|
| |
| HP | 遺伝子治療と遺伝子薬は遺伝子科学の発達が私たちに恵みを与える二つの分野 といえる。だが、遺伝子科学は他にも多くの恵みをもたらすだろう。新種のワク チンを開発したり、移植手術に使う組織の新たな供給源を与えたりするだろう。 さらには老化をくい止める技術さえ開発されるかも知れない。では、間もなく医 学の主流となりそうな、最先端の遺伝子研究による注目すべき治療法を2、3み てみよう。 | gene therapy : 遺伝子治療,遺伝子療法、 therapy : 治療,療法、 drugs : 医薬品、 vaccine : ワクチン、 transplant tissue : 組織を移植する、 stave off : かろうじて防ぐ、 cutting edge : 最先端、 genetic research : 遺伝子研究 |
| 2 |
明日の組織工場 生体のおよそ全ての細胞に、人間を丸ごと作れる指示書があるというのは確か だが、その指示書のほとんどは不活化している。当然のことながら、脳が胃酸を 大量生産し始めるとか、鼻が腎臓に変わるなどということは絶対にあって欲しく ないことだ。細胞が実際に体のどの部分にも変わっていく潜在能力を有している のは、いわゆるステム細胞がまだ特殊化し始めない妊娠の極めて初期に限られて いる。 |
instruction : 取扱説明書,指示、 inactivate : 不活性にする、 with good reason :訳がある、 brain cell : 脳細胞、 churn out : 量産する、 stomach acid : 胃酸、 kidney : 腎臓、 pregnancy : 妊娠、 stem cell : 幹細胞,基幹細胞、 specialize : 専門化する |
| 3 | だがこの未開発の可能性は、医学にはすばらしい恵みになるだろう。ほとんど の病気は、健康な細胞の死滅を伴う。2、3例をあげれば、アルツハイマー病で は脳細胞が死に、心臓病では心臓の細胞が死に、糖尿病では膵臓の細胞が死ぬ。 もしステム細胞を分離し、その成長を誘導できるようになれば、患者に健康な代 替組織を供給できるようになるかも知れない。 | untapped : 未開発の、 boon : 恩恵,賜物、 cardiac : 心臓性、 heart disease : 心臓疾患、 pancreatic : 膵臓の、 diabetes : 糖尿病、 furnish : を供給する,提供する、 replacement : 交換品 |
| 4 | それはとてつもなく難しかった。だが、昨秋ウィスコンシン大学の科学者たち は、なんとかステム細胞を分離し、神経細胞、消化管の細胞、筋細胞、骨細胞を 育てた。まだその過程を統御することはできないし、予期せぬ限界があるかも知 れない。だが、ステム細胞の発育を理解し支配しようという努力が実を結べば、 医師たちは信じられない力をもつ治療道具を手にすることになるだろう。 | neural : 神経の,神経系の、 gut : 消化管、 unforeseen : 意外な、 limitation : 制限、 prove successful : 成功する、 therapeutic : 治療の |
| 5 | 全く同じことがクローン化にも応用される。まさにコインの裏側だ。2年前初 めてドリー羊で示されたように、本物のクローン化は、発生した細胞を取り出し、 その細胞の中にあるゲノムをサイ活性化し、発生に関する指示書を初期状態にリ セットする。一度それが起これば、その若返った細胞は一人前の動物に発達する。 そしてそれは親と全く同じ遺伝子を持つことになる。 | same applies to : 同じことが〜にも当てはまる、 reactivate : 再活性化する、 genome : 生物の生活機能を維持するための最小限の遺伝子群を含む染色体の一組,ゲノム、 pristine : 初期の、 rejuvenate : 若返らせる、 full-fledged :一人前の、 genetically : 遺伝学的に、 identical to : と同一 |
| 6 | 農業においては、牛の牛乳の生産とか豚の低脂肪肉とかいった純粋な身体的特 徴が、現実に市場価値をもっている。2、3年のうちに、生物学的なカーボンコ ピーは当たり前のこととなるかも知れない。イアン・ウィルムットがドリーとい う羊のクローンを作ったのと同じように、昨年科学者たちは、ネズミや牛のクロ ーンを作った。そして今年もいくつかの動物がクローンの仲間に加えられるはず だ。 | agriculture : 農業、 physical characteristic : 身体特性、 milk production : ミルクの生産、 hog : ブタ、 market value : 市場価値、 biological : 生物学的、 menagerie : 動物 |
| 7 | 一方、人間のクローン化は技術的には実現可能かも知れないが、法的、感情的 にもっと難しい問題がある。だが、いつかそれは起こるだろう。体細胞を初期の 未発達の状態にリセットできるようになれば、ステム細胞から得られるのと全く 同じ利点が得られる。つまりあらゆる種類の健康な体組織を作り、それを使って 病気を治療する可能性が開けるのだ。そしてそれは本当に'奇跡の治療'となるこ とだろう。 | feasible : 実現可能な、 legally : 合法的に,法律的に、 emotionally : 感情的に、 stem cell : 幹細胞,基幹細胞、 healthy body : 健康な身体,健康体、 miracle cure : 妙薬 |
| 8 |
薬入りじゃがいも 私たちはみな、果物や野菜を食べることは体に良いと知っている。だがここ 10年間で、お母さんを喜ばせるためだけではなく、感染症を避ける薬や、様々 な慢性疾患を治療する薬をとりこむためにブロッコリーを食べるようになるかも 知れない。「食用植物で人にワクチン接種をするという考えは、全く新しいもの です。」とニューヨーク州イサカにあるボイストンプソン植物研究所のドウェー ン・カークはいう、「そしてそれは注射よりずっと人に優しいのです。」 |
broccoli : ブロッコリー、 drugs : 医薬品、 stave off : かろうじて防ぐ、 infectious disease : 感染症、 chronic : 慢性的な、 vaccinate : 予防接種をする、 edible : 食用になる、 injection : 注射 |
| 9 | じゃがいもやトマトは元来多量のタンパク質を作るため、今のところ、この新 しいアプローチには最適の媒体のようだ。例えば、注射液にウイルスや細菌の DNAを混入する代わりに、DNAを土壌細菌に組み込むのだ。その土壌細菌は植物に 摂取され、 治療DNA物質はその植物のゲノムの中に縫いつけられる。遺伝子を植 物の中に入れるもう一つの方法は、タングステンないし金の小粒子に他のDNA をコーティングし、それを直接植物の細胞に撃ち込む。どちらの場合でも、植物 細胞は、組み込まれた新しい遺伝子により計画されているタンパク質を合成し始 める。その植物または果実を食べると、免疫反応が始まり、身体は適切な抗体を 大量生産する。 | protein : 蛋白質、 for now : 差し当たり,今のところ、 vehicle : 媒介物、 viral : ウイルスの、 bacterial : 細菌性の、 DNA : デオキシリボ核酸、 soil bacteria : 土壌細菌、 taken up : 取り上げる、 therapeutic : 治療の、 tungsten : タングステン、 plant cell : 植物細胞、 immunization : 免疫処置、 churn out : 量産する |
| 10 | ワクチン植物は薬の貯蔵と配布が困難な第3世界諸国にとってはとりわけ魅力 的だ。やっと、第3世界の人々も病気に対する抵抗力をつけられるようになるか も知れない。遺伝子工学を利用した果物や野菜を大量に栽培し、年に何回かその うちの二つ、三つを食べるだけでよいのだ。 | Third World countries : 第三世界諸国、 storage : 貯蔵、 distribution : 配布、 drugs : 医薬品、 inoculate : 予防接種をする |
| 11 | しかしこの技術は感染症に限られる必要はない。I型糖尿病 (インスリン依存 性糖尿病) のような病気にさえも有用かも知れないのだ。I型糖尿病では、患者 自身の免疫システムが、膵臓内のインシュリンの合成に不可欠な細胞を破壊して しまう。インスリン産出じゃがいもを食べることで、いつかは、インスリンを非 自己とみなしておきている糖尿病患者の自己免疫反応が止まることだってあり得 るかも知れない。注射針の面倒くささや危険は全くない。 ──(アリスパーク記者) | infectious disease : 感染症、 diabetes : 糖尿病、 immune system : 免疫系、 pancreas : 膵臓、 diabetic : 糖尿病患者、 foreign material : 異物 |
| 12 |
老化する体に一撃 8年前科学者たちは、細胞の分裂能力の限界点に達するまで細胞が複製される 度に、組織細胞の染色体の先端は短縮するということを発見した。この限界点は ヘイフリック限界といわれるもので、およそ50回の複製の後現れる。そしてヘ イフリック限界はいわゆる老化現象の中核をなすものかも知れない。 |
chromosome : 染色体、 tissue cell : 組織細胞、 Hayflick limit : ヘイフリックの限界、 replication : 複製 |
| 13 | 以来科学者たちは、染色体の腕の末端(末端小粒として知られる)をのばす酵 素を再活性化しようと試みている。そして昨年1月、再活性化に成功した。カリ フォルニア州メンローパークにあるゲロン社のアンドレア・ボドナーと彼の同僚 たちは、末端小粒延長酵素テロミラーゼを活性化し、末端小粒をのばすことに成 功し、培養細胞の寿命を延長した。ヘーフリック限界の後少なくても20回は細 胞分裂させたのだ。11月には、ゲロンはもう一つ初めての技術の開発に成功し た。ES細胞(胚幹細胞)の末端小粒の再形成に成功したのだ。ES細胞はどんな細 胞にでも分化していけるということで名高い。それで理論的には、ちょっと(テ ロミラーゼを)注射するだけでどんな器官でも回春できるということになる。 | reactivate : 再活性化する、 enzyme : 酵素、 telomere : 末端小粒、 life-span : 寿命、 embryonic : 胎児の、 rejuvenate : 若返らせる |
| 14 | 誰もが納得しているということではない。マサチューセッツ工科大学の老化 の専門家レナード・グアレンテはいう、「末端小粒は試験管内での細胞分裂には 重要そうに見えます。しかし短縮末端小粒が生体の老化に影響を与えるという点 に関しては、実証する必要があります。そんなことがいえるかどうかはまだ分か っていませんよ。」──(クレア・トンプソン記者) | specialist : 専門家、 in vitro : 試験管内での、 onus : 重荷,責任 |
| 15 |
ワクチン予防接種を越えて 初めて受けたワクチン摂取のことを思い出せる人はあまりいないだろう。たぶ ん、それは弱めた病原菌の注射だっただろう。或いは細菌のタンパク質の注射だ ったかも知れない。どちらにしろ、本当の病気にかからない程度、軽く感染する 程度だったのだ。このようにして数多くの感染症に対して免疫を与えるというや り方は100年以上も、結構うまくいっているのだが、遺伝学者たちは、もっと うまくやれると考えている。 |
vaccination : ワクチン注射、 cripple : 不自由にする、 microbe : 細菌、 infection : 感染、 full-blown : 本格的な、 geneticist : 遺伝学者 |
| 16 | 明日のワクチンはウイルス、細菌、寄生虫のゲノムの生遺伝子断片から作られ、 今よりもずっと高級な調合物になりそうだ。DNAを使うことは、 病原菌の作るタ ンパク質に比較し、免疫系からより強力で積極的な反応を引き出す。今のワクチ ンはほとんど、病原体の侵襲に対し抗体を結集するという仕事は立派にやってい るが、生体を促してキラーT細胞を大量生産させるという点では信頼できないこ とがままある。キラー T細胞はいわば免疫系のスマート爆弾「飛行機から投下し, レーザー光線,テレビカメラなどにより目標に誘導されるもの」で、 非常な特異 性をもって侵襲してくる病原体を攻撃する。初期実験で、DNAワクチンはその両 方の反応を引き起こしたのだ。例えば昨秋報告された研究によると、実験DNAマ ラリアワクチンを摂取した患者はマラリヤ抗体だけではなく、多量のキラーT 細 胞も示した。 | sophisticated : 高級な、 concoction : 調合薬、 snippet : 断片,小部分、 bacterium : バクテリウム属,細菌、 parasite : 寄生虫、 as opposed to : 〜に対し、 microbe : 細菌、 elicit : 引き出す、 vigorous : 精力的な,力強い、 immune system : 免疫系,免疫機構、 marshal : 導く、 maraud : 襲撃,襲撃する、 coax : 誘導する、 killer cell : キラー細胞、 smart bomb : スマート爆弾《飛行機などからテレビ[レーザー光線]で誘導する》、 significant level : 有意水準 |
| 17 | 遺伝子ワクチンの可能性は病原体だけにはとどまらない。 DNAをつけたりとっ たりして、遺伝子ワクチンを操作することは容易なので、この技術は様々なガン の治療に応用され始めている。今のところまだ動物に限られてはいるが、腫瘍細 胞からなる予防接種は開発されている。この腫瘍細胞は、動物の腫瘍に対する免 疫系を呼び起こす赤旗の役割を演じる。ガンワクチンへの「道はまだ遠いですが、 その前途はとても有望なのです。」とデューク大学のエリ・ギルボア白紙はいう。 (アリス・パーク) | bug : ばい菌、 manipulate : 巧みに扱う、 inoculation : 接種、 tumor cell : 腫瘍細胞、 immune system : 免疫系,免疫機構 |
感想などがありましたら、メールを下さいね!!