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| P48 | 急速な変化の中、日本の専門家二人がこの国の本質を探ろうとする | enigma :謎,不可解な出来事、 in the midst : 真っ最中に |
| 1 | 外国の作家は常に日本という謎を説明しようとしている。熱心で善意の歴史 家達、記者、経済学者、それに人類学者がこの国の謎を解明すべく本を書こ うとして資料を長年集めているが、一旦本が出版された時には、日本はもう 変わっていることがわかる。結局のところ、特定の時期に本の中で説明され るには、日本はあまりに複雑であり変化に富んでいるのである。 | earnest :真面目な,熱心な、 well-meaning : 善意の、 journalist : 新聞記者、 anthropologist : 人類学者、 lay bare : あらわにする,解明する、 only to : 結果的に〜しただけ、 yet again : さらにもう一度,またしても、 complex : 複雑な、 dynamic : 活動的な,動的な |
| 2 | これが、T.R.ライドの書いた隣の孔子(ランダムハウス;276ページ)に 当てはまる問題。ワシントンポストの前東京支局長のライドは、日本では自 転車にカギをかけなくても盗まれないし、子供たちは言わば対数表を暗記し てるかと思われるほどの科学や数学の天才児ばかりで、結婚は富士山と同じ ぐらい長続きをしているのはなぜか、その理由を解説しようという魅力ある 本を書き始めた。ライドはもう日本が大好きで、この本には、自分と家族が 東京で暮らして来た楽しい日常の生活の中で起きた、日本ならではの挿話が 沢山載っている。彼が驚くのは、未婚の母の少ないこと、家庭が崩壊してい るのも少ないし、麻薬中毒の割合も低く、公共物破壊や犯罪も少ない。彼に 言わせれば、こうしたことはすべて、「法に従うべきだと言う道徳観や、家 族を敬い地域の人々を大切にすることが今でも根強く残っているという事実 の証拠」だと。 | Confucius : 孔子、 bureau : 局,(官庁の)局事務所、 logarithm : 対数、 by heart : そらで,暗記して、 durable : 長持ちする、 idiosyncratic : 固有の,特有な、 everyday life : 日々の生活,日常生活、 paucity : 少数,小量、 unwed mother : 未婚の母、 broken home : 崩壊した家庭、 vandalism : 公共物破壊、 crime : 犯罪、 testament : 契約,新訳聖書、 directive :指令する、 potent : 強力な |
| 3 | なぜ日本はそれほどまでに素晴らしい国になったのか?ライドの答えは── 本の核心でもあるが──孔子である。中国の学者でもあり教師でもあった彼 の教えとその行動規範は今でも日本の社会に影響を与えている。次世紀はア ジアのものだとライドは確信している。というのも、日本にみる儒教の価値 観──勤勉、忠誠、誠実──はこの地域全体に広まっているからだ。 | idyllic : すばらしい,牧歌的な、 nub : 核心,要点、 Confucius : 孔子、 code of conduct : 行動準則、 Confucian : 儒教の、 loyalty : 誠実,忠誠 |
| 4 | なるほど、確かに。こうした価値観が20世紀の終わりにアジアの成功に寄与 したのは本当である──20世紀になるまで、新教徒の倫理観が西洋人をして 前進させたのと同様。しかし、日本をもれなく勤勉で社会に寄与する人々で 満ち溢れているといったライドの見方は多くの物事を見過ごしている。特に、 過去数年間における経済破綻とともにこの国を席捲した重大な変化を無視し ているのだ。無論今でも、この国の子供たちの学校での数学や科学の成績は いいのだが、それならなぜ、日本の科学者で突出した人が少ないのであろう か、またノーベル賞を授与される人が少ないのはなぜだろう?その答えの一 つには年功序列──孔子の偉大な遺産の一つ──があり、これのお陰で日本 の科学者達はその想像力溢れる若い時期を、最盛期を過ぎた上司のために試 験管を洗って過ごすこととなる。 | contribute to : 〜にあずかって力がある、 Protestant : 新教徒の,新教徒、 ethic : 倫理,倫理的価値観、 propel : を推進する,進ませる、 almost exclusively : ほぼ例外なく、 industrious : 勤勉な、 socially : 社会的に、 considerate : 思いやりのある、 overlook : 見過ごす、 profound change : 重大な変化、 swamp : 〜を水浸しにする,浸す、 meltdown : 融解,炉心溶融、 distinguish : 目立たせる、 seniority : 年功、 past one's prime : 盛りを過ぎて |
| 5 | そして典型的な日本の家族はというと?なるほど、未婚の母は少ない。若い 女性は驚くほど多く妊娠中絶をしているから──彼女たちの心に、重大だが ほとんど省みられることのない打撃を与えている。また、女性は結婚すると ほとんど夫と会うことはない。夫は夜は同僚とビールを飲んで過ごすから。 1980年代の景気のいい時期、子供の教育費を助けようと女性はますます低賃 金のパートの仕事に就くようになった。だが90年代になると、会社は男性の 終身雇用制を守ろうとして、消耗品である女性を解雇する。さらに、コスト 削減や生産性増加ができない、余剰人員を抱えた会社は倒産し始めた。終身 雇用を期待していた男性達は呆然自失の状態で放り出されることとなる。素 晴らしい文化に関する挿話を集めようとライドが東京にやって来たときには、 失業率は2%以下だった。経済状況は厳しいけれども暴動は起こらないので すよ、とライドは述べている。日本人は表には出さないけども、最近、暗く 憂鬱になっていることを彼はまた知っている──私たちに言いはしないが。 悲観主義が新たな国民性になってきているのだが、それを孔子にまで遡るの は容易ではないだろう。 | unwed mother : 未婚の母、 abortion : 妊娠中絶、 stagger : たじたじとさせる、 psyche : 精神,心理、 colleague : 同僚、 prosperous : 栄える,繁栄する、 part-time job : パート(タイム)の仕事、 expendable : 消耗の、 lifetime employment : 終身雇用、 overstaffed : 人員過剰の、 collapse : 倒壊する、 inability : 無能、 reduce costs : 経費を節減する、 increase productivity : 生産力を増やす、 shell-shocked :とても大きなショックを受けて,ショックで精神的にまいって、 iron rice bowl : 食いはぐれのない職種[仕事],不況に強い職種[仕事]、 toss out : 捨てる、 unemployment : 失業率、 wondrous : 驚くべき、 civility : 礼儀,文化、 stand at : 〜に達する、 riot : 暴動に加わる、 gloomy : ふさぎこんだ、 depress : 憂鬱にする,落胆させる、 outwardly : 外面的に、 national trait : 国民性,民族性、 trace back to : 〜に遡る,由来する |
| 6 | ロバート・ホワイティングの書いた東京の暗部(パンテオンブック;372 ページ)という本の中には、孔子──つまりライド──はほとんど見当たら ない。ホワイティングが描くのは、安っぽいぽんびきや、魅力たっぷりの詐 欺師、それに汚職まみれの政治家で溢れる闇の文化である。秩序ある犯罪な き日本といってもそんなもんなのだ。地下鉄に子供が一人で乗っても安全か もしれないが、政治家は契約を望む会社には現金の入ったスーツケースを要 求する。ホワイティングが描く、暗い地下世界では、金をつかみ権力を維持 するために、アメリカ人と日本人が「互いに搾取し、利用しあい、悪用する」 のだ。これが日米関係の暗部であり、戦後間もない時期の闇市から始まった。 アメリカ軍が日本を去るまでには、「民主主義と両国の友好関係が築かれて いくこの新しい時代は、強力でタフな暗部を持っていた。生き残ろうとする 必至さと日和見主義が異常な形で混ざり合って、違法な談合という手法が確 立されてきた。 | underworld : 犯罪社会,暗黒街、 subculture :下位文化、 two-bit : お粗末な,くだらない、 pimp : 売春斡旋業者,ぽんびき、 fraudster : ペテン師,詐欺師、 corrupt politician : 汚職政治家、 so much for :はそんなところだ、 orderly : 秩序のある、 contract :契約、 murky : 陰気な,濁った、 exploit : 搾取する,人から絞り取る,食い物にする、 dark side : 暗黒面、 black market : やみ市場,闇市場、 postwar era : 戦後、 bilateral : 両国間の、 forge : を形作る,築く、 resilient : 回復力に富む,立ち直りが早い、 underside : 裏面、 illicit : 違法の、 collusion : 談合、 desperation : 死に物狂い,絶望、 opportunism : 日より見主義,便宜主義 |
| 7 | 日本がどのように機能しているかといったことに対して、ホワイティングが 徹底的な考察を加えているのではない。そうした考察は、1989年に鋭い直感 を持ってして彼が書いた優れた本、日本の野球"You Gotta Have Wa"に現れて いる。この本はというタイトルであり、間違いなく読み応えのある日本紹介 だった。今回の本では、ホワイティングは外国人がめったに窺い知ることの できない興味深い一面、日本人がそっと隠しておきたい世界を描いている。 彼のお陰で私たちは、日本は複雑な国であり色んな種類の人達がいる──日 本人がすべて孔子の多大な影響下にあるわけではない──ということがわか る。また、日本人がすべて容易に説明できるわけでもない。それがまた、日 本の謎が以前として残されている理由でもある。 | sweeping : 全面的な,徹底的な,大胆な、 insight : 洞察、 flair : 鋭い勘、 readable : 面白く読める、 fascinating : 魅力のある、 snapshot : 寸評、 outsider : 部外者,外国人、 susceptible : 影響されやすい、 potent : 強力な、 Confucius : 孔子、 enigma : 謎 |
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