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| HP | 遺伝学のおかげで薬産業は新しいアイディアで爆発している | pharmaceutical industry : 薬品工業,製薬工業、 explode with : 〜を爆発させる |
| 1 | 時は2025年。昔と変わりないものもある。空は青いままだ。ダウジョーン ズ平均株価指数は、また記録を樹立しそうな模様である。そしてホセ・ロドリゲ ス(ミシガン州立大、2004年卒業)は自分が大腸ガンだと知ったところだ。 だが彼はあまり心配していない。30年前に薬産業を席巻した遺伝学革命のおか げで、科学者たちは、20世紀後半の劇薬と焼き切る治療より遥かに良く効き副 作用も少ない様々な抗ガン剤を開発していた。 | colon cancer : 大腸癌,結腸癌、 genetic revolution : 遺伝子工学の革命、 anticancer drug : 抗癌剤、 side effect : 副作用 |
| 2 | 腫瘍学者はホセの腫瘍から細胞を2、3とり、マイクロチップの上に置く。数 分でマイクロチップは5個の突然変異を起こした遺伝子を同定する。この遺伝子 たちはとんでもないチアリーダーチームなのだ。「グロー、グロー」と声援し、 ホセのガンを大きく、大きく、大きく成長させてきたのだ。いつかは、恐らくは 間もなくなのだが、ガンをもたらすこのいうことをきかない遺伝子そのものの治 療も出来るようになるだろう。だがそれまでは、次善の策に頼ることになる。そ れは薬品会社が開発した誤った遺伝子によって生みだされるメッセージをブロッ クする薬ということだ。ホセの医者は彼の腫瘍の遺伝子分析表に合わせ治療薬を 組み合わせる。6ヶ月後にはホセのガンの痕跡は何一つみつけられなくなった。 | oncologist : 腫瘍学者、 tumor : 腫瘍、 microchip : マイクロチップ,極小チップ、 mutant gene : 突然変異した遺伝子、 diabolical : 悪魔の(ような),極悪非道の、 cheerlead : チアリーダーをする,激励する、 squad : 隊,団,班、 wayward : わがままな,気紛れな、 rely on : 頼みにする、 next best thing : 次善の策、 destructive : 破壊的な、 errant : 誤った、 cancerous growth : がん腫,がん腫瘍 |
| 3 | このシナリオはみかけほど現実離れしたものではない。薬品産業の中にいる誰 かと話してみれば薬学研究にとっては、遺伝学が、青かびがアレクサンダー・フ レミングのペトリ皿に混入して以来の大事件となっていることを知るだろう。確 かにずっと以前から、科学者たちは、アルツハイマー病から黄熱に至るまで、ほ ぼ全ての病気に遺伝子が関与していることは知っていた。だが、薬品の設計のた めの、多数の目標と多数の道筋を見つけて行くために遺伝学の知識を利用できる ようになったのはここ何年かのことだ。では、その方法を皮算用してみよう。 | farfetched : こじつけの、 penicillium : 青カビ、 float into : 〜に浮かんでくる、 petri dish : シャーレ,ペトリ皿、 play role : 〜の役割を果たす、 ailment : 病気、 yellow fever : (病)黄熱病、 multitude of : 多くの、 drug design : ドラッグデザイン,薬剤設計 |
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皮算用 遺伝学者は人を様々な病気にしたり或いは病気にかかりやすくする遺伝子は 2000から5000あると見積もっている。実際的には、薬品産業界全体がこ れからの20年間で研究しつくせないほどの多くの多くの研究の道があるという ことだ。各会社が、遺伝子を利用した薬で大当たりをとるためのそれぞれ異なる 戦略をもち、多くの会社は他社の誤りを指摘して大いに喜ぶ。だがいくつかのキ ーポイントでは意見を一にする。 |
geneticist : 遺伝学者、 predispose : 感染しやすくする、 in practical terms : 現実の問題として、 pharmaceutical industry : 薬品工業,製薬工業、 strategy for : 〜に向けての戦略、 exploit : を利用する、 bonanza : ぼろ儲け、 key point : キーポイント,急所,要点 |
| 5 | --薬はこれまでよりももっと安全で協力で選択的になるだろう。 | selective : 選択的な、 than ever before : 今までより,かつてないほど |
| 6 | --あれやこれやの投薬が効きそうかどうかを前もって決めるため医師が患者の 遺伝子分析表を参照できるようになるだろう。 | consult : 調べる、 ahead of time : 前もって、 medication : 投薬 |
| 7 | --コンピュータや他のデジタル技術が、新しい研究を評価したり、患者の治療法 を決定する上でますます大きな役割を果たすようになるだろう。 | evaluate : 評価する |
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古き良き時代 この楽しみな将来はどのようにして実現されるのだろうか?それを理解するに は、歴史を少しひも解いてみると良い。昔は-- まだ数十年前の話しだが-- 新薬 を発見するやり方は、まるで、矢筒いっぱいの矢をでたらめに打ち、それから駆 け回って矢が射当てたものを調べるようなものだった。1928年のフレミング のように、幸運を射当てることも時にはあったが、ほとんどの努力は徒労に終わ った。 |
come to pass : 実現する、 quiver : 矢筒、 arrow : 矢 |
| 9 | 異なる細胞から得たDNAの切片を結合させる組み換え型DNA技術ができた70年 代から80年代初期に、新薬発見の確率は上昇し始めた。突然研究者たちは最前 列に席を占め、そこから遺伝子がRNA分子の合成を指示し、次にはそのRNA分子が タンパク質や酵素や他の生物物質を組み立てるありさまをまざまざとみたのだ。 でたらめに研究の矢を射る代わりに、製薬会社ははっきりした目標に的をしぼる ことができた。例えば、脳のセロトニンレセプターに焦点を当て、鬱病の治療薬、 プローザックや他の化学組成の似た薬が開発された。胃のヒスタミンレセプター に照準を当て、胃酸過多による消化不良を緩和するタガメットやザンタックが作 られた。 | odds :確率、 recombinant DNA :組み換えDNA、 hereditary material : 遺伝因子、 front-row seat : かぶりつき、 RNA : リボ核酸 (ribonucleic acid)、 assemble : を作る、 protein : 蛋白質、 enzyme : 酵素、 take aim at : 狙う,見当をつける、 serotonin : セロトニン 《哺乳動物の血清・血小板・脳などにある血管収縮物質》、 receptor : レセプター,受容体、 Prozac : プロザック(抗鬱剤の商品名)、 depression : 鬱病、 histamine receptor : ヒスタミン受容体、 stomach : 胃、 Tagamet : タガメット、 Zantac : 薬の種類(The Body Farmから)、 relieve : 軽減する、 acid indigestion : 胃酸過多、 indigestion : 消化不良 |
| 10 | 1990年代までには、何十年かの研究の結果、500の異なる薬のための生 物学的目標が同定されていた。ヒトゲノム計画のおかげで、もう2、3年もすれ ば、さらに500同定できるだろうと研究者たちは期待している。間もなく、大 手の薬品会社でさえ扱いきれないほど多くの新しい目標がみつかるだろう。そし て、数ある目標の中から先ずはどれを選ぶのか、またそれをどのように攻略する のかが大事な秘訣となるだろう。 | biological : 生物学的、 Human Genome Project : ヒトゲノム解析計画、 trick : 秘訣 |
| 11 | 一つの接近法は、最も多くの人がかかる病気、つまり加齢関連疾患に焦点を絞 り、最も接近しやすい目標に向かって進んでいくことだ。これは、概して細胞の 表面や細胞質にあるタンパク質や酵素に作用する薬をデザインするということに なる。それらのタンパク質や酵素をコードする遺伝子に作用するものではない。 通常遺伝子は細胞の核内にしまいこまれ保護されている。これは、メルクやファ イザーやノーバーティスのような薬品の伝統的大企業が好む戦略だ。それが唯一 の選択枝ということでは決してないのだが。 | aim for : 〜を目指して進む,狙う、 protein : 蛋白質、 enzyme : 酵素、 cytoplasm : 細胞質、 tuck away : しまい込む,隠す、 nucleus : (細胞)核 |
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大企業をあしらう 製薬の巨大企業は、最新の遺伝学の知見を利用して新薬をつくることに熱心だ が、分かり切ったことを1から完全にやり直す必要性は見いださない。そ れらのつくる医薬品は、依然としてたまたま生物学的活性を持っていた化合物 (業界用語では'小分子'と呼ばれる)から誘導されることだろう。(実際、この 100年間に開発された薬は、 アスピリンからゾロフトに至るまでみな小分子 だ。)その利点の一つは、小分子は胃の中で破壊されないため、口から飲めると いうことだ。さらに小分子は免疫システムに気づかれ攻撃されることがない。小 分子の研究が最も盛んな二つの領域は、アルツハイマー病とガンだ。 |
exploit : 利用する、 genetic information : 遺伝情報、 reinvent : 徹底的に作り直す、 medication : 投薬(法)、 derive from : 得る、 chemical compound : 化合物、 parlance : 語調、 aspirin : アスピリン、 stomach : 胃、 immune system : 免疫系,免疫機構 |
| 13 | 1992年、当時はデューク大学、今はグラクソ ウェルカム社のアレン・ロ ージズ博士は、血液中のある特定のタンパク質とアルツハイマー病にかかる危険 性との間に関連のあることを発見した。 アポリポタンパク質 E と呼ばれるタン パク質は貨物船のようにコレステロールを体中に運搬する働きをする。一見した ところでは、脳の変性にはあまり関係なさそうにみえる。だが、アルツハイマー 病患者の67パーセントがアポリポタンパク質 Eの一種であるアポ E4 をコード する遺伝子をもつ。これは健康な成人では30パーセントだ。とは言ってもアポ E4を持つ人の多くがアルツハイマーが常に発病する訳ではないが、そうなる確率 はかなりのものだ。そしてアポ E4がある場合とない場合では発症率に有意差が ある。 | apolipoprotein : アポリポ蛋白質、 cargo ship : 貨物船、 ferry : 輸送する、 cholesterol : コレステロール、 at first glance : 一見したところ、 degenerative : 退化した,変性、 in contrast to : と対照的に |
| 14 | ロージズはアポ E4 がアルツハイマー病の発症率を高める理由を正確に理解す る必要はないと考えている。脳が、どのように他のアポ E 類と異なるやり方で アポ E4 を利用しているかさえ確定できれば、彼は、アポ E4の脳に与える影響 を強める、或いは弱める薬を作れるに違いないからだ。彼の作る新薬は、アルツ ハイマー病患者全ての治療薬とはならないかも知れないが、少なくとも一部の患 者の治療の助けとはなるだろう。 | figure out : 理解する、 protein : proteins,蛋白質 |
| 15 | もちろん、うまくいきそうな目標を見つければ必ず成功するとは限らない。大 腸ガンのことを考えてみよう。大腸ガンになるためには、少なくとも三つのこと に誤りが生じなければならないと、科学者たちは信じている。彼らはそれを交通 事故に例えていう。細胞に分裂を命じる遺伝子(アクセル)がずっと'オン'のま まにされていなければならない。細胞にゆっくりしろと命令する別の遺伝子(ブ レーキ)が故障していなければならない。それから、 DNA暗号のどんな誤りでも 修復する遺伝子(修理班)がストライキ中でなければならない。全大腸ガンの 半数では、 アクセルはラス(ras)と呼ばれる遺伝子だ。ラスは細胞の成長を刺 激するタンパク質を作る。そしてラスは抗ガン剤をつくる理想的な目標だった。 | colon cancer : 大腸癌,結腸癌、 go wrong : 狂う,だめになる、 liken : たとえる、 slow down : スピードを落とす、 disable : 無効にする、 anticancer drug : 抗癌剤 |
| 16 | いや、そう思えたのだった。メルクのガン研究部門の部長、アラン・オリフは いう、「10年間無駄骨をおりましたよ。もうこの計画は止める寸前だったんで す。」だがオリフのチームは極めて重大なこと-- ラスタンパクは、 ファーネシ ル トランスフェラーゼと呼ばれる別の転移酵素により活性化されるまでは働か ない -- に気付いたのだった。ひょっとするとこの転移酵素はもっとすばらしい 目標になり得るのかも知れないが、果たしてどうだろうか?当初の報道では格好 の目標となっているとのことだが、メルクは、来年あたりまで、最初の人での臨 床実験の結果は公表しないだろう。 | bang : ぶつける、 verge : 〜する間際である、 critical : 重大な、 activate : 活性化する、 enzyme : 酵素、 farnesyl transferase : ファルネシルトランスフェラーゼ、 transferase : 転移酵素 |
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競争相手に勝つために魅力的な新製品を作る 伝統的な製薬会社が、化学的合成物の開発に焦点を当てるのに対し、バイオ産 業は、むしろ、ホルモンやタンパク等、生物学的合成物(もともと体内にあるも のであったり、最初からつくられたものであったりする)を利用する。インター フェロン、血栓を溶かす薬 tPA、乳ガンの新薬ハーセプティンはそのようにして 作られた薬の例だ。 |
mousetrap :《消費者の心をひきつける》 新製品、 whereas : であるのに対して、 chemical compound : 化合物、 substance : 物質、 in the body : 体内の、 from scratch : 最初から、 interferon : インターフェロン、 clot : 塊,血餅 |
| 18 | だがえり抜きの生物工学のエリートの中にも、他よりも良い考えが自分にはあ ると思っている独立の立場の研究者たちがいる。彼らは、遺伝子からの情報をタ ンパク質へと伝達するRNA分子を目標にすることにより、さらに一歩遺伝子に接 近したいと思っている。そして彼らにはそれをするための完璧な分子道具がある。 ブロックしたい RNAの鏡像であるDNAを合成することにより、研究者たちは売り 出されているどの薬よりも特効性のある薬を作れるのだ。というのもその薬が、 細胞がRNAから読みとろうとする'センス(意味)'を遮断するからだ。 この技術 はアンティセンスと呼ばれているが実に適切な呼び名だ。 | rarefied : 高度な、 maverick : 異端者,一匹狼、 RNA : リボ核酸 (ribonucleic acid)、 synthesize : を総合する、 mirror image : 鏡映像,鏡像、 specific : 特定の、 on the market : 市場に出ている,売り出し中、 appropriately : いみじくも |
| 19 | だが依然として解決しなければならない問題がいくつかある。一つには、生体 自身の免疫システムが、潜在的有害性を持つウイルスと誤り、アンチセンス DNA をしばしば攻撃するという問題がある。また一つには、生体の多くの細胞は、ア ンチセンス DNA が細胞膜を通過するのを許さないという問題がある。「9年前 こりゃあ、めっけもんだ、と誰もが考えました。その後、技術的困難にぶちあた り、振り子は反対側へ振れたのです。」と雑誌'アンチセンスと核酸薬開発'の編 集長アート・クリーグはいう。クリーグによれば、現在、数は少ないが前途有望 ないくつかのアンチセンス薬もある。 その一つは、8月にFDAの承認を受け、サ イトメガロウイルスに感染したエイズ患者が失明するのを防ぐために使われるよ うになったビトラビーンという薬だ。 | immune system : 免疫系,免疫機構、 potentially harmful : 潜在的に有害な、 virus : ウイルス、 membrane : 皮膜,膜、 wow : わあ!,すごい!、 dynamite : すごい、 hurdle : 障害物、 pendulum : 振り子、 blindness : 失明、 AIDS patient : エイズ患者、 infect : を感染させる、 cytomegalovirus : サイトメガロウイルス |
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遺伝子分析表 遺伝子は薬の作り方を教えるだけではない。遺伝子はまた、誰を治療すべきな のかも教える。 |
genetic : 遺伝子の、 profile : プロフィール |
| 21 | 全ての薬には何らかの副作用がある。患者の遺伝子分析表を詳しく調べること により製薬会社は間もなく、副作用の出そうな患者を前もって知ることが出来る ようになるだろう。適例:アボットラボラトリーズは現在、気管支喘息に対して 実験的治療薬をためしているが、その薬は患者の約3パーセントに肝臓異常を引 き起こしてしまう。だがそれ以外の者にはとてもよく効くようなのだ。それでア ボットはフランスの会社、ジェンセットにその治療薬を絶対に服用してはいけな い患者の遺伝子分析表を作れるかどうか調べてくれるよう頼んだ。その技術は誰 にでもできるというようなものではない。だが遺伝子分析表が出来て、アボット はその薬をより安全に売り出せるかも知れない。 | side effect : 副作用、 ahead of time : 前もって、 most likely to : 最も〜しそう、 adverse reaction : 副作用,薬害反応、 case in point : 好適例、 asthma : ぜん息、 trigger : を引き起こす,誘発する、 pretty well : かなりよく、 medication : 薬物療法、 foolproof : しくじりようのない,とても簡単な |
| 22 | 遺伝子分析表ができれば、医学の場で日常的に行われている当て推量の一部は なくなるだろう。例えば、あなたが高血圧と診断されたとしてみよう。医者は、 合う薬をみつけるため、先ずは当て推量で3、4種類の薬を試してみなければな らないかも知れない。というのも血圧は恐らくは数十の遺伝子によってコントロ ールされており、そのうちのどれか一つ(または複数)の遺伝子があなたの場合 の高血圧に関与しているからだ。だが、DNAを調べ、あなたの遺伝子分析表をつ くり、それとある治療薬が実際に効いた患者の遺伝子分析表とを比較すれば、医 者は最初から合う薬を処方できるようになるかも知れないのだ。あなたは薬代 を節約できるが、当然ながら、その分、製薬会社の儲けは減ることになるだろう。 製薬会社は、当て推量で処方され効果のない薬から得られたであろう利益を、も はや得ることができなくなるからだ。 | guesswork : 当て推量、 diagnose : 診断する、 high blood pressure : 高血圧(症)、 pill : 丸薬,錠剤、 responsible for : の原因である、 prescribe : (薬を)処方する |
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コンピュータ科学者の出番 1、2の遺伝子とその遺伝子がコードするタンパク質に焦点を当てるやり方は 新しい薬を探し求める上ではすでに成果をあげ始めた。だが、新薬開発の将来に おいては、脳や免疫系のような複雑な生物網状組織を一層深く理解することが中 心的課題となるだろう。「複雑なシステムを理解する唯一の方法は、同時に多数 の遺伝子とタンパク質をみることです。」とシアトルのワシントン大学分子生命 工学科主任りー・フッドはいう。多数とはいくつなのだろうか?恐らく千個、否 1万個かもしれないし10万個かもしれない。 |
protein : 【変化】《複》proteins,蛋白質、 pay off : 報われる,成果をあげる、 center on : 〜に集中する、 immune system : 免疫系、 complex system : 複雑なシステム、 biotechnology : バイオテクノロジー,生命工学 |
| 24 | マイクロチップ登場。シリコンで作られたチップにより、コンピュータが同時 に何百万ビットもの情報を処理できるようになったように、DNA切片を処理しさ らには DNAを組み込んだチップにより、いつかは何百万もの遺伝子のシー ケンスを同時に分析できるようになるだろう。識別するのに何十年もかかるよう なパターンも遺伝子チップを使えばチップ上に数分で現れるようになるだろう。 医師は遺伝子チップを使い何千もの遺伝欠陥を同時にスクリーニングするだろう。 薬の研究者は、遺伝子チップを利用して、病気毎に或いは、システム毎にオンに なる遺伝子、オフになる遺伝子を同定するだろう。その結果、新薬開発の格好の 目標ができるかも知れない。 | microchip : マイクロチップ,極小チップ、 silicon : シリコン,珪素、 to process : 処理する、 incorporate : 組み込む、 fragment : 断片、 genetic sequence : 遺伝子の配列、 simultaneously : 同時に、 discern : 識別する、 genetic defect : 遺伝的欠陥 |
| 25 | 少なくともそれは理論には叶っている。遺伝子チップは余りにも奇抜な最先端 技術なので、科学者の中にさえそううまくいくとはなかなか信じられないものも 多くいる。アフィメトリックスのCEO(最高経営責任者)スチーブ・フォダーは、 そのような疑念の取り扱いには手慣れたものだ。カリフォルニア、セントクラー ラに本社を置く彼の会社は、遺伝子チップ開発の先頭を走っていると広く認めら れている。「たくさんの新しい技術や術語やアプリケーションソフトを確立する 必要がありました。でも、すばらしい新分野が、生まれたのです」と彼はいう。 | cutting edge : 最先端、 terminology : 専門用語,用語法 |
| 26 | では遺伝子チップはどう作るのだろうか?エイズウイルスが生体を攻撃し始めた 直後の2、3週間に、免疫システムによりオンにされる遺伝子はどれなのか、つ まり出現する遺伝子がどれなのか同定したいとしてみよう。先ず、恐らく1万個 の遺伝子のシーケンス --遺伝子文字A、C、G、T、を一つ残らず-- をコンピュー タにダウンロードする。ついで、そのコンピュータを使い、各シーケンスの鏡像 がどうなるかを算定する。(RNAがDNAの鏡像を作るように、DNA も自分自身の鏡 像をつくれる。)この目的はミラーシーケンスのデータから実物のDNAのストラン ドを作ることにある。そのDNAのストランドはチップのガラスのどだいに埋め込ま れる。整然とならぶとうもろこしのようだ。ストランドは1文字1文字築き上げ られる。シリコンチップの層が作られる方法に酷似しているのだ。 | gene : 遺伝子、 download : をダウンロードする、 hereditary : 遺伝的な、 mirror image : 鏡映像,鏡像、 row : 列 |
| 27 | ストランドが完成すれば、遺伝子チップは使える状態になる。 激しいHIV感染 症を起こしたばかりの患者から血液サンプルをとる。患者の免疫システムの様々 な遺伝子は、数百万のRNA分子を作りだし、そのRNAは、エイズと戦うために必要 なタンパク質をつくるだろう。 RNAを抽出し、粉々に砕き、一つ一つの断片に蛍 光物質で標識をつけ、その全部をチップにかける。RNAは、チップ上の相補DNAに のみしっかりと固着する。蛍光標識により、チップのどこで RNAとDNAが結合し たかが分かる。チップ上のDNA連鎖から、RNAが結合した場所を一つ一つ調べ、詳 細なリストからどの遺伝子が発現しているのかを読みとる。数人の患者を比較す ることにより、-- 他の者よりも上首尾にHIVウイルスと戦っている者もいるので そのうまくいっている人のデータと比較して-- エイズの新しい特効薬へとつな がっていくような新薬開発目標をみつけられるかも知れない。 | HIV : エイズ・ウイルス、 infection : 感染、 churn out : 量産する、 assemble : 〜を作る、 extract : 抽出する、 fluorescent : 蛍光の、 chemical : 化学薬品、 tightly : しっかりと、 complement : 補足物 |
| 28 | そのような計算生物学の偉業は、まだ数年先のことかも知れない、否、ことに よると最悪の場合、数十年先のことかも知れない。だが大事なことは、遺伝子科 学が、新薬を発見する方法や開発する方法を劇的に変え始めているということだ。 科学者が、遺伝子、タンパク質、環境の間の複雑な相互作用を深く理解するにつ れ、全くの偶然により新薬ができるということは次第になくなっていくだろう。 少なくとも最初のうちは、失敗し失望し混乱も生じるだろう。だが、この分野の ほとんどの専門家は、薬の研究はついに黄金時代に入ったと認める。 | feat : 偉業、 biology : 生物学、 point is : 要は,要するに、 new drug : (効果や安全性がまだ確認されていない)新薬、 increasingly : ますます、 small role : 端役、 tease out : 〜を何とか引き出す、 interplay : 相互作用、 setback : 挫折,失敗、 golden age : 黄金時代 |
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