のハイテク技術を用いることは完璧な正確さを期待させる。とはいえ,戦争というものは技術というものをそのレヴェル(戦争が本来持ち得る不確かなレヴェル)にまで引きずりおろすものなのである。 語彙 consequence: 結果 by means of: 〜によって smart: コンピュータ制御の now and then: 時折 chimney: 煙突;通気のために用いられるもの breed: 繁殖させる,育てる contradiction: 矛盾 physician: 医師 presumably: たぶん principle: 主義,原則 "First do no harm": 「まず,肉体的損害を与えないこと」;Hippocratic oath ヒポクラテスの宣誓《医師の倫理綱領の宣誓》 superpower ex machina: deus ex machina(機械仕掛けの神)をもじったもの;「あたかも神であるかのように振る舞い機械的に動く巨大な力」の意味 concomitant: 付随する invulnerability: 安全であること arrogance: 傲慢さ reciprocal: 報復の subvert: 堕落させる incidentally: ついでながら magnify: 拡大する precision: 正確さ
10 全訳 愚かさは危険となる。そして,悲劇となる。上院議員であった故エヴェレット・ダークセンは連邦の支出に関して,滑稽で良く知られた言葉を残している。「百万ドル(という小さな単位の支出)も積み重ねて行けば(膨大な量の支出となり),近い将来あなた方はその膨大な支出について話し合うこととなるのだ」 語彙 tragic: 悲劇的な senator: 上院議員 federal spending: 米国連邦政府の支出;ここでは軍事費用の意味 …here,…there: 次々と積み重ねて行くさまを形容している表現 real money: = accumulated money
11 全訳 愚かさに無能さを積み重ねて行けば,近い将来あなた方は真の愚かさについて話し合うこととなるのだ。 語彙 incompetence: 無能力 folly: 愚行


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