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| L1 | 人類について一つ言えること:この地球上では行けない場所がないというこ と。人類は歴史上で、世界中どこにでも行ける能力をもつ唯一の種である− −そしてこの能力の使い方で自然が決定されるかもしれないのだ。私たちの 中の小数の人間だけがこの責任を感じており、知性と勇気と、地球は全生命 をつかさどる一つの複雑な生態系であるということを認識している。彼らは この惑星にとり英雄(彼らは自分達をそのようには全く考えてないけど)で あり、愚かさや、貪欲や不注意な商業主義から自然界を守る仕事を引き受け ている。特集の連載の第一番目として、タイムはこうした人々と彼らが取り 組んでいる美しくも儚い地域を取り上げる。まずは森林から。 | capability : 能力、 valor : 勇気,果敢、 appreciation : 正しい認識、 intricate : 複雑な、 ecosystem : 生態系、 take on :引き受ける、 natural world : 自然界、 stupidity : 愚かさ、 greed : 貪欲、 fragile : もろい |
| Title | 地上の緑のガウン | |
| P38 | 昔、森林は大地そのものであった。しとやかな布のごとく惑星を覆い、地球 上のほとんどの生命を育て保護していた。今、そうした構造は壊れている− −木材切り出し、農業、広がる郊外、それに人間のほんのちょっとした不注 意のために消えていっているのだ。惑星シリーズでの英雄達の第一回では、 まだ現存している広大な森林を保存しようと努めている人達のことを語る。 | elegant : 上品な、 drape : 掛け布、 nourish : 育てる、 terrestrial : 地上の、 fabric : 構造、 in tatters :ぼろぼろになって、 slash :削減する,深く切る、 timber : 木材、 agriculture : 農業、 sprawl : スプロール現象,延びる、 first installment : 第1回(配布)分、 preserve : 保護する、 swatch : 区画 |
| L1 | ラッセル・ミッターマイアー 森林へ | |
| 1 | 自分が何を見ているか分るのにちょっと時間がかかる:木にサルがいる。正 確に言えば、それはクモザル(アテレス・パニスカス)で、パンヤの木のてっ ぺんにぶら下がっている。ここはブラジルの北、旧ダッチ・ガイアナである スリナムの熱帯雨林だ。ふさふさとした毛、赤ら顔のこのサルは天蓋のよう な森林の高い樹上を、手足を伸ばして枝から枝へと移動している;長くて巻 き付きやすい尻尾が腕の役目をしている。ちょっと止まって若者のようなク ールな表情をして下を見る。樹上のサル。 | spider monkey : クモザル、 swing : 揺らす、 topmost : 最高の、 ceiba : カポックノキ,パンヤ、 Guyana :ガイアナ、 forme : 組版、 Suriname :スリナム《南米北東部の国,旧称 Dutch [Netherlands] Guiana》、 sprawl : 手足を伸ばす、 brachiate : 交互対枝の、 canopy : 天蓋、 prehensile : 巻き付きやすい、 pause : ちょっと止まる |
| 2 | だがそのとき次のことに思い至った。これは未開の地であり動物園ではない; このサルは野生であり;パンヤは緑豊かな枝を広大な地域に広げている。そ の広さは160万ヘクタールで、人跡未踏、中央スリナム自然保護地となってい る。キャンプにいる我々数人を除けば、半径80km以内に誰もおらず、これま で何千年もの間、この土地のほとんどが誰も踏み入ったことがないようだ。 目立って沢山の種がここにはある:熱帯雨林には世界中の生物が偏って存在 しているのだ。スリナムの熱帯雨林は現存する熱帯雨林の中ではもっとも荒 らされておらず、そこに生息しているのは、知られている哺乳類が200種(樹 上のサルも含まれる)、鳥が674種、両生類が99種、植物が5,000種以上、そ れに川や岩、熱、暗闇、星に匹敵するほどの静けさ。 | come to : 我に返る,気が付く、 wilderness : 荒野、 ceiba : カポックノキ,パンヤ、 lush : 青々と茂った、 tract : 区域、 untrodden : 人跡未踏の、 reserve : 特別保留地,保護地、 radius : 半径、 set foot in : 足を踏み入れる、 in evidence :証拠として,目立って、 disproportionate share : 不均衡な配分、 living thing : 生物、 in existence : 現存の、 harbor : に隠れ場所を提供する、 mammal : 哺乳動物、 amphibian : 両生類 |
| 3 | ラッセル・ミッターマイアーがこの森林を保護し、世界中の森林地区を保護 するやり方はこうである。CIの代表者は、第一級の霊長類学者でもある(ダ ートマスで文学士を首席で取得し、ハーバードで博士号を取得)彼は、科学 者でもあり、活動家でもあり、客引きでもあり、また子供のようでもある。 49歳になるこの子供は、ニューヨークのブロンクスとブルックリンで、自然 界に興味を持った母とターザンの教えの下で育った人間である;ミッターマ イアーはずっとターザンの小説や記事を集めている。彼と、CIの創設者であ り最高顧問は、設立11年でワシントンに本拠を置くこの組織のために膨大な 資金と尊敬と注目を集めてきた。ミッターマイアーが客引きモードにはいる と、厚顔な宣伝マンも内気に思えてしまうほどだ;スリナムで一緒にいた1 週間のうちかなりな時間が、どうやってマイケル・ジョーダンをこの国に招 き、CIの保護活動に対して注意を引くかに当てられた。 | forested : 森林に覆われた,森林のある、 Conservation International : IUCN(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)のこと,48年設立,自然保護,野生生物保護分野で 広範な活動を展開している国際機関、 first-rate : 一流の,最上の、 primatologist : 霊長類学者、 B.A. :=Bachelor of Arts,文学士、 summa cum laude : 《ラテン語》最優等で,首席で、 activist : 活動家、 barker :吠える動物,客引き、 Bronx : ブロンクス,米国New York Cityの一つの区、 joint : 共同の,刑務所,監獄、 tutelage : 指導,保護、 memorabilia : 重要記事、 chief executive : 最高経営責任者、 mode : 形態,様態、 brash : ずうずうしい,厚かましい、 portion : 一部、 devote : 当てる、 draw attention : 〜に注意を引く、 conservation : 保護 |
| 4 | ミッターマイアーは真面目で不思議な科学者である。何冊かの本を単著ある いは共著で出しており、その中には、Megadiversityと呼ばれる豪華で巨大な 写真用の本もある。また、大好きなサルに関しては何百もの論文を出してい る。Callithrix humilisという最近発見されたマーモセットに関する最新の 論文には生後2ヶ月になるそのサルを載せている:好奇心旺盛な目、引き締ま り警戒している顔、後光のような白髪。まるでミッターマイアーのようであ る。彼は比較されても気にしないけど。 | seriousness : 真面目,真剣、 gorgeous : 華麗な,豪華な、 photographic : 写真用の、 monograph : 研究論文,専攻論文、 beloved : 最愛の、 marmoset : マーモセット、 humilis : 偏平な,偏平雲の、 studious : 熱心な,勉強好きな、 tight : 引き締った、 alert : 警戒して、 aureole : 後光,光輪 |
| 5 | 彼の性質の全てが活動家としての彼の中で融合し、森林の命を保護するため の恐るべきエネルギーを生み出している。自然保護者には必要なものなのだ。 世界の熱帯雨林の60%近くが失われており、今残っているものも、伐木搬出 とか人口の増加などによって猛烈な圧迫下にある。米国の森林の90%以上 が少なくとも一度は切り倒されている。一度森林が伐採されれば、そこに住 む生物の多くは絶滅の危機にさらされる。 | trait : 特性,特徴、 fuse : 融合する、 formidable : 恐るべき、 logging : 伐木搬出、 population growth : 人口増加、 harbor : に隠れ場所を提供する、 extinction : 消滅,絶滅 |
| 6 | 全ての場所のあらゆる木々を保護することは不可能であると分っているので、 ミッターマイアーとCIは集中的な2面作戦を提唱。第一の条件としては、イギ リスの自然保護論者ノーマン・マイヤーの考えに基づくもので、世界の「ホッ トスポット」を保護すること。この地域は、人間の活動によって荒らされて いるが、他のどの地域よりも動植物の種が殊のほか多いところである。CIは 保護活動が最大限の効果を上げる25のホットスポットを認定している。マダ ガスカル島や東ブラジルの大西洋岸の森林地帯などである。もう一つの場合 としては、比較的人間の手が入ってない熱帯の原野を監視すること。南アメ リカのアマゾン川上流域や中央アフリカのコンゴ川流域などである。 | advocate : を主張する、 two-sided : 両面を有する、 strategy : 戦略、 priority : 優先度、 conservationist : 自然保護論者、 exceptionally : ことのほか,群を抜いて、 preservation : 保存、 maximum benefit : 最大限の利益、 forest region : 森林地帯、 wilderness area : 原始地域,原生自然環境保全地域、 untouched : 触れない、 upper Amazon : アマゾン川上流 |
| 7 | ホットスポットと原野の両方の地域で、CIは農業工業両者を永遠に立ち入り 禁止にするように保護区の境界を定めるよう要求している。だがそれと同じ く重要なのが、他の地域でも健全なる森林と人間の活動が共存できるように していくこと。CIは発展途上国に明確なメッセージを送っている:あなた方 の森林は、切り倒され死んでしまうよりも、手付かずで生きているほうが価 値があると。例えば、熱帯雨林にのみみられる珍しい食べ物や化学薬品、そ れに薬を市場に出すことで、また、ほとんで未開発の環境観光によって利益 を得ることができると。 | push for : 〜を強く要求する、 demarcation : 管轄,境界,区分、 reserve : 特別保留地,保護地、 off limit : 立入禁止、 agriculture and industry : 農工、 nurture : 育てる,仕込む、 enterprise : 仕事,事業、 coexist : 共存する、 developing countries : 発展途上国、 valuable : 貴重な、 intact : 手を付けていない、 marketing : 市場取引、 exotic : 風変わりな,魅惑的な、 chemical : 化学薬品、 untapped : 利用されていない,未開発の、 ecotourism : 環境観光,自然を破壊せずに観光収入が得られるような観光のありかた |
| 8 | スリナムほど原始が残りかつ保存する価値のある場所はない。ニューイング ランドほどの大きさのところにわずか40万人という人口の国である。南アメ リカのこの辺鄙なくさび型の土地に、ミッターマイアーは特別な愛着を感じ ている。そこは彼が博士号の研究をした場所であり、最近では、彼が大成功 を納めた場所でもある。去年の春、CIの強い要請により、スリナム政府は国 土のおよそ10分の1にあたる自然保護地の創設を決定した。CIはスリナムが その保護地を保護し管理できるようにと個人信託基金を設立し、世界中から 寄付を募った。その保護地の外では、土着のマルーン部族と協力し、農業を 特定の焼畑式の地域に限定、村を取り巻く森林に害を与えないようにしてい る。 | affection : 愛情,愛着、 remote : 人里離れた、 wedge-shaped : V字形の,くさび形の、 doctoral : 博士の,博士号の、 site : 現場,場所、 private trust : 個人信託,私益信託、 trust fund : 信託基金、 contribution : 寄付、 slash-and-burn : 焼き畑式の、 |
| 9 | ミッターマイアーと私がスリナムの首都パラマリボから真の原野に行くのに、 小さいプロペラ機で15分しかかからない。私たちは息を呑むほどの、しかも 単調な緑の広大な地域を調査する。その緑は実際多彩である−−茶色がかった 緑、灰色がかった緑、黄色、くすんだ灰色、赤さえある。道路もなく、人の 気配もない。私たちはラレイヴァレンのベースキャンプに着陸し、そこでCI のガイド2人と共にコージャルという長細いカヌーに乗って河口近くの目的 地に行く。そこからボルツバーグ近くのキャンプに向けて5キロの旅が始まる。 そこは花崗岩が高く盛りあがった場所で、木々に半ば埋もれた象のように見 えるところ。その頂上からは原野がずっと見渡せるかもしれない。 | prop :PROPELLER、 capital city : 首都、 Paramaribo : パラマリボ,南アメリカ,スリナムの首都、 survey : 調査する、 breathtaking : 驚くような、 monotonous : 一本調子の,単調な、 base camp : ベースキャンプ,前進基地、 slender : 細長い、 downriver : 河口近くの,川下へ、 trek : 旅行、 eruption : 噴火,爆発、 granite : 花崗岩 |
| 10 | すぐに、この徒歩の旅で自分がどれほど不器用かがわかった:ミッターマイ アーがターザンだとすると、私はジェインのお婆さんだ。しょっちゅうつま ずき、岩で手を切るが、結果的にはこの不器用さのお陰で皆をペースダウン させるのに役立った。私は始めてジャングルを見ている。ここだけで300種類 の木々がある。それらは同時に、熱帯雨林の柱であり指揮するものであり、 この雨林の骨格をなし、かつその大部分を占有するものでもある。とげ状の 下層にあるヤシの木は幹から伸びている枝で籠を作っている。その籠は落ち 葉を堆肥に変える役目をし、その堆肥が今度は木々を支えることとなる。土 壌は根を張るに十分なほどには深くないので、パンヤのような大きな木は支 えを持っており、それは森林のプラットフォームに平らに広がっている;細 い木の中には、土台のところで、ほうきのようにみえる支柱根で支えられて いるものもある。パーキアの木は太陽に向かって伸び、そこから水平に広がっ て他の木の傘の役目をする。すべてが何らかの役割を果たしている。木々は とかげや昆虫を扶養し、とかげや昆虫は鳥やサルの餌となる。軍隊アリは野 営をし、生ける巣である木の枝からぶら下がる。その巣とはさなぎが寝てい る場所。ときに、木が食べ物になることもある;締め殺しイチジク型植物に 食われることもあるのだ。この植物は鳥が落としていった種から成長し、寄 生つるのように木に巻き付き、それを丸ごと飲み込んで取って代わるもの。 | awkward : 不器用な,ぎこちない、 stumble : つまづく、 clumsiness :ぎこちなさ,不器用さ、 at once A and B :〜であると同時に〜でもある、 pillar : 柱、 superintendent : 指揮,最高責任者、 occupant : 占有者,現住者、 spiny : とげ状の,とげだらけの、 understory :【生態】《植物群落の》下層、 palm tree : シュロの木,ヤシ、 trunk : 幹、 compost : 堆肥,配合土、 in turn : 次には,今度は、 root : 根元、 penetrate : 貫通する、 ceiba : カポックノキ,パンヤ、 buttress : 支え、 platform : 壇,基本骨格、 stilt-root : 支柱根、 whisk broom : ほうき,手ぼうき、 full employment : 完全雇用,完全就業、 lizard : とかげ、 insect : 昆虫,虫、 army ant :軍隊アリ、 bivouac :露営する、 hang from : 〜から垂れ下がる、 tree limb : 木の大枝、 pupae :さなぎ、 devour : むさぼり食う、 strangler fig :【植】締め殺しイチジク型植物《他の木に寄生し,その先端にまで 達すると,根でおおったり巻きついたりして締め殺し,それに取って代わる木》、 parasitic vine : 寄生つる、 swallow : を飲み込む、 take one's place :後がまに座る |
| 11 | ミッターマイアーによれば、森で木が倒れて誰もその音を聞かないとしても、 それがかえって彼には幸せのようだ。彼は私にこう語ってくれた。熱帯雨林 で彼が耳にした中で一番恐ろしい音は、枯れ木の幹が爆発するように割れた ときのことで、その後、枝がどっと落ちてきた。その音は余りに凄まじく嵐 のようだったという。 | better off :一層幸せである、 explosive : 爆発性の、 trunk : 幹、 plummet : まっすぐに落ちる |
| 12 | 今の声はパイハの鳴き声。鈍く茶色がかった灰色の鳥で、そのセックスアピ ールはもっぱら声にある−−特に3音節からなる笛のような鳴き声が空を切 り裂く。つがいを獲得するには、ルピコラの華麗なオレンジと黒の羽と同じ く魅力がある。ルピコラというのはスリナムの鳥の王である。私たちは高い 枝の上でそれが羽づくろいをしているのを見つけた。その頭はてっぺんが平 らになっており横から見ると扇のように見え、目が扇のかなめにある。巣を 作るのはボルツバーグのような岩の横側で、そこだと天敵も近づけない。 | syllable :音節、 whistle : 口笛,笛、 getter : 獲得する人、 attractive : 魅力的、 brilliant : 華々しい、 plumage : 羽,羽毛、 cock of the rock :ルピコラ、 cock of the walk :お山の大将,ボス、 catch sight of : 〜を見つける、 preen : 羽づくろいする,身繕いする、 flatten : 平たくする、 crest :絶頂,頂点、 predator : 食肉動物,略奪者 |
| 13 | 私は初めて野生のサルを見た。リスザルで、小さく、妖精のような顔をして いた。サルを見ようと思えば音を聞かなくてはならない:サルは枝を揺さ振り 果物のかけらを落とす。しばらくすると五感が鋭くなる;coming to one's sensesという概念が新しい意味を持ってくる。匂いに気づくと、バクのもの だと言われる。大型で、毛がなく大きな鼻の哺乳類。小さな牛ほどの大きさ である。鋼青色の蝶が耳元で羽ばたく。ミッターマイアーはツルヘビを捕ま えた。緑色のヘビで、環境に偽装するもの。至る所に生と死が共存している。 地面にぽっかり空いた穴を通り過ぎるのだが、それはオオアリマジロの家。 アルマジロの殻も通り過ぎる。ジャガーが昼食にしたのだろうか。小さな テグートカゲがシュロの葉っぱの側で狩をしている。軍隊アリが私たちの 行路を横切っておりそれを狩っているのだ。 | squirrel monkey : リスザル、 elfin facies :小妖精顔、 rustle : 衣擦れの音をさせる、 keen : 鋭い、 come to one's senses :正気づく,迷いからさめる、 take on : 帯びる,持つようになる、 scent : 匂い、 tapir : バク、 smooth :〈からだなどが〉毛[ひげ]のない、 mammal : 哺乳動物、 electric blue : 鋼青色、 flutter : ひらひら舞う,羽ばたきする、 snag : 手に入れる,得る、 vine snake :【動】ツルヘビ《Arizona 州南部から南米ボリビアにかけて分布す る, 樹上性で体のきわめて細長いヘビ科 Oxybelis 属のヘビ》、 camouflage : カモフラージュ,偽装,迷彩、 habitat : 環境、 gaping hole : ぽっかり開いた穴、 giant armadillo :オオアルマジロ、 shell : 殻、 jaguar : アメリカヒョウ,ジャガー、 teiid :テイウス科の,テグートカゲ、 lizard : とかげ、 palm leaf : シュロの葉 |
| 14 | ここに素晴らしい構造がある:小さな水たまり、完全な円形で、アマガエル の巣でオタマジャクシを育てる場所として掘られたもの。この水たまりの砂 壁は彫刻家によって彫られて滑らかにされたように見える;壁はオタマジャ クシがカエルになるまで守っている。 | structure :構造,組織、 kiddie : 小ヤギ,子供、 pool : 水たまり,小さな池、 hyla :アマガエル属(H)の各種のカエル、 tree frog : アオガエル,アマガエル、 nursery : 育児室,苗床、 tadpole : オタマジャクシ、 sand wall : 砂壁、 carve : 刻む,彫る、 sculptor : 彫刻家、 froglet : カエルの子 |
| 15 | こうした興奮をさそう生の営みは木々の保護のもとで行われている。木々が 暗闇を生み出し、同時に静穏と重苦しさを生み出している。花崗岩の出っ張っ た棚に出たときには、私は光がうれしかった。 | hectic : 興奮をさそう、 biology : 生態学,生物学、 under cover of : 援護を受けて、 serene : 穏やかな,静穏な、 oppressive : 重苦しい、 granite : 花崗岩,御影石、 ledge : 岩礁,出っ張り,棚 |
| 16 | そのキャンプで、ミッターマイアーは、この地域が概略的にも分ってないこ とを嘆いた。海洋生物学者シルビア・アールも数週間前だが海の生命につい て同じことを私に言った:私たちは火星にあこがれる、ほとんど死んだ惑星 だ。だが地球の生命についてはほとんど分ってないのに。現在まで私たちが 確定した種は150万から170万種。最も信頼できる推定では、地球の種 の総数は500万から1,500万種となり、1億種あるかもしれない。「何を扱っ ているか分らないのに、どうやって絶滅の割合を議論できようか?」とミッ ターマイアーは問いかける。 | lament : 嘆く、 ignorance : 無教育,無知、 terrain : 地形,地域,地勢、 marine : 海の、 biologist : 生物学者、 yearn for : あこがれる,〜を切望する、 Mars :火星、 to date : 現在まで、 total number : 総数、 extinction : 絶滅 |
| 17 | 彼にこう尋ねる。種の絶滅を必然的な自然現象と受けとめることはできない のかと。それは受け入れられないと彼は答える:私たちがそれを引き起こし ているのです。「保護の経済的価値について議論はできます−−薬の発見に つながる生命工学とか。だが問い詰められれば、私は森林伐採に反対だし、 絶滅をなくしたいのです。私たちには、他の種に対して道徳的責任がある と信じているのです。彼らを救う唯一の真の理由は、それが正しいことだ からです」と彼は語る。 | inevitable : 必然的な、 occurrence : 出来事、 induce : を引き起こす、 economic value : 経済的価値、 biotechnology : 生命工学、 and so forth : など、 deforestation : 山林開拓,森林伐採、 moral obligation : 道徳上の義務,道徳的責任 |
| 18 | 寝る場所はハンモックで、わらと防水布で覆われた屋根をもつ小屋の支柱に くくられている。「夜中に小便に行きたくなったらヘビに気をつけるように」 とミッターマイアーは私に言う。「気をつけるよ」と言って、寝る前には 私は何も飲まない。 | hammock : ハンモック、 shed :小屋、 thatch :わら,屋根をわら(草)でふく、 tarpaulin :防水布、 leak : 小便、 watch out for : 〜に注意する,〜を用心する |
| 19 | 私は、白い蚊帳を垂らしてハンモックに横になり、繭のようだ。眠ろうとは するのだが、ガイドがヒソヒソとスラナン語(英語、オランダ語、ポルトガ ル語、それに西アフリカの言語が混ざったもの)で喋る声と、カエルや鳥の さえずりによって半ば起きた状態だった。昆虫は果てしなくマリンバのよう な音を出す。自然界のゴミが降ってくる−−げっ歯類が殻や果物のかけらを ポイ捨てするのだ。私の頭の下で、動物が捜しまわっていたのを確かに聞い た。ミッターマイアーも白状している。長年の経験にもかかわらず、夜の 騒音には慣れることはないと。 | drape : 覆う,垂らしてかける、 mosquito netting : 蚊帳地、 cocoon : コクーン,繭、 Sranan Tongo :スラナン《南米スリナムで話されている英語をベースとする クリオール言語(creole)》、 chirp : さえずる、 marimba :マリンバ《シロホンに似た楽器》、 debris :残骸,岩屑、 rodent :齧歯動物、 toss away : 〜をポイと投げ捨てる、 shell : 貝殻,殻、 poke around : 〜を覗く、 confess : 白状する、 become accustomed to : 〜に慣れる |
| 20 | 午前4時。獣の陰気で脅すような吠え声で私は完全に目が覚める−−それは 大型の赤毛サルで、自分達が森林全体の霊長類を統率していることを新たに 宣言しているのだ。群れ全体の吠え声は消防署の低いサイレンのように始ま り、やがて空を飲み込むほど大きくなりそして消えていく。それを聞くと世 界でたった一人だと感じ、その吠え声を聞く初めての人間のように感じてし まう。 | mournful : 陰気な,悲しみに沈んだ、 menace : 脅かす,脅威を与える、 wail :泣き叫ぶ声、 howler :吠える獣,泣き叫ぶ人、 announcement : 発表、 in charge of : を監督をして、 primate : 霊長類、 fire station : 消防署、 swallow : を飲み込む、 ebb : 衰退する |
| 21 | その後、私たちはベースキャンプに戻り川に泳ぎに行く。そこでは、科学者 というのは私やあなた方とは違っていることをミッターマイアーが証明して みせた。彼は私に、電気ウナギがいるので岩には近づかないように警告する ことは忘れなかった。だが、ピラニアが同じ川にいると言うのを忘れていた。 このことを思い出して、彼はこう言った、「心配ないよ。ピラニアは開いた 傷口しか狙わないから。」私は手をあげて傷があるのを見せた。「あらら」 と彼は言う。 | head back : (出発点に)再び向かう、 stay clear of : 〜に近づかない,〜を避けている、 electric eel : 電気ウナギ,シビレウナギ,デンキウナギ、 neglect : し忘れる、 piranha : ピラニア、 occur to : 〜の心に浮かぶ、 go after : 狙う、 open wound : 開放創,傷口の開いた傷 |
| 22 | こうした危ないことを除けば、彼が何かに気を取られることは魅力的でもあ る。彼の心は、純粋に自分が選んだ世界に向けられている。その世界を見て いること以上に幸せなことはないのだ。夜になると、彼はちょっと出かけて カエル2匹とヒキガエル1匹を捕まえて戻ってくる。一つにはカエル達の特 徴を私に見せるため(一匹は毒がある)だが、実のところは彼はまだ子供の 心を持っており、出かけていってカエルを捕まえるのが好きなのである。朝 になると、ガイドの一人が樹上高くにオウムを発見。興奮すると真紅のフリ ルを広げ、それはフランスのマダムの派手な衣装のように見えるのでフラン スマダムと呼ばれている。私は感心して、その鳥を記録につけ先に進もうと するが、ミッターマイアーは見るという知的な喜びに時を忘れ、何時間も木 の下で立っていることができるのである。 | lethal : 死をもたらす、 distractedness :乱れること,取り乱すこと,狂気、 charming : 魅力的な、 orient : 向かわせる、 toad : ヒキガエル、 characteristics : 特性,特徴、 poisonous :毒のある、 parrot : オウム、 scarlet : あかね色,深紅色、 frill : フリル、 gaudy : 派手な,けばけばしい、 costume : 衣装、 intellectual pleasure : 知的喜び |
| 23 | こうして私たちはまた出発する。はるか南へまた東へと飛行し、スリラム川 上流域のアシンドポの、マルーン・サラマッカン村へ向かう。アシンドポと いうのは、「腰を下ろし、希望せよ」という意味−−最初の入植者に対する 歓迎の言葉である。彼らは、18世紀、オランダの大農園から逃げて来た奴 隷であった。私たちは、彼らの子孫を訪ねにカヌーに乗って行く。泳いでい る者もいれば;川で洗濯している者もいるし;私たちを見ているものもいる。 子供たちの顔は無邪気さと厳粛さが入り交じっている。向こう岸には、壮大 なパンヤの木が空に向かって伸びている。その木は「魂の家」と呼ばれ、切 り倒されることはない。 | settler : 移民者,入植者、 runaway : 脱走,逃亡、 plantation : 大農園、 descendant : 子孫,末裔、 cross : 中間物,、 innocence : 潔白,無垢、 gravity : 厳粛さ、 glorious : 荘厳な、 ceiba : カポックノキ,パンヤ |
| 24 | 村の習慣から、あちこち歩き回る前にクルツという一種の儀式的なおしゃべ りをする。相手はグランマン−−最高位の首長−−と長老会。私たちは、村 の指導者と共に彼の小屋に集まる。首長は小柄で、あごに白ひげのあるちょっ と悲しげな表情をしている。クルツのときには、誰も彼に直接話し掛けること はしないし、彼も他の人に直接語り掛けることはない。質問も応答も、すべ てバシアスを通じて行われる。バシアスというのは仲介者の役目をする高位 の人達のことで、こうした習慣により、会議が長引き、また本物の善意を表 す形式を醸し出している。 | palaver : おしゃべり,無駄話、 paramount : 最高(位)の、 hut : 小屋、 sad expression : 悲しげな表情、 tuft : 小さな房,小さい束、 chin : あご,あご先、 high-ranking : 高い階級の,高位の、 intermediary :仲介人,媒介、 prolong : 長引かせる、 formality : 儀礼的行為、 authentic : 真正の,本物の |
| 25 | ミッターマイアーが紹介され、彼は、私がグランマンに質問をしてもいいか どうか尋ねた。森林はマルーンにとって精神的には何を意味しているかと私 は尋ねる。グランマンはその質問を長に回し、彼は、私たちの社会の根幹を なすものです」と答える。その全存在は、肉体と精神が集約したものです、 と彼はいうのである。そして私に例え話をしてくれた。あなたがもしも森に 入っていき、農業をするために新しい土地を探すとするなら、目印をつけな くてはなりません;そうしなければ、戻って来たときにその場所を見つける ことができないでしょう、と彼は言い、こう私に尋ねる、「確実に帰ってく るためのあなたの目印は何なのでしょう?」つまり彼はこう言っているので ある、「あなたがここに居るのは一時的なことでしょうか、それとも長いの でしょうか?」と。これはジャーナリストが聞きたくない質問である。私は 自分が場違いだと分っているのだ。 | existence : 存在,実在、 integration : 集約,組込み,統合、 parable : たとえ話,寓話、 plot : 小区画の土地、 ensure : を確実にする、 long haul : 長時間、 out of one's league :手に負えなくて,能力が及ばなくて |
| 26 | 村を歩いてみると、南アフリカのようにみえる。一番驚くことは、人々がこ の環境に実にくつろいでいることである。彼らは、体のどこ部分にもストレ スがかからない立ち方をしており、まるで体のすべての部分が完璧なパラン スを持ってついているようだ。洗濯をしたり、地面の物を拾うとき、女性は 膝からではなく腰を曲げる。その流れるような動作は、屈むのにこれ以上相 応しいものは無いと思わせる。彼らはセケチという演奏をする。そのとき速 く手拍子をし、彼らの手が楽器になる。彼らが満足している様子は顔に表れ る;目は鋭くなるが、鋭すぎることはなく、権威に溢れている。 | at ease : くつろいで、 one's environment : 生活環境、 stress : ストレス,緊張、 laundry : 洗濯、 fluidity : 流動性、 musical performance : 演奏、 clap : 拍手する、 keen : 鋭い、 with authority : 権威を持って,厳然と |
| 27 | 女性がここを切り盛りしている。30代始めで明るい金のイヤリングと金歯を している女性がミッターマイアーとからかうように話している。彼は写真を とらしてくれと彼女に頼んでいる。彼女はポーズをとって、小屋の階段に座 る。ミッターマイアーがカメラを手にすると、からかい気味の眼をし、首に 巻いていた色鮮やかなブラウスを脱ぐ。自信ある姿をあからさまにしようと いうのである。みんな笑っているが、どういうことか分っているのだ。 | teasingly : からかうように、 pose : ポーズをとる、 saucy : 気の利いた,生意気な、 confident : 確信している,自信がある、 get the picture : (状況を)(全体像を)理解する |
| 28 | 熱く、太陽の光が跳ねている村の小道を歩き、ドアに装飾が彫られた木の小屋 −−スイスの羊飼いの山小屋のようにみえる−−をいくつか、それに大きめの チェスのポーンぐらいの青い木像(先祖を表している)を飾ってある、フラカ パウという神社を通り過ぎる。呪術師が戸口に座っている;ヘビに噛まれた右 足の傷口が腫れあがって、出迎えようにも立てないのである。彼は傷をうまく 処置している。私たちが歩くとついてくる子供もいるが、ほとんどの子供は冷 静沈着で、追っかけにはならない。近づいて質問すると丁寧に答えてくれるが、 たいていは私たちを観察している。 | splash :を跳ねかける、 pathway : 小道,通路、 ornate : 華麗な,飾りたてた、 carve : 彫る,彫刻する、 chalet :シャレー風の家,羊飼いの山小屋、 shrine : 神社,聖地、 wooden figure : 木像、 pawn : ポーン《将棋の歩に近い》、 medicine man : 祈祷師,呪術医、 doorway : 戸口、 swell :はれあがる、 snakebite : ヘビにかまれた傷、 successfully : 首尾よく、 self-possessed : 沈着な、 groupie : グルーピー,追っかけ |
| 29 | あらゆるものを観察しているミッターマイアーを私は観察する。ここでは、 完全に彼は快適であり、それも納得できることである。村やそれを取り巻く 森には、物理的な不便さを若干除けば不快なものが何もない。これを未開地 という人もいるが、住んでいる人にとっては決して未開地ではない。アメリ カにやってきたピルグリム達は、こうした場所を恐れたものである;今や、 人々はこうした場所に取って代わるものを恐れている。ミッターマイアーに、 使命感は別として、こうしたものは彼個人にどういう風に影響を与えている のかと尋ねた。 | wholly : 完全に,全く、 uncomfortable : 居心地の悪い、 inconvenience : 不便、 resident : 居住者、 Pilgrim Fathers :巡礼始祖,《1620 年 Mayflower 号でアメリカ大陸に渡り Plymouth に居を定めた英国清教徒団》、 personally : 個人的には、 apart from : を除いて、 sense of mission : 使命感 |
| 30 | 彼は私にこう語ってくれた、「森に一人でいると、あなたの周りにのいたる ところに生命があることに気づきます。私は自分がその一部であると感じる のです。それと同時に、非常に複雑なシステムの中で、私は生命の一形態に すぎないとも分っているのです。これは私が持っている宗教体験に似ていま す−−だからこそ、わずかなお金のために木材会社が熱帯雨林を整地してい るのを見ると、ノートルダムやルーブル博物館が建物解体用の鋼球で打たれ ているように感ずるのです。不思議なことですが、森に居ると、いつでも家 に帰ったように感じます。 | complex system : 複合システム,複雑なシステム、 bulldoze : (ブルドーザーで)整地する、 logging company : 木材会社、 Notre Dame : ノートルダム寺院、 wrecking ball :建物解体用の鉄球 |
| 31 | 先日彼がボルツバーグの頂上に登ったとき、私は元気も気分も良くなかった のでついていかなかった。その代わり、その岩の下に座り、柔らかく霞んだ 森の茂みを見つめていた。全景を見ることはできなかったが、茂みの中の音 や、あたりを覆おう静けさに聞き入っていた。私も含めて全てが一体化して いた。何か重要なことが起ころうとしていた、いや、1,000万年前に既に起 こっていたのだ。私は風を聞くことができた。あらゆるものが重要となった −−葉肉も、網目状の蔓も、頭上のコンゴウインコも、極小の虫も。ほこり のかすほどの大きさの虫が、そのことについて書いているとき私の手を横切っ て這っていった。 | equilibrium : 感情の安定,心の平静、 stare into : 食い入るように見つめる、 hazy : かすんだ,もやのかかった、 thicket : やぶ,雑木林,茂み、 panoramic view : 全景,パノラマのような景色,全景観、 take in : 〜にうっとり見入る,〜を食い入るように聞く、 overarch : 頭上にアーチ形を成す、 subsume : 包含する、 momentous : 重大な、 flesh :葉肉、 braided : 編んだ,網目状になった、 vine : 蔓,蔓植物,ブドウの木、 macaw : コンゴウインコ、 bug : 虫,昆虫、 crawl : 這う,ゆっくり過ぎる |
| 32 | 1時間ほどで、ミッターマイアーは戻って来た。ボルツバーグに登って熱帯 雨林を眺めるのは100回目だったに違いない。「どうだった?」と彼に尋ね ると、「素晴らしい」と彼は答えた。 | incredible : すごい,驚くべき |
31段落
equilibrium
A bug the size of a piece of dust crawled across my hand as I wrote about it crawling across my hand.
虫が手の上を横切っていくのを前にも経験していて、そのことを書こうとしたら、 実際に這っていったのではないでしょうか。 By 草本 和馬さん
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