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| HP | アメリカ障害者法(ADA)に駆り立てられてその用意がある人、やる気のある人 などを雇い入れる企業は増えている | spurred : 急き立てられた、 take on : を雇い入れる |
| 1 | 元カリフォルニア選出下院議員トニー・コエルホは1960年代に司祭になろ うとしたのだが許されなかった。信心が足りなかったからでも誓いを守れなかっ たからでもない。それは癲癇のせいだった。癲癇を悪霊にとりつかれているた めといったレベルでとらえている古来の教会法により、彼は司祭職に不適格と されたのだ。コエルホは聖職につくという夢に破れた。だが彼は政界と実業 界へ入っていった。 今は、 バージニア州フェアファックスの環境工学の会社、 ICF カイザーの会長を務めている。 | congressman : 下院議員、 on account of : のせいで、 epilepsy : 癲癇、 unfit : 不適当にする、 priesthood : 司祭職、 canon law : 教会法,宗規,教会の法、 demonic possession : 悪魔に魅入られること、 holy order :聖職 |
| 2 | コエルホは、彼と同じように様々な心身障害を克服するために闘わなければな らない推計3千万のアメリカ人を、今日のアメリカ社会は以前よりも受け入れ るようになってきたという事実に勇気づく。「労働市場で闘う好機がやってきま した。私たちは働く権利を要求しているのです。」とコエルホはいう。彼は、障 害者の雇用問題に関する大統領の諮問委員会の議長を務め、1990年のアメリ カ障害者法を書いた主要なメンバーの一人だった。「依然として仕事での差別は あります。しかし、流れは変わろうとしているのです。」 | take heart : 心強く思う,勇気づく、 mental disability : 精神障害,知的欠陥、 fighting chance : かすかな望み,努力次第で成功できるチャンス、 work force : 労働力、 serve as chairman : 議長を務める、 job discrimination : 仕事上の差別 |
| 3 | 職場における障害者差別を禁止するADA(アメリカ障害者法) が通ってから9 年がたち、アメリカの障害者の状況は変わった。そして雇用主の状況もだ。アメ リカの産業界は、障害者が職場で歓迎され生産的に働けるよう、職場の環境を大 きくあるいは小さく(ほとんどは小さくだが)調整するようになった。だが、企 業がそのような職場の調整にほとんどお金をかけずに済むこともよくある。慢性 抑鬱症の人の労働時間をフレクシブルタイムにするとか、コントロールキーを片 方に集めたキーボードを用意するといったようなことで済む。バージニア州アー リントンの北米リハビリ工学並びに支援技術協会常勤取締役ジェームズジェレト カによると、普通には、一人当たりの職場環境整備費はほとんどの場合、200 ドル以下だ。 | discrimination : (人種)差別、 workplace : 職場、 adapt : 順応させる、 accommodation : 便宜、 flexible work hours : 裁量労働制、 depression : 鬱病、 executive director : 専務取締役に当たる |
| 4 | 初期には、経費がかかるのではないかとの懸念が表明されたが、その後はアメ リカ企業は障害者雇用に開かれていることを示した。特に労働力市場が記録的に 逼迫しているさなかは顕著だ。1994年の国勢調査局の最新の統計によると、 重度障害者の就業者数はその前の3年前の調査時の290万人から、約370万 人へと増加した。その報告書にはまだ道は遠いと書かれてある。この被雇用者数 はまたアメリカの障害者の大多数は仕事から依然として閉め出されていることを 示す。偏見、適切な交通手段の欠如や雇用を阻害する物理的バリアがまだあふれ ており、それは障害者を落胆させている。例えば、調査により数値は多少異なる が、専門家はルイス・ハリスの1998年の調査を引用する。それによると成人 健常者の場合、常勤と非常勤を合わせれば80パーセントが雇用されているが、 成人障害者の場合はそれがたったの30パーセントにすぎないという。昨年のル イ・ハリスの年次調査によると、およそ10人中6人が、 ADA法は彼らの生活に 何の影響も与えていないと答えている。 | in the midst : 真っ最中に、 tight labor market : 労働力不足、 Census Bureau : 《米》国勢調査局、 at work : 就業して、 employment : 職業,雇用、 large proportion of : 〜の大部分、 disable : 身体的障害のある、 workplace : 職場、 prejudice : 偏見、 physical barrier : 物的障壁、 contribute to : 〜にあずかって力がある、 discouragement : 支障,反対,落胆、 survey : 調査する |
| 5 | ADA法の影響を強めるため、連邦政府は再び介入し始めた。昨年3月、 ビル・ クリントン大統領は成人障害者の雇用に関する大統領直属の特別委員会をつくっ た。そしてその委員会は12月に第1次報告書を出した。「報告書は基本的には、 職場で障害者を援助するためにもっともっと多くのことがなされる必要があると いっています。」と、特別委員会副委員長コエルホはいう。報告書は以下のこと を勧告している。障害者が働くために必要となる経費を税金の控除対象と認める こと。自分で事業を始めようとする障害者を援助するための小規模事業所経営学 プログラム。また健康管理を助けるため患者権利法の通過を訴えている。連邦政 府には、障害者雇用のモデルになるよう求めている。「12月に、アル・ゴア副 大統領は、小規模事業所経営学プログラムと連邦政府の障害者雇用の二つの勧告 に対しては行政命令を出しました。この二つは実行するのに予算が最小限ですみ ます。それでもまだはっきりとした予算はついていないのです。」と特別委員会 委員長ベッキー・オーグルはいう。 | Federal Government : 連邦政府、 so much more : なおさら,ますます、 task force : (専門家)委員会、 recommendation : 勧告、 work-related expenses : 仕事に関連する費用、 Small Business Administration : 中小企業庁、 plea : 陳述,弁解,抗弁,懇願、 Bill of Rights : 《英》民権条令,《米》権利章典,政府が基本的人権を保障したもの、 health care : 保健衛生,医療,健康管理,保健、 Executive Order : 行政命令、 SBA :=Small Business Administration,中小企業庁 |
| 6 | だが、そのような刺激策とは関係なく、中にはずっと障害者が働けるよう援助 してきた優れた会社もある。メリーランド州ベセスダのマリオット・インターナ ショナルは、長いことその努力で知られている。マリオットがそのような姿勢を とるよくよくの理由。 会長J.W. マリオットJ.R.の息子スチーブは、雇用マーケ ティング部副部長なのだが、視覚と聴覚に障害があるのだ。だがマリオットの経 営陣は、彼らの経営方針は、もっと深いところに根があるのだと協調する。「す べての人々と共に働くことが私たちの企業文化の一部になっているのです。」と マリオットの人事部副部長ブレンダン・ケーガンはいう。「障害をもった方々は、 仕事への動機が強いですし、ひたむきです。仕事を続けたいという気持ちが強い ですし、仕事をやめることも少ないんです。」 | incentive : 刺激,奨励金、 standout : すばらしい人[もの]、 compelling reason : やむにやまれない理由、 stance : 姿勢、 impair : 損なう、 executives : 幹部社員、 corporate culture : 企業体質,企業風土,社風、 executive vice president : 上級副社長,取締役副社長,執行副社長、 human resource : 人的資源,人材、 highly motivated : 意欲的な,やる気のある、 retention : 保持、 employee turnover : 労働移動率 |
| 7 | マリオットのプロジェクトマネージャー、プレストン・ジョイス(36)は、 18歳の時、バイクの事故で右腕を失い、プロテーゼ(義手)を装着している。 ジョイスはケーガンの言葉を補強する。彼は1984年に入社した、人事部門の テクノロジーの専門家だ。会社ではじめてすべてのコントロールキーを片方に集 めたコンピュータを使った人の一人だった。さらに彼の持ち場は、機器や備品が 左側に備え付けられている。これはちょっとした工夫だ。「私は仕事をよくする 一個の個人として見られているのです。腕をなくした障害者としてではありませ ん。」とジョイスはいう。マリオットに勤めてから、ジョイスは九回昇進し、給 料は六倍以上になった。 | project manager : プロジェクト・マネージャ、 prosthesis : 義肢、 bolster : 支持する、 assertion : 主張、 cubicle :小部屋,個人用オフィス、 promotion : 昇進、 sixfold : 6倍に |
| 8 | マリオットファミリーは障害者に良い仕事を与えようと人力し国家的な役割を 果たしてきた。1989年、マリオット障害者財団をスタートさせ、18歳から 22歳の障害者約3000人を3、4ヶ月間、民間企業に有給の見習い社員とし て斡旋してきた。財団はアメリカ中で、1、150の雇用主と協力しており、見 習い期間が終わるとほぼ90パーセントは仕事を得ている、と財団の常勤取締役、 マーク・ドノバンはいう。 | assumed : (責任を)引き受けた、 internship : 見習い社員として勤務すること |
| 9 | 「このプログラムのおかげで私は仕事に就くことができましたし、自尊心も持 てるようになりました。またこのプログラムは人格形成にも役立ちました。」と、 ワシントンのポトマック電力株式会社の事務助手、カーロス・ペニックス(25) はいう。脊椎披裂で車椅子使用のペニックスは、1992年、高校生の時、ポト マック電力に見習い社員として就職した。 | build up : 築き上げる、 self-esteem : 自尊心,自負心、 spina bifida : 脊椎披裂,二分脊椎、 wheelchair : 車椅子 |
| 10 | さらに小さな企業がマリオットの例に追随する。 オクラホマシティに従業員 14人の職業斡旋書を所有するテリー・ネーセは地元の職業訓練所と協力して障害 者への職業斡旋に人力している。ネーセの個人的動機は4歳の孫娘エミリーだ。 エミリーの左腕は十分には発達しなかった。「エミリーちゃんはきっと優秀な頭 脳と意欲をもった大人になりますよ。でもね、それをいかすどんな機会があるん でしょうね。私は自分の会社で模範を示したいんですよ。」とネーセはいう。例 えばネーセは車椅子使用の障害者をコンピュータ入力の職に斡旋してきた。将来 雇用主になりそうな人と働いてみると、ネーセは、雇用主が障害者に便宜をはか れるかどうかを前もって分る。ネーセは便宜をはかれないとわかった雇用主には、 2度と障害者雇用の話しは持ち出さない。 | personnel agency : 職業安定所、 training institute : 研修所,練習所、 personal motivation : 個人的動機付け、 brilliant mind : 才気,天才,頭のいい人、 set an example : 手本を示す、 ahead of time : 前もって,早めに、 accommodate :〜のために便宜をはかる |
| 11 | 新しいテクノロジーの知識をもちまたそれを簡単に利用できるハイテク企業と コンピュータ会社は、障害者雇用の先兵だ。一例だが、ヒューレットパッカード 社は管理者たちに対し、視覚障害者や聴覚障害者の支援機器類についての教育を 行っている、とカリフォルニアの企業障害者雇用プログラム、パロ・アルトを経 営するマリセラ・ガレゴスはいう。情緒的な問題をかかえ職場で働くことが困難 な人たちにはテレコミューティング(コンピューター端末を備えて行なう在宅勤 務)という方法もある。 | vanguard : 先駆け、 for one :一例としては、 emotional problem : 情緒面の問題,情緒障害、 have trouble : 苦労する |
| 12 | ヒューレットパッカードが提供するものの中で特に目を引くのは、点字本、手 話通訳、TTY(文字電話)だ。TTYは、電話で健常者の話した内容をオペレーター が文字化し、それを電話上のスクリーンで聴覚障害者が読むというものだ。パ ティ・オサリバン(39)は、ヒューレットパッカードの多様性プロジェクトの 管理者だが、入社以来13年になる。 耳の不自由なオサリバンはTTYをよく利用 する。タイムのインタビューもTTYを通して行われた。大勢の人との会議のよう に唇を読むのが困難な場合には会社は手話通訳者を用意する。「私が働いている この会社は人を大切にし、人の能力と強さに注目しているのです。だから私はこ こで13年働いてきました。」とオサリバンはいう。 | among other things : 特に、 interpreter : 通訳、 transcribe : を書き写す、 diversity : 多様性、 avid : 貪欲な、 via : 〜を経て,〜によって |
| 13 | ヒューレットパッカードは一人当たりの整備費を平均500ドルと見積もって いる、とガレゴスはいう。その結果は?「障害者が働けるように便宜を図ること で、我が社はずっと広い範囲から社員を選ぶことができます。人に投資すれば 仕事の生産性があがります。結局、健常者にも障害者にも才能のある人はいる です。」と、多様性と職場生活部長エミリー・ダンカンはいう。 | on average : 平均して、 payoff : 利益 |
| 14 | カンザスシティに本部を置くスプリント社は障害者雇用に積極的なもう一つの会 社だ。 「地元の組織に連絡をとって、 多数の職に適任の障害者を見いだしまし た。」と人事部管理者マーガレット・ヘイスティングはいう。この通信産業の巨 大企業の統計資料によると、全社員51、000人の内385人が自ら障害がある と申告している。「会社は障害をもった人たちが必要とする時に、必要とする場 所で援助するのです。」とヘイスティングはつけ加えていう。「私には選べる仕 事が一つもないんだわと感じていた時にスプリントは機会を与えてくれたんで す。」とケンタッキー・ルイビル支社の助手、ディーナ・ダークセン(24)は いう。彼女は多発性硬化症による法定の盲人だ。スプリントは彼女が働けるよう、 コンピュータスクリーンの文字を拡大するソフト、ズームテキストを提供した。 彼女はまた、書かれた文字を読むためには拡大読書機を使う。 | reach out to : 〜に手を差し出す、 qualified : 資格のある,能力のある,免許のある、 legally : 法律的に、 multiple : 複合的な、 sclerosis : 硬化(症) |
| 15 | ハイテク企業が他の産業よりも障害者に開かれている一つの理由は、人道的な 思いやりということは別として、障害者の職場環境を整える経費が、少なくとも いくつかの分野では、急激に減少しているからだ。フロリダ州セントピーターズ バーグのソフトウェア会社ヘンタージョイスは、現在の価格が発売当時からみる とほぼ半値になった盲人用のソフトを作っている。「1988年に1500ド ルで売り出しましたが、今は795ドルです。」と、社長のテッド・ヘンターは いう。彼自身盲人だ。そのソフトはジョーズと呼ばれている。ジョーズ(JAWS) はJob Access with Speech(音声で仕事をする)のアクロニム(頭字語)だ。こ れはコンピュータにキー入力されたものを全て合成音声で読み上げるウインドウズソ フトだ。また合成音声でe-メールやインターネットでとった情報も読み上げる。 その年間売り上げ高は1988年には10万ドルだったが、10年後には7百万 ドルに跳ね上がった。「紙を使うことが少なくなり、この頃ではコンピュータや e-メールを使うことが増えてきました。新しいソフトを利用して盲人や視覚障害 者が、仕事につきキャリアを積む機会が増えているのです。」とヘンターはいう。 彼の会社の従業員45人のほぼ半分は盲人か視覚障害者だ。 | consideration : 思いやり、 visually impaired : 視力障害を持った,視力障害者、 down in price : 安くなる、 acronym : 頭字語,頭辞語、 read back : 読み返す,復唱する、 e-mail : 電子メール、 annual sales : 年間売上高、 move ahead : 前進する |
| 16 | 精神障害者が企業国家アメリカに受け入れられるのはもっと大変だ。その大き な原因は、依然として精神病は隠されることが多いということにある。仕事でト ラブルが起こるまでは、雇用主がその人が精神病だと気付かないでいることさえ ある。だがやはり最大の原因は昔ながらの恐れだ。「精神障害者の雇用となると、 今だにとんでもないほど、雇用主は不安になります。精神障害者が病気を制しき れなくなったらと。」とニュウヨウク市の精神分析専門医エレン・グサロフはい う。彼女の患者の約3分の1は仕事で問題を起こしたことがあるという。「でも 適切な配慮があれば、良い仕事のできる慢性の患者さんも多いんですよ。」と彼 女はいう。 | psychiatric : 精神医学の、 corporate America : アメリカ産業界,企業国家アメリカ、 ailment : (軽い)病気,不安定、 under wraps : 秘密にされた,表沙汰にしない、 old-fashioned : 旧式な,時代遅れの、 apprehension : 憂慮, 懸念、 out of control : 手に負えない、 chronic : 常習的な,慢性的な |
| 17 | この問題に取り組むため、雇用機会均等委員会は1997年に、雇用主が ADA での精神障害の定義を理解し、職場で精神障害者にどのような対応をしたらいい かを助言するガイドラインを出した。だがガイドラインは不十分なものだという 評論家もいる。「ガイドラインは巷で起きている混乱を解決する役にはたちませ ん。現実の社会で起きていることにはあてはまらないのです。」と、労働問題を 取り扱うジャクソン・ルイスサンフランシスコ法律事務所の共同経営者マイケル・ ロティトはいう。雇用機会均等委員会委員ポウル・ミラーは反論する、「ガイド ラインは実際、雇用主側の精神障害に対する認識を高めました。もともと具体的 な改善策を示そうとしたものではないのです。」 | guideline : 指針、 clear up : 解決する、 apply to : 適用する、 real world : 現実の世界、 managing partner : 業務担当社員、 law firm : 法律事務所、 labor dispute : 労使紛争,労働争議 |
| 18 | ノウハウを持っている会社にとっては、初めから精神障害者と分かっている人 の便宜を図るのは簡単で安上がりということもよくある。ノースキャロライナ州 グリーンスボロのキャロライナ ファイン スナックスのオーナー兼社長、フィル・ コサクは様々な精神病や学習障害を持つ9人の従業員のうち3人については、お 金を全然使わずに調整している。コサクは、たとえば、生産ラインのある者は、 その日にやる仕事を全て朝分かっていないとパニックになることに気づいた。そ こで彼は、その日の仕事と目標を掲示板に掲げることにした。「これは簡単でし たし、経費も不要でした。会社の生産性はよくなりましたよ。」とコサクはいう。 | mental disability : 精神障害,知的欠陥、 learning disabilities : 学習障害,学習不全、 production line : 流れ作業,生産ライン、 bulletin board : 掲示板 |
| 19 | コサクは1988年、地元の職業リハビリテーションセンター後援の就職説明 会に出て以来、身体障害者と精神障害者のどちらも雇用してきた。「障害者とな ると、何ができないかがあまりにも関心の中心になりすぎます。私は何ができる かに焦点を当てます。私の会社では、そのような人たちは、組立ラインで仕事を し、会社の平均賃金の時給8ドルを受け取っています。」とコサクはいう。 | job fair : 就職説明会、 assembly line : 組立ライン、 average salary : 平均給与 |
| 20 | 1990年代の起業家的機運の中、他のアメリカ人同様、障害者も自ら事業を 起こした。セオドア・ピノック(39)は脳性麻痺で車椅子使用のサンディエゴ 在住の公民権弁護士だが、彼は1991年自分で4人の法律事務所を始めた。 だが法曹界は彼を歓迎したとは言えなかった。「障害者でアフリカ系アメリカ人 という事実のため、仕事は思うようにうまくはなかなかいきませんでした。弁護 士仲間の尊敬を得るために人より懸命に働かなければなりませんでしたよ。 でも今では世間の評判と名声を得たので、依頼主は私のところに来ることを知っ ています。」とピノックはいう。ピノックは法律事務所を始める際、働く環境を 整えるのに10万ドル以上を使った。自ら考案したコンピュータキーボードのた めの特別な装置、車椅子用に改造したバン、よその町に出かける時の運転手など。 また言語障害のため聞き取りにくい彼のことばを通訳するため助手を法廷に同伴 することもある。1992年、ピノックはリハビリテーションの専門家と相談し ながら、障害に合うよう事務所を改造し整備した。 | entrepreneurial : 企業家精神に溢れた、 atmosphere : 雰囲気、 civil right : 公民権,市民権、 cerebral palsy : 脳性小児まひ、 law practice : 弁護士の開業、 corporate legal : 法律業務、 African American : アメリカ黒人,黒人、 colleague : 同僚、 modification : 改良、 executive assistant : 秘書、 garble : (事実を)歪める,取り違える、 adequately : 適切に,十分に |
| 21 | 他の障害者もピノックのように事業を起こし成功できるよう、大統領直属の障 害者委員会は、'JAN'(仕事調整ネットワーク)という新しい手段、をつくった。 昨年10月にスタートし、起業家になろうとするものを援助し始めた。JAN は資 金調達や事務所設備の購入の方法、働きやすいように事務所を整備する方法など について無料でアドバイスする、とJANの管理者デール・ブラウンはいう。 1999年の中頃には、ウェブサイトを開き、もっと広範囲の情報を提供するこ とになっている。これまでのところ、事業を起こす際の諸問題について、51人 の障害者にアドバイスを与えている。目標は今年中に500人に到達することだ。 | committee : 委員会、 entrepreneur : 企業家、 office equipment : 事務機器,事務用諸設備 |
| 22 | そのような前途有望なサービスや科学技術があるとはいえ、障害者を普通の職 業生活にもっと完全に統合しようとする戦いは全く終わらない。恐るべき問題が 残る。アメリカにおいては、もっとも困難な問題の一つは健康管理だ。「健康保 険のない仕事についたらどうなるでしょう?」とEEOC理事ミラーは尋ねる。「メ ディケアは受けられなくなり、かといって障害があるため民間の健康プランを買 うこともできません。健康保険のない仕事の場合、メディケアはとても必要なの です。」その答えは、恐らく、障害者が仕事に就いてもメディケアやメディケー ドの受給資格を失わないよう、法改正を行うことにあるとミラーは感じている。 | integrate : 統合する、 formidable : 手強い,侮りがたい、 health care : 保健衛生,保健、 health insurance : 健康保険、 Medicare : 《米》メディケア,医療健康保険制度、 health plan : 保健計画、 eligibility : 適格 |
| 23 | ADA(アメリカ障害者法)は障害者差別は違法だという意識を高めたが、一部 のあまり理解のない雇用主から反動もあったという。「ADAに過敏になり、障害 者を雇うことを恐れるのです。どんな理由があっても、障害者を解雇すれば訴訟 を起こされるのではないかと恐れるのです。」と、グリーンスボロの職業リハヂ リテーションノースキャロライナ支部就職担当官、パトリシア・ビールはいう。 | awareness : 認識、 discriminate against : 差別する、 illegal : 違法の、 backlash : 急激な反発、 enlightened : 物のわかった、 sue : 告訴する、 placement : 職業紹介の,就職斡旋 |
| 24 | これらの問題を解決するためには、アメリカ人の態度の深いところでの変化が 必要とされる。だがそれには時間がかかるだろう。「私は、たぶん次の世代かそ こらで事態は本当に変わるのではないかと感じています。」とマリオット障害者 財団のマーク・ドノバンはいう。他の者たちはもっとずっと悲観的だ。「もう百 年はかかるでしょうね。」と弁護士のピノックはいう。「まあその頃には、人々 の態度に本当の変化が見られるかも知れませんね。」だがピノックも指摘するよ うに、少なくとも闘いを1歩前進させるためにはそんなに長く待つ必要はないの だ。 | down the road : 将来、 pessimistic : 悲観的な |
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