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| P36 | ヘレン・ケラーは障害者観を変え、視覚や感覚の境界線を書き直した | perception : 認識、 disable : 身体的障害のある |
| 1 | ヘレン・ケラーはまだ2歳にもならない時熱病にかかりました。突然嘘みたい な高熱を出し、人事不省となったのです。そしてまた突然に熱はひいていったの ですが、目は見えなくなってしまいました。そのすぐ後耳も聞こえなくなってし まいました。大きくなるにつれ、ちょっとした使い走りはどうにかできるように なったのですが、同時に自分には何かが欠けているのだと気づいていきました。 「時々、」後になってヘレン・ケラーは書いています、「私は話しをしている二 人の人の間に立ち、その人たちの唇を触りました。でも理解できなくていらいら したのです。私は自分の唇を動かし、激しく身振り手振りも加えてみましたが、 無駄なことでした。それで癇癪をおこし疲れ果てるまで、あたりかまわず蹴りま くり金切り声をあげるということも時々ありました。」ヘレン・ケラーはいわば 野生児みたいだったのです。 | fever : 熱、 unconscious : 意識を失った、 deaf : 耳が聞こえない、 errand : 使い,用事、 vex : イライラさせる,悩ませる、 gesticulate frantically : 慌てて身振りで話す |
| 2 | 私にはヘレン・ケラーの怒りがよく分かります。私は8ヶ月の未熟児で生まれ 保育器に入れられました。当時の医療では大量の酸素が保育器に送り込まれてい たのです。今ではその危険性が十分認識され保育器に酸素を送るにあたっては細 心の注意が払われるようになりましたが、私はその結果(未熟児網膜症のため) 光を失いました。それで盲学校に送られたのですが、私は、点字がちんぷんかん ぷんで1年生を落第してしまいました。言葉は奇妙な概念でした。殴られたりび んたをもらったりもしました。そういうこと全てにうつうつと耐えていれば怒り が爆発するときもあるというものです。怒りの激発とは全て、うつうつと長いこ と鬱積していた怒りがとうとうからを破って飛び出したものなのです。ヘレンの かんしゃくはひどいものでした。でもそれは彼女が盲聾だということを考えれば 当然なのです。しかしヘレンが言葉は事物に結びついているということを発見し た時彼女に訪れた変化は何とすばらしいものだったでしょう!それはまるであの 歌(On a clear day, you can see forever'の詩のようなのです、「晴れた日に 起きあがり周りをみまわしてごらんなさい、そうすれば自分が誰なのかわかるで しょう。」 | rage : 激怒、 prematurely : 時期尚早に、 incubator : 早産児保育器、 pump : 〈食物などを〉供給する、 state school : 公立学校、 flunk : 落第する,単位を落とす、 first grade : 一学年、 lyric : 歌詞,叙情詩 |
| 3 | 私は見えるという言葉を使えます。私は目の見える人の言葉を話せます。それ はヘレン・ケラーがなしとげた最初の偉業の一部なのです。ヘレン・ケラーは、 言葉が、目のみえない人たちや耳の聞こえない人たちを、どう解放し得るのかを 証明しました。彼女は書いています、「文学は私のユートピアです。そこでは私 はハンディを感じることなく普通の人と同じ立場にたてるのです。」しかし、ヘ レンは言葉をマスターするためにどんなに努力したことでしょう。『流れの中で ――私の後半生』には、どれだけアルファベットや耳の聞こえない人の言葉に失 望したかが書いてあります。先生がヘレンの手のひらにものの名前を綴っていく スピードにさえ失望しました。ヘレンは言葉を早くしりたいとじれったくてしか たありませんでした。また、先生が手に書いてくれるスピードは目で読むスピー ドには決して及ばないとも思ったのです。私は、点字をついに収得した後は、次 から次へと本を読んでいったことを思い出します。盲学校にいることは孤児院に いるようでした。しかし、言葉が ---私の場合は音楽が -- その孤立感を変えて くれました。ケラーは、目も見えず耳も聞こえませんでしたが、光と音の世界に あっても言葉によって意志伝達できることを証明しました。光と音の世界に語り かけその世界の中で生きていけることを示したのです。私は彼女の業績の恩恵を 受けています。ヘレン・ケラーという実例のおかげで、世界は少し私たちに道を 譲ってくれるようになりました。私の場合は、11歳から高校2年まで、盲学校 から公立の普通学校に移ることができました。そして高3からは、また盲学校に 戻ることに自分の意志で決めました。現在、私はジャズ歌手です。 | great achievement : 偉大な業績、 liberate : 開放する、 literature : 文学、 utopia : ユートピア,理想郷,地上の楽園、 disenfranchise : 特権を奪う、 frustrate : くじく,人を失望させる、 palm : 手のひら、 impatient : イライラする,じれったがる、 scribble : 走り書きする、 grasp : 把握する,理解する、 orphanage : 孤児院、 beneficiary : 受益者、 state school : 公立学校、 public school : 公立学校、 on one's own : 自分で |
| 4 | 言語の修得はそれだけでも奇跡的に思えるでしょうが、それが19世紀の話し というのは、これまた奇跡的です。この偉業はヘレン・ケラーと辛抱強く根気の あるアン・サリバン先生との共同作業によって成し遂げられました。ヘレン・ケ ラーの生涯の友でもあり保護者でもあったサリバン先生は1936年に亡くなり ましたが、その後、さらなる偉業がなされたのです。ヘレン・ケラーはサリバン 先生が亡くなった後32年間生きることになりますが、この後半生において、障 害者が自立できることを証明することとなったのです。私はハンディキャップと いう言葉が大嫌いです。ヘレン・ケラーもそうだったのでしょう。私たちは生き ていくのにちょっと不便なところのある人たちなのです。私たちは哀れみの対象 ではありません。ヘレン・ケラーは第2次世界大戦の傷痍軍人をどのように扱え ば良いのかと尋ねられたことがあります。ヘレン・ケラーは答えていいました。 「英雄として扱われることは望まないでしょう。自然に生きていけることを望み、 人間として扱われることを望んでいるのです。」 | miraculous : 奇跡的、 persevere : 耐える,やり抜く、 protector : 保護者、 handicapped : 障害のある、 inconvenience : 不便を感じさせる、 disabled veteran : 傷病兵 |
| 5 | 映画'奇跡の人' だけでしかヘレン・ケラーを知らない人は、 ヘレン・ケラーが多面性をもっていたことを知り驚くことでしょう。 ヘレン・ ケラーは書いています、「盲人のための仕事が私の中で中心を占めたことは1度 もありません。私の共感は正義のために戦う全ての人と共にあるのです。」彼女 は人種差別、男女差別と戦う不屈の闘士だったのです。私は「神様は(愚かな) 男にお似合いの道連れにするために女を愚かに作られたのだ」と思います、とヘ レン・ケラーはいったことがあります。非常に左翼的な思想の持ち主だったので、 J. エドガー・フーパー長官の時代に、FBIは彼女のファイルを作っていたほどで す。そして彼女の選ぶ今世紀の最重要人物とは誰だったでしょう?それはトーマ ス・エジソン、チャーリー・チャップリン、レーニンでした。さらに、ヘレン・ ケラーは、ボードビルのツアーで演芸場の舞台にたち自分の技能をみせることで 体面が傷つくとは考えませんでした。しかし友人たちは、彼女が敢えて低俗な舞 台に出るのをみショックを受けました。ヘレン・ケラーは奥の深い人間だったの です。彼女の主要なメッセージは、「私たちは他のみんなと同じなのです。私た ちは目のみえる人たちと同じくらい人生を享受するために生まれてきたのです。 そしてあるがままの自分自身でいてよいのです。」 | dimension : 次元、 personality : 人格、 tireless : たゆみない、 activist : 活動家、 racial : 人種の、 sexual equality : 性の平等、 suitable companion : ふさわしい仲間、 left-leaning : 左傾した,左傾の、 vaudeville : ボードビル,寄席演芸、 show off : 誇示する、 beneath : に似つかわしくない,の沽券にかかわる、 vulgar : 低俗な、 complex : 複雑な |
| 6 | それは、私たちには、目の見える人と同じようにすばらしい人に成る自由があ るということです。ヘレン・ケラーは聴衆が大好きでした。「私は、私の回りを 暖かな人の命の潮がぐるぐる回っている」のを感じるのがとても好きなのです、 と書いています。それだから舞台に魅力を感じましたし、だからこそ話すことを 学び、多くの講演を行ったのでした。そしてまた、音楽やラジオや唇の動きを感 じ取れるようになったのです。分かって欲しいのですが、私たちは目の見える人 たちよりも心で感じ取る必要があるのです。人が目と目で以心伝心するというの も心がふれ合っているみたいなことだと思うのです。私たちには目で伝え合うと いうような便利なことはできませんが、私は歌を歌っている時、観客と心が通い 合っているのを感じます。ヘレン・ケラーもそうだったに違いないのです。ヘレ ン・ケラーは私たちの最初のスターでした。そして私は彼女に深く感謝していま す。 | adore : 崇敬する、 tide : 潮、 vibration : 振動、 grateful : 感謝している |
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