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| 1 | 「見た目は,クリントン大統領勝利の様相を呈している」と嘲笑的に述べるのは,ウォールストリートジャーナルの社説記事で,コソボ和平協定の次の日のことであった。編集者達は,アメリカは結局何一つ面目を失うことなく,NATOは生き長らえ,自国にほとんど何も犠牲を強いることなく世界に貢献したことの苛立ちを隠しきれなかった。 | 語句 sniff: 嘲笑的に述べる Wall Street Journal: 『ウォールストリートジャーナル』;New York 市で発行されている米国の経済専門日刊紙; 数少ない全国紙として広く読まれ, 発行部数 180 万部といわれる editorial: 社説の peace deal: 和平協定 editor: 編集者 irritation: 苛立ち humiliate: 恥をかかせる survive: 生き長らえる good: 良く |
| 2 | コソボ計画の批評家は辛辣である−立ち入るべきではないというもの,地上軍を伴い参入すべきというもの,そして多くは臨機応変に両者を口にするもの達であり,セルビアが決して降参することはないというのが彼ら全員の一致した見通しであった。しかしスロボダン・ミロセヴィッチは彼らの予測を裏切ったのだ!彼は日曜日のトークショーを見ていないのであろうか。彼は,空軍力が機能することは決してないということを知らないのであろうか。彼は何世紀にも渡る民族間暴力の伝統を示すことを忘れてしまったのであろうか。彼が創り出すと思われたあの泥沼化はどこへいってしまったのであろうか。 | 語句 critic: 批評家 ground troop: 地上軍 manage to…: うまく〜する predict: 予見する cave: 降参する bitter: 辛辣な betray: 裏切る the Sunday talk show: 日曜日のトークショー;ここではコソボ問題やNATO参加を議題とするものを表している air power: 空軍力 represent: 表現する tradition: 伝統 ethnic: 民族 quagmire: 苦境,窮地 |
| 3 | ミロシェビッチはおそらく,日曜日のトークショーを見ていないのであろう。とはいえ,アメリカ世論動向から得られる彼の判断は,いつまで(戦争を)維持し,いつ止めるかについての彼の考えへ,確実に影響を与えていたのだ。執拗に繰り返される泥沼化への予見はある意味,自己達成しつつあるものであるといえる。絶え間のなく粗探しをする人間や災禍を予見するもの達は批評家階級や連邦議会に属するものであり,ミロシェビッチにまずアメリカが先に手を引くように思わせたのだ。このようにして,彼らはこの戦争を引き伸ばし,遺憾に思うと主張する犠牲者を加算していった。確かに,この不平不満の訴えはいかなる戦争においても不同意(反戦)が正しくないことを示す際に用いられるものであり,今日に至るまでしばしば用いられているものである。敵を助成し活力を見出させる、というのがよくベトナム戦争期間中に行わた反戦活動への非難であった。今日,誰一人と言っていいほど,ベトナム戦争が実際,泥沼であったことを否定しえないとき,その当時それを泥沼と呼んでいた人々に対し残された唯一の反論は,戦争を長引かせた責任は戦争反対者にあったというものだ。 | 語句 influence: 影響を及ぼす hold: 続ける fold: 終わりになる assessment: 評価 climate: 風潮 relentless: 情け容赦のない prediction: 予言すること self-fulfilling: 自己達成的な carper: 粗探しをする人 gloomy: 悲惨な doomster: = doomsayer;災禍を予言する人 commentariat: 批評家階級;commentator とフランス語 proletariat の混成語 Capitol Hill: 米国連邦議会 encourage: 勇気付ける prolong: 長引かせる human cost: 犠牲者 add to: 加算する claim to〜: 〜と主張する deplore: 遺憾に思う,嘆き悲しむ complaint: 不平不満 discredit: 正しくないことを示す dissent: 不同意 aid: 助ける comfort: 元気づける frequent: 頻繁な charge: 非難 deny: 否定する responsible: 責任のある |
| 4 | このところ,伝統的政治姿勢が呆れるくらい正反対になっていくのを目の当たりにしてきており,軍事力行使の問題こそが私達を驚かせるものなのだ。この手の傾向は動きがまちまちで移り変わるものではあるが,コソボやその他近年の軍事論争において,自由主義の人間はより軍事行動を好むようになり,保守的な人間はよりそれを反対する姿勢を帯びている。かつて戦争努力を徐々に害する反対者にまくし立てた人々は,今日,自らそれを実践しているのである。 | 語句 amazing: 驚くほどの reversal: 逆にすること traditional: 伝統の political: 政治的な posture: 姿勢,心構え issue: 問題 military force: 軍事力,兵力 pattern: 傾向 controversy: 論争 oppose: 反対する liberal: 自由主義的な人 favor: 支持する conservative: 保守的な人 folk: 人々 froth: まくし立てる protester: 抗議する人 undermine: 徐々に害する |
| 5 | 第5列とは,1936年,スペイン内乱の際フランコ側の将軍が作り上げられたものである。彼は,マドリッドを行進する4縦隊の兵士に加えて,市民社会の中に見えない第5列を支えるものがいると得意げに話していた。ジョージ・オーウェルは,その戦争に敵対する側の志願兵として参戦したが,1941年に次のような言葉を残している−「客観的に言って,警察側につかない人間は,犯人側についているといえる」と。それ故に,ドイツ人と戦うことを(平和主義をその根拠として)反対するイギリス人は「客観的に言えば,…ナチス支持者」というものであった。 しかし,その彼の考えも1944年までには変わってしまう。敵対する側を支持することになると異議を唱えるものを責めることが「真実性に欠ける」のは,「人々の意志というものを軽視している」からであると強く主張したのである。 | 語句 term: 用語 fifth column: 第 5 列 (1) スペイン内乱時代の Madrid 市内の Falange 党同調者; 同市に進攻した Franco 派のモラ (Mola) 将軍の 4 縦隊の反乱軍に第 5 列として加わるとされた (2) 戦時に後方撹乱・スパイ行為などで他国の進撃を助ける者 coin: (新しい言葉を)作る Francoite: Franco+-ite (〜する人)=フランコを支持する〜;フランコ Francisco Franco (1892-1975) スペインの軍人政治家; 1936 年人民戦線政府に対して反乱を起こし, 内戦に勝利して 39 年以後独裁 boast: 誇りと思う civilian: 民間人の community: 社会 George Orwell: ジョージ・オーウェル(1903-50) 《本名 Eric Arthur Blair; 英国の小説家・随筆家; Homage to Catalonia (1938), Animal Farm (1945), Nineteen Eighty-Four (1949)》 volunteer: 志願兵 objectively: 客観的に criminal: 犯罪人 therefore: それゆえに Briton: 英国人 pacifist: 平和主義者 grounds: 理由,根拠 pro-Nazi: ナチス支持者 declare: 断言する accuse: 非難する dissenter: 反対者 dishonest: (思想が)真実性に欠ける disregard: 軽視する,無視する motive: 動機,意志 |
| 6 | いつ参戦するかは,民主主義が直面する最も重要な問題である。敵を手助けすることになるという理由で異議申し立てをすべて抑えることはできないのだ。一旦参戦が決まれば,異議は控えるべきであるという考えに終止符を打たせたのはベトナム戦争であった。戦時に反戦という訴えがなければ,未だに続いているかもしれない。しかし,軍事力行使に道徳的あるいは戦略的論争を生み出すこと,と執拗に軍事災害を予見することの間には違いが存在するといえる。軍事力行使に心から反対することと,この問題を政治や個人攻撃といった異質でより重要度の低い戦いの素材として取り扱うことの間にも,同様に違いが存在するのだ。ワシントンDCを中心に活躍する報道関係者や学識者によるクリントン大統領への執拗な嫌疑や共和党議員指導による極度の(党に対する)盲目的加担は,人々のコソボ関連の話に非常に大きな影響を与えた。5年間,ベトナム戦争を泥沼と呼ぶものは誰一人いなかった。それに対し,コソボは5日過ぎたあたりで泥沼と宣言されたのだ。報道機関による疑惑や共和党の先に挙げられた盲目的加担はもっともなことである。しかし進行中の軍事行動への批判は重大さという高い価値基準を満たさなければならないという良識が存在すべきなのだ。というのも,そのような批判は意図的であろうとなかろうと,確実に敵に対する手助けとなるものだからだ。 | 語句 democracy: 民主主義 face: 直面する disqualify: 失格させる dissent: 不同意 enemy: 敵 put an end to: 終わらせる notion: 考え protest: 抗議 distinction: 区別 moral: 道徳的な strategic: 戦略の argument: 論争 relentlessly: 執拗に predict: 予言する disaster: 災害 heartfelt: 心からの opposition: 反対 fodder: 材料 politics: 政策 personalities: 個人攻撃,人物批評 intense: 激しい suspicion: 容疑 punditocracy: pundit (インド人の賢者 (pandit); 博学者[学識者, 専門家, 権威者](を自認する人), お偉方) + フランス語 proletariat の混成語 extreme: 極度の partisanship: 党派心 Republican: 共和党の congressional: 議会の dialogue: 対話,意見交換 quagmire: 苦境 press suspicion: 新聞疑惑;ここでは press antagonism の意味で用いられている criticism: 批判 military operation: 軍事作戦 standard: 規範,価値基準 seriousness: 重大さ intend: 意図する |
| 7 | そう,コソボ批判を行うものは通例,戦争には反対だが軍隊は支持すると述べるよう気を配っている。とはいえ,このような通例意味のない儀式的区分は,兵役逃れの大統領は,軍隊を支持することはなく,彼らに敬意を払うことすらない(さもなければ,彼らを気まぐれに危険へさらすこともなかったであろう)という皮肉を持ってしばしば辛辣なものとなったが。クリントンが軍事行動や非軍事行動を決定するとき,彼の反戦的な過去の扱い方がわかっていることはとても賢いことであった。しかし,これは戦時には控えられるべき戦略上の短い言葉にすぎないのだ。 | 語句 take care: 取り計らう troop: 軍隊 ritualistic: 儀式的な barbed: とげのある innuendo: 皮肉 draft: 徴兵;アメリカでは18歳から26歳まで徴兵義務があり,この登録を行わないと国民としての諸々の特権を受けられない。但し,国外に住んでいるなどいくつかの理由により徴兵免除が受けれられることがある dodger: 身をかわす人 respect: 考慮する put…at risk: 〜を危険にさらす promiscuously: 無差別に,気まぐれに figure out: 理解する sound-bite: 聞き手の関心を引くために用いられる短い表現;コマーシャルのキャッチフレーズの類 strategize: 戦略を練る suspend: 一時停止する duration: 持続期間;ここでは戦争期間のこと |
| 8 | 民族浄化に黙って従うか,それとも,それを食い止めるのにアメリカ人へ血の代償を求めるかという嫌な選択に直面して,彼らしく,ビル・クリントンは「どちらも選ぶことはなかった」−またこれも彼の特徴を良く表しているが,運良くうまく行ったようである。このことは,王手詰みをしたと考えた政敵や敵意を有する時事問題解説者にとって迷惑な話であった。苛立ちの中にあっても,ともかく,彼らは自分達の国もまた運良く救われたと心に留めておくべきであろう。 | 語句 acquiesce: 黙って従う ethnic cleansing: 民族浄化 characteristically: 特徴を良く表して neither: どちらも〜ない luck out: 運良くうまく行く no doubt: おそらく annoying: 迷惑な opponent: 敵対者 unfriendly: 友好的でない commentator: 時事問題解説者 checkmate: 大手詰め annoyance: 不快感 critic: 評論家 keep in mind that…: 〜を心に留めておく |
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