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| P40 | ある科学者がこの影響力のある概念を発表してから四半世紀すぎたが、彼は この概念が文化のすべてに拡大しいることを突き止めた。 | infectious :他に影響しやすい |
| 1 | 何年も前、オクスフォードの個別指導で私は若い女性を教えたが、彼女には 変わった癖があった。深い考察を要する質問を受けると、彼女は目をぎゅっと 閉じて、顎を胸に引きよせ、そして30秒ほど凍り付いた後、上を見上げ、目 を開けて、よどみなく知的な答えを返してきたものだ。私はこの動作が面白く て、夕食後に同僚の気分転換として彼女のまねをして見せた。その中に有名な オックスフォードの哲学教授がいたのだが、私がまねをする動作を見るなり、 瞬時にこう言ったものだ。「ヴィットゲンシュタインだ! もしかして、彼女 の姓は 一一 でしょう?」 私は驚いてそうだと答えた。「そうだと思った。」 と彼は語った。「彼女の両親は二人とも(職業的)哲学者で、ヴィットゲンシ ュタインの熱心な信奉者なんだ。」この動作は、偉大な哲学者から、彼女の両 親の片方、もしくは両方を通して私の生徒である彼女に伝播したのだ。 | track;追跡する、突き止める affect 2;(ある形をとる)傾向がある screw;ねじる、(顔を)しかめる、(目を)ほそめる、(口を)すぼめる jerk;ぐいと引く |
| 2 | 私たちの文化的生活は、一つのこころ(マインド)から他のこころへと、ウイ ルスのように伝播増殖するように見えるもので満ちている。例えば、歌や、考え 方、はやり言葉、ファッションなどから、壷の作りかた、建造物のアーチの作り 方などなどである。1976年に私はミームという言葉を造語したが(meme; 発音はcream の韻を踏む)、それはそれ自体生命を持ち、自己複製を行う文化 の一単位を表わしたものである。 | propagate;繁殖(増殖)する、広がる、伝搬する |
| 3 | それ以来、他の良質なミームと同じように、ミーム自体も文化に影響をおよぼ してきた。高次ミーム学的なことばを定量するために、私はワールドワイドウェ ブでちょっと調べてみた。形容詞形のミーメティック(ミーム学の)は5,042 件 使われていた。この事を考察するために、私は、最近造語されたいくつかの他の 流行表現と比べてみた。スピンドクター(報道対策アドバイザー)1,412件、ダ ミングダウン(生徒の白痴化)3,950件、ドキュドラマ(ドキュメンタリードラ マ)2,848件、ソシオバイオロジー(社会生物学)6,679件、ジッパーゲイト 1,752件、スタッドマフィン(かっこいい男、手腕家)776件、ポストストラク チュアル(ポスト構造主義)577件、などが数えられた。 | meta-;変化、超越、(高次ー)(metememetic) clock up;(口)記録する、達成する perspective;遠近法、展望 |
| 4 | さらにインターネットを調べると、alt.memetics というニューズグループが 見つかったが、そこには昨年1年間で約12,000のコメントが寄せられていた。 オンライン・アーティクル(論説コーナー)も存在し、二つほど名前を挙げる と「ミーム、高次ミームと政治」「ミームと、にっこり間抜けなプレス」など である。独立したウエブサイトの「ウエブ上のミーム論者」「ミーム庭仕事ペ ージ」などというのもある。「ウイルス教会」という新宗教さえある(冗談 であることを願っているが)。自前の罪のリストと、徳のリストが完備されて おり、さらにはご本尊の聖人もいる(その名も聖チャールズ・ダーウイン)。 私は、こともなげに使われた言葉、「聖ドーキン(ス)」を発見して驚いたも のだ。 | Grinning Idiot Press;にっこり間抜けなプレス? passing ;(言葉などが ) 思いつきの、何気ない、ふとした、偶然の a passing mention [or reference] ふとした言及.(ランダムハウス) (with )tougue in cheek;皮肉たっぷりに、ふまじめに |
| 5 | ミームは世代間を垂直に移動するが、流行中のウイルスのように水平にも 伝播する。実際、私達がインターネット上でミームティックやドキュドラマ、 スタッドマフィンなどの言葉の伝播を定量調査した時にも、主に研究したの は水平的な言葉の広がりであった。学童達の間のブームも特に簡明な資料と なる。私が9才のころ、父が方形の紙を使う、中国のジャンク船オリガミの 折り方を教えてくれた。それは、人工的な(胎児)発生学を彷彿させるよう な素晴しい技であった。発生学のように、特徴的な一連の中間発達段階を通 過するのである。まずは、双胴のカタマラン船、扉のついたカップボード、 額に入った絵、そして最後に目的のジャンク船になるのである。それは、深 い船倉と、二つの大きな方形の帆を立てた水平甲板を備え、十分航海に耐え るものであった。そこまでは無理としてもお風呂では楽しく遊べるものであ った。 | epidemiology;疫学、流行病学、人間集団を対象。健康と予防の学問。 craze;熱狂、大流行 embryology;発生学、胎生学 distinctive;特有の、特徴的な hull;船体 seaworthy;(船が)航海に適する、耐航性の hold 2 ;船倉 surmount;に載せる rigged;〜式帆装の rig:装備する、艤装する |
| 6 | この話のポイントは、私が(寄宿)学校へ戻り、友人達にこの技術を「感染」 さたということ。そしてそれが、まるで麻疹(はしか)のように学校中に広がり、 その伝播速度は麻疹と同じであり、疫病学的にも麻疹と同じ時間経過をたどった ということなのである。私はこの流行病がその後、他の学校に飛び火したかどう かは知らない。(寄宿学校というのは、ミームの貯水池から孤立した水たまりの ような存在なのだ。)しかし、私はこの中国ジャンク船のミームは、もともと私 の父が25年前に同じ学校で、まったく同じ疫学的な情況のもとで身につけたも のであることは知っている。そのころのウイルスは、寮母によってもたらされた ものであった。その年老いた寮母の死から長い年月が経って、今度は私が彼女の ミームを新たな少年集団に再び伝えたのだ。 | pretty much;ほとんど back water ;(戻り水による)よどみ、水たまり pick up;(知識、外国語などを)聞き覚える、身につける matron;寮母 |
| 7 | 私は時おりミームに関して、前言を翻しているとか、大胆さを失っているか、 乗り気でない、別の考えを持つようになったなどと非難されることがある。本当 のところ、私の最初の考えは、ミーム学者が期待するよりはずっと控えめなもの であったのだ。私にとって、もともとこの言葉の役割は否定するためのものであ った。この言葉は、ある著書の最後の部分で取り上げられた。そうしなければ、 その書物が、「利己的」遺伝子が進化にとって一番重要な要素である、すなわち 淘汰の基本要素であると、全面的に賞揚するために書かれたと受け取られる可能 性があったからである。その本の読者がこの話を、DNA分子にのみ限定された事 項であると誤解する恐れがあったのである。実際はそうではなくDNAは、たまた まその役割を担ったに過ぎない。実際の自然淘汰の単位は、自己複製するもので あればどのようなものでも良いのである。複製を行う一つの単位で、時々複製エ ラーがあり、それ自体の複製の確率に関して、なにがしかの影響力や選択力を持 つものであれば何でもよいのである。私達がDNA以外のモデルを求めるとすれば 他の惑星でも行かなければならないであろう。しかしそんなに遠くに行かなくて も良いかも知れない。新たなダーウインの複製モデルが、現に目の前にぶら下が っているのではありませんか? このような文脈(情況)でミームが登場したの だ。 | backtrack;前言撤回する be-all;究極の目的、いちばん大切なこと(改良の余地のないもの) end-all;究極の目的、いちばん大切なこと lose heart;勇気を失う draw (haul, pull) in one's horns;乗り気でなくなる extol;賞揚する、激賞する replicate;(葉などを)折り返す(曲げる)、(〜を)模写(複製)する |
| 8 | しかし私は、ミームがいつの日か人間のこころ(マインド)を説明する適切な 仮説に発達することに対しては、いつでも受け入れる用意はあった。私は、ダニ エル・デネットによる「意識の解説」「ダーウインの危険な思想」を読み、つい でスーザン・ブラックモアの新刊「ザ ミーム マシーン」を読むまでは、このよ うな理論が、こんなにも野心的なものになりうるとは思わなかったのである。デ ネットはこころ(マインド)の姿を、ミームが種蒔かれる温床であるとして生き 生きと描いている。彼は、「ヒトの意識それ自体が巨大なミームの複合体である 、、。」という、踏み込んだ仮説を立てるにまでも至っているのだ。 | open;(思想、申し出などを)直ちに受け入れる |
| 9 | 1976年の「利己的遺伝子」でミームがはじめて世に出たとき、それは、否 定的な文脈で使われた言葉であった:ひとり遺伝子のみが、ダーウインの浜辺の 小石ではないのだ。1998年、「虹の解体」では、私はもう少し肯定的に語れ るようになった:「ミームには生態学がある。ミームの熱帯雨林もある、ミーム でできた蟻塚もある。ミームは文化の中で、模倣により人のこころ(マインド) からこころへ飛び火して行くだけのものではない。それは、人の目につく氷山の 一角にすぎない。ミームはまた、我々のこころの中で繁殖し、複製され、競合し ている。ある良好な概念を世界に発表した時に、それが我々の頭脳の認識作用の 舞台裏にある、潜在意識における準ダーウイン的な淘汰の到達点であるなどと誰 が考えるであろうか。我々の祖先の細胞に、古代の細菌が侵入しミトコンドリア になったように、我々のこころは、ミームに侵略されている。チェシアの猫のよ うに、ミームはこころ(マインド)の中に入り込み、こころ(マインド)そのも のにさえなるのだ。」 | thrive;成長する、生い茂る quasi-;擬、準、ある程度、ある意味で Cheshire Cat; チェシアキャット;Lewis Carroll, Alice's Adventures in Wonderland に出るにやにや笑う猫 merge;溶け込ませる、溶け込む |
| ap | WHAT'S A MEME?(ミーム;文化的遺伝子) 遺伝子が生命を作るように、ミームは文化を作る。(ミームとは知識、ゴシ ップ、ジョークなどの、個別の一単位である。)遺伝子プール内の最適なもの が生き残ることにより、生物学的な進化が促進されるように、ミームうちで最 も適合したもの(複数)が、文化的進化を促すのかもしれない。 | discrete;個別の ミーム;Virus of the Mind という解説もある |
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