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| P46 | その可能性は高い、とカナダの研究家達──おまけに、彼らはアインシュタ インの天才たるその所以を特定したかも | pinpoint : 特定する,突き止める、 |
| 1 | アルバート・アインシュタインの脳が、あなたや私のものとは全く違ってい ると認めるのにアインシュタイン(天才のことね)を必要とはしない。ボサ ボサ頭の中に納まっている灰色の脳みそは、時間、空間、運動──物質的現 実においての基本中の基本──に対して私たちが持っている概念を、輝かし い生涯で一度ならず何度も根本から書き直した。とはいえ、アインシュタイ ンの脳には絶対に何か顕著なところがあるはずなのだが、この偉大な物理学 者が亡くなった後、頭から脳を取り出した病理学者によれば、脳の見かけは 通常の大きさであるという──誰と比べても大きくもなく重くもない。 | gray matter : 灰白質,脳みそ、 shaggy : むさくるしい,毛むくらじゃの、 concept : 概念、 pathologist : 病理学者、 skull : 頭,頭蓋骨、 organ : 器官 |
| 2 | しかし、ランセット最新号に寄せられたカナダの研究者によるアインシュタ インの脳の新たな分析で、やはり独特の物理的特徴をもっていることが示さ れた。数学的才能と空間把握──アインシュタインが最も得意とした思考分 野での重要な2つの要素──をつかさどる脳の部分が平均よりかなり大きく、 その細胞間の連結も多かったのかもしれない。つまり、その部分がより効率 的に働くことができたのだろう。これに関してはまだ証明はされてないもの の、「魅力ある発見です」と、マサチューセッツ、ベルモントにある構造神 経科学研究所所長、フランシーヌ・ベネス博士。 | lancet :『ランセット』《英国の医学専門誌;週刊;Thomas Wakleyが1823年に創刊》、 distinctive : 独特の、 physical characteristic : 物理的特性、 mathematical ability : 数学的な才能、 spatial : 空間の,空間的な、 reasoning :推理,論法、 ingredient : 構成要素、 interconnection : 相互接続,配線、 neuroscience : 神経科学、 fascinate : 魅する |
| 3 | その脳が、オンタリオ州ハミルトンにあるマクマスター大学にどうやって辿 り着いたかという好奇心をそそる話もまた興味深い。1955年、アインシュタ インが76歳で腹部大動脈瘤破裂により死亡した際、プリンストン病院で検死 解剖を行った病理学者トーマス・ハーベイ博士がその脳をホルムアルデヒド に漬け──そして保存した。ハーベイは神経科学の資格はなく、アインシュ タインの脳をその権限も無いのに独り占めしていたことに、多くの科学者は 驚くと共に激怒した。だが、所有していることは間違いなく彼には有利に働 いた。この病理学者の要請で、科学の研究のために脳を彼が保存することを 家族が同意したのだ。しかし、それから40年間というもの、今はカンサス州 ローレンスに住むハーベイ博士は、発見した内容を発表する事もせず、脳を 独り占めして他人の調査にほとんど協力してこなかった。しばらくは、自分 の研究室の冷蔵庫の奥に脳を保存していたという報告もいくつかある。 | rupture : 破裂させる、 abdominal aneurysm : 腹部大動脈瘤、 pathologist : 病理学者、 autopsy :検死解剖、 pickle : を酢につける,〜を酢漬けにする、 formaldehyde :ホルムアルデヒド、 credential : 資格認定書,証明書、 neuroscience : 神経科学、 unauthorized appropriation : 無許諾利用、 appall : ゾッとさせる、 outrage : 憤慨させる、 in one's favor : (人)のために,(人)に有利に、 organ : 器官、 scientific study : 科学的な調査、 dole out : 惜しみながら与える,ちょっとずつ与える |
| 4 | 1966年遂に、ハーベイは自分のデータのほとんどとその脳組織のかなりの部 分をサンドラ・ウイテルソンに与えた。このウイテルソンは神経科学者であ り、脳の構造と機能の比較研究のために、マクマスターに「脳銀行」を持っ ている。そこにある正常でかつ病気に罹っていない脳は、本人の意思で科学 に寄与するために寄贈されたものであり、その人達の知能は生前に注意深く 測定されていた。これによって、ウイテルソンはきちんとした基準を得るこ とができ、アインシュタインの素晴らしい思考の位置づけができたのである。 比較をでき得る限り妥当なものとするために、ウイテルソンとそのチームは、 年齢的にアインシュタインと近い男性の組織とアインシュタインの組織を比 較した。 | tissue : (細胞の)組織、 neuroscientist : 神経科学者、 comparative : 比較の、 will to : 遺贈する、 benchmark : 基準、 to measure : 寸法どおりに、 valid : 根拠のある,妥当な |
| 5 | 彼らが発見したのは次の事柄。アインシュタインの脳は全体としては平均的 であるが、劣位半球頭頂葉と呼ばれる部分が通常より15%広かった。「空 間視覚に関する認識、数学的思考と運動のイメージ化はこの部分に特に関係 しています」とウイテルソン達は書いている。偶然ながら、印象的なアイン シュタインの洞察力というのは、彼が直感的に描き、後で数学言語に置き換 えた視覚心像(例えば特殊相対性理論は、光線にまたがって宇宙を移動する のはどんなものだろうという、彼の思考により産まれたもの)から来ている ようだ。 | inferior : 下位の、 parietal lobe : 頭頂葉、 visuospatial : 空間視覚に関する、 cognition : 知識,認識(力)、 imagery : イメージ,像、 as it happens : 偶然にも,折よく、 insight : 洞察力、 visual image : 視像,視覚心像、 conjure up : 呼び出す,思い起こさせる、 intuitively : 直覚[直観]的に、 special relativity : 特殊相対性理論、 relativity : 相対性物理学,相対論,相対性原理、 trigger : 誘発する、 musing : 熟考,沈思,黙想 |
| 6 | 科学者が発見したのは、アインシュタインの劣位半球頭頂葉部が異常に厚い ということだけでなく、シルヴィウス裂溝と呼ばれる部分が平均よりはるか に小さかったこと。通常は組織を分断しているこの溝がなければ、脳細胞は 近接して存在することとなり、相互の連絡が増え──つまり、原理的には情 報や概念の相互参照が増加し、最終的には洞察力が飛躍的に向上する。 | bulky : かさばった,分厚い、 feature : 容貌,特徴,地形、 Sylvian fissure :シルヴィウス裂溝、 groove : 轍,溝、 brain cell : 脳細胞、 interconnection :相互接続,配線、 in principle : 原則的には,原理的に、 cross-reference : 相互参照、 leap : 飛躍 |
| 7 | とにかくもこれは一つの考えである。しかし、これが現代の神経学理論では もっともらしいものの、だからといって真実とは限らない。アインシュタイ ンが天才だったことは分っている、また、彼の脳が物理的にも普通の人とは 異なっていたことも今では分っている。しかしこれだけでは因果関係を説明 したことにはならない。「本当に必要なのは、同様の異質さが存在するかど うかをみるために、多くの数学的天才の脳を調べることです」とマクリーン・ ベネス。 | plausible : もっともらしい、 neurological : 神経学的、 physically : 物質的に,物理的に,肉体的に、 cause-and-effect relationship : 因果関係 |
| 8 | 例えそうであっても、膨れ上がった脳が絶え間ない精神労働の結果であり、 天才足り得る遺伝的要素ではない可能性もある。結論:アインシュタイン が素晴らしい精神を持って産まれて来たのか、それとも後からそれを獲得 したのか、つまり一度に一つずつ素晴らしい考えを生み出す度にというこ となのだが、それは私たちは依然として分らないということ。 | strenuous : 活発な,精力的な、 inherent feature : 固有素性、 bottom line :結論,最終結果 |
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